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博士(医学)原 豊道 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)原   豊道 学位論文題名

CD40 分子の信号伝達に重要な細胞内領域の解析

学位論文内容の要旨

  CD40からの信号はB細胞の分化,増殖,免疫グロブリンクラススイッチ,細胞凝集,

アポトーシスの抑制などに重要な役割を演じている。CD40はNerve Growth Factor (NGF) /Tumor Necrosis Factor(TNF)レセプターファミリーに属し,その細胞内領域は 62アミノ酸からなり,信号伝達に関わるような酵素に類似する部分は存在しない。

しかしFas ‑PTNFレセプターI(TNFRI)の細胞内領域と相同性を示す領域が存在する。

CD40の細胞内領域の欠損ミュータントや234番目のアミノ酸ポイントミューテーショ ンを用いた解析では細胞内に信号を伝達できないことが報告されている。また,Fa sやTNFRIの 細胞 内保存 領域も信号伝達に重要であり,FasリガンドやTNFの結合に より細胞死の信号を伝達するため Death Domain と呼ばれる。B細胞を抗CD40抗 体で刺激するとりnキナーゼやPI‑3キナーゼの活陞イヒをはじめ,多くの細胞内夕ンパ クのりン酸イ匕カ混られる。またAPー1,Nuclear‑Factor‑Kappa‑B (NF‑kB)等の転 写因子も活I生化される。さらに最近TNFレセプターファミリー結合分子としてクロ ーニングされたTNF‑Receptor‑Family‑Associating‑Factor (TRAF)2およO‑TRAF3カヾ CD40の細胞内領域に結合し,それぞれNF‑kBの活陸化とCD23の発現増強に重要であ ることが報告された。

  マウス未熟B細胞株WEHI231は細胞表面IgMの架橋によルアポトーシスに陥るが,

この細胞死はCD40の共刺激により回避される。この実験モデルを用いて我々はCD40 の信号伝達機構を詳細に解析するため,細胞内領域を末端から約10アミノ酸ずつ欠損 さ せ た4っ のヒ トCD40のミ ュータ ン卜cDNAを 構築 し,WEHI231細胞 株に形 質導 入 した。それらの形質導入株を用む、て解析した結果,(1)CD40の細胞内保存領域の 10アミノ酸配列が抗IgM抗体で誘導されるWEHI231細胞のアポトーシスの回避に重要 であ ること カ畔U明し た。(2)また この 領域は 抗CD40抗体 で誘導されるMAPキナー ゼの活 陞イヒにも重要であり,(3)TRAF2とTRAF3の結合にもこの領域カ泌要である ことが判明した。

  CD40のシグナルはB細胞の表面IgM架橋によるアポトーシスをブ口ックすることが 知 ら れて い る。 一方 、成熟B細胞 株M12ではCD40刺 激に より増 殖抑 制を起 こし , CD40の細胞内領域の234番目のスレオニン(Thr234)カ¥'CD40刺激によるM12(マウス B細胞株)及びEL4(マウス胸腺腫細胞株)での増殖抑制に重要であることが報告さ れて いる。 同じ マウスB細胞 株で あるM12とWEHI231でCD40刺激後の反応が異なる のぼ 陸質カ 溟な るため と考 えられ るが ,その 差異 が分化 段階(M12は成熟B細胞,

WEHI231は未熟B細胞)の違いからくるものなのか,何らかの遺伝子変異によるもの なのかは明らかになっていない。また,最近CD40の細胞内領域の17アミノ酸酉己歹U

(TIMct;PVQETLHGcoPVTQEDG)にTRAF2,TRAF3カ鎌吉合でき     ‑ 240―

(2)

る 事カ嘩 艮告 され た。 加えてTRAF3のCD40への 結合にはThr23゜が重要で,その結合が CD40刺激 後のCD23発現 増強に 重要 であ るこ とカ滓 長告 され ている 。今 回の 実験でもT IMctと9ア ミ ノ 酸 が オ ー ノ く ー ラ ッ プ す る10ア ミ ノ 酸 配 列 カ1TRAF2とTRAF3の 結 合 ,MAPキ ナ ー ゼ活 性 の 増 強 , そ し てIgM刺 激で 誘 導 さ れ る 細 胞 死 の 抑 制 に重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。TIMctに は2つ の ス レ オ ニ ン(Thr234, Thr

242)が含 まれ てお り, それら のり ン酸 化カ¥TRAF2,3の結 合に 重要 と考 えらた 。今回 得 ら れ た 結 果 か ら Thr24゜ を 含 む TIMctの ア ミ ノ 酸 配 列 (QPVTQEDGKE) は存在しなくてもTRAF2,3は結合することができ,MAPキナーゼ活 陞三イヒ,細胞死の 抑 制など にっ ながる信号を伝達できることが直接証明された。また,最近His23°以下 の 欠 損 型CD40分 子 はCD40刺 激 に よ るCH12LX細 胞 株 のIgM分 泌 は 誘 導 で き る が , M12. 4.1細胞 株の 細胞 凝集と 細胞 表面 分子 の発現増強は誘導できないとの結果が示さ れ ,これ らの 結果はI'hr23゜とそれを含む下流の領域から少なくとも2っの信号伝達畿 構 が 存 在 す る こ と を示 唆 し てい る。 この 事実に 関し ,CD40ノ ックア ウト マウ スに 変 異 型 ヒ トCD40を 再導 入 し た 系 で ,Igク ラ ス スイ ッ チ に はThr23゜ が 重 要 であ り ,I gMの分泌 や増 殖反 応の 一部はThr 202以下 のア ミノ 酸がな くて も誘 導で きるこ とも報 告 さ れ て い る 。 さ ら に ,TRAF5及 び TRAF6が そ れ ぞ れthr23゜ を 含 むCD40分 子 とThr23゜を 含まないCD40分子に結合し,両者ともNF一kBの活 陞三イヒに関与して いることも報告された。これらの結果を考えあわせると今回我々カ嘩艮告した10アミノ 酸 部 分 に はrRAF2,3,5が 結 合 で き る こ と が 示 唆 さ れ , 今 回 調 べ たCD40に よ る IgM依 存 性 ア ポ ト ーシ ス 回 避 に関 与して いる 可能 性カ 滴い。 また ,TRAF6は10アミ ノ 酸 配列を 持た ない ミュ 一夕ン トに も結 合で きるこ とが 示唆 される が,WEHI231細胞で はMAPキ ナ ー ゼ の 活‐ 陸 化 及 びア ポトー シス の回 避が 起こら ない ため ,1)今 回用 い たWEHI231細 胞 で はTRAF6単 独 でMAPキ ナ ー ゼ 活 陞イ ヒ 、 細 胞 死の抑 制な どを 誘導 で き な い か ,2) こ のWEHI231細 胞 に はTRAF6そ の もの が 発 現 し ていな いこ とカ 嗹テ え られる。

  また, 今回 の実 験よ りCD40から の信 号はIgM刺激 で誘導 され る細 胞死 を抑制 すると 同 時にIgM刺激 で誘導 され たJNK活 ・陸 化の 相加的増強をもたらすことカ畔IJ明した。

こ の こ と はJNK活 陸の 相 加 的 上 昇 カ 湘 胞 死 の 抑 制に っ な が っ ている 可能 性を 示唆 し て い る の か も し れ な いo一 方 ,ERK2もCD40刺 激 後 に10ア ミ ノ 酸 配 列 を 持 っ ミ ュ ータントでは活性化し,持たないものでは活 陞イ匕は認めらないことから,CD40の信 号 伝 達 機 構 に 含 ま れそ の 経 路は 細胞 内保 存領域 の10アミ ノ酸 配列を 経由 して いる こ と が 示 さ れ た 。 し か し な が ら ,ERK2はIgM単 独 刺 激 で もIgM,CD40の 共 刺 激 時 と 同程度 の活 ・陸 上昇 を認め るこ とか ら,CD40の信号による細胞死の抑制に関わって いるとは考えにくい。

  一 方 ,CD40の 信号 は 転 写 因 子NF‑kBの 活 陸 化を 誘 導 し , そ の 経 路 に はTRAF2が 重 要 な働き をし てい るこ とカ嘩 艮告 され てい る。また,NF‑kBの活性がB細胞のアポトー シ ス を 制 御 し て い るこ と も 示唆 され てい る。以 上の こと を考 え合わ せる とCD40の 細 胞 死 抑 制 シ グ ナ ル は 細 胞 内 領 域 の10ア ミ ノ 酸 配 列 cAPvoETLHGC)に 結 合 す るTRAF2,3あ る い ぼrRAFs等 の 他 の 分 子 に よ っ てJNKな ど 転 写 因 子 を 活 . 陸 化 す る 経 路 を 通 じ ,NF―kBやAP一1な ど を 活 ゛ 陸化 す る こ と に よ り 伝 達 さ れ てい る こ とが推韻IJされる。

  WEHI231細 胞 はIgM,CD40の 刺 激 に 対 し , 正常B細 胞 と 同 様 に ア ポ 卜 ー シス , 細 胞 凝集, アポ トー シス の回避 を誘 導で きる 。WEHI231細胞 とマ ウス 脾臓B細 胞はIgM,

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CD40の刺激に対してERK2が同じ活・陞三イ匕丿くターンを示すことカ嘩艮告されているが,

マ ウ ス 脾 臓B細 胞 で はERK2,JNKと も にIgMの 刺 激 で もCD40の 刺 激 で も 活I生 イヒ す る 事 カ 嘩駸 告 さ れ て い る。 これら の結 果と 今回 の結果 を合 わせ て考 えると ,ERK2 の 活 ´ 陸 化はWEHI231細 胞 , 正 常B細 胞と も そ れ ぞ れIgM,CD40刺 激の 両者で 引き 起 こ さ れ る 。一 方 ,JNKに 関 し て はWEHI231細 胞 と 正 常B細 胞で の活 陸化 ′ヾ夕 ーン が 必ずしも同じではないことカ咏唆される。WEHI231細胞と正常B細胞での活・陸イ匕丿マ夕 一ン が異 なる理 由に つい てはWEHI231細胞は 常に 増殖 を続 けるり ンフ ォー マであり,

IgMやCD40刺 激で 働く カスケ ード 中の 分子の 量や活・陸化の程度が正常B細胞とは異な っていることなどが考えられ,さらなる解析が待たれる。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

CD40 分子の信号伝達に重要な細胞内領域の解析

CD40か ら の 信 号 はB細 胞 の 分 化 、 増 殖 、 免 疫 グ 口 ブ リ ン ク ラ ス ス イ ッ チ 、 細 胞 凝 集 、 ア ポ ト ー シ ス の 抑 制 な ど に 重 要 な 役 割 を 演 じ て い る 。CD40Nerve growth factor (NGF)/tumor necrosis factorTNF)レ セ プ タ ー フ ァ ミ リ ー に 属 し 、 そ の 細 胞 内 領 域 は 62ア ミ ノ 酸 か ら な り 、 信 号 伝 達 に 関 わ る よ う な 酵 素 に 類 似 す る 部 分 は 存 在 し な い 。 し か し 、FasTNFレ セ プ タ ーI(TNFRI)の 細 胞 内 領 域 と 相 同 性 を 示 す 領 域 が 存 在 す る 。CD 40の 細 胞 内 領 域 の 欠 損 ミ ュ ー タ ン ト や234番 目 の ア ミ ノ 酸 ポ イ ン ト ミ ュ ー テ イ シ ュ オ ン を 用 い た 解 析 で は 細 胞 内 に 信 号 を 伝 達 出 来 な い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 ま たFas TNFRIの 細 胞 内 保 存 領 域 も 信 号 伝 達 に 重 要 で あ り 、Fasリ ガ ン ド やTNFの 結 合 に よ り 細 胞 死 の 信 号 を 伝 達 す る た めdeath domainと 呼 ば れ る 。

    マ ウ ス 未 熟B細 胞 株WEHI231は 細 胞 表 面IgMの 架 橋 に よ ル ア ポ ト ー シ ス に 陥 る が 、 こ の 細 胞 死 はCD40の 共 刺 激 に よ り 回 避 さ れ る 。 こ の 実 験 モ デ ル を 用 い て 申 請 者 はCD40 の 信 号 伝 達 機 構 を 詳 細 に 解 析 す る た め 、 細 胞 内 領 域 を 末 端 か ら 約10ア ミ ノ 酸 ず つ 欠 損 さ せ た4つ の ヒ トCD40の ミ ュ ー タ ン トcDNAを 構 築 しWEHI231細 胞 株 に 形 質 導 入 し た 。 解 析 の 結 果 、1CD40の 細 胞 内 保 存 領 域 の10ア ミ ノ 酸 配 列 が 抗IgM抗 体 で 誘 導 さ れ WEHI231細 胞 の ア ポ ト ー シ ス の 回 避 に 重 要 で あ る こ と が 判 明 し た 。2) ま た こ の 領 域 は 抗 CD40抗 体 で 誘 導 さ れ る MAPキ ナ ー ゼ の 活 性 化 に も 重 要 で あ り 、 3 TNF receptor familyassOCiatingfaCtorT凡 虹 )23の 結 合 に も 重 要 で あ る こ と が判 明し た。

    こ れ ま でCD40の 細 胞 内 領 域 の17ア ミ ノ 酸 配 列 (TIMct

PVQETLHGCQPVTQEDG) に TRAF2 3が 結 合 し 、 TRAF3 CD40の 結 合 に は CD 40の 細 胞 内 領 域234番 目 の ス レ オ ニ ン くThr234) が 重 要 で あ る こ と が 知 ら れ て い た 。 TIMctと 我 々 が 報 告 し た10ア ミ ノ 酸 配 列 は9個 の ア ミ ノ 酸 が 重 複 し て お り 、TIMctに は 2個 の ス レ オ ニ ン (Thr234Thr242) が 含 ま れ て い る が 、 今 回 の 結 果 か らTIMctの う ち Thr242を 含 む QPVTQEDG TRAF23と の 結 合 に 必 要 な い こ と 、 10ア ミ ノ 酸 配 列 TRAF23と の 結 合 、 ア ポ ト ー シ ス の 回 避 やMAPキ ナ ー ゼ の 活 性 化 に っ な が る 信 号 を 伝 達 す る こ と が 直 接 証 明 さ れ た 。

    一 方 、 細 胞 死 を 抑 制 す るCD40IgMを 介 す る 共 刺 激 に よ りJNK活 性 の 相 加 的 増 強 が 認 め ら れ る こ と よ り 、MAPキ ナ ー ゼ の う ちJNK活 性 の 相 加 的 増 強 が 細 胞 死 の 抑 制 に 関

光 三

利 信

出  

  橋

上 西

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

与 す る こ と が 示唆 さ れた 。 ま たERK2もJNKと 同様 にCD40の10アミ ノ 酸配 列 をか い して活 性化される が、CD40単独刺激でも活性化され細胞死の抑制には関与していない と考えられた。

    B細胞 の 分化 、 活性 化 を調 節する分 子としてCD40は 中心的役割 を演じてお り、

CD40分子を 介する信号 伝達機序を 明らかにす ることはB細胞の分化、増殖機構を理解 する上できわめて重要な情報を提供すると考えられる。

    公開発 表にあたって、副査の石橋教授より、今回の研究は未熟B細胞が成熟B細胞 へ分化 する過程を 見ているの か、CD40とIgMを介する共 刺激によりWEHI231は分化す るか、遺伝子導入後の分子のオリエンテー.ションはどうなっているのか、キナーゼは量の 変化を見たのか、活性の変化を見たのか、キナーゼ活性化のカイネテクスはどうか、西教 授よりCD40の機能は多 彩だがなぜ 今回検討し た3つの 機能に注目 したのか、4つのミ ユ ー タ ン ト を 作 成 し た の に 、 多 く の 実 験 で は そ の う ち2つ の ミ ュ ー タ ン ト し か っかっ ていないの はなぜか、 実験方法と してアミノ 酸の置換の 実験と今回 のような deletionの実験があるが、なぜdeletionの実験を選んだのか、又その利点と欠点はなにか、

主査の上出よりWEHI231細胞を用いた理由はなにか等の質問があったが、申請者はおお むね妥当な回答をなしえた。

    審査委 員一同は、CD40を介する信号伝達の機序を明らかにした研究成果を高く評 価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判断した。

参照

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