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博士(医学)畠 真也 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)畠   真也 学位論文題名

色素性母斑および悪性黒色腫におけるPAX 遺伝子の発現 学位論文内容の要旨

    緒 言

  癌の 発生ならびに悪陞イ匕は,癌細胞による形態形成プログ ラムの部分的な借用現象と捉え る こと がで き る. そし て形 態形 成の マス ター 調節因子として働く遺伝子 群にはホメオボック ス 遺伝 子が 知 られ てい る. ホメ オボ ック ス遺 伝子は,転写因子をコード しており,その下位 に ある 多く の 標的 遺伝 子の 発現 を調 節し なが ら形態形成を進めていく, 近年,様々なホメオ ボック ス遺伝子の発現異常と,癌イ匕受びその後の悪性イ匕とを関連付けて考えられるようにな ってき た.

  PA遺 伝 子 もま たホ メ オボ ック ス遺 伝子 ファ ミリ ーに 属し ,シ ョウ ジョ ウバ ェ の分 節遺 伝 子 で あ るpairedのヒ ト ホモ ログ とし て同 定さ れた 遺伝 子で ある .ヒ トのPAX遺 伝子 は,9種 類(PAX1ー9)が 同定 さ れて おり ,ペ アー ドボ ック スと 呼ば れる 領域 を共 通に 持 って いる , こ の部 分は 特 定の 塩基 配列 を認 識す るDNA結合 ドメ イン (ペ アー ドド メイ ン)をコードして しヽる ,

  これ までPAX遺 伝子 の発現異常は,遺伝病の原因遺伝子という観点から 注目されてきたが,

癌 に お い て も 特 定 のPAX遺 伝 子 の 発 現 に 異 常 が み ら れ る こ と が 報 告 さ れ て い る .   本研 究で は ,9種類 のPAX遺伝 子のIrRNAレベ ルで の発 現量 を定 量す るシ ステムを確立し,

そ のシ ステ ム を用 いて ,神 経堤 由来 細胞 より 発生する良陸の色素陸母斑 と悪陛黒色腫との間 でPAX遺 伝 子 の発 現を 比較 し, 癌化 悪 陸化 にお け るPAX遺 伝子 の役 割に つい て 検討 した .     材 料と方法

1. 臨床 検体 :イ ンフ オー ムド .コ ンセ ン トの 得ら れた 患者 より 切除 され た悪陸黒色腫16検 体,色 素陸母斑5検体を対象とした .

2.ヒト悪陸黒色H罫田胞株:NIVIIV,A375M, MeWo 08161,AKI,G361, IVMAc,GAKを使用した.

4. 朋 艪 発 現 ベ ク タ ー の 細 胞 内 へ の 導 入 : リ ポ フ ェ ク シ ョ ン 法 に て 行 っ た . 5. RNA抽 出 とcDNA化 :ト ライ ゾー ルを 使用 して , 臨床 検体 から 全RNAを 抽出 し 、逆 転写 反 応を行 いcDNAを合成した,

6. 定量 的リ アル タイ ムRr‑PCR:鬥 灼遺 伝 子, ロ−actinにそれぞれのプ ライマー対を作成.

サ イバ ーグ リ ーン 螢光 色素 とABI PRエSM 7900HTを使用して定量的冊ーPCRを行った.内因性 コ ント ロー ル 遺伝 子(ロ一actiめの発現量で ,標的胤X遺伝子の発現量を 補正した相対比を用 いた.

7.細胞増殖陸・の検討:悪陸黒色 腫細胞(C8161およぴ胎Wb) についてMnアッセイ変法を行っ た.

& 細 胞 周 期 の 解 析 :propidiumiodide染 色 後 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー に て 検 討 し た .

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9. DNA合 成 能の解 析:BrdUを取 り込 ませ ,抗BrdU抗体 を用 いたELISAで定 量し た.

10.脱DNAメチル化の有無の解析:5一azacY tidineで処理し,脱DNAメチル化した細胞より全 RNAを 抽 出 し , リ ア ル タ イ ム 野 ・PCR法 を 用 い てPAX4の 発 現 量 を 測 定 し た .     結果および考察

  本研究では,癌化ならびに悪幽匕は癌細胞による形態形成プログラムの部分的な借用現象 と捉え,形態形成遺伝子のマスター調節遺伝子のひとつである9種類のPAX遺伝子のmRNA レベルでの発現量を,色素陸母斑と悪陸黒色腫間で比較した.その結果,色素陸母斑組織は PAX3,PAX4およびPAr19遺伝子を発現しており,悪陸黒色腫ではPAX4およびPAA9の発現が色 素陸母斑に比べ低下していることを見い出した.

  これまでの癌におけるPAX遺伝子の役割に関する報告のほとんどは,PAX遺伝子が癌化あ るいは悪陸f匕に対して促進的に作用することを述べている,これらの報告はすべてPAX遺伝 子が癌遺伝子としての役割を担っていることを示唆するものである,一方,PAX遺伝子が癌 抑制遺伝子的に働くことを示した報告としては,PA}2および鬥闢によるウィルムス腫瘍の 癌 抑 制 遺 伝 子 で あ る wriの 転 写 潛 陞 イ 匕 が 論 じ ら れ て い る だ け で あ る .   鰯艪およびPAX9遺伝子は,神経堤由来の正常細胞である色素性母斑では高い発現がみら れ,神経堤由来の悪性腫瘍である悪陸黒色腫組織および培養細胞株では著しい発現の低下が みられたことから,両PAK遺伝子は悪陸黒色腫においては癌抑制遺伝子として働いている可 能性を考えた.そこで,本研究では朋艪遺伝子に焦点を当て,この遺伝子の悪性黒色腫に おける発現低下あるいは消失の生物学的意義を明らかにするために,悪性黒色腫細胞に 朋賂遺伝子を強制発現させ,その生物学的性状の変化にっいて観察した.まず悪性黒色腫 細胞株08161およびMeWoともにPAX4を過剰発現させると,増殖能が低下することが明らか となった.さらにPI染色後のフローサイトメトリー解析から,PAX4の過乗嵶≦現は細胞周期 を∞/Gl期で停止させている可能陸が示唆された.また朋魁過乗嶢現によりDNA合成能が低 下した.これはおそらくGl期からS期への移行が妨げられた結果と考えられる.これらの 事実は,PAX4が悪陸黒色腫において癌抑制遺伝子として働きうることを強く示唆している.

  Glか らS期への移行には,p53とRBの2っの経路が関与することが知られていが,本実 験に使用した細胞株のうちMeWoは,変異型p53遺伝子のみを有しており,p53経路による細 胞周期の制御機構は破綻していると考えられる,両細胞株ともPAX4過剰発現によって同様 の増殖抑制およびGO/G1アレストを示したことから,朋艪による細胞周期の停止にはp53経 路ではなくRB経路が関与していると考えられる.また,転写因子としてではなく,朋炮蛋 白がRr3経路に関わる分子の機能を直接修飾している可育旨陸も考えられる.今後朋瓰の標的 遺伝子の探索を行う予定である.

  そして【職の脱メチル化剤である5一Aza処理によって両細胞株ともに餓忍の発現が誘導さ れたことから,おそらく悪陸黒色腫における鬥魁遺伝子の発現低下はDNAのメチル化に起 因するものと考えられた.今後,朋艪遺伝子のメチル化部位を含め悪性黒色腫における 鬥 艪 遺 伝 子 の サ イ レ ン シ ン グ 機 序 の 詳 細 に つ い て も 角 翠 析 を 進 め て い き た ぃ .     結語

  悪陸黒色腫細織(16例),色素陸母斑組織(5例)およぴ悪陸黒色腫細胞株(8株)で9 種のPAX遺伝子の発現を解析した.色素陸母斑は,9種のPAX遺伝子のうち朋焔,4およぴ9 を発現していた.一方,悪性黒色腫細織ならぴに細胞株の」pAX4およぴ9の発現は,色素陸 母斑に比べ有意に低下していた.他のPAX遺伝子の発現は,全てにおいてなかった,PAX4過

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剰発現細胞の増殖は,対照細胞に比べ有意に抑制されることが明らかとなった,更に,翻瓰 過乗幌現細胞ではGO/G1期にある細胞の割合が増加していた(Glアレスト).よって朋忍 の発現の低下が,悪性黒色腫の細胞増殖を促進している可能陸が示唆された.また,悪陸黒 色腫におけるPAX4遺伝子の発現低下の原因としてDNAのメチル化の可肯旨lltが示唆された.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

色素性母斑および悪性黒色腫におけるPAX 遺伝子の発現

  癌の発生ならぴに悪幽匕は,癌細胞による形態形成プログラムの部分的な借用現象と捉え ることができる.そして形態形成のマスター調節因子として働く遺伝子群にはホメオボック ス遺伝子が知られている.ホメオボックス遺伝子は,転写因子をコードしており,その下位 にある多くの標的遺伝子の発現を調節しながら形態形成を進めていく.近年,様々なホメオ ボックス遺伝子の発現異常と,癌化及ぴその後の悪陸化とを関連付けて考えられるようにな ってきた.

  PAX遺伝子もまたホメオポックス遺伝子ファミリーに属し,ショウジョウバェの分節遺伝 子であるpairedのヒトホモログとして同定された遺伝子である.ヒトのPAX獣云子は,9種 類(PAXlv‑9)が同定されており,ベアードボックスと呼ばれる領域を共通に持っている・

この部分は特定の塩基配列を認識するDNA結合ドメイン(ペアードドメイン)をコードして いる.

  本研究では,9種類のPAX遺伝子のmRNAレベルでの発現量を定量するシステムを確立し,

そのシステムを用いて,神経堤由来細胞より発生する良性の色素陸母斑と悪性黒包腫との間 でPAX遺伝子の発現を比較し,癌化・悪陸化におけるPAX遺伝子の役割にっいて検討した,

  その結果,色素性母斑細織は」pA}B,朋艪およぴ鬥灼遺伝子を発現しており,悪陸黒色腫 で はPAX4お よび 」pA}r9の発 現が色素 陸母斑に 比べ低下 している ことを見い 出した,

  このことから,両PAX遺伝子は悪性黒色腫においては癌抑制遺伝子として働いている可能 性を考えた,そこで,本研究では朋艪遺伝子に焦点を当て,この遺伝子の悪性黒色腫にお ける発現低下あるいは消失の生物学的意義を明らかにするために,悪性黒色腫細胞に鬥鰯 遺伝子を強制発現させ,その生物学的陸状の変化について観察した.まず悪陸黒色腫細胞株 08161およびMewoともに鬥凧を過剰発現させると,増殖能が低下することが明らかとなっ た .さらにPI染色後の フローサ イトメトリ ー解析か ら,朋魁 の過剰発 現は細胞周期を G0/G1期で停止させている可能陸が示唆された.また餓艪過剰発現により【継合成能が低下 した,これはおそらくG1期からS期への移行が妨げられた結果と考えられる,これらの事 実は,鯔1が悪陸黒色腫において癌抑制遺伝子として働きうることを強く示唆している.

  G1か らS期への 移行には ,p53とRBの2つ の経路が関与することが知られていが,本実 験に使用した細胞株のうちM6woは,変異型p53遺伝子のみを有しており,p53経路による細

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胞周期の制御機溝は破綻していると考えられる,両細胞株ともPAX4過剰発現によって同様 の増殖抑制およぴGO/G1アレストを示したことから,朋賂による細胞周期の停止にはp53経 路ではなくRB経路が関与していると考えられる.また,転写因子としてではなく,PAX4蛋 白がRB経路に関わる分子の機能を直接修飾している可能陸も考えられる.今後PAX4の標的 遺伝子の探索を行う予定である.

  そしてDNAの脱メチル化剤である5・Aza処理によって両細胞株ともにPAX4の発現が誘導さ れたことから,おそらく悪性黒色腫におけるPAX4遺伝子の発現低下はDNAのメチル化に起 因 するもの と考えら れた.今後,剛賂遺伝子のメチル化部位を含め悪陸黒色腫における PAX4遺 伝 子 の サ イ レ ン シ ン グ 機 序 の 詳 細 に っ い て も 解 析 を 進 め て い き た い .   公開発表に当たり、副査近藤哲教授より、1)色素陸母斑から悪陸黒色腫が発生するのか、

2)対照組織として色素性母斑で良いのか、3) PAX9の検討はしたのかについて質問があった。

次いで、副査守内哲也教授より1) PAX遺伝子が下流の癌遺伝子に影響を及ばす報告はある のか、2) RB経路とPAX4について何か検討しているのか、3)PAX9の今後の研究の進め方に ついて質問があった。次に主査山本有平教授より、1) PAX3が悪陸黒色腫の生存に必要とは どういうことか、2)PAX遺伝子と予後、病期の関係はあるのか、3)この研究の臨床応用 についての質問とコメントがあった。いずれの質問に対しても申請者は自らの研究内容と文 献を引用し、妥当な回答をした。

  この論文は、PAX4遺伝子が悪陸黒色腫において癌抑制遺伝子として働いていることをは じめて明らかにした点で高く評価され、今後悪陸黒色腫の病態の解明や新たな治療法の開発 にっながることが期待される。

  審査員一同、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や所得単位なども併せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受け る のに 充 分 な資 格 を有 す る もの と 判 定し た 。

参照

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