• 検索結果がありません。

博士(医学)呉 博韜 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(医学)呉 博韜 学位論文題名"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(医学)呉   博韜 学位論文題名

抗ダイコート抗体の作製とその法医学的応用      学位論文内容の要旨

緒   言

    ダイコー卜(DQ),パラコ一卜(PQ)などのビピ リジウム系除草剤はその除 草効率の高さから今日広く使われているが,これ らによる中毒例も多発して おり.問題になってきている,法医中毒学領域でのDQ. PQの検出法として従 来,比色法,ガスク口マ卜グラフィー.高速液体 ク口マ卜グラフィーなどが 報告されている.一方,PQに関してはラジオイムノアッセイやEnzyme―linked immunosorbent assay (ELISA)などの特異性の高い免疫測定法が開発されてい る が ,DQに つ い て は い まだ 特異 的な 抗 体を 作製 した とい う報 告が なぃ .     著者はDQのフェニルアラニン誘導体を担体タ ンバクに結合させた抗原を マウスに免疫することによって,抗DQモノク口ー ナル抗体を作製レた.確立 したDQのELISAにより中毒患者の血液中のDQ濃度を測定した.さらにその抗 体を用いてラットの肺.腎臓,および心臓におけ るDQの分布・蓄積に関する 免疫組織化学的研究を行なった.

材料と方法

  1.モノク口―ナル抗体の作製

    4一Amino−D,Lーphenylalanineをジアゾ化し,DQとcouplingレたのち,1− ethyl―3−(3−dimethylamlnopropyl)−carbodiimideHClを用いて担体タンパ

(2)

た. 免 疫 用 動物 にBALB/cマウ ス を 用 いた . 一 回 目の 免 疫 で は1 mgのDQ−BSAを l mlの 生 理 食塩 水 に 溶 解し , こ れ を等 量 の フ 口イ ン 卜 の 完全 ア ジ ュ バン 卜 と 乳化 し , マ ウス1匹 当 た り0. 25mg/0. 5mlを 腹 腔 内に 注 射 し た,4週間間 隔で 約5箇 月 間 抗 原 の み の 追 加 免 疫 を 続 け た . 最 終 免 疫 の3日 後 に 無 菌 操 作で マ ウ ス の 脾 細 胞 を 取 り だ レ ,P3Ul培 養 ミ エ口 一 マ 細 胞と5:1の 細 胞比 で ポ リ エ チ レ ン グ リ コ ー ル に よ る 細 胞 融 合 を 行 な っ た .ELISA法 で増 殖 し た コロ ニ ー を ス ク リ 二 ― ン グし , 陽 性 のハ イ ブ リ ドー マ を 選 んで そ の 培 養上 清 を 一 次抗 体と し た .

  2.DQのELISA

    免疫 原DQ―BSAと 同 じ 手法 で 調 製 したDQーgelatinを固 相化抗 原とし た,一 次 抗 体 に 希 釈 培 養 上 清 , 二 次 抗 体 にbiotinylated horse anti―mouseIgG. そ し てABC溶 液 にavidin−biotinylated alkalinephosphatase→complex溶液 を 使 用 し た . 一次 抗 体 添 加の 段 階 でDQ標 準 溶液 , あ る いは 試 料 を 加え 競 争 的 間 接ELISAを 用い た . 基 質液 に は フ ェニ ル リ ン 酸ニ ナ 卜 リ ウム 二 水 和 物と4ー アミ ノ ア ン チピ リ ン の 炭酸 緩 衝 溶 液を 用い .1.2% フェリ シアン 化カリウ ム水 溶 液 で 呈 色 反 応 停 止 後 , 波 長492nmで の 吸光 度 を 測 定し た , 一 方,DQの アナ 口グで あるd.d.―dipyridyl,PQ.morfamquat.diethyl PQおよび1―metyl―4← phenyl−pyridinium (MPP*),  l‑methyl−4ーphenyl−1,2.3,6−tetrahydropyri− dinium (MPTP)をELISA反 応 系 に 添 加 レ , そ の 交 差 反 応 率 を 求 め た .

  3.実 験 動 物 の臓 器 中 のDQの 分 布

    生 食 で 溶 解 し たdiquat dibromideを30mg/kgの割 合 で ラ ッ卜 の 尾 静 脈に 注 射 し た . 投 与 後3時 間 ,12時 間 ,24時 間 ,3日 お よび7日 に 肺 , 腎臓 あ よ び 心 臓 を 剔出 し た . 各組 織 を 切 りだ し 固 定 した . パ ラ フィ ン 切 片を作 製後,ABC 法 に よ る 免 疫 組 織 化学 染 色 を 行な っ た , 抗体 はELISA法 と 同 じ で,ABC複 合 物 はbiotin―streptavidin‐peroxidase complexの 溶液を .発色 基質はdiamino− benzidineを 用 い た . ま た , ヘ マ 卜 キ シ リ ン で 核 を 染 色 レ た .

159

(3)

結 果

  1.DQのELISA

    細胞融 合で得ら れた二株 の細胞の産生する抗体ははそれぞれIgMとIgGa であったが,ELISAでの吸光度の50X抑制は前者では0. 625Ltg.後者では0.230

‖gであったので中毒患者の血液中DQの測定および免疫組織化学染色には後者 を用いた,

    ELISAで直線的に抑制される範囲は0.05ー1.OLt9であった.抗体の交差反 応については,DQのアナ口グとの反応は全く認められなかった.また,正常 成人の血 清をこ のELISA反 応系に加えても検量線は変化せず,この抗体は正 常ヒト血清とも反応しないことがわかった.また.三名の中毒患者の血清か ら5.0ー32. OLtg/mlのDQが検出された.

  2.ラットの臓器中のDQの分布

    肺 では投与 後12時間からDQがmacrophageに取り込まれた像がみられ.時 間 経過とと もに陽 性細胞が 増加した ,腎臓 では投与後3時間で遠位尿細管お よび集合管にDQ陽性像がみられ,その他の部位にはDQは存在していなかった.

DQの 蓄積は12時 間〜24時間で最も強く.それ以降は弱まった,心臓について は 投与後3時間か ら7日まで陽 性像を 呈する少 数の心筋 細胞が 認められた.

考 察

  1. DQのELISA

(4)

で水溶液で流失する虞がある .どのような形で細胞成分と結合するかは明ら かではないが.DQとPQがメラ ニン色素に親和性を示し,そのメカニズムはイ オン性であるとの報告もある .本抗体の高い特異性がELISAによる交差反応 試験によって証明され,抗体 はDQのビピリジウム環状構造を識別するものと 考えられるが,細胞内でのDQの構造に関しては,組織染色されるのでそのビ ピリジウム環状構造がそのま ま保たれて細胞成分と結合レているものと考え られる,

    DQはヒ卜において主に消 化系臓器に毒性を示すと言われているが,本研 究において肺では投与後7日でも貪食されたDQが見られ, 肺もDQのtargetの ーつで肺線維化を起こす可能 性があることが明かとなった.また,DQが腎尿 細管に局在することを確認し た.陽性を呈する心筋細胞も認められたことか ら水溶性のDQが体内に吸収さ れ,心臓においてもある程度蓄積されることが 明らかになった, PQの心臓への蓄積が急死に関係しているという報告がされ ており,DQにもその可能性が あると考えられるが,今後の研究課題である.

    以上述べたように本抗体 が法医学および中毒学の領域において利用価値 の高しヽことが示されたもの と考えられる.

161

(5)

学位論文審査の要旨

学位論文題名

抗ダイコート抗体の作製とその法医学的応用

  農 薬の うち の除 草剤 ダイ コート(DQ)は今日広く使わ れており,これによ る中 毒例 が法 医学 的に も問 題 とな って いる .

  申請者の行ったのは,この 農薬に関する法医中毒学的研究であり,中毒の生 化学的診断法と生体内分布に 関するものである.

  すなわち,

  @DQに対 する モノ ク口 ーナ ル抗 体(mcAb)を作 製し ,@ それ を用 いて血清 中 のDQの 定 量 を 行 う ピLISAを 確 立 し , ◎DQの 体 内 分 布 ・ 蓄 積 に 関 し て 動物を用いて免疫組織化学的 に検討した,

  具体的には

一 巳

浩 勝

沢 崎

寺 高

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

清を その まま 試 料と してDQを 定量 でき るこ とを 明らかにした.そして,こ の ELI SAを 用い てDQ中 毒症 例の 血清 中DQを定 量し た.

  ◎ ラッ トにDQを静 注し ,経 時的 に臓 器を 剔出 し,作製したmcAbを用いて 組 織 中 のDQの 免 疫 組 織 化 学 染 色を 行い ,臓 器 内の 分布 ・蓄 積に つい て検 討し た.

  そ の結 果,

  @ELI SAの 感 度 はDQ50ngで あ り , 中 毒 症 例 の 血 清 中DQを 十 分 に 定 量 でき るこ とが 明 らか にな った .

  @ ラッ トの 肺 ・腎 ・心 につ いて ,DQの分 桁・ 蓄積を経時的に観察したと こ ろ, 肺で は投 与 後12hか らマクロファージに取り込まれてゆき,腎では投与 後 311か ら遠 位尿 細管 と集 合管 に次 第に 蓄積 さ れて ゆき ,心 筋で は投 与後3hか ら7目 までDQが 陽性 の心 筋細 胞が 認め られ た .

  以 上の よう に ,

  DQに 対 す るmcAbを 初 め て 作 製 し , そ れ を 用 い たELISAを 確 立 し て 血 清 中のDQを 直接 測 定で きる よう にな った .

  ま た,DQの 体 内分 布を 観察 し, 肺お よび 心筋 に対しても障害を起す可能 性 のあ るこ とを 推 測さ せる 結果 を得 るこ とが でき た.

  口 頭発 表時 の試 問に 際 し, 宮崎 勝巳 教授よりDQの化学的性質と体内分布の 関係 に関 する 質問 が, 小 山教 授よ りDQの肺・腎 における分布の必然性に関す る 質 問 が な さ れ た が ,申 請者 は概 ね適 切な 回 答を した もの と考 えら れる .   また副査の宮崎勝巳教授・小山教授に 学位論文に関して個別に試問を受け,

学位授与に値するとの判定がなされた.

  因 に,4年間 司法解剖に対し熱心に学習し,そ こで得られたテーマに関する 質の高い論文(参考論文)も発表してお り,法医学の種々の分野に関し.自立 し て 研 究 活 動 を 行 う に 必 要 な 能 力 ・ 学 識 が 養 わ れ た も の と 認 め ら れ る .

以上により,本論文は学位授与に値する・ものと判定される.

参照

関連したドキュメント

 肺臓は呼吸運動に関与する重要な臓器であるにも拘

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費 等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロス 1 が発生している。食品

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

第三に﹁文学的ファシズム﹂についてである︒これはディー

単に,南北を指す磁石くらいはあったのではないかと思

又肝臓では減少の傾向を示せるも推計学的には 有意の変化とは見倣されなかった.更に焦性葡

られてきている力:,その距離としての性質につ