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博士(医学)奴久妻聡一 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)奴久妻聡一 学′位論文題名

JC ウ イ ルス を 産 生す る 持続感染 細胞系 の樹立と 解析

学位論文内容の要旨

    I.緒  言

  ヒ卜 の中 枢神 経の 疾患 であ る進行 性多 巣性 白質 脳症(PML)は, 原因ウイ ル スで あるJCウイルス(JCV)が髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイトに 特 異的 に感染し,破壊することで引き起こす脱髄性脳症である。JCVのウイ ルス学的研究にはウイルスを血vitroで増やす系が欠かせない。しかし,JCV が 増殖 可能 な細 胞は 限ら れ, 十分量 のウイルスを短期間に得られる細胞株 は 見い 出されていない。我々はこれらの問題を克服するために,JCVを産生 す る 持 続 感 染 細 胞 系 を 樹 立 し , ウ イ ル ス 遺 伝 学 的 解 析 を 行 っ た 。

    H.材料と方法

1.持続感染細胞(JCI細胞)の樹立と性状

  IMR‑32細胞(ヒト神経芽細胞腫由来)10 個あたり,4HA unitsのJCV(IMR‑

32細 胞 で3代 継 代 ) を 感 染 さ せ ,2%FBS含 有DMEMで4日 間 培 養 後 ,1:4の 継 代 比 率 にて10%FBS含 有DMEMで 盲継 代し た。 なお ,ウ イル ス産生 は赤 血 球 凝集 反応(HA)で 測定 し,JCVの同 定は 抗JCVマウ ス血清を用いた免疫染色 および透過型電子顕微鏡によるウイルス粒子の観察により行った。また,ヒ ト 血 清 中 の抗JCV抗 体価 は樹 立細 胞系(JC+IMR:JCI細 胞) 産生JCVを 用い て 赤血球凝集抑制反応(HAI)で測定レた。さらに,confluentのJCI細胞を血清濃 度 を2% に お と し た 培 地 で 維 持 す る こ と で 多 量 のJCVの 産 生 を 行 っ た 。

2. JCI細胞由来JCV DNAのクローニングと解析

  17代 継代 したJCI細 胞か らウ イル スDNA,を抽出し,Eco RIまたはBam HIで 消 化 後 ,pUC19に 連 結 し た 。 こ の 連 結 反 応 液 を 用 い て ,high‑voltage electroporationにてEscherichia coli DH5を形質転換した。これらのク口ーンか らJCV DNAをもっクローンを[口‑32P] dCTPにてラペルしたJCV DNAをプ口ー ブとレて,colony hybridizationにて選択した。制限酵素解析として,ウイル スDNA全長 の解析 はEco RIまた はBam HIで,調節領域の解析はBam HIとSstI で 消化 レた 。消 化し たDNAtま 全長 の解 析には0.7%アガ口一スゲルで,調節 領 域の 解析 には5%ポ リア クリ ルア ミド ゲルにて電気泳動した。塩基配列は 調 節 領 域 を 含 む 断 片 を 単 離 し ,chain termination法 に て 決 定 し た 。

(2)

3.キメラJCV DNAのウイルス増殖誘導能

  JCI由来の調節領域(Control region:CR)のウイルス増殖誘導能を調べるた め に , 調 節 領域 はJCIのCRで他 の 領 域はMad‑lに 由 来す る キ メラJCV DNA (Mad‑l/CR‑JCI)を作成 した。ト ランスフェクションはIMR‑32細胞6xl05個に りン酸 カルシウ ム法によ りJCV DNA l.5ルgをsalmon sperm DNA2.5I.tgとと もに導入した。トランスフェクション後,confluenttこなった細胞を継代し,

33日 後 の 細 胞 を 回 収 し ウ イ ル ス の 産 生 量 をHA試 験 に て 測 定 し た 。

    ni.結果と考察

  JCV Mad‑l株 をIMR‑32細 胞 で3代継 代 して 得 た ウイ ル スをIMR‑32細胞に 感 染 さ せ , confluentこ な った 細 胞を1:4の 継 代 比率 に て10%FBS含 有 DMEMで17代 継 代 を す る こ と に よ りJCV持 続感 染 細 胞(JCI細 胞 )を 樹 立 し た。J(ニI細胞は免疫染色により維持型持続感染であることが明らかになり,

この 細 胞 から 産 生さ れ たJCVは 凡 坂応 を 示 レ,JCVを用 い て ヒ卜 血 清抗 体 価をHAIで測定することが可能となった。

  持 続 感染 が 維持 さ れ る機 構 を解 明 す るために ,JCI細胞か らJCV DNA,を クロ ー ン 化し 解 析し た 。 ク口 ー ン化 し たJCV DNAの全 長はさま ざまな分 子 の集団で 多様に変 化してい た。それに 対して,JCI由来の調節領域(CR‑JCI) はMad‑lおよ びIMR‑32細 胞 で3代継 代 され たJCVから以 前にク口 ーン化さ れ たJCV DNA(Ml‑IMRa,b,c)の3種と異なっていたが,今回調べたク口―ン間 では 一 致 していた。 塩基配列 より,CR‑JCIはMad‑lに存在す る2っのTATA配 列 の う ち 複 製 開 始 点 か ら 遠 い 方のTATA配 列が 欠 失 レて お り, さ ら にMl‑

IMRaの199番目か ら226番目の28塩 基対が欠 失して生 じたこと が判明し た。

  ウ イ ルス 増 殖誘 導 能 を調 べ るた め に ,リ ン 酸 カル シ ウム 共 沈 法に より Mad‑l/CR‑JCIを, 対 照と し てM1‑IMRaとM1‑IMRbをIMR‑32細 胞に ト ランス フェ ク シ ョンし,ウ イルスの 産生量をHA試験にて 測定した ところ,Mad‑l/

CR‑JCIはMl‑IMRaやMl‑IMRbに 比べ て 低か っ た 。Mad‑l/CR‑JCIを 卜 ランス フェ ク シ ョン レ た細 胞 か らJCV DNAを ク口ー ニングし 解析した ところ, 卜 ラン ス フ ェクション に用いたDN´吻構造 に変化は なかった 。これら のこと から,JCI細 胞の持続 感染の維 持の主な要 因は調節 領域の適度な機能低下で あること が示唆さ れた。さ らに,JCI細胞 を用いた ウイルス産生は低血清下 で細 胞 を 培養するこ とによっ て,多量 のウイル スを比較 的短期間 に供給で き る こ と か らJCVの ウ イ ル ス 学 的 解 析 を 発 展 さ せ る も の と 思 わ れ た 。

    IV.結  語

  ヒ ト 神 経 芽 細 胞 腫 由 来 で あ るIMR‑32細 胞 に同 細 胞で3代 継 代 レたJCV Mad‑l株を 感 染さ せ17代継代し たところ ,多量の ウイルスを 比較的短 期間 に産生するJCV持続感染細胞(JCI細胞)が樹立できた。この細胞から産生され たJCVはm坂 応を 示 し ,こ の ウイ ル ス を用 い てヒ 卜 血 清抗 体 価 をHAIで 測 定 すること が可能と なった。JCI細 胞は免疫染色により維持型持続感染であ

(3)

った。JCI 細胞から回収したJCV DNA は全長がさまざまな分子の集団であっ たが,調節領域の構造は一定(CR‑JCI) であり,塩基配列よりCR‑JCI はMl‑

IMRa の199 番目から226 番目の28bp が欠失して生じたことが示唆された。

Mad‑l/CR‑JCI はM1‑IMRa や M1‑IMRb に比べて, IMR‑32 細胞でのウイルスの

産生量が低かったので調節領域の構造が持続感染系の維持には重要である

ことが明らかになった。このJa 細胞は多量のウイルスを短期間に供給でき

る、ことからJCV のウイルス学的解析をさらに発展させるものと思われた。

(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    長 嶋 和 郎 副査    教授    細川眞澄男 副 査    教 授    皆 川 知 紀

学 位 論 文 題 名

JC ウ イル スを 産生 する 持続 感染 細胞 系の 樹立 と 解析

  目 的 : ヒ ト の 中 枢 神 経 の 脱 髄 疾 患 で あ る 進 行 性 多 巣 性 白 質 脳 症(PML)は , 原 因 ウ イ ル ス で あ るJCウ イ ル ス(JCV)が 髄 鞘 形 成 細 胞 で あ る オ リ ゴ デ ン ド ロ サ イ ト に 特 異 的 に 感 染 レ , 破 壊 す る こ と で 脱 髄 を 引 き 起 こ す 。JCVの ウ イ ル ス 学 的 研 究 に は ウ イ ル ス をin vitroで 増 殖 さ せ る 系 が 必 要 で あ る が ,JCVは 宿 主 域 が 狭 い た め , 十 分 量 の ウ イ ル ス を 短 期 間 に 得 ら れ る 細 胞 株 は 見 い 出 さ れ て い な い 。 我 々 は こ れ ら の 問 題 を 克 服 す る た め に ,JCVを 産 生 す る 持 続 感 染 細 胞 系 を 樹 立 し , そ の 系 の 生 物 学 的 特 性 を 明 ら か に す る と と も に , 持 続 感 染 系 が 維 持 さ れ る 機 構 に つ い て ウ イ ル ス 遺 伝 学 的 解 析 を 行 っ た 。   材 料 と 方 法 : ヒ ト 神 経 芽 細 胞 腫 由 来 で あ るIMR‑32細 胞 に 同 細 胞 で3代 継 代 レ たJCVを 感 染 さ せ ,10%FBS含 有DMEMで 盲 継 代 し た 。 ウ イ ル ス の 産 生 は 赤 血 球 凝 集 反 応(HA)で 測 定 レ ,JCVの 同 定 は 抗JCVマ ウ ス 血 清 を 用 い た 免 疫 染 色 お よ び 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る ウ イ ル ス 粒 子 の 観 察 に より 行っ た。

ま た , ヒ ト 血 清 中 の 抗JCV抗 体 価 は 樹 立 細 胞 系(JCI細 胞 ) 産 生JCVを 用 い て 赤 血 球 凝 集 抑 制 反 応(HAI)で 測 定 し た 。さ らに ,confluentこ なっ たJCI細 胞を 血 清 濃 度 を2% に 低 く レ た 培 地 で 維 持 す る こ と で 多 量 のJCVの 産 生 を 行 っ た 。

  17代 継 代 し たJCI細 胞 か ら ウ イ ル スDNAを 抽 出 し ,Eco RIま た はBam HIで 消 化 後 ,pUC19に て 多 数 ク ロ ー ニ ン グ し ,colony hybridiza.tionに て選 択し た 。 制 限 酵 素 を 用 い て ,JCI細 胞 由 来 の ク 口 一 ン の 全 長 と 調 節 領 域 を 含 む 断 片 の 泳 動 パ タ ー ン を 解 析 し た 。 塩 基 配 列 は 調 節 領 域 を 含 む 断 片 を 単 離 し , chain termination法 に て 決 定 し た 。

  JCI細 胞 由来 の調 節領 域(Control region:CR)のウ イル ス増 殖誘 導能 を調 べ.

る た め に , 調 節 領 域 はJCIのCRか ら 成 り , 他 の 領 域 は プ ロ 卜 タ イ プMad‑lに 由 来 す る キ メ ラJCV DNA(Mad‑l/CR‑JCI)を 作 成 レ た 。 ト ラ ン ス フ ウ ク シ ョ ン は り ン 酸 カ ル シ ウ ム 共 沈 法 に よ り ,Mad‑l/CR‑JCIをIMR‑32細 胞に 導入 し,

そ の 対 照 と し て 持 続 前 の ウ イ ル ス 株 で あ るMl‑IMRaとMl‑IMRbを 導 入 し た 。 卜 ラ ンス フェ クシ ョ ン後 ,confluent{こな った 細胞 を継 代レ ,33日後 の細

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胞を回収しウイルスの産生量をHA試験にて測定レた。

  結 果と 考察: IMR‑32細胞に同細胞で3代継代したJCV Mad‑l株を感染させ 17代 継代 した とこ ろ, 多量 のウ イルス を比 較的 短期 間に 産生 するJCV持続 感染細胞(JCI細胞)カヾ樹立できた。この細胞から産生されたJCVは凡坂応を 示レ ,こ のウ イル スを 用い てヒ ト血清 抗体 価をHAIで測 定す ること が可能 となった。JCI細胞は免疫染色により維持型持続感染の様式を示した。JCI細 胞か らク ロー ニン グし たJCV DNAは全 長が さま ざま な分 子の 集団で 多様に 変化 レて いた が, 調節 領域 の構 造はク ローン間で均一(CR‑JCI)であり,持 続化以前のウイルス株由来のクローン(Ml‑IMRa,b,c)のいずれとも異なって いた 。塩 基配 列よ り,CR‑JCIはMad‑lに存在する2番目のTATA配列が欠失レ てお り, さら にMl‑IMRaの199番 目から226番目 の28塩基 対が 欠失し て生じ たこ とが 明らかになった。ウイルス増殖誘導能はMad‑l/CR‑JCIがMl‑IMRaや Ml‑IMRbに 比べ て低 かっ た。Mad‑l/CR‑JCIをト ラン スフ ウク ション した細 胞か らJCV DNAをク ロー ニン グし 制限 酵素 解析 した とこ ろ, 卜ラン スフェ ク シ ョ ン に 用 い たDNAの 構 造を 維持 してお り, 同DNAの 調節 領域 の塩基 配 列の 構造 も変化していなかった。これらのことから,JCI細胞の持続感染の 維持 に関 する 主な 要因 は調 節領 域の適 度な機能低下であることが示唆され た。 さら に,JCI細胞を用いたウイルス産生は低血清下で細胞を培養するこ とに よっ て, 多量 のウ イル スを 比較的 短期間に得ることができることから JCVの ウ イ ル ス 増 殖 機 構 の 解析 およ びELISAの 系の 確立 に有 用で あると 考 えられた。

  口頭発表にあたり,細川教授よりJCVの非感染IMR‑3っ一細胞への感受性に つい て, 皆川 教授 より 持続 感染 系の特 性, 調節 領域の再編成およびウイル ス の定 量方 法に つい て, 柿沼 教授よ り調 節領 域と ウイ ルスDNA複 製と の関 係に つい て, 阿部 教授 より 免疫 染色で の感 染細 胞の核の腫大について等の 質問がなされたが申請者は概ね適切な回答をなレた。また,副査の細川,皆 川両教授には個別の審査を受け合格と判定された。

  以 上, 本研 究は 培養 細胞 で増 殖させ るこ とが 困難であったJCVを多量に しか も短 期間 に供 給できる持続感染細胞を樹立し,さらに,調節領域の構 造が 持続 感染 の維 持に 重要 であ ること を明 らか にしたことでJCVの病態機 構の解明に寄与するものであり,よって博士(医学)の学位授与に値するも のと判定された。

参照

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