博士(医学)張 莉 学位論文題名
造血幹細胞移植後の末梢血液細胞亜分画の分離と キメリズムの検討及びその臨床応用
学位論文内容の要旨
[ 緒 言 ]: 近 年 、骨髄 非破壊 的前処置 を用い た造血幹 細胞移 植などの 普及に伴 い、造 血 幹 細 胞 移植 後 の 再発や 拒絶な どの指標 として キメリズ ムの解 析の重要 性が増し ている 。 そ の 一 方で 、 全 血のキ メリズ ムの解析 だけで は満足な 結果が 得られな い事例が 時折散 見 さ れ る 。こ の た めCD3陽性 細 胞 やCD14陽性 細 胞など の分画 に分離し た細胞を 用いて キメ リ ズ ム の解 析 を 行う必 要性が 増してき ている 。しかし 、フ口 一サイ卜 メ卜リ― を応用 し た 分 離 法は 煩 雑 で時間 もかか り現実的 ではな ぃ。そこ で今回 は、比較 的簡便な 磁気ビ ー ズ (Magnetic cell sorting system)を 利用し、 その有 用性を検 討した 。次に、 実際の 臨 床症例に 応用し て、移植 後の細 胞亜分画 のキメ リズムと移植片対宿主病や拒絶反応と・
の関連を検討した。
[ 方法と結 果]: 健常人ド ナ一及 び患者よ り全血 を採取しFicoll ‑Hypaqueに て単核球に 分離し、3・ 10x 10fの細胞に抗体磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Germany)を加え、4℃で15 分 間 培 養し 、 洗 浄後、ImlのPBSパッ ファー を加え検 体とし た。次に 検体をカ ラムに 通し て 、 カ ラム に 付 着する 抗体陽 性細胞と カラム に付着し ない抗 体陰性細 胞を得た 。再度 他 の 種 類 の抗 体 磁 気ビ― ズを用 いて検体 を作成 し、抗体 磁気ビ ーズが陽 性な細胞 分画の 分 離 を 繰 り返 し た 。得ら れた細 胞の純度 をフ口 ―サイト メトリ ―(FACS Calibur,Becton Dickinson)に て計測し た。実 際の造血 幹細胞 移植臨床 症例22例 より75検体 を採取し、末 梢 血単核球 を抗体 磁気ビー ズ法に て各細胞 亜分画 に分離した。次にQIAmp DNA Blood mini kit(QIAGEN,Ge rmany)を用 いてDNAを抽出 し、4種類のmicrosattelite primerを用いて PCRを施行し、ABI310 Genetic analyzer(ABI PRISM310 Genetic Analyzer,Pelkin Elme「,
USA)を用 いて泳 動されるmicrosatteliteの大 きさとそ の量を 定量的に 解析し、 移植前の 患 者 と ドナ ― の 泳動 バ タ ―ン を 比 較 して キ メリ ズムの解 析を行 った。ま たStudent sf testを用いて統計学的解析を行った。
解 析 し た75検 体で は 全 て の細 胞 亜 分画 で80%以上の 純度が 得られた 。3〜10x10fの 範 囲 内 では 分 離 にかか る時間 や、分離 した細 胞の純度 には大 きな相違 は認めら れなっ か っ た 。 採血 後 の 検体提 出から 分離にか かる時 間の比較 ては、 分離まで の時間が 長い症 例 でCD56陽性細 胞の純度 に有意な低下を認めた(p=0.002)。CD14.15陽性細胞の分離を先に 行 っ た 方が 他 の 系列 (CD3陽 性 細 胞) の 分 離の 純度が良 好とな る傾向は あった が統計学 的 な有意差 はなか った。移 植後1ケ月で はtotal body irradiation(TBI)が含まれる前処 置 を 施 行し た 症 例のCD56陽 性 細 胞に 混 合 キメ ラが有 意(P=0.040)に多 〈認め られた。
一 方 で 、 移 植 後20月 、 移 植 後30月 ではTBIを施 行 され てい ない 症例 に混 合キ メラ が多 いf頃 向はあったが、有意差 を認めなかった。CD56陽性細胞分画が完全キメラの症例 に慢 性のGVHDが多〈(P=O.0014)、CD56陽性細胞分画に混合キメラを認める症例では、 拒絶 が有 意に 多〈 詔め ら れた (P=0.047) 。造 血の 回 復が 比較 的遅く、汎血球滅少が認 めら れた 症例 につ いて 、day 35に キメ リズ ムの 解析 を行 うとCD3陽性細胞に高度な混合 キメ ラが 認め られ た。 こ の結 果か ら軽 度の拒絶反応が生じていると考え、免疫抑制剤を 減量 した 。免 疫抑 制剤 を 減量 後、 造血 が順調に回復し、混合キメラからドナータイプの 完全 キ メ ラ に 移 行 し 、 day 104に 全 て の 系 統 で 完 全 な ド ナ ― 型 と な っ た 。
[ 考案 ]: 近年 、同 種造 血細 胞移 植後 の末 梢単 核 球に おけ るキ メリ ズム の変 化に つい て 解析 され るよ うに なっ てき た。 しか し、 移植 後 の混 合キ メラ が再 発や 拒絶 を意 味す る のか どう かは 、未 だ一 定の 見解 が得 られ てい な い。 同種 造血 細胞 移植 後の ヰメ リズ ム と再 発や 拒絶 との 相関 が諸 家の 報告 で必 ずし も 一致 して いな いの は、 末梢 血液 細胞 亜 分 画 で の キ メ リ ズ ム の 解 析 が 適 切 に 行 わ れ て い な い た め と 考 え ら れ た 。 そ こ で Magnetic cell sorting systemを 用い て、 末梢 血 単核 球を 細胞 亜分 画に 分離 しそ れそ れの キメ リズ ムを キ ャピ ラリ 一電 気泳 動法 で定 量的 に解 析し た。今回の検討では3〜10 x 10!の 範 囲 内 で は 分 離 に か かる 時間 や、 分離 し た細 胞の 純度 には 大き な相 違は 認め ら れ な か っ た 。 採 血 後 分 離 ま での 時間 経過 につ いて 解析 する と、CD3で は傾 向の みで あ った が、CD56では 明ら かに 時間 経過 の長 い検 体 程、 純度 が低 下し てい た。 これ は時 間 経 過 で 表 面 抗 原 の 発 現 が 低 下し たり 、時 間経 過が 長い 検体 ほど 細胞 のviabilityが 低 下し てい 〈こ とに よる もの と推 測さ れた が、 明 確な 機序 は不 明で ある 。ま た、 大型 の 細胞 を分 離し てか ら小 型の 細胞 を分 離し た方 が 純度 が高 いか どう かを 、CD14.15陽 性 細胞 の分 離の 有無 で判 定し たが 、CD14.15陽性 細胞 の分 離を 行っ た症 例が よ りCD3の 純 度 が 高 い 傾 向 は あ っ た も の の、 統計 学的 な有 意差 を認 めな かっ た。 今回 は3x105細 胞を 用い てま ずCD14.CD15陽 性細 胞を分離し、冫欠にC03陽性細胞、CD56陽性細胞と いう 順 序 で 細 胞 亜 分 画 を 分 離 す る と い う 手 順 で21症 例75検 体 の解 析を 施行 した 。前 処置 と キ メ リ ズ ム の 関 係 で は 移 植 後10月の 症例 では 混合 キメ ラがTBI施 行症 例に 多〈 認め ら れ た が 、 そ の 後 のTBI施 行 症例 に混 合キ メラ が 少な い傾 向が 認め られ るこ とか ら、
移 植 後10月 の 時 点 で は 症 例 毎 の 個 人 差 が 影 響 し や す い た めと 考え られ る。 現在 末梢 血 単 核 細 胞 の 混 合 キ メ ラ が 予 後 に 影 響 す る か ど う か は 議 論の ある とこ ろで ある が、
Tsutsumiら は全 血、 単核 球お よぴ 穎粒 球の キメ リ ズム を検 討し 、何 れか に混 合キ メラ を 認め る症 例に 、予 後不 良例 が多 く、 完全 キメ ラ に急 性のGVHDが多 いこ とを 示し てい る 。今 回の 検討 ではCD56陽性 細胞 分画 に混 合キ メ ラを 認め ると 、拒 絶症 例が 多い 可能 性 があ るこ とが 示さ れた 。一 方、CD56陽性 細胞 が ドナ ー型 の完 全キ メラ であ こと と慢 性GVHDに関 連が ある こと が示 され た。 この よう に 当科 では 末梢 血液 細胞 亜分 画毎 のキ メ リ ズ ム の 解 析 を 実 際 に 臨 床 応用 し、 免疫 抑制 剤の 投与 量やDLIの タイ ミン グの 決定 に利用し、良好な結果を挙げつっある 。
[結 語] :Magnetic cell sorting systemは簡 便で 短時 間で 施行でき、同―検体から3 系統 の末 梢血 液細 胞 亜分 画ま での 分離が可能であることを確認した。この方法によ って 造血細胞移植症例22例の末ヰ肖血液細胞亜分画のキメリズムを解析したところ、移キ直後の CD3陽 性細 胞だ けで なく 、CD56陽 性細 胞の キメ リ ズム が移 植片対宿主病や拒絶反応 にお いて重要な役割を果たしている可能性 が示唆された。また、このような末ヰ肖血液細胞亜 分画 の定 量的 キメ リ ズム の解 析は 造血幹細胞移植後に免疫抑制剤の増減、ドナーリ ンバ
球輸注(Donor lymphocyte infusion,DLI)の時期の決定、再発、拒絶の経過観察に応用 できるものと考えられた。
学位論文審査の要旨 主査 教授 今 村雅寛 副査 教授 小野江和則 副査 教授 浅 香正博
学 位 論 文 題 名