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博士(歯学)山村博子 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)山村博子 学位論文題名

レーザー照射とフッ化物塗布が 歯根面象牙質表面に及ぼす影響

学位論文内容の要旨

   【緒言】

   歯周病治療の進歩に伴い、重度歯周病罹患歯も歯根露出の状態で積極的に保存する 傾向にあるが、根面齲蝕及び知覚過敏が臨床上の問題となってきている。一方、歯科 領域においてレーザー照射が応用されるようになり、歯周病領域でも歯周ポケッ卜内 のレーザー照射や、歯石除去など歯根面にレーザ一照射を行う研究がみられる。レー ザ一照射は、フッ化物との併用でェナメル質の耐酸性を向上させることが報告されて いるが、根面象牙質への影響を検討した報告はきわめて少ない。レーザー照射とフッ 化物との比較あるいは併用が根面象牙質へどのような影響を及ぼすかを解明すること は レ ー ザ ー の 臨 床 応 用 の 基 礎 的 資 料 と し て 大 き な 意 義 が あ る と 思 わ れ る 。    本研究は、Nd:YAG レーザー照射とフッ化物塗布を応用した場合の根面象牙質への 影響を明らかにする目的で、走査型電子顕微鏡(SEM )観察による形態的変化、電子プ 口一 ブマイク口 アナライザ ‑ (EPMA) によるフッ素分布分析、耐酸性試験、さらに Streptococcus mutans (S.mutans )を用いた細菌付着性および表面硬度への影響を 検討した。

   【材料および方法】

I) 試験片

   被 験歯は、ウ シ下顎前歯 歯根(SEM 観察; 19 本、EPMA 分析; 9 本、耐 酸性試験;

36 本、細菌付着試験;9 本、表面軟化試験;7 本)を用いた。試験片は、歯周治療後の 口腔内に露出した直後の象牙質を想定し、キュレット型スケーラーを用いて歯根膜と セ メ ン ト質 を 除去 し た象 牙 質片を3X3X 1.5mm  (SEM 観察用 95 個 、 EPMA 分析用45 個 、耐酸性試 験用540 個、細菌付着試験用 45 個)、5X5 Xl.5mm (表面軟化試験用35 個)の大きさに規格化した。

2 )実験群と表面処置方法

   実験群を表面処置方法の違いによってC 群(無処置)、L 群(レーザー照射のみ)、

F 群(フッ化物塗布のみ)、LF 群(レーザ一照射後フッ化物塗布)、FL 群(フッ化物

塗布後レーザー照射)の5 群とした。歯科用レーザ一装置は、バルス型Nd:YAG レーザ

ー (Pulse Master 600 LE @、最大出力6W 、波長1 ,064nm 、光ファイバー先端径320

(2)

I,c Ill)を 使用した。レー ザ一照射に際 しては、照射 前に墨汁を試 験面に一層塗布 した 後に光ファイ バー先端を試 験面に近付け 、動かしながら 全体を平均的 に5秒間照射し た。レーザー 照射(出力) 条件は、耐酸 性試験で倣、0.6〜2.OWまで のG条件とし、 他 の評価方法は1.2Wの条件を 設定した。フ ッ化物塗布は酸 性フッ素リン 酸溶液(APF) 使用し、耐酸 性試験は、2APFを応用し た場合(2%APF応用群)と4%APFを応用

した場f↑( ・|一J‐ヽf Iflと;川f洋 )、お|J¨丶1 [fIふ川した場台(H‥い¥t f・゛1と:川{!Jゾノ:)lIIlfJ ̄′´

′ニ。他u)i、Itmル法ては2%f丶PFを応 川した。フ・/「匕物塗mは ,1う′川rrっ た。

3)if価方法

(I)SEh,l観 察

  形態的変fヒソ」観察は、 表面処置直後 と|m・t6糾生 試驍直後(ニ 行フたュ

(2)EPl¥L分f「「

  試験片中央 を垂直に半叨 し、断面のカ ルシウム、I」 ン、フッ棄に つし1て線分f斤 を行っ た。

(3)而寸酸 性試験

  各試験片をf固別にoililの酢酸・酢酸 ナトリウム緩f重f液(I)H4.2)中に浸f責 し、37℃恒 温キ曹で震盪 を加えた。1時 間後に脱灰液 を採取し、原 子吸光分析法 によってカルシ ウム 濃度を測定し 、単位面積あ たりのカルシ ウム溶出量を算 出した。

(4)細菌付 着試験

  S.mutaj】S.C2株を6.7X10℃FU/mlに 調整し、菌液20H1を5%スク 口一ス添加Brain HeartInfusion(BHI)培地5.0mHこ加え 、37℃で24時間 の好気培養を 行い、培養後 に 20秒問超音波 洗浄を加えて 付着細菌を集 菌し、BHI寒天 培地に播種し 、37℃で24時間 の嫌気培養を 行った後にコ □二ー数を計 測した。

(5)表面軟 化試験

  S.mL!ぬnSJC2株を5.6X10℃FU/m1に 調整し、菌液50Hlを5%スク 口ース添加BHI 地20m1に加え 、37℃で48時 間の好気培養 を行った。細菌 培養の前後で 荷重25g、負荷 時間30秒でヌ ―プ圧子にて 微少硬度の測 定を行った。

  統計学的分 析は、分散分 析とMannーWhitneyU―testを 行い、有意水 準は5%とし た。

   【結果および考察】

  SEM 観察より、表面処置直後のC 群とF 群は、比較的平坦な表面を呈し、象牙細管開

口部が細い線状に認められた。L 群、LF 群、 FL 群は、いずれも表面はクラッカー状あ

るいは溶岩状を呈し、凹凸が著しかった。耐酸性試験直後は、表面処置直後に比べてC

群、F 群では象牙細管開口部の拡大傾向が認められたが、L 群、LF 群、FL 群では明らか

な変化は認められなかった。EPMA 線分析では、F 群、LF 群、FL 群は、いずれも試験

面表面から約10um 前後までフッ素の分布が認められ、フッ素強度は、3 群間で有意差

は認められなかった。耐酸性試験では、各実験群のカルシウム溶出量は、2 %〜 8 %

いずれのAPF' を用いた場合でも、F 群、LF 群、FL 群は、C 群、L 群に比べてカルシウム

溶出量が有意に減少した。F 群、LF 群、FL 群間では、有意差は認められなかった。ま

た照射条件の違いによってもカルシウム溶出量に有意な差は認められなかった。これ

(3)

らより、レーザー照射によって、象牙質表面は多孔性の溶岩状の構造に変化し、被脱 灰表面積が増加することでエナメル質で報告されているようなカルシウム溶出の抑制 が有意に生じなかったのではないかと考えられる。フッ化物応用群では、 APF 塗布に よる脱灰によって生じたカルシウムイオンとフッ素イオンが反応して歯面表層にCaF.

が形成され、それから徐々に放出されるフッ素によってフルオ□アノヾ夕イ□あるいは フルオ口ハイド口キシアバタイトが形成され、耐酸性が向上したと考えられる。レー ザ一照射とフッ化物塗布併用では、同様に耐酸性の向上が認められたが、フッ化物塗 布による而、t 酸性効果が強L )ものと考えられる。

  S.n 川taIls 付着性試験では、L 詳は最も付着細菌数が多く、F 詳は最も少なかった。

LF 群、FL 群はC 群と比較して有意な差を認めなかった。フツ化物応用によって象牙質 表層に形成されたCaF 」、あるしゝは、とりこまれたフッ素によって細菌の多糖体の合成 が阻害され、ブラーク細菌の付着を妨げた可能性が考えられる。レーザ一照射のみで は、有意に付着細菌数が増加していたが、これはレーザー照射によって象牙質表層に 溶 岩 状 の 変 化 が 生 じ 、 試 験 片 表 面 積 が 増 え た た め と 考 え ら れ る 。    表 面軟化試験では、培養前は各実験群間でヌープ硬さに有意差は認められなかっ た。培養後では、 F 群、 LF 群は C 群と比較して有意にヌ―プ硬さが大きかった。また、

L 群は F 群、LF 群、FL 群と比較して有意にヌ―プ硬さが小さかった。C 群と L 群では、

有 意な差は認 められなか った。フッ 化物を応用 した実験群 では、フッ素によって S.mu tans の糖代謝が抑制され、酸産生抑制が起こったため歯質の軟化が抑制された可 能性が考えられる。

   以上より、フッ化物塗布は根面象牙質表層の耐酸性を増加させ、細菌付着性を減少

させ、細菌による軟化を抑制させる作用があると考えられる。レーザー照射は表面形

態を多孔性の溶岩状構造にし、細菌付着性を増加させるが、耐酸性への影響は少ない

と考えられる。さらに、レーザー照射とフッ化物塗布の併用は、表面形態を同様の溶

岩状構造に変化させるが、細菌付着性に変化を与えず、耐酸性を増加させ、細菌によ

る軟化を抑制させる作用があると考えられる。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

レーザー照射とフッ化物塗布が 歯根面象牙質表面に及ぼす影響

  

審査は主査、副査が一同に会して口頭でなされ、初めに本論文の要旨の説明を求め、申請 者から以下のような内容について論述がなされた。

  

本研究は、Nd:YAGレーザー照射とフッ化物塗布を応用した場合の根面象牙質への影響を 明らかにする目的で、走査型電子顕徽鏡(SEM)観察による形態的変化、電子プローブマイ クロアナライザー(EPIこは)によるフッ素分布分析、耐酸性試験、さらにStreptococcus

mutans (S.mutans

) を 用 い た 細 菌 付 着 性 お よ び 表 面 硬 度 へ の 影 響 を 検 討 し た 。

【材料および方法】

  

被験歯は、ウシ下顎前歯歯根を用い、試験片は、歯周治療後の口腔内に露出した直後の象 牙質を想定し、キュレット型スケーラーを用いて歯根膜とセメント質を除去した象牙質片を

3X3X 1.5mm  (SEh,I

観 察 用

95

個、

EPMA

分析 用

45

個、 耐酸 性試 験用

540

個 、細 菌付 着 試験用45個)、5X5x 1.5mm(表面軟化試験用35個)の大きさに規格化した。実験群を表 面処置方法の違いによってC・群(無処置)、L群(レーザー照射のみ)、F群(フッ化物塗布 のみ)、LF群(レーザー照射後フッ化物塗布)、FL群(フッ化物塗布後レーザー照射)の5 群とした。歯科用レーザー装置は、パルス型Nd:YAGレーザー(Pulse Master 600 LE@)

を使用した。レーザー照射に際しては、照射前に墨汁を試験面に一層塗布した後に光ファイ バー先端を試験面に近付け、動かしながら全体を平均的に5秒間照射した。レーザー照射(出 力)条件は、耐酸性試験では、0.6〜2.OWまでの6条件とし、他の評価方法は1.2Wの条件 を設定した。フッ化物塗布は酸性フッ素リン酸溶液(APF)を使用し、耐酸性試験は、2%

APF

を応 用し た場 合と

4

%APFを応用した場合、8%APFを応用した場合の3回行った。他 の評価方法では2%APFを応用した。フッ化物塗布は4分間行った。試験片は、表面処置直 後と耐酸性試験直後にSEM観察を行った。フッ素分布分析は、カルシウム、リン、フッ素 についてEPtvLt線分析を行った。耐酸性試験は、各試験片を個別に5mlの酢酸・酢酸ナト リウム緩衝液(pH4.2)中に浸潰し、37℃恒温槽で震盪を加え、

1

時間後に脱灰液を採取し、

原子吸光分析法によってカルシウム濃度を測定し、単位面積あたりのカルシウム溶出量を算 出した。細菌付着試験は、菌数調整したS.mutansJC2株を5%スクロース添加BrainHeart

‑ 699 ‑

光 夫

雅 文

浪 理

川 亘

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

nfusion (BHI

)培地に 加え、試験片をワイヤーで吊し、37℃,で

24

時間の好気培養を行い、

集 菌 後

BHI

寒 天 培 地 に 播 種 し 、

37

℃ で24時間 の嫌 気培 養後 にコ 口二 一数 を計 測 した 。表 面 軟 化 試 験 は 、 菌 数 調 整 し た

S.mutansJC2

株 を

5

% ス ク 口 ー ス 添 加

BHI

培 地 に 加 え 、 試 験 片 を ワ イ ヤ ー で 吊 し 、

37

℃ で

48

時間 の好 気培 養を 行 った 。細 菌培 養の 前後 で荷 重

25g

、負 荷 時間30秒でヌ―プ圧子にて微少硬さの測定を行った。

  

統 計 学 的 分 析 は 、 分 散 分 析 と

Mann

Whttney

U

test

を 行い 、有 意水 準は

5

%と した 。

【結果および弩察】

  SEM

鋭察では、表襾処遣直陵のC觧とF鮮は、比I皎的平坦な表mfを呈し、象牙網H琶:f淵【二I 部が細Iい線:lkにえごめられた。L觧、LF騨、I Lf昨は、いずれも表面はi容耕:|kを呈していた。

而 ・

f

酸性 試験直 陵は、表而処置直後に比べてC群、F群では象牙細管開口 部の拡大傾向が認め ら れた が、

L

胙 、LF觧 、

FL

詳で は明 らか な変

r

ヒ は 認め られ なか った。EPヘハ線分f斤では、

F

鮮、

LF

鮮 、

FL

胙は 、 いず れも 試験 面表 面か ら約

L0

cm

前 後ま でフッ素 の分布が認められ、

フ ッ素 強度 は、

3

觧 間 で訂 意差 は認 めら れな かっ た。 耐酸 性試 験では、 各実験鮮のカルシウ ム 溶 出 量 は 、

2

% 〜

8

% い ず れ の

APF

を 用 い た 場 合 で も 、

F

群 、

LF

觧 、

FL

觧 は 、

C

酢 、

L

群 に 比 べ て 有 意 に 減 少 し た 。

F

群、

LF

群 、

FL

酢問 では 、有 意差 は認 めら れな か った 。ま た 照 射条 件の 違い によ って もカ ルシ ウム 溶出量に有意な差は認められなか った。

S

nluCans

付 着 性 試 験 で は 、

L

群 は 最 も 付 着 細 菌 数 が 多 く 、

F

群 は 最 も 少 な か っ た 。

LF

群 、

FL

群 は

C

群 と 比較 して 有意な差を認めなかった。表面軟

r

匕試験では、培養前は各実 験群問でヌープ硬さ に 有意 差は 認め られ な かっ た。 培養 後で は、

F

群 、

LF

群 はC群と 比較 して 有意 に ヌー プ硬 さ が 大き かっ た。 また 、

L

群 はF群 、

LF

群、

FL

群 と比 較し て有 意に ヌ― プ硬 さが 小 さか った 。

  

以上 の結 果よ り、 フッ 化物 塗布 は根 面象牙質表層の耐酸性を増加させ 、細菌付着性を減少 さ せ、 細菌 によ る軟 化を 抑制 させ る作 用があると考えられる。レーザー 照射は表面形態を多 孔性の溶岩状構造にし、 細菌付着性を増加させるが、耐酸性への影響は少ないと考えられる。

さ らに 、レ ーザ ー照 射と フッ 化物 塗布 の併用は、表面形態を同様の溶岩 状構造に変化させる が 、細 菌付 着性 に変 化を 与え ず、 耐酸 性を増加させ、細菌による軟化を 抑制させる作用があ ると考えられた。

  

次 い で 、 本 論 文 の 内 容 と そ れ に 関 す る 項 目 に つ い て 口 頭 に よ る 質 問 が 行 わ れ た 。

  

主 な質 問事 項は 、

1

) 歯 周 病 領 域 で 使 用 さ れ る レ ー ザ ー の 種 類 と そ の 照 射 方 法 に つ い て

(2)

レー ザー 照射 によ る 根面 象牙 質の 表面 形態 の変 化お よび 耐酸性に及 ぼす影響について

(3)

フ ッ 化 物 塗 布 に よ る 根 面 象 牙 質 の フ ッ 素 分 布 お よ び 塗 布 方 法 に よ る 影 響 に つ い て

(4)

レー ザー照射 とフッ化物塗布およびその併用が根面象牙質への細菌付 着性、表面の硬さ

    

の変 化に 及ぼ す影 響に つい て

(5)

観察 結果 と臨 床的 意 義に つい て であ った 。

  

申請 者は 、い ずれ の 質問 に対 しても回答し、関連分野についても広 く詳細な理解があるこ と が認 めら れた 。本 研 究は 、臨 床における歯根面へのレーザー照射応 用に際する基礎的資料 と して 意義 があ り、 審 査員 一同 は、これらの成果を高く評価し、大学 院課程における研鑚や 取 得単 位な ども 併せ 、 申請 者が 博士(歯学)の学位を受けるのに十分 な資格を有するものと 判 定し た。

―700―

参照