博士(獣医学)丸山 学位論文題名
内因 性 ドノ ヾミ ン 神経毒6 , 7‑dihydroxy‑
1,2,3,4‑tetrahydroisoquinoline (norsalsolinol) cD
ドパミン分泌に与える影響とその細胞内動態 学位論文内容の要旨
,些且
パ ー キ ン ソ ン 氏 病 は 未 知 の 原 因 に よ り 黒 質 一 線 条 体 系 の ド パ ミ ン 作 動 性 神 経 の 傷 害 に よ っ て 発 生 す る と 考 え ら れ て い る 。 パ ー キ ン ソ ン 氏 病 の 大 部 分 を 占 め る 孤 発 性 パ ー キ ン ソ ン 氏 病 は55歳 齢 以 上 の 約1% に 発 症 す る こ と が 知 ら れ て い る が 、 そ の 発 症 原 因 は 未 だ 不 明 で あ る 。 ド パ ミ ン と ア ル デ ヒ ド の 縮 合 に よ り 生 成 さ れ る ア ル カ ロ イ ド であ る6,7dihy出oXy―1,Z3,4ー tetrahy出dsoq伍noline誘 導 体 (DHTIQS冫 が ヒ ト 脳 内 に 存 在 する こと が確 認さ れ てい る。 実験 動 物 の 脳 室 内 投 与 や 培 養 細 胞 へ の 曝 露 に よ る 実 験 か ら 、DHTIQsは ド パ ミ ン ト ラ ン ス ポ ー タ ー
(DAT) を 介 し て 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ 、 細 胞 死 を 弓fき 起 こ す こ と が 明 ら か と な っ て いる 。し か し 、 こ れ ら パ ー キ ン ソ ン 氏 病 惹 起 候 補 物 質 に よ る 神 経 伝 達 物 質 の 分 泌 な ど の 神 経 機 能 に 対 す る 影 響 に つ い て は ほ と ん ど 明 ら か に な っ て い な ぃ 。 一 方 、 ホ ル ム ア ル デ ヒ ド と ド パ ミ ン の 縮 合 (PictetSpengler反 応 ) に よ っ て 生 体 内 で 産 生 さ れ る6,7dihydroXy―1,2 3,4− tetrahy出dsoqmnoline(norsalsohnol)は 、 パー キン ソン 氏 病患 者で は健 常者 に 比較 して 脳脊 髄 液 や 尿 中 の 濃 度 が 上 昇 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 ド パ ミ ン 作 動 性 神 経 細 胞 の モ デ ル 細 胞 と し て 汎 用 さ れ て い る ラ ッ ト 褐 色 細 胞 腫PC12細 胞 を 用 い 、 パ ー キ ン ソ ン 氏 病 惹 起 候 補 物 質 で あ るnorsalsohnolがPC12細 胞 の ド パ ミ ン 分 泌 に 与 え る 影 響 を 検 討 し た 。 さ ら にPC12細 胞 へ の 細 胞 内 取 込 み 経 路 お よ び 細 胞 内 動 態 に つ い て も 検 討 し た 。 NOISa亅sohnolの12時 間 の 前 処 置 は 静 止 時 の 自 発 的 分 泌 に は 影 響 を 与 え な か っ た の に 対 し 、 50mMK( ニlあ る ぃ は100メMATP刺 激 時 のPC12細 胞 か ら の ド パ ミ ン 分 泌 を 濃 度 依 存 的 に 抑 制 し た 。Norsalsolinolに よ る ド パ ミ ン 分 泌 の 抑 制 は 処 置 後10時 間 以 降 に 認 め ら れ 、 短 時 間 の 曝 露 では 観察 され なか っ た。 神経 伝達物質の分泌は細 胞内の゜゛濃度([Ca2十]i)の上昇に依存し て い る 。 従 っ て 、PC12細 胞 の 分 泌 刺 激 に よ る [Q ]i上 昇 、 ね よ びB−eScinに よ り 膜の イオ ン 透 過 性 を 増 大 さ せ たPC12細 胞 ( 膜 透 過 性 細 胞 ) に お け る 分 泌 装 置 のQ2十 感 受 性 に 対 す る norsむsohnolの影響を検討した 。NOIsalsolinol前処置によっても静止時、および刺激時の[(】a2十]i
は有意 な差は認められなかった。従って、norsalsolinolによるドパミン分泌抑制は[Ca']i上 昇 の阻 害に よ るも ので はな ぃと考えられた。一方 、膜透過性PC12細胞における(オ゛誘発性 ドパミ ン分泌はnorsalsolinolの前処置により有意に減少したことから、norsalsolinolは分泌装 置 に影 響を 与 えて いる 可能 性が考えられた。Norsals omolはその構造がドパミンと類似して い るこ とか ら ドパ ミン 分泌 を抑 制す る受 容体 であ るD2ドパ ミン 受容 体 を活 性化 することが 考えら れた。しかし、D2ドパミン受容体阻害薬(smpiride,50メM)はnorsms01inolによるドパ ミ ン分泌抑制を解除し なかったことから、norSalsolinolによるドパミン分泌はD2ドパミン受 容体の 活性化によるものではなぃと考えられた。
パ ー キ ン ソ ン 氏 病 惹 起物 質は 、DATに親 和性 を有 する こと でド パミ ン作 動性 神経 細胞 へ の作用 の特異性が獲得されると考えられている。PC12細胞をnorSa.lsdinolに曝露することに よ り、nofsalsolinolの細 胞内 への蓄積が観察された。DAT阻害薬GBR―12909の前処置、外液 Nが の 除 去 に よ り こ の 蓄 積 が 抑 制 さ れ る こ と か ら 、PC12細 胞 内へ の取 り込 みに はDATが 主 に 関与 する こ とが 明ら かに なった。また、nofsalsolinolの取り込みはDATの内因性基質であ る ドパ ミン に よっ て競 合的 に抑制されたことから 、ドパミンとnorSalSolinolはDATの同一の 基質認 識部位によって認識されることが明らかとなった。
精製 分泌 顆 粒を 用い た取 り込 み実 験に おい て、 分泌 顆粒 性モ ノア ミ ント ラン スポーター
(VMAT)の阻害薬であ るrese甲ineやVMATの内因性 基質であるドパミンによってnorSalsohnol の 取 り 込 み が 抑 制 さ れ た こ と か ら 、 分 泌 顆 粒 中 へ の取 り込 みに はVMATの 関与 が予 想さ れ た 。Norsalsolmolを前 処置 したPC12細胞 より 作製 した ホモ ジネ ート の ショ 糖密 度勾配遠心 により 、norsa亅solinolとドパミンの局在パターンは類似して いることが明らかになった。さ らに、nofsalsolinolを前処置したPC12細胞に分泌刺激を与えるとドパミンとnofsalsolinolの 放 出が 観察 き れた 。ま た、 両者 の分 泌の 時間 経過 は一 致していた。以上から 、DATによって 細 胞内 に取 り 込ま れたnor讎solinolはVMATを 介し て分 泌顆 粒内 に取 り 込ま れ、 ドパミンと 共存し ていることが明らかとなった。
以上 の成 績 は、norsalS0hnolがドパミン作動性 神経細胞の分泌を抑制することを示す。こ の 機序 とし て トラ ンス ポー ター、あるいは貯蔵部 位におけるドパミンとnorsalsohnolの競合 に よるドパミンのホメ オスタシスの異常が関与するのかもしれなぃ。NorSalsolinolはホルム ア ルデ ヒド と ドパ ミン の縮 合によって生成される が、ホルムアルデヒドはメタノールやァン チ ピリ ンな ど の薬 物の 代謝 によっても発生するこ とから、孤発性パーキンソン氏病のみでは な く、 薬剤 性 パー キン ソン 氏病症候群の発生にも 関与する可能性が考えられる。本研究の成 績 は、 パー キ ンソ ン氏 病の 発症には黒質ドパミン 作動性神経細胞の傷害に加えて、ドパミン 分 泌抑 制の 可 能性 を示 唆す るものである。パーキ ンソン氏病惹起物質の探索には、細胞傷害 作 用 に 加 え 、 神 経 機 能 に 対 す る 影 響 も 検 討 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査
副査 副査 副査
教 授 藤 教 授 葉 教 授 伊 助教授 数
田 正 一 原 芳 昭 藤 茂 男 坂 昭 夫
学 位 論 文 題 名