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博士(医学)清水 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)清水 学位論文題名

ソル コセ リ ルに よ るヒ ト 肺小 細胞 癌株 PC‑6 の神経 分化誘導

学位論文内容の要旨

  I研究目的

  ソルコセリルは幼牛血液から抽出された製剤で組織呼吸賦活作用を有する,ヒト肺小細 胞癌株PC−6は多くの癌研究に用いられているが,その細胞はdibutyryl cAVPまたはdimeー thyl sulfoxideによる処理で神経分化誘導される.著者は細胞内ミトコンドリアに取り込 まれ細 胞の生死 判定に 有用なRhodamin123を用いて研究を進めていた.そしてミトコンド リアを活性化させる目的でPCー6細胞をソルコセリルで処理したところ,細胞の著しい形態 変化が認められ増殖が抑制された.そこでPC―6細胞におけるソルコセリルの細胞増殖に及 ぼ す影 響 , 分化 誘 導 作用 の有 無及び 癌遺伝子 産物ras p21の関与 につk、て検 討した.

  n方法

1)細胞株及び細胞培養:ヒト肺小細胞癌株PC−6を用いた.継代培養は25c12組織培養フラ スコを使用して,516COz,37Cの条件下で行った.培養液はRPIIー1640に10x胎仔牛血清及び ゲンタ マイシン を加え て作製し ,ソル コセリル を加えた 場合も週2回液交換した. 2)細 胞増殖 曲線:6 wellのマイク口プレ―トを使用し,5x10'/ rellの細胞を培養した.2日後 に各種 濃度のソルコセリルを加えた培養液と交換後培養を継続し細胞数を測定して細胞増 殖曲線を描L、た.  3)細胞形態及び細胞免疫化学染色:5x10 の細胞を直径60mの組織培 養ディッシュを用いて培養した,2日後に200¢ 1/mlの濃度のソルコセリルを加えた培養液 と交換 し,経時的に細胞形態を観察した.組織培養ディッシュに入れたセルデスクを用い て通常 の方法で パパニ コ口ー染 色,ニュー口フアラメント及びras p21に対する免疫染色 を行っ た(抗体:各々マウス抗ヒトニュー口フィラメント抗体2F11,葛巻らにより作製さ れたras p21に対するマウスモノク口ーナル抗体rp−35).4)フローサイ卜メトリ―:5x 105の細胞を直径60田の組織培養ディッシュを用いて2日間培養した後200r:t l/mlの濃度の ソ ルコ セ リ ルを 加 え た培 養 液 で3か ら10日 間 培養 し た .その後 以下の測 定を行 った.

a)Ki−67の発現:培養細胞をトリプシン十EDTAで処理後95Y6アセトンで―20℃,30分間固定し た,PBSで洗浄後l06ウサギ血清で4C,5分聞処理しマウスモノクローナル抗体Ki−67を1:50 の濃度で4℃,30分間反応させた,次にFITC標識ウサギ抗マウス免疫グ口ブリン抗体を1:100 の濃度で4℃,30分間反応させた.その後FACScanで螢光強度を測定した.b)ニュ―口フアラ メント,アセチルコリンエステラーゼ及びras p21の発現:Ki―67の螢光染色と同様の手順 で行った.総細胞数を2. 5x106にして70,;エタノールで4℃,30分間固定した.使用した各種 モノク 口ーナル抗体の種類,希釈濃度,及び反応時間は次の通りである.ニュー口フアラ メント ;マウス抗ヒトニュ一口フアラメント抗体2F11,希釈濃度1:100.アセチルコリンエ ステラーゼ;マウス抗アセチルコリンエステラーゼ抗体,希釈濃度1:200. ras p21;葛巻ら により 作製されたras p21に対するマウスモノク口ーナル抗体rp―35,希釈濃度1:50.全て の 一 次 抗 体 及 び FITC標 識 免 疫 グ 口 ブ リ ン 抗 体 は4℃ ,30分 間 反 応 さ せ た .

(2)

  m結果

ソルコセリルの細胞増殖に及ぼす影響は,培養液に加えたソルコセリルの濃度が50;r l/ml では増殖抑制効果は認められなかったが,100¢ l/ml以上では増殖が抑制され200¢ l/mlでは 増殖が停 止した. 細胞形 態はソルコセリルが200yl/mlの濃度では胞体が増大し細長い神経 細胞様突 起が出現 した. またソルコセリルで細胞を10日間処理後,ソルコセリルを含まな い培養液 にもどし てさら に14日間培養したところ,ソルコセリル処理前と同じく類円形の 形態を取 ルコ口ニ ー状に 細胞増殖を再開した細胞群と増殖を再開せず細長い細胞突起を出 し網目状 に拡がっ た細胞 群の二群を認めた.ニューロフアラメントに対する免疫染色はソ ルコセリル処理により陰性から弱陽性になったが,ras p21に対する免疫染色はソルコセリ ル処理前 後で同じ く弱陽 性であった.フ口ーサイトメトリーを用いて螢光強度を測定した 結果,ソルコセリルを加えた場合Ki―67の発現が陰性化し細胞回転が抑制されていた,ニュ 一口フィ ラメント ,アセ チルコリ ンエス テラ―ゼ 及びras p21の発現の変化ではいずれに お`、てもソルコセリル処理により発現の数倍増加している細胞群が出現した.定量性に乏 しい免疫 染色では 検出さ れなかっ たras p21の発現が 増加した細胞群の出現が,フ口ーサ イトメトリーを用いることによって検出された.

  IV考察

ソルコセリルの成分分析ではその活性物質1ま@既知の無機物,アミノ酸などではない◎分 子量が約1500のニン ヒドリン陽性物質◎グリコステ口イド並びにグリコスフアンゴリピッ ドの構造を有するグリコリピッドなどの報告がある,しかしPC―6細胞の形態を変化させ増 殖を抑制 する活性 物質が これらの既に報告せれている活性物質と同一であるかは不明であ る.ソル コセリル のミト コンドリアの呼吸賦活による酸素消費量増加作用は結果的に細胞 内のADP,cAlIPの増加を 引き起こし,dibutyryl cAVP処理による分化誘導の報告と類似の 現象を見 ている可 能性も ある.今後ソルコセリルの活性物質に関してさらに明らかにされ る必要がある.活性物質の濃度に関しては100rt l/ml以上で増殖抑制効果が認められており,

ソルコセ リル中の 活性物 質濃度が低いことを示唆している.著者は培養液にソルコセリル を加えた が,その 濃度が200VI/mlでは細胞は増殖を停止し胞体から神経細胞様突起が出現 した.またKi−67の発現が陰性化し細胞回転が抑制された,さらにニュー口フアラメント,

アセチル コリンエ ステラ ーゼの発現が増加している細胞群が出現した.即ち,潜在的神経 分化能を 有してい る細胞 がソルコセリルにより神経分化誘導された結果細胞が形態変化し ニュ一口 フアラメ ント及 びアセチ ルコリ ンエステ ラーゼが増加したのであろう.ras遺伝 子産物が 直接的に 神経分 化誘導作用を有すること及び神経分化誘導のシグナル伝達に関与 してL、ること が報告 されている,本研究においてもソルコセリル処理によりras p21発現 の増加した細胞群を認めており,ソルコセリルによるPC−6細胞の神経分化誘導効果におい てもras遺伝子産 物が何 らかの形で関与したことが示唆される.但し,ras遺伝子産物が神 経分化誘 導のシグ ナル伝 達系に直 接関与 したのか ,あるいは分化誘導の結果ras遺伝子産 物 の 発 現 が 増 加 し た の か に つ い て は 今 後 の 検 討 を 待 つ 必 要 が あ る .   V結語

ソ ル コ セ リ ル を200ロl/mlの 濃 度 で 培 養 液 に 加 え た場 合 , 次の 所 見 が認 め ら れ た.

1)細 胞の著明 な形態 変化2)細胞の 増殖停 止3) ニュー口フィラメント,アセチルコリン エステラ ーゼ及びras p21の 発現が 増加して いる細胞 群の出現.幼牛血液の抽出製剤であ るソルコセリルの中に肺小細胞癌株PC―6を神経分化誘導させる物質が含まれている可能性 が示唆された.

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ソルコセ1J ルによるヒト胴引ヽ細J 燃PC ・6 ザ冫神紹多H 臨秀導

  ソルコセリ ルは幼牛血液から抽出された製剤で組織呼吸賦活作用を有する。ヒト肺小細 胞癌株PC―6は多くの癌研究に用いられて いるが、PC−6細胞はdibutyryl cAXPまたはdi― methyl sulfoxideによる処理で神経分化誘導されることが報告されている。私は細胞内ミ トコンドリア に取り込まれ細胞の生死判定に有用なRhodamin123を用いた研究を進めてい た。そしてミ 卜コンドリアを活性化させる目的でPC−6細胞をソルコセリルで処理したとこ ろ、細胞の著 しい形態変化が認められ増殖が抑制された。そこでPC−6細胞におけるソルコ セリルの細胞 増殖に及ぼす影響、分化誘導作用の有無及び癌遺伝子産 物ras p21の関与に っいて検討した。ヒト肺小細胞癌株PC−6を用いた。培養液は10t6胎仔牛血清加RPlII―1640で 5%COz、37qCの条件下にて継代培養した。1)細胞増殖曲線:6wellのマイク口プレートを 使用して細胞 を培養した。2日後に各種濃 度のソルコセリルを加えた培養液と交換してさ らに培養を継 続し細胞数を測定して細胞増殖曲線を描いた。その結果ソルコセリルの濃度 が200g t/m!で細胞の増殖が停止したため 、この濃度で以下の実験を進めた。2)細胞形態 及び細胞免疫 化学染色:細胞を2日間培養 した後ソルコセリルを加えた培養液と交換し、

経時的に細胞 形態を観察した。組織培養ディッシュに入れたセルデスクを用いて通常の方 法でパパニコ 口ー染色、ニュー口フィラメント及びras p21に対する免疫染色を行った。

3) フロ ーサイトメトリー:細胞を2日間培養した後ソルコセリルを加えた培養液でさら に3から10日間培養した。その後以下の測 定を行った。a)Kiー67の発現:培養細胞をトリ プシン十EDTAで処理後アセトン固定した後ウサギ血清で処理しマウスモノク口ーナル抗体 Ki−67を反応 させた。次にFITC標識ウサギ抗マウス免疫グ口ブリン抗体を反応させ、FACS canで螢光強度を測定した。b)ニュー口フアラメント,アセチルコリンエステラーゼ及び ras p21の発現:Ki−67の螢光染色と同様の手順で行った。ソルコセリルの細胞増殖に及ぼ す影響は、培 養液に加えたソルコセリルの濃度が50v! /mIでは増殖抑制効果は認められな かったが、100ヰt/mt以上では増殖が抑制され200Ill/m!では増殖が停止した。細胞形態はソ

和 男

   

   

義 真

上 川

川 細

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

ルコセリルが200ロ!/mlの濃度では胞体が増大し細長い神経細胞様突起が出現した。またソ ル コセリルで細胞を10日間処理後,ソルコセリルを含ま ない培養液にもどしてさらに14日 間 培養したところ、ソルコセリル処理前と同じく類円形 の形態を取ルコロニー状に細胞増 殖 を再開した細胞群と増殖を再開せず細長い突起を出し 網目状に拡がった細胞群の二群を 認 めた。ニュー口フアラメントに対する免疫染色はソル コセリル処理により陰性から弱陽 性 にな った が、ras p21に 対する免疫染色はソルコセリ ル処理前後で同じく弱陽性であっ た 。フ口―サイトメトリーを用いて螢光強度を測定した 結果、ソルコセリルを加えた場合 Ki―67の発現が陰性化し細胞回転が抑制されていた。ニ ュー口フィラメント、アセチルコ リ ンエ ステ ラ― ゼ及 びras p21の発現の変化ではいずれ においてもソルコセリル処理によ り発現の数倍増加している 細胞群が出現した。定量性に乏しい免疫染色では検出されなかっ たras p21の発現が増加した細胞群の出現が、フ口一サ イトメトリーを用し、ることによっ て検出された。ソルコセリ ルを200rt !/mtの濃度で培養液に加えた場合、次の所見が認めら れ た 。1) 細 胞 の 著 明 な 形態 変化 、2)細 胞の 増 殖停 止、3)ニ ュー 口フ ィラ メン ト、 ア セ チル コリ ンエ ステ ラー ゼ及 びras p21の発現が増加し ている細胞群の出現。潜在的神経 分 化能を有している細胞がソルコセリルにより神経分化 誘導され形態変化しニュー口フイ ラ メント及びアセチルコリンエステラーゼが増加したと 考えられた。幼牛血液の抽出製削 であるソルコセリルの中に 肺小細胞癌株PC−6を神経分 化誘導させる物質が含まれている可 能性が示唆された。

  審査 に当 たっ て、 副査 細川 教授 から1)ソ ルコ セリ ル を除去後に再増殖する細胞群は分 化 し た 細 胞 か 、2) ras蛋白 と神 経分 化の 関係 、3)ソ ルコ セリ ルの 潰瘍 に対 する 有効 成 分 と分 化誘 導効 果に おけ る有 効成分は同一であるのか、4)癌の分化誘導剤あるいは癌治 療 薬と して の可 能性 にっ いて 質問 があ った 。次 いで 副 査浅香教授から1)ソルコセリルに 着 目し た理 由、2) ソル コ セリルは細胞に対してcytos taticあるいはcytocidalに作用す る のか 、3)  neuroendocrine markerとしてNSEの発現 について、4)他の分化誘導剤との 比 較 に つ い て 質 問 が あ った 。次 いで 菅野 教授 か ら1)神経 分化 誘導 の機 序、2)細 胞呼 吸 の 変化 にっ いて 質問 があ った 。最 後に 主査 川上 教授 か ら1)ソルコセリルの口ット間での 効 果の 違い 、2)臨 床応 用 の可能性について質問、コメ ントがあった。申請者はこれらの 質 問に対して適切な回答を行った。審査員一同は、本研 究をソルコセリルによる肺小細胞 癌 株の神経分化誘導の可能性を検討した研究として高く 評価し、申請者が博士(医学)の 学位を受けるのに充分な資 格を有するものと判定した。

参照

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