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博士(医学)張 秀茹 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)張   秀茹 学位論文題名

ヒト 神 経芽 腫細胞 GOTO の分化 における     ‑I 〇 X 遺 伝子 の 役割

学位論文内容の要旨

  【目 的】癌に おける組 織構築 の乱れや転移・浸潤あるいは胎児性蛋白の産生などは,

癌細胞 による 形態形成 プログ ラムの部 分的な 借用現象 と捉える ことが できる. 実際,

形 態形 成 の マス タ ー 調 節因 子 と して 働 くH〇X遺 伝子 の 発現異 常が,乳 癌,腎癌 ,肺 癌,大 腸癌, 前立腺癌 ,悪性 黒色腫な ど多く の癌にお いて報告 されて きている .さら に ,特 定 のHく ぱ 遺 伝 子の 発 現異常が ,癌細 胞の増殖 性,運動 性,浸 潤性,転 移性な どに影 響を及 ぽすこと も知ら れている .これ らの事実 は,H〇X遺伝子の 発現異常 が,

癌 の 発 生 や 癌 細 胞 の 悪 性 形 質 の 発 現 に 深 く 関 与 す る こ と を 示 唆 し て い る .   神経 芽細胞腫 は,小児 に多い 癌のひと つであ り,その 悪性度 は肝転移 などを起 こす ものか ら自然 退縮して しまう ものまで 多様で ある.ま た,神経 芽細胞 腫由来の 培養株 は,特 定の培 養条件下 で神経 細胞様あ るいは シュワン 細胞様細 胞へ分 化するこ とが知 られて いる. 本研究で は,癌 化あるい は癌の 悪性化と は方向性 の異な る癌細胞 の分化 と いう 現 象 にH〇X遺 伝子 が 関 与し て い るの か を 明ら か にする ために, ヒト神経 芽腫 細 胞 を 分 化 誘 導 剤 で 処 理 し , HOX遺 伝 子 の 発 現 変 化 に つ い て 調 べ た .   【方法および結果】ヒト神経芽腫G〇1、o細胞を分化誘導剤5−bromo−2 ーdeoxyuridine   (BrdU) あ る い はdibutyryl cyclic AMP (dbcWP) で 処理 す る と, そ れ ぞれ シ ュ ワ ン細 胞 様 ある い は 神 経様 細 胞 へ分 化 し た, す な わち ,BrdUで 処理する と,扁 平で やや大 型の多 角形を呈 するも のが多く 観察さ れ,シュ ワン細胞 のマー カーとな る遺伝 子(Sユ〇〇口およびm駅虹加basjcpf・〇亡ejn(M.B」P))の発現が亢進した.一方,dbQ圸dP で処理 すると ,細長い 細胞突 起を伸ば した紡 錘形を呈 した細胞 が多く なり,神 経細胞 のマー カーと なるneur〇 .n‐ .specmcen(ぬse(NSE)遺伝子の発現が亢進した,シュ ワ ン細 胞 様 ある い は 神 経様 細 胞 への 分 化 に伴 うH〇X遺 伝子の 発現変化 をりアル タイ ムIて 卜PCR法 で 調 べ た と こ ろ ,39個 のH〇X遺 伝子 の う ち, シ ュ ワ ン細 胞 様 細胞 へ の 分 化 に 際 し て はH0齢6お よ びH〇XCユ ヱの 発 現 亢進 が み られ た . 一 方, 神 経 様細 胞 への 分 化 に際 し て は ,HI〇XC6,H〇XCi〇 お よ びH〔 瀦Cヱ ヱ の 発 現が 亢 進 した .   HOXC6遺 伝 子 の 転 写 産 物 に は2つ の アイ ソ フ オー ム の 存在 が 知 ら れて い る ,そ こ で ,シ ュ ワ ン細 胞 様 あ るい は 神 経様 細 胞 への 分 化 に伴 い発現 が亢進 したH〇XC6のア イ ソ フ オ ー ム を 同 定 す る た めに ,RT―duplexPCRを 行っ た . そ の結 果 ,G〇TO細胞 はH〇XC6の 両 ア イ ソフ オ ー ムを 発 現 して お り ,シ ュ ワン 細胞様 細胞への 分化に 際し て はisoform1の 発 現 が 亢 進 し, 一 方 ,神 経 様 細胞 へ の 分化 に 際 し てはisoform2の 発現が亢進することが明らかとなった,

  分 化 誘 導剤 処 理 に よっ て 発 現の 亢 進 したH〇X遺 伝 子 が,GOT〇 細 胞 の シュ ワ ン 細 胞 様あ る い は神 経 様 細 胞へ の 分 化に 関 与 して い る のか 否かを 明らか にするた めに,

H(班C6ある い はH,〇XCn遺 伝 子 をGaI、o細 胞 に強 制 発 現さ せ , 分 化マ ー カ ーで あ     ―653―

(2)

るNSE S100汐 お よ びMBPの 発 現 変 化 を 調 べ た .HOXC6isoform1.H〇XC6 isoform 2お よ びH〇XC1ヱ の 発 現 ベ ク タ ー をGOT〇 細 胞 に 導 入 し ,48時 間 後 にRNAを 抽 出 し ,NSE,S100ロ お よ びMBPの 発 現 をRT‑duplexPCR法 で 解 析 し た . 各 発 現 ベ ク タ ーを 単独 で導 入し た際 にはH〇XC1ヱ発 現ベ クタ ー導 入細 胞で のみS100ロ遺 伝子 の 弱 い 発 現 が 認 め ら れ た . 一 方 ,HOXC1ユ とH〇XC6 isoform1あ る い はH〇XC6 isoform2と を 共 導 入 す る と ,H〇XC11とH〇XC6 isoform1の 両 方 を 導 入 し た 細 胞 でS10〇 ロ遺 伝子 の高 い発 現が 認め られ た. 次に ,H〇XC6お よびHOXC1ユ によ るSl00 ロ遺伝子の転写活性化に必要な転写制御領域を調べるた めに,転写開始点の上流―1014 か ら 十71の プ ロ モ ー タ ー 領 域 を含 むDNA断片 をル シフ ェラ ーゼ 遺伝 子の 上流 に組 み 込ん だレ ポー ター プラ スミ ドpGL3/basicーS1〇〇 汐‑(‑1014〜十71)をG〇To細胞に導 入 し た . 同 時 にHC次C6isoform1,H〇XC6isoform2,H( : 次Cuの 発 現 プ ラ ス ミ ドあ るい はそ れら のコ ント ロー ルプラスミド も導入し,ルシフェラーゼ活性を測定し た , そ の 結 果 ,HIQXC6isoform1とH( : ズCnを 共 に 発 現 さ せ たG01、o細 胞 は , コ ント ロー ルプ ラス ミド 導入 細胞 の約6倍のルシフェラーゼ活性を示した.H〇XCヱユの みを ,あ るい はH.〇X・ciヱとHI〇瓢苑isoform2とを共発現させたG01丶o細胞はコン ト 口 ー ル に 比 ベ , 約4倍 の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 示 し た . ま た ,H〇XC6isoform2 のみ を発 現さ せたG〇T〇細 胞の ルシフェラー ゼ活性は,コン卜ロール細胞と同じであ っ たが ,H〇 .XC6isoform1の み を発 現さ せた 場合 には ,コ ント ロー ル細 胞の 約2.5 倍であった.

【 考 察 】 以 上 の 結 果 は ,GOTO細 胞 を 分 化 誘 導 剤BrdUあ る い はdba蝋Pで 処 理 す ると ,それぞれシ ュワン細胞様あるしゝは神経様細胞に分化すること,な らびにHOXC6 isoform1とH〇XCヱ ヱ の 発 現 亢 進がG01、o細 胞の シュ ワン 細胞 様細 胞へ の分 化, 少 なくともそのマーカーとなるSユ〇〇汐遺伝子の発現誘導に関与することを強く示唆して い る , さ ら に , ル シ フ ェ ラ ー ゼを 利用 した レポ ータ ーア ッ セイ によ って ,HOXC6あ るいはH〔:)XCユヱによるSヱ〇〇ロ遺伝子の転写活性化に関わる制御領域がSヱ〇〇ロ遺伝 子の 転写 開始 点か らそ の上 流1,014bpの領域 内にあることを明らかにした,このこと は,H〇XC6あ るい はH〇XCヱ ユがSユ 〇〇p遺伝 子に 対し てプ ロモーター活性を有する こ と を 示 唆 し て い る .Hく 次C6あ る い はH〇XCu遺 伝 子 を 導 入 し たGOT〇 細 胞 の 内 在性Sユ 〇〇 ロ遺 伝子 の発 現 を調 べた 実験 と異 なり ,レ ポー ターアッセイではH〇XC6 isoform1のみ の強 制発 現で もSユ 〇〇0遺伝子 に対するプ口モーター活性が見い出され た . ま た 同 様 の こ と がH〇XC6isoform2とH〇XCnと を 共 発 現 さ せ たGOTO細 胞 でも 認め られ た. これ らの 矛盾 点は,それぞ れのアッセイ感度の違いによるのかもし れ な い . あ る い はSユ 〇 〇p遺 伝子 の―1014から 十71以外 の 領域 にHC!XC6isoform1 単 独 に よ る プ ロ モ ー タ ー 活 性 を 抑 制 す る 部 位 やH〇XCuに よる プロ モー ター 活性 を 抑制するH〇XC6isoform2結合部位があるのかもしれない,

  dba蝋P処 理 に よ る 神 経 様 細 胞 へ の 分 化 に 伴 い 発 現 の 亢 進 し たH〇XC6isoform2 お よ びHOXCユ ユ をGOTo細 胞 に 強 制 発 現 さ せ て も 神 経 細 胞 の マ ー カ ー で あ るNS・E 遺 伝 子 の 発 現 に 変 化 は み ら れ なか った ,dbcAMP処理 によ っ てH〇XCユ〇 の発 現も 亢 進 す る こ と か ら ,N.SEの 発 現 に は 両HOX遺 伝 子 に 加 えH〇XCi〇の 発現 も必 要で あ るの かも しれ ない .ま た, これ らのHC)X遺伝子は,NSEの発現には関与しておらず,

他の 神経 様細 胞の 分化 形質 の発 現に何らかの 役割を演じている可能性も考えられる.

654 ‑

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教 授    守内哲 也 副査    教 授    葛巻    暹 副査   教授   佐々木文章

学 位 論 文 題 名

ヒト 神 経 芽腫細胞 GOTO の分 化におけ る     H 〇 X 遺伝 子 の 役割

  癌における組織構築の乱れや転移・浸潤あるいは癌胎児性蛋白の産生などは,癌細胞に よる形態形成プログラムの部分的な借用現象と捉えることができる.実際,形態形成のマ ス ター調節 因子と して働くHOX遺伝子の発現異常が,乳癌,腎癌,肺癌,大腸癌,前立腺 癌 ,悪性黒 色腫な ど多くの癌において報告されてきている.これらの事実は,HOX遺伝子 の発現異常が癌の発生や癌細胞の悪性形質の発現に深く関与することを示唆している,神 経芽細胞腫は小児に多い癌のひとっであり,その悪性度は肝転移などを起こすものから自 然退縮してしまうものまで多様である,また,神経芽細胞腫由来の培養株は,特定の培養 条件下で神経細胞様あるいはシュワン細胞様細胞へ分化することが知られている,本研究 で は,癌化 あるい は癌の悪性化とは方向性の異なる癌細胞の分化という現象にHOX遺伝子 が 関与して いるの かを明らかにするため,ヒト神経芽腫細胞を分化誘導剤で処理してHOX 遺伝子の発現変化を調べた,

  ヒト神経芽腫GOTO細胞を分化誘導剤5ーbromo―2 ―deoxyuridine (BrdU)で処理すると扁 平でやや大型の多角形を呈するものが多く観察され,シュワン細胞のマーカーとなる遺伝 子S100タおよびmyelin basic protein (MBP)の発現が亢進した.一方,dibutyryl cyclic AMP (dbcAMP)で処理すると,細長い細胞突起を伸ばした紡錘形を呈した細胞が多くなり,

神 経細胞の マーカ ーとなるneuron‑specific enolase (NSE)遺伝子 の発現が亢進した.

シ ュワン細 胞様あ るいは神 経様細胞 への分 化に伴うHOX遺 伝子の発 現変化をmRNAレベル で調べたところ,39個のHOX遺伝子のうち,シュワン細胞様細胞への分化に際してはHOXC6 isoform1お よびHOXC11の 発現亢 進がみら れた.ー方,神経様細胞への分化に際しては,

HOXC6 isoform2,HOXC10およびHOX C1の発現 が亢進 した.次 に,分化 誘導剤 処理によ っ て発現の 亢進し たHOX遺 伝子を強 制的にGOTO細胞に 発現させ ,分化マーカー遺伝子の 発 現変化を 解析し た.その結果,HOX CljとHOXC6 isoformlの両方を導入した細胞では,

S100汐遺伝子の高い発現が認められた.さらに,両HOX遺伝子を導入したGOTO細胞は,S100 タ遺伝子に対する高いプロモーター活性を有することがルシフェラーゼを利用したレポー タ ーアッセ イによ って明ら かとなっ た.以 上の結果は,GOTO細胞を分化誘導剤BrdUある いはdbcAMPで処理すると,それぞれシュワン細胞様あるいは神経様細胞に分化すること,

ならびに〃D.ーKC6 isoform1とHOX C1の発現亢進がGOTO細胞のシュワン細胞様細胞への分     ー655―

(4)

化,少なくともそのマーカーとなるS100ロ遺伝子の発現誘導に関与することを強く示唆 している.

  公開発表において,副査の葛巻暹教授 から,1)分化誘導剤処理によって発現の低下し たHOX遺伝 子の 有無 ,2)分化に伴う細胞増殖性の変化,および3)国内外における神経 芽腫細胞株の分化とHOX遺伝子の発現を検討した報告例の有無についての質問があった.

続いて,副査の佐々木文章教授より,1)IMR32細胞など神経芽腫細胞の分化実験にしば しば用いられる細胞株を対象としなかっ た理由,2)HOX遺伝子の強制発現による形態学 的変 化,3)神 経芽 細胞腫の悪性度のマーカーとな るN‑myc遺伝子の発現,およ び4)神 経芽細胞腫の臨床検体におけるHOX遺伝子の発現解析についての質問があった.最後に,

主査の守内哲也教授から,分化誘導剤で処理した実験では田〇〇ロ,MBPおよぴNSE遺伝子 の発現が亢進したが,HOX遺伝子導入実験ではS100ロ遺伝子のみの発現亢進がみられた理 由に関して質問があった.いずれの質問に対しても,申請者は主旨をよく理解し自らの実 験データと文献的考察を交えて適切な回 答を行った.

  この論文は,ヒト神経芽細胞腫の分化に関与する遺伝子を明らかにした点で高く評価さ れ,今後この成果は神経芽細胞腫の分化メカニズムの解明に大いに役立っことが期待され る.

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ 申請 者が 博士 (医 学 )の 学位 を受 ける のに充 分な資格を有するものと判定した.

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参照

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