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博 士 ( 獣 医 学 ) 森

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 森    崇

     学 位 論 文 題 名

キ チ ン ・ キ ト サ ン の 創 傷 治 癒 促 進 機 構 の 解 析 に 関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  キ チン ・キ トサ ンは 創傷 被 覆材 とし て医 療お よぴ 獣医 療に おい て製 剤化され、そ の有 効性 は臨 床的 に広 く認 識 され てい る。 キチ ン・ キト サン を創 傷被 覆材として用 いた 場合 の特 徴と して 、血 管 新生 の豊 富な 肉芽 組織 の増 生お よび 感染 抵抗性がまず 挙げ られ る。 しか しそ の作 用 機序 の詳 細に つい ては ほと んど 解明 され ていない。そ こで 本研 究で は線 維芽 細胞 、 血管 内皮 細胞 およ びマ クロ ファ ージ など の創傷治癒に おい て重 要な 役割 を担 って い る細 胞に 及ぼ す、 キチ ン・ キト サン の直 接的作用につ いて主に検討した。

  ま ず、 キチ ンお よび その 誘 導体 のL929マ ウス 線維 芽細 胞に 対す る増 殖活性および マウ スま たは ラッ ト正 常皮 膚 線維 芽細 胞に 対す るサ イト カイ ン誘 導能 について検討 した。

  In vitroに おけ る増 殖活 性 の実 験に 際し ては、ウシ胎児血清(FBS)中に存在する酵 素に よっ て供 試物 質が 分解 あ るい は修 飾を 受け る可 能性 があ るた め、10%ウシ胎児 血 清 加Eagle.s MEM (E‑MEM)培 養 液 お よ びASF‑301無血 清培 養液(ASF)を用 いて 実 験を 行い 比較 した 。そ の結 果 グル コサ ミン の500,lug/ml添加 によ り10%FBS加E‑MEM お よ びASFの 両 方 で 、 ま た キ ト サ ン のsOOP g/ml添 加 に よ り10%FBS加E‑MEMで 有 意に 増殖 を抑 制し たが、有意な増殖の促進はすべての供試物質( キチン、キトサン、

37%および80%脱アセチル化キチン、低分 子イヒキトサン、ハ宀アセチ少キトヘキソー ス、 キト サン ヘキ サマ ー、l¥I‑ア セチ ル‑D−グルコサミンおよぴDグルコサミン)で 観察されなかった。

  サイトカイン産生誘導能についてはすべての供試物質にてinterluekin (IL)‑la、IL‑1 p、IL‑6およぴtumor necrosis factor (TN F)‑ぱの産生誘導は認められなかった。IL‑8は す べ て の 供 試 物質 の50P g/ml添 加に より 対 照の 約2倍以 上の 産生 誘導 能 が観 察さ れ た。

    次 に 、 キ チン およ びそ の誘 導体 のヒ ト 臍帯 静脈 血管 内皮 細胞(HUVEC)に 対す る 増殖活性およびサイトカイン誘導能につい て検討した。

  増 殖活 性に つい てはすべての供試物質(キチン、キトサン、低 分子化キトサン、N‑

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アセチル‐ログルコサミンおよびD‐グルコサミン)にて有意な変化を認めなかった。

  サイトカイン誘導能については、キトサン500P〆mI添加によって、IL‑6とTNF‑

の 産 生 を 誘 導 し た 。 ま た す ぺ て の供 試 物 質 に てIL‑8の 産 生 を 誘 導 し た 。   最後に、キチン・キトサンの創傷治癒促進作用はマクロファージの活性化を介し ているのではないかと考え、キチン・キトサンのマクロファージに対する作用につ いて検討した。

  BALB/cマウス腹腔マクロファージ(PM)をキチンおよぴその誘導体を添加して培 養したところ、キトサンのみでマクロファージのスライドグラスヘの付着性が低下 した。この付着性の低下は、アネキシンVを用いたフローサイトメトリーによる解 析で、細胞がアボトーシスを起こすためと考えられた。M RL‑Ipr/lprおよびMRL‑十/

十マウスPMを用いた実験では、MRL‑十/十マウスPMに比較してMRL‑Ipr/lprマウス PMで付着性が低下せず、ヨウ化ブロビジウムKlt.細胞率も減少した。表面抗原につ いては、キトサンの添加によりFcレセプター、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ク ラスエおよぴH、マンノースレセブター、Fasおよびトランスフェリンレセブターの 発 現 が 増 加し た 。 キ チ ン ではMHCク ラスIおよ びn、低 分子化 キト サン ではMHC クラスHの発現が増加した。Macrophage inflammatoツprotein (MIP)‑2産生誘導能に ついては、キトサンのみでコントロールの約2倍の産生が観察された。一酸化窒素 産生は常在PMではすべての供試物質で検出限界以下であったが、チオグ1Jコレー ト誘 導PMではキトサン50P g/ml添加によって対照の約2倍の産生が観察された。

  本研究の結果、キチン・キトサンは線維芽細胞およぴ血管内皮細胞の増殖性には 直接影響を及ぼさないものの、それらの細胞からのIL‑8の分泌を誘導することによ り、好中球の集簇、血管新生あるぃは表皮細胞の増殖促進作用を表すものと考えら れた 。さ らに、キトサンはPMに対してアボトーシスを誘導し、Fasの発現増強お よびFas異常マウスであるMRL‑Ipr/lprマウスPMの細胞死が減少したことから、ア ポトーシス誘導はFas‑Fasリガンドシステムによるものであり、`急激な活性化を抑制 するためではないかと思われた。キトサンはマクロファージに対して各種表面抗原 の増強、MIP‑2の産生を誘導したことから、貪食能の増強、T細胞の活性化、好中球 の集簇、表皮細胞の増殖促進などの作用を介して創傷治癒に関与していると考えら れた。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査   教授   藤永    徹 副査   教授   斉藤昌之 副査   教授   梅村孝司

副査   教授   上出利光(免疫研)

     、    学 位論 文題 名

キチ ン・ キト サ ンの 創傷 治癒促進機構の解析に関す る研究

  キチン・キトサンは、創傷被覆材として製剤化され、その有効性は広く認識されてい る。キチン・キトサンを用いた場合の特徴として、血管新生の豊富な肉芽組織の増生お よび感染抵抗性が挙げられる。しかしその作用機序の詳細についてはほとんど解明され ていない。申請者は線維芽細胞、血管内皮細胞およびマクロフアージなどの創傷治癒に おいて重要な細胞に及ぼす、キチン・キトサンの直接的作用について検討し、次のよう な結果を明らかにした。

  まず、キチンおよびその誘導体の線維芽細胞に対する増殖活性、およびサイトカイン 誘導能について検討し、線維芽細胞に対して増殖活性を持たないこと、およびインター ロイキン(IL)‑8産生誘導能を持つことを明らかにした。

  次に、キチンおよびその誘導体の血管内皮細胞に対する増殖活性およびサイトカイン 誘導能について検討した。その結果、線維芽細胞と同様に血管内皮細胞に対しても増殖 活性を示さず、サイトカイン誘導能については、キトサンがIL‑6と腫瘍壊死因子‐ の産 生誘導能を持つこと、またすべての供試物質がIL‑8の産生誘導能を持つことを明らかに した。

  最 後に、キ チン・キ トサンの マウス腹腔 マクロフ ァージ(PM)に対する作用について 検 討した。 その結果 、キトサ ンはPMに対し て、Fcレセプター、主要組織適合遺伝子複 合体クラスI(Hー2Dd)およぴII(I‐Ad)、マンノースレセプター、トランスフウリンレセ プター、およびFasの発現の増強、IL‑8スーバーファミリーに属するMIP‑2の産生誘導、

およびFas−Fasリガンドシステムによるアポトーシスを誘導することを明らかにした。

  以 上のよう に申請者 は、キチ ン・キトサ ンの創傷 治癒促進効果はIL‑8およびマクロ ファージの活性化を介している可能性が高いことを明らかにし、キチン・キトサンの創 傷 治癒促進 効果の機 序の解明 に貢献した 。よって 審査員一同は、森崇氏が博士(獣医 学)の学位を授与される資格を有するものと認めた。

参照

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