博 士 ( 獣 医 学 ) 青 柳 敬 人
学 位 論 文 題 名
ウ シ の 体 外 受 精 に お け る 精 子 処 理 法 と 体 外 受 精 由 来 の 初 期 胚 の 体 外 培 養 法 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ウ シの体 外受精 による 安定 的な胚 盤胞の 生産技 術を 確立す ること を目的 として ,ウシの卵胞卵 子の 体外 成熟, 体外受 精ナょ らび に体外 受精由来胚の体外培養系に関する基礎的研究を行い,下記 の知 見を 得た。
1)凍 結融解 精子の 処理法 と種雄 牛の 個体差 が体外 受精に 及ぼ す影響
ウ シ卵胞 卵子 の体外 培養時 間と核 の成熟 率と の関係 ならび に体外 受精 時の精 子処理における カフ ェイ ンまた はカフ ェイン とイ オノホ ア併用 による 体外受 精率 ,卵割 率なら びにウザキ卵管内 移植 後の 桑実胚 への発 育率に っい て比較 検討を 行った 。
卵 子の成 熟率 (第二 成熟分 裂中期 像に達 する 場合) は22時間 目で ピーク に達し た。体外受精 率は カフ ェイン 区で53% ,カ フェイ ンとイ オノホ ア併 用区で89%,ま た, 全受精 卵中の正常な受 精 卵 の 占め る割 合は カフェ イン区 で22%および カフ ェイン とイオ ノホア 併用区 で54% とどち らも 両 区 間 で有 意 差 が 認 め られ た (Pく0.01)。 受精後2日 目の2細胞 期以降 への卵 割率は カフ ェイ ン区 で24% および カフェ イン とイオ ノホア 併用区 で4300を 示し,両者間に有意差が認められた(P くO. 01)。しかし,卵割区のウサギ卵管内での桑実胚以降への発育率はカフェイン区およびカフェ イン とイ オノホ ア併用 区の間 で有 意差は 認めら れなか った。 カフ ェイン に対し ,カフェインとイ オノ ホア 併用に よる精 子処理 が体 外受精 率なら びに初 期卵割 率の 向上に 有効で あることが示唆さ れた 。
ウ シ体外 受精 におけ る種雄 牛の個 体差の 影響 を体外 受精率 ,体外 での 卵割率 およびウシ卵管 内移 植後 の桑実 胚への 発育率 から 比較検 討した 。
体 外 受 精 率 は 種 雄 牛5頭 で84〜94% の 範囲 で 有 意 差 は認 め ら れ ず ,1頭 の 種 雄 牛(3H) の 凍 結 精液 の受 精率 は53%と 他牛に 比べ て有意 に低値 を示し た(Pく0. 01)。 卵割率 は3―Hの 個体 のみ18%と低 かった が, 他種雄 牛のそ れは39〜49%の 範囲内 にあ った。 全受精 卵中の雄性前
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核の 形 成 率 は38〜75%の範 囲で6頭の 種雄牛 間で ばらっ きを認 めた。 また ,卵剖 胚中の4細 胞期 胚の占 める割 合も39〜71%で 幅が 認めら れた。 卵割胚 のウザ キ卵 管内で の桑実胚への発育率は各 種雄牛 間で有 意差は 認め られな かった 。
種雄 牛の個 体差が 体外受 精に 影響し ,とく に,雄 性前核 の形 成率な らびに 卵割胚 中の4細胞 期胚の 占める 割合に 顕著 に影響 するこ とが明 らか となっ た。
2)体外 受精由 来胚の 体外培 養系 に関す る検討
ウシ 体外受 精由来 の8細胞期 胚を各 種細 胞(ウ シの卵丘細胞,卵管上皮細胞,栄養膜の小胞,
羊膜細 胞)と 共培養 する か,あ るいfまウ サギ卵 管内で培養し,さらに,ウシの体細胞を含まない 培養を 対照区 として ,胚 盤胞へ の発育 率を比 較検 討した 。
胚盤 胞への 発育率 ならび に良 好な形 態を示 す胚盤 胞の割 合tま,そ れぞれ対照区で2%および O% , 卵 丘 細 胞と の 共 培養で20%お よび4%, 卵管上 皮細胞 との 共培養 区で39% およ び18%, 栄 養膜の 小胞と の共培 養区 で51%および28%,羊膜細胞との共培養区では49%および24%であった。
また, ウサギ 卵管内 培養 区のそ れらは29%お よび16% であっ た。 さらに ,卵管上皮,栄養膜の小 胞なら びに羊 膜細胞 との 共培養 によっ て得ら れた 胚盤胞 の凍結 融解後 の移植 によ って6頭の 受卵 牛が分 娩し,2組 の双子 を含む8頭 の産子 を得 た。
卯管 上皮細 胞,栄 養膜の 小胞 および 新知見 の羊膜 細胞と の共 培養に よって 体外受 精由 来の8 細胞期 胚の胚 盤胞へ の発 育率は向上し,形態的にも良好な胚がより多く得られることが示唆され,
そ れ ら を 受 卵 牛 に 移 植 し た 場 合 , 正 常 な 子 牛 と し て 生 ま れ る こ と が 確 認 さ れ た 。 本研 究はウ シの体 外受精 によ って安 定的な 胚盤胞 の生産 技術 を確立 することに役立ち,ウシ 受精卵 移植の 実用化 に貢 献する ことが 明らか とな った。
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学位論文審査の要旨
ウシの体外受精による安定的な胚盤胞の生産技術を確立することを目的として,ウシの卵胞卵 子の体外成熟,体外受精ならびに体外受精由来胚の体外培養系に関する基礎的研究を行い,下記 の知見を得た。
1) 凍 結 融 解 精 子 の 精 子 処 理 法 と 種 雄 牛 の 個 体 差 が 体 外 受 精 に お よ ぼ す 影 響 ウシ卵胞卵子の体外培養時間と核の成熟率との関係ならびに体外受精時の精子処理における カフェインまたはカフェインとイオノホア併用による体外受精率,卵割率ならびにウザキ卵管内 移植後の桑実胚への発育率にっいて比較検討を行った。その結果,卵子の成熟率(第二成熟分裂 中期像に達する場合)は22時間目でピークに達した。体外受精率はカフェイン区で53%,カフェ インとイオノホア併用区で89%,また,全受精卵中の正常な受精卵の占める割合はカフェイン区 で22%およびカフェインとイオノホア併用区で54%とどちらも両区間で有意差が認められた(P くO.01)。受精後2日目と2細胞期以降への卵割率はカフェイン区で24%およびカフウインとイ オノホアの併用区で43%を示し,両者間に有意差が認められた(PくO.01)。カフェインに対し カフェインとイオノホアのf并用による精子処理が体外受精率ならびに初期卵割率の向上に有効で あることが示唆された。
ウシ体外受精における種雄牛の個体差の影響を体外受精率,体外での卵割率およびウザキ卵 管内移植後の桑実胚への発育率から比較検討した。その結果,体外受精率は種雄牛5頭で84〜94
%の 範囲で有意差は認められず,1頭の種雄牛(3―H)の凍結精液の受精率は53%と他牛に比 べて 有意に低値を示した(PくO.01)。卵割率は3一Hの個体のみ18%と低かったが,他種雄牛 のそれは39‑‑ 49%の範囲内にあった。全受精卵中の雄性前核の形成率は38〜75%の範囲で6頭の 種雄牛間でばらっきを認めた。種雄牛の個体差が体外受精に影響し,とくに,雄性前核の形成率 な らび に 卵割 胚中 の4細胞 期胚 の占 め る割 合に 顕著に影響すること が明らかとなった。
2)体外受精由来胚の体外培養系に関する検討
ウシ体外受精由来の8細胞期胚を各種細胞(ウシの卵丘細胞,卵管上皮細胞,栄養膜の小胞,
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司 郎
誠 幸
弘 茂
芳
川 岡
村 橋
金 波
杉 高
授 授
授 授
教
教 教
教 助
査 査
査 査
主 副
副 副
羊膜細胞)と共培養するか,あるいはウサギ卵管内で培養し,さらに,ウシの体細胞を含まない 培養を対照区として,胚盤胞への発育率を比較検討した。その結果,胚盤胞への発育率ならびに 良好な形態を示す胚盤胞の割合は,それぞれ対照区で2%およびO%,卯丘細胞との共培養区で 20%および4%,卵管上皮細胞との共培養区で39%および18%,栄養膜の小胞との共培養区で51
%および28%,羊膜細胞との共培養区では49%および24%であった。また,ウザキ卵管内培養区 のそれらは29%および 16%であった。さらに,卵管上皮,栄養膜の小胞ならびに羊膜細胞との共 培養によって得られた胚盤胞の凍結融解後の移植によって6頭の受卵牛が分娩し,2組の双子を 含む8頭の産子を得た。
以上のことから,本研究はウシの体外受精によって安定的な胚盤胞の生産技術を確立すること に役立ち,ウシ受精卵移植の実用化に貢献することが明らかとなった。よって審査員一同は,申 請 者青 柳敬 人 氏が ,博 士( 獣医 学 )の 学位 を受 ける に 十分 な資 格を 有すると 認めた。
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