博士(獣医学)庄 文忠 学位論文題名
Analyses of antigenic and genetic diversities of Theil,erLa sergenti piroplasm surface proteins
(アんeilerLQsergentLのピ口プラズム表面抗原および そ の 遺 伝 子 に お け る 多 様 性 の 解 析 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
牛小型ピ口プラズム病はThe」リcmse侶enむ感染に起因する放牧病であ り、日本各地の放牧地で感染症による被害の最上位を占めている。免疫 学的防除法の開発が急務であるが、これらの開発にとり重要な原虫抗原 の解析に関して、系統的な研究はこれまで全く行われていない。日本に 分布する本原虫の免疫学性状を明らかにするために、本研究ではモノク ローナル抗体(MOAb)及びDNAプ口ーブを用いて丁se曙enむ日本分離株の 多様性とピ口プラズム主要表面抗原の解析を試みて、以下の結果が得ら れた。
1)丁鮒笘凹f′褊島株に対するMOAbsを作製し、これらの抗体と千歳株 に対するMOAbのノヾネルを用いたウェスタンブロットより、日本国内で 分離された丁sc侶enf´株の抗原性状を訓べた。これらのMOAbsはピロプ ラ ズム主要表面 抗原蛋白質である23あ るいは32キ口ダルトン 蛋白質
(p23およびp32)と強く反応した。
応バターンは株間で興なっており、
国内 分離株17株とMoAb6種 との反 丁sergentiの抗原多様性が明らかと なった。しかし、地域による抗原型の偏りは認められなかった。ピロプ ラズムp23のN―末端アミノ酸配列解析では新得、千歳株での問で差異が 見られた。p23のN‑末端アミノ酸配列はp32のcDNAから予想されたアミ ノ酸配列中には見出せないことから、p23はp32の断片ではないことが示
さ れた 。p32のcDNAプ ロ ーブ を 用い た サザ ン ブロ ット ハ イブ1Jダ イゼ ー ションの 解析では丁seigcnti p32遺伝子の分離株間における多様性も示さ れた。
2)多様´ピ1:に富む表面抗原p32の´ピ1:状をさらに調べるために、p32を認 識 するMoAbsを用 い た本 分 子上 の エピ トー プ 解析 を 行な っ た。 競 合酵素 抗 体 法(ELISA)の 結 果 で はp32上 に お い て エ ピ ト ー プ が3種 類 以 上 存 在するこ とが明らかとな った。Two‑site ELISAではp32にエピトー プの繰 り 返 し が あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 抗 原 の 過 ヨ ウ 素 酸 処 理 後 、 一 つ の MoAbと の 反 応 性 が 消 失 し た こ と から 、 この 抗体 の 認識 す るエ ピ トー プ は糖鎖構 造を含むことが 示された。Triton.X‑1 14相分離ではp32が膜貫通 性 の表 面蛋 白 であ る こと が 明ら かと な った 。 これ ら の結 果 から 、p32は マラリア 原虫の重要表面 抗原と類似な 性状をもち、 丁serger,ti分 離株間 の 抗 原 解 析 で は 重 要 な マ ー カ ー 蛋 白 質 と な る こ と が 示 さ れ た 。 3) 持 続 感 染 の 過 程 に お け る ピ 口 プ ラ ズ ム 主 要 表 面 抗 原 で あ るp23と p32の 蛋 白質 化 学的 な らび に 免疫 学的 性 状に 変 化が あ るか どう か をウェ ス タン ブロ ッ トお よ び二 次 元電 気泳動によ り解析した。 感染血液接種 に よ ルタ イレ リ アを 感 染さ せ た牛 では観察期 間中に得られ た原虫と感染 牛 血 清 あ る い はMoAbsと の 間 で の 反 応 パ タ ー ン に 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。一 方、 ス ポロ ゾ イト 接 種に より、感染 させた牛から 採取された原 虫 で は採 取時 期 によ っ て感 染 血清 との反応性 が興なってお り、また、あ る 時期の原 虫は特定のMoAbとの反 応´ピI:を消失していた。ELISAからの結 果も以上の結果と一致した。これらの結果から持続感染において抗原´ピI: の 異な る原 虫 が出 現 して く るこ とが明らか となった。二 次元電気泳動 の 蛋 白 質 染 色 で はMoAbsと 反 応 し な い時 期 の原 虫 にお い ても32kDaある い は23kDa蛋 白 質 が 発 現 さ れ て い る こと が 確認 さ れた 。 この こと はMoAbs が 認 識 す る こ れ ら 分 子 上 の エ ピ ト ープ に 変化 が 起き てい る と考 え られ た 。ま た、 ス ポ口 ゾ イト 接 種牛 で原虫の抗 原変化が顕著 であったこと か ら、ダニ体 内での発育環 や赤血球侵入以前の発育ステージを経過するこ とが原虫の 多様性発現に 重要な役割を果たしていることが示唆された。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教 授 教 授 教 授 助教授
小沼 操 橋本信夫 神谷正男 杉本千尋
学 位 論 文 題 名
Analyses of antigenic and genetic diversities of TheilerLa sergenti piroplasm surface proteins
(TheilerむaSerge凡とむのピ口プラズム表面抗原および その遺伝子における多様性の解析)
牛小型ピロプラズマ病はTheileria sergenti感染に起因し、被害の大きい放牧病 で あ り、 そ の防 除法の開 発が急務 とされて いる。本論 文は主要 表面蛋白 質に対す る モ ノク ロ ー ナル 抗 体(MoAb)ぴcDNAプロ ー ブ を用 い て日 本 の 分離 株 の遺 伝的な ら ぴ に抗 原 的 多様 性 を 解析 し 、得 ら れ た新 知 見に つ い て述 べ たも の で あ.る。
アsergentiピロプラ ズム主要表 面抗原である23あるいは32キロダルトン蛋白質 (p23,p32)に対するMoAbのパネルを 用い、日本各地の分離株の抗原性を比較した。
そ の 結果 国 内 分離 株 間 にお け る主 要 表 面抗 原の多様 性が明ら かとなっ た。p32の cDNAプ ロ ーブ を 用 いた サ ザン ブ ロ ット 法 によ る解析では 分離株間 におけるp32遺 伝 子の多様 性も示され た。競合 酵素抗体 法により 、p32のエピ トープ解析を行った 結 果 、p32上 におい てエピト ープが少 なくとも3種存在し、 さらに繰 り返しお よび 糖 鎖構造を 含むエピト ープのあ ることが 示唆され た。p32は膜 貫通性の表面蛋白質 で あ り、T.sergenti分離株 間の抗原 解析では 重要なマ ーカーとな ることが 示され た。
次 に 持続 感染の 過程にお けるp23とp32の 免疫学的 変化につい て検討し た。感 染 血 液接 種 によ りタイレ リアを感 染させた 牛では観察 期間中に 得られた 原虫と感 染 牛 血清 あ る いはMoAbと の間 で の 反応 パ タ ーン に 変化 は 認 めら れ なか った 。―
方 、 スポ ロ ゾイ ト接種に より感染 させた牛 から採取さ れた原虫 では採取 時期によ っ て 感 染 血 清 と の 反 応 性 が 異 な っ て お り 、 ま た 、 あ る 時期 の 原 虫で は 特定 の MoAbと の 反応 性が消 失してい た。この 結果は, 持続感染に おいて抗 原性の異 なる 原 虫が出現 してくるこ と,およ ぴダニ体内での発育環を経過することが原虫の多様 性発現に特に重要であることを示唆している。
この研究はこれまで系統的な研究が全くなされていなかったタイレリア原虫の 多様性を抗原および遺伝子レベルで明らかにしたものであり、その感染症に対す る免疫学的防除法の開発にとり重要な知見を提供するものである。よって審査員 一同は庄文忠氏が博士(獣医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するもの と認めた。