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博士(獣医学)

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Academic year: 2021

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博士(獣医学)Sumiya GANZORIG      学位論文題名

Biodiversity of helminth parasites in lVIongolia      (モンゴルにおける寄生蠕虫類の生物多様性)

学 位 論 文 内容 の 要 旨

   モンゴルは,シベリアのタイガから中央アジアのステップ,アルタイ山脈,

ゴピ砂漠に至る中央アジアの生態移行帯を占めている。ここには多様な種の動 植物が分布し,その中には世界的に見て絶減の危機に瀕する種も含まれている。

これまでモンゴルの野生哺乳類に寄生する蠕虫相に関する研究は数少ない。本 研究では,多種の野生哺乳類を調査し,モンゴルにおける寄生蠕虫類の生物多 様性の特徴を明らかにし,特に,ブラントハタネズミMicrotus brandti について は,ステップの8 地域の個体群について調査し,宿主個体群の変動とその蠕虫の 群集構造と多様性への影響を明らかにした。

1 .モンゴル産野生哺乳類における寄生蠕虫類の生物多様性

   モンゴルにおける寄生蠕虫の生物多様性を調べるために,50 種(1 . 678 頭)の 哺乳類 (ウサギ 目 5 種,齧歯 目 42 種,食肉目3 種)を調査した。条虫 31 種,鉤頭 虫 2 種, 線虫 42 種お よび五□虫 1 種の計76 種の内部寄生虫を検出した。一方,吸 虫は全く発見できなかった。これらの蠕虫うち, 21 種についてモンゴルにおける 初報告で, 26 種については新宿主記録であった。10 種の蠕虫については既知種と は一致しなかった。地域ごとに見ると,森林帯から22 種,ステップから 56 種,砂 漠から 15 種,高山帯から 19 種の蠕虫がそれぞれ検出された。動物地理学的には,

汎存種 9 種,全北区種12 種,旧北亜区種 55 種が含まれ,モンゴル産野生動物の内 部寄生蠕虫相はアフリカ・アジア砂漠,ユーラシア寒帯森林,ユーラシア山岳地帯,

高地アジア,中央アジアステップ,シベリアの影響が複雑に入り交じったもので あった。

2 . モ ン ゴ ル 産 ユ キ ヒ ョ ウ Uncia uncia か ら 得 ら れ た テ ニ ア 科 条 虫 の形態学的および遺伝学的研究

   ユキヒョウから胞状条虫 Taenia カ ydatigena Pallas ,1766 に類似したテニア科条 虫 が 採集 さ れ た。 こ の 寄生 虫 につい て形態お よぴミト コンドリ ア DNA のチトク ロームc オキシダーゼサブユニットI (COI )遺伝子について検討をおこなったところ,

Taenia kotlani と同定された。両種は虫体長,精巣数およぴ虫卵の大きさで区別さ

れ , COI 遺伝 子のシーク エンスで は384 塩基中 34 塩基 (8.6 %) が異なり ,この結

果 は r kotlani の種と しての妥当性を支持するものであった。アkotlani は汎存種

の 胞状条虫 に形態的お よび遺伝的に最も近縁な種であり,両種は同じ中央アジア

に起源をもつ可能性が示唆された。

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3.モンゴル産齧歯類から得られた中擬条虫科条虫の形態および 感染実験

  モ ン ゴ ル 産 の 藷 歯 類 5種 ( オ ナ ガ ホ ッ キ ョ ク ジ リ スSpeI‑moph ylus undulatus, 夕イリク ヤチネ ズミClcthrionomys ru′0CanUS,ブラントノヽ夕ネズミ Aカcr〇Cus6ra冂dCL二シモ ンゴルイ ツユビト ビネズ ミA〃acCag・a6u〃aぬ,ス ナネ ズミMe´・f〇nesu門gufcuJaCI´s)からAた50ce5めfdes属条虫の幼虫(テトラチリジウム)

が得 ら れ た。 ま ず ,ブ ラ ン トハ タ ネ ズ ミか ら 得 た幼 虫をスナ ネズミ 腹腔内へ 実験 的に 移 植 した と こ ろ, 移 植 後125日 に回 収 さ れた 幼 虫 の体 長 は 有意 に 増 加し て い た。 宿 主 種に よ り 虫体 長 に 有意 に 差 興 があ る こ とが 示 唆 され た 。 次に ,2頭の イ ヌ に こ れ ら 幼 虫 を 実 験 感 染 し た とこ ろ , 虫卵 排 泄 まで の 期 間は35日で , 成 虫が 回 収 さ れ た 。 こ の 成 虫 に も と づ き, ブ ラ ント ハ タ ネズ ミ 由 来の 幼 虫 は有 線 条 虫 Mcs〇ccsEofde5Jfnca[usであ ることが 示され た。自然感染していたニシモンゴルイ ツユ ピ ト ビネ ズ ミ から 得 ら れた 幼 虫 の ミト コ ン ドリ アCOI遺 伝 子の ヌ ク レオ チ ド のシーク エンス を調べた 。Mes〇ce5と 〇耐es属 幼虫は実 験感染に よって 得た成虫の 形態 学 的 観察 に よ って の み 可能 で あ っ たが ,DNAの 塩 基配 列 の 比較 に よ って も 同 定できる ものと 期待でき る。幼虫だけでなく,Mesoces亡0jdc5属成虫もア´レタイキ ヌゲネズ ミA〃〇c´.fceCuんscurCaCu5から得られたが,これはロシア産ナキウサギ から 報 告 され て い るも の に類似 し,AねsocesC〇fdes属 条虫の 自然終宿 主として の 齧歯類の役割と伝播経路について考察した。

4. ブ ラ ン ト ハ タ ネ ズ ミ A′ ′icrotus brandtiの 寄 生 蠕 虫 の 多 様 性 と 群 集 構 造, および宿 主個体 密度の年 次変化 との関係

  様 々 な 地 域 の ブ ラン ト ハ タネ ズ ミ (8個 体 群) に つ いて 調 査 を実 施 し ,15種 の 蠕 虫 を 検出 し た 。こ れ ら のう ち13種 が 新 宿主 記 録 で あっ た 。 内部 寄 生蠕 虫個体群 は,

盲 腸 寄 生 性 線 虫 , 腸 管寄 生 性 線虫 , 腸 管寄 生 性 条虫 , 組 織・ 体 腔 寄生 性 条 虫 の4群

( ギ ルド ) か ら構 成 さ れて い た 。今 回 検 出し た 蠕 虫 では , ブ ラン ト ハタネズ ミに対 し て 特 異 的 な 種 は1種の み と 考え ら れ た。 異 な る個 体 群 間お よ び 同一 個 体 群 の年 次 平 均 に お け る 種 の 豊 富さ(richness)は3‑9(平 均5.87) で あっ た 。 地理 的 に 近い 個 体群 間では寄 生虫相 が類似し ていた 。寄生虫 の感染率と感染虫体数(relative density) に は 宿主 の 性 差は認め られな かった。Catenotaeniaa fghanaの感 染虫体数 は宿主 の年 齢 に 依 存 し , 高 齢 な 個 体 ほ ど 多 数 の 虫 体 を 保 有し て い た。 季 節 変動 に つ い ては , Syphacia属 線 虫で 感 染 虫体 数 の 顕著 な 増 加 が7‑8月に 認 め られ た 。2つの 宿主個 体群 に お い て 宿 主 密 度 の 年 間 の 変 動 に 伴 う 蠕 虫 群 集 の 変 化 が 認 め ら れ た 。 特 に , Syphacia属 線 虫 の 相 対 密 度 は 宿 主 密 度 の 増 加 と正 比 例 し, 一 方 ,eafghanaは逆 比 例 し た。 蠕 虫 の多 様 性(diversity)は 年 により 異なり, ブラン トハタネ ズミの 密度と 逆 比 例し て い た。 密 度 が減 少 過 程に あ る ブラ ン ト ハ タネ ズ ミ 個体 群 における 各寄生 虫 の 相対 占 有 率を見る と,腸 管内寄生 性条虫 や組織・ 体腔寄生 性条虫 は増加し たが,

盲 腸 寄 生 性 線 虫 は 減 少 し た 。 以 上 の よ う に ブ ラン ト ハ タネ ズ ミ 個体 群 密 度 の変 化 はそ れらの寄 生蠕虫 群集に反 映され ていた。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

神谷 大泰司 岩熊 奥

正男 紀之 敏夫 祐三郎

     学位論文題名

Biodiversity of helminth parasites in IvIongolia      (モンゴルにおける寄生蠕虫類の生物多様性)

  寄生蠕虫は,50種(1,678頭)の哺孚ば蠶から条虫31,鉤頭虫2,線虫42および五口虫1種 の言ヤ礎がiそ録された。吸虫は検出されなかった。これらの蠕虫うち,21種は、モン

:カレにおける初幸1皓で,26種は、新宿主記録であった。10種の蠕虫は、貝旡知種とは一 致しなかった。

  今 回、ユキ ヒョウから得られたテニア科条虫は形態およびミトコンドリアDNAのチ トクロームcオキシダーゼサブユニット(以下、OOI)遺伝子について検討をおこなった ところ,Taeiiia向ぬィと同定された。類似する胞1う深虫とは虫体長,精巣数および虫卵 の大 きさで 区別され 、COI遺伝子の 塩基配列では384中34塩基(8.6%)が異なってい たことからZ kotlaIIiの独立種としての妥当性を支持するものであった。また、最尤法 による系統樹から丁めぬイはモン二nレにおける固有種で胞ガ犬条虫に最も近縁な種であ ることカミ明らかとなった。

  ブラントハタネズミ(以下、Mb)などから検出されたA鈕m鋤竝熔属条虫は、従来、感 染実験によって得た成虫の形態学的観察によってのみ可能であったが,餅JAの塩基配 列の比較によっても同定できることを明らかにした。

  様々な地域瑠個体醐の^仍について調査を実施し,15種の蠕虫を検出した。これら のう ち13種カ 漸宿主記録であった。今回検出した蠕虫では,M〕に対して特異的な種 は1種の みであった。異なる個体群間および同一個体群の年次平均における種の豊富 さ(1丑l111e蚪は3・9(平均5,87)であった。地理的に近い個体群間では寄生虫相カ洲し ていた。寄生虫の感染率と感染虫体数には宿主の1生差は認められなかった。感染虫体 数は 宿主の 年齢f熔があ り、季節 変動につ いては,S伽a幽属線虫で認められた。2つ の宿主個体群において宿主密度の年間の変動に伴う蠕虫群集の変化が認められた。蠕 虫の多様I生は年により異なり,M〕の密度と逆比例していた。密度が減少過程にある M〕個体群における各寄生虫の相対占有率を見ると,間接発育1生条虫は増加したが|直 接発育|嚠撒は減少した。これらのことから宿主M剛固体群の質ならびに量的変化が寄 生蠕虫の群集構造に影響することが明らかとなった。

本研究はモンゴルにおける寄生晞虫類の多様I生とその維持IFjjirlの一端を初めて明ら

(4)

      

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