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博 士 ( 獣 医 学 ) 星 野 有 希

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 星 野 有 希

学 位 論 文 題 名

活 性 化 リ ン パ 球 を 用 い た 犬 の 腫 瘍 免 疫 療 法 の 臨 床 応 用 に 関 す る 基 礎 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  従来から腫瘍治療法の基本である外科手術、放射線療 法および化学療法は小動物におい て効果的である一方、治療自体が副作用を持つことにより生活の質(QOL;Quality of life) を低 下さ せる ことが多い。したがっ て、副作用の少ない腫瘍の第4の治療法として、免疫 療法の必要性が高まっている。

  腫瘍罹患症例は重度の免疫抑制状態に陥っていること が多く、そのために腫瘍を排除す る能カが低下している。そのような症例では、原発腫瘍 を制御しても容易に免疫機能が回 復しなぃことが推察される。免疫を賦活するためには特異的および非特異的な免疫を誘導、

する 必要 があ るが、T細胞機能が抑制されている腫瘍罹患症例に おいては特異的免疫の誘 導が困難な場合が多い。その場合には、エフェクター細 胞を体外で人為的に作製して移入 する受動免疫療法が適応となる。受動免疫療法の代表的 なものには活性化リンパ球療法が あ り 、 一 般 的 に 抗Cluster of differentiation(CD)3抗体 とイ ンタ ーロ イキ ン(IL; Interleukin)‐2によって活性化されたりンパ球を当該症例に繰り返し投与する方法である。

活性 化さ れた りン パ球 の集 団に は、 主にCD3+のT細 胞と ナチ ュラ ルキ ラー(NK:Natural killer)細胞が含まれ、これ らの細胞によって生体内に特異的および非特異的免疫の両者の 誘導が可能であるとされている。小動物においても臨床 応用され始めているが、リンパ球 の 最 適 な 培 養 法 、 投 与 方 法 お よ び 評 価 方 法 な ど は 未 だ に 確 立 さ れ て い な ぃ 。   以上のような背景から本論文では、活性化リンパ球療 法の実施方法および評価方法につ い て 検 討 し 、 さ ら に 腫 瘍 罹 患 症 例 に 対 し て 臨 床 応 用 し て そ の 有 用 性 を 評 価 し た 。   ま ず 、 本 研 究 の 第1章 で は 、 ヒ ト にお いてNK細 胞の マー カー で ある とさ れるCD56に 着目 し、 健常 犬の末梢血中におけるCD56+細胞の動態を調べるこ とを目的とした。定量ポ リメ ラー ゼ連 鎖反 応(PCR;Polymerase chain reaction)法を用 いて犬の主要臓器、末梢 血単 核球(PBMC;Peripheral blood mononuclear cell)およ び刺 激培 養したりンパ球に お け るCD56メ ッ セ ン ジ ャ ー リ ボ 核 酸(mRNA;messenger ribonucleic acid)発 現量 を 相 対 定 量 し た と こ ろ 、 主 要 臓 器 で は 脳に おい てCD56 mRNA発現 量 が最 も高 いこ とが 分 か っ た 。 ま た 刺 激 培 養 し た り ン パ 球 で は 、PBMCに 比 べ てCD56 mRNA発 現 量 が 増 加 し

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た。In situハ イブ リダ イゼ ーシ ョン 法に よりPBMCおよ び刺 激 培養 した りンパ球での CD56 mRNAの 局 在 を 調 べ た と こ ろ 、PBMCで は ご く わ ず か で あ っ たCD56 mRNAの シ グナルを有する細胞は、刺激培養したりンパ球では増加した。以上のことから、健常犬の りン パ球 にお けるCD56 mRNA発現 量お よび 発現 細胞 数は ヒト と 比べ ると かなり少ない ものの、活性化刺激で発現が増加することが 判明した。

  次いで第2章で は、犬における活性化リンパ球の繰り返し投与の適応について調べるた め 、 健 常 犬 のPBMCを 抗CD3抗 体 とIL‑2を 用 いて 刺 激培 養し 、IL‑2と イン ター フェ ロ ン(IFN;Interferon).aにより再活性化した細胞についてその性状を解析した。その結 果、得られた細胞ではCD4゛CD8.細胞比およ びCD4℃D8゛細胞比の増加、細胞傷害能カの 上 昇 お よ びCD56mRNA発現 量増 加が 認め られ 、活 性 化さ れた りン パ球 であ るこ とが 判 明した。さらに、体外で活性化されたりンパ球を健常犬に繰り返し投与した際の生体反応 について調べた結果、PBMCの構成細胞比の変 化および血清IFN.y濃度の上昇が認められ たため、健常犬において細胞性免疫応答が活性化された可能性が示唆された。また、特に 副作用を思われる反応は認められなかった。以上のことから、健常犬において、活性化さ れたりンパ球の誘導が可能であること、およびその活性化リンパ球を繰り返し投与するこ とにより免疫応答を活性化できることが示唆 された。

  第3章では、第2章で検討した活性化リンパ 球の繰り返し投与を、北海道大学大学院獣 医学研究科附属動物病院に来院した悪性腫瘍 罹患犬10症例に対して補助療法として実施 した。腫瘍罹患症例においても14日間の培養 により、活性化されたりンパ球の誘導が可 能であった。それら活性化されたりンパ球を 当該症例に繰り返し投与した結果、PBMCの 細胞増殖率の上昇、末梢血CD4゛CD8.細胞比 およびCD4℃D8゛細胞比の増加、血清IFN‐Y 濃度 の上 昇お よび 一般状態 が改善した症例が認められた。投与期間中の症例犬のQOLは 比較的良く保たれ、副作用は認められず、飼い主の印象も良好であった。そのため、活性 化リ ンパ 球療 法は 免疫能の 抑制によるQOLの低下が起こ り得る腫瘍罹患犬に対する補助 療 法 と し て 十 分 適 応 可 能 で 、 か つ 有 効 性 が 期 待 で き る も の と 考 え ら れ た 。   以上の結果により、犬の末梢血にはCD56゛細胞が存在し、その細胞はりンパ球に対する 活性化刺激により増加することが判明した。 そのため、犬におけるCD56の相対定量法は 活性 化リ ンパ 球誘 導指 標の ーっ と して の有 用性 が示 唆さ れた 。ま た、PBMCを抗CD3抗 体とIL‐2を用い て14日間培養し、IL.2とIFN.aにより再活性化する方法により、健常 犬、腫瘍罹患犬ともに活性化リンパ球の誘導が可能であった。その活性化リンパ球を繰り 返し投与する治療法である活性化リンパ球療法は、腫瘍による免疫抑制状態に陥っている と推察される小動物においても免疫能を改善できる可能性があり、十分適応可能で有用な 治療法のーっであろうと考えられた。また末 梢血のCD4+CD8.細胞およぴCD4℃D8゛細胞 の構成比やIFN.Y濃度を測定することでこの 治療法に対する反応が評価できる可能性が 考えられた。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 准教授 准教授

藤 永    徹 稲 葉    睦 田 島 誉 士 奥 村 正 裕

学 位 論 文 題 名

活 性化リンパ球を 用いた犬の腫瘍免疫療法の 臨床 応用に関する基礎的研究

  動 物 の 腫 瘍 に 対 す る 現 行 の 治 療 法 で あ る 外 科 手 術 、化 学 療 法お よ ぴ 放 射線 療 法 は 効果的で ある一 方、治療 自体が 侵襲的で 副作用を 伴うこ とが多い。そこで申請者は、ヒト にお い て 副作 用 が 少な いと される 活性化リ ンパ球 療法を腫 瘍罹患 犬に適応 すること を目 的として 、その 有用性に ついて 基礎的に 検討した 。

  ヒ ト の 非 特 異 的 免 疫 担 当 細 胞 で あ るNK細 胞 の 主 要 マ ー カ ー と さ れ るCD56 mRNAの 犬 で の 発 現 を り ア ルタ イ ムPCR法 によ っ て 相対 定 量 した 結 果 、 刺激 培 養 した り ン パ 球 で は 末 梢 血 単 核 球 に 比 べ て CD56mRNA発 現 量 が 増 加 し た 。 ま た 、 同 様 に CD56シ グ ナ ル を 有 す る 細 胞の 増 加 が加sfmハ イ プ リダ イ ゼ ーシ ョ ン 法 によ り 確 認さ れ た 。 以 上 の こ と か ら 、 犬 のNK細 胞 の ― 部 に はCD56mRNAが 発 現 し て い る も の と 考 え られ た 。 次い で 、 犬の 末 梢 血単 核 球 を 抗CD3抗体 、 也.2お よび 班N‐qを 用い て14日 問培養したところ、リンパ球が活性化されることが判明した。さらに、それらの細胞を健常 犬 に 繰 り 返 し 投 与 し たと こ ろ 、末 梢 血 単核 球 の 構成 細 胞 比の 変 化 およ び 血 清IFNイ 濃 度 の 上 昇 が 認 め ら れ 、加vfwに お い て細 胞 性 免疫 応 答 の活 性 化 が引 き 起 こ され る 可 能 性が 示 唆 され た 。 そこ で、 この活 性化リン パ球を 繰り返し 投与す る活性化 リンパ球 療法 を 本 研 究 科 附 属 動 物 病 院 に 来 院 し た 悪 性 腫 瘍 罹 患 犬10症 例 に 補助 療 法 と して 実 施 し た。 そ の 結果 、 健 常犬 と 同 様に り ン パ 球数 の 増 加と そ の 構成 細 胞 比の 変 化 韜よぴ 血清 IFNッ 濃度 の 上 昇な ど が みら れ た 。 さら に 、 実施 期 間 中の 症 例 のQOL(生 活 の質 )は良 好に保た れ、飼 い主の印 象も良 好であっ た。

  以 上 の と お り 、 活 性 化 リ ン パ 球 療 法 は 免 疫 抑 制 下 にあ る 悪 性腫 瘍 罹 患 犬に 対 し て 十分 適 応 可能 で 、 かつ 有用 な治療 法のーっ となり 得る可能 性を明 らかにし た。よっ て、

審 査 員 一 同 は 、 上 記 博 士 論 文 提 出 者 星 野 有 希 氏 の 博 士 論 文 は 、 北 海 道 大 学 大 学 院

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獣医学研究科規程第6 条の規程による本研究科の行う博士論文の審査に合格と認

めた。

参照

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