博士(歯学)石山 学位論文題名
工ア一夕ービンハンドピースの簡易消毒器の試作
学位論文内容の要旨
司
医 療従事 者及 び患者 の診療 行為中 におけ る病 原性微 生物に よる感 染症 は,昨今,重大な問題と な っ て い る。1981年 に ア メ リ カ にお い てAIDSと 呼 ば れる 疾 患 が 認 めら れて 以来, 各種マ スメ デ ィアの 影響で 医療従 事者 のみな らず, それ以 外の 患者と なりう る人々 にも知識が広まり,そし て ,゛特 に歯科 領域の 感染 症対策 に注目 が集ま るよ うにな ってき た。今 後,AIDSを含めた感染症 に 罹患し た患者 が来院 する 可能性 を考え ると何 等か の有効 な感染 防止対 策を歯科の日常臨床の術 式 の中ヘ 取り入 れなけ れば ならな いもの と思わ れる 。術者 自身の 感染防 止という面では,フェイ ス プロテ ク夕一 ,ある いは ゴーグ ル,マ スク, グ口 一ブそ して清 潔な白 衣などを着用し,使用済 の 注射針 等の誤 刺入に 注意 をはら うとい ったこ とが 考えら れるが ,患者 から患者あるいは術者を 介 して患 者への 感染防 止対 策とし ては現 状では 不十 分と考 えられ る。特 にほとんどの歯科治療に 使 用され ,現在 の歯科 診療 には欠 かすこ とので きな いエア ーター ビンハ ンドピースに関しては,
そ の 価 格 と構 造 の 複 雑 さも 加わり 滅菌あ るいは 十分 な消毒 といっ た対応 がな され難 いよう であ る 。しか しなが ら,近 年, 世界的 に歯科 医療関 係者 の間で ハンド ピース の消毒あるいは滅菌の必 要 性が問 われ出 してき てい る。オ ートク レーブ によ る滅菌 が現在 最良の 手段であるとは考えられ る が,あ らかじ め必要 とす る本数 のハン ドピー スを 滅菌し て準備 しなけ ればならず,ハンドピー ス の保有 数を増 やさね ばな らない ので費 用の面 で現 状では 実施が 難しい 。そこで,使用したハン ド ピ ー ス を患 者 と 患 者 の交 代時の1〜2分 程度の 間に消 毒でき ること を目 標とし てハン ドピー ス の 簡易消 毒器を 試作し ,そ の性能 を評価 する目 的で 検討を 行った 。
実 験1口腔 内 使 用 時 を想 定 し て 実 験的 に 汚 染 させた エア一 夕―ビ ンハ ンドピ ースを 用いた 各 種 ハン ドピー ス消毒 法の比 較
工アー タービ ンハン ドピ ースの 口腔内 使用時 に付着 する 汚染物 質とし て考えられるのは,歯質 お よび 治療に 用いた 材料の 削片, 唾液 ,血液 等が考 えられ るが ,その 中で特に唾液と血液は病原 性 微生 物を合 むこと が考え られる 。そこで,唾液および血液を実験的にハンドピースに付着させ,
市販 され ている 装置を 含めて 一般 臨床で 使用し ている 種々な ハン ドピー スの消 毒およ び滅菌法を 用い て清 掃なら びに消 毒を行 い, 各々の 効果を 比較検 討した 。
唾 液の付 着にっ いては ,唾 液中に 含まれ る唾液 由来 の細菌 を指標 として ,ハン ドピ ―スへの付 着の 有無 を調ベ ,さら に,唾 液の 付着部 位と分 布範囲 は唾液 中の レンサ 球菌を 指標と して確認し た。
ウ イルス 等の病 原性微 生物 による 汚染に っいて は, それら が血液 中に含 まれる こと から,ハン ドピ ース 表面の 血液の 付着の 有無 を調べ ること で汚染 度を判 定し た。
1. 唾 液 由 来 の 細 菌 に よ っ て 汚 染 さ れ た ハ ン ド ピ ー ス の 消 毒 お よ び 滅 菌 法 ヒ ト全 唾 液 の50倍 希釈液 を汚 染源と して, ハンド ピー スを1分聞 浸潰し ,唾液 由来の 細菌で 汚 染 さ せ た 。a. 消 毒 用 ア ル コ ー ル(70% 工 夕/― ル )b.消 毒 用 薬 剤 ス プ レ −(GERMISPRAY) c. 紫 外 線 殺 菌 器 ( #10000ス ー パ 一 殺 菌 器 )d.オ ー ト ク レ ー ブ ( ク レー ブ ト 口 ンDAー3) e. 無 処 理 の5種 類 の 方 法 でハ ン ド ピ ー スを 消 毒 し ,a.b.c. にっ い て は30秒 ,60秒,90秒 と 消 毒 時間 を 変 化 さ せ それ ぞ れ の 消毒 時間に っいて ハン ドピー スを30本 ,d.e.にっ いては30 本を 試料 とした 。その 後ハン ドピ ―スご とチオ グリコ レート 培地 を用い て唾液 由来の 細菌の培養 を行 いそれぞれの消毒効果を培地の混濁で汚染度を(十十),(十),(―)に分類し判定した。ま た , 唾 液由 来 の 細 菌 の 付着 部 位 と 分 布範 囲 の 確 認 はMS寒 天 培 地を 用 い て 唾 液中 に 含まれ るレ ンサ 球菌 のコ口 二一を 指標と して 調べた 。
2.血液 によっ て汚 染され たハン ドピー スの 清掃法
採 血直 後 の ヒ ト 血液 を 汚 染 源 とし て, ハン ドピ― スを1分間 浸漬し ,汚染 させた 。a.消毒 用 ア ル コ ー ル(70% 工 夕 ノ ー ル )b.消 毒 用 薬 剤 の ス プ レ ー(GERMISPRAY)c. 無 処 理 の3 種 類 の 方法 で ハ ン ド ピ ース を 清 掃 し ,a. b.に っ い て は30秒 ,60秒,90秒と 清掃時 間を変 化さ せ そ れ ぞれ の 清 掃時間 にっい てハン ドピー スを30本,c.に っいて は30本 を試料 とした 。試料 で ある ハン ドピー スに対 し暗室 内で 血液の 残留の 有無を ルミノ ール 発光試 験を用 いて調 べ,ハンド ピ ー ス が 紫 青 色 に 発 光 す る 程 度 で 汚 染 度を ( 十 十 ) ,( 十 ) , ( → )に 分 類 し 判 定し た 。 実 験2工アー タービ ンハン ドピー スの 簡易消 毒器の 試作と 性能 評価
消毒器を試作し,実験1と同様に唾液由来の細菌によって汚染させたハンドピ―スを用い試作簡 易消毒器で30秒,60秒,90秒と消毒時間を変化させチオグリコレート培地を用いて汚染度を判定 した。また,血液によって汚染させたハンドピースに対しても同様に洗滌時間を30秒,60秒,90 秒 と変 化さ せ, ルミ ノ ール発光試験によって血液 残留の有無を調べ汚染度を判 定した。
実験1および実験2の結果より以下の結諭が得られた。
1.歯科臨床の中で,一般的に行われているエアータービンハンドピースの消毒法である消毒用 アルコール(70%工タノール)による清拭消毒では,患者の交代時間として想定した2分以内の 清拭で実験的に付着させた唾液由来の細菌および血液を完全に消毒および除去することができな いことが確認された。
2.消毒用の薬剤を噴霧するスプレ一消毒器も2分以内の消毒では,実験的に付着させた唾液由 来 の細 菌お よび 血液 を 完全 に消 毒お よび 除 去す るこ とは で きな いこ とが確認 できた。
3.紫外線照射による殺菌も2分以内の照射では,実験的に付着させた唾液由来の細菌を完全に 殺菌することはできないことが確認できた。
4.オートクレーブ以外の各種の消毒法で除去しきれない唾液由来の細菌および血液の大部分は エア一夕一ビンハンドピース先端部と把持部の接続部分の溝や把持部に設けられたすべり止めの 凸凹部分に残留することが確認できた。
5.工ア一夕ービンハンドピースの表面形状が消毒および清掃効果と関連していることが示唆さ れ , 消 毒 清 掃 に 有 効 な ハ ン ド ピ ー ス の 形 状 の 検 討 が 必 要 と 考 え ら れ る 。 6.試作した高圧蒸気を応用したハンドピースの簡易消毒器によるエアー夕一ビンハンドピース の 消毒 法は2分 間の 使用 で唾 液 由来 の細 菌お よび 血液を除去できることが確認 できた。
7.試作した簡易消毒器の問題点として,消毒後にエア一夕一ビンハンドピースが高温となり,
しばらくの間使用不可能になることが明らかになり,消毒後のハンドピースの冷却方法の検討が 必要と考えられる。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 内 山 洋 一 副 査 教 授 渡 邊 継 男 副査 教授 下河辺宏功
医 療従 事 者及 び患 者 の診 療行 為中における病原 性微生物による感 染症は,昨今,重大 な問題と なっ てい る 。そ こで 現 在の 歯科 診療には欠かすこ とのできないェア 一夕ービンハンドピ ースを採 り上 げ, 患 者と 患者 の 交代 時の1〜2分 程度 の 間に 消毒 で きる こと を 目標 としてハンド ピースの 簡易消毒器を試 作し,その性能を評 価する目的で検討 を行った。
実験1口腔 内使 用 時を 想定 し て実 験的 に 汚染 させ た エア 一夕 ー ビン ハン ド ピ― スを 用 いた 各 種ハンドピース 消毒法の比較
病 原性 微 生物 を含 む と考 えら れる唾液および血 液を実験的にハン ドピースに付着させ ,市販さ れて いる 装 置を 含め て 一般 臨床 で使用している種 々なハンドピース の消毒および滅菌法 を用いて 清掃ならびに消 毒を行い,各々の効 果を比較検討した 。
1, 唾 液 由 来 の 細 菌 に よ っ て 汚 染 さ れ た ハ ン ド ピ ー ス の 消 毒 お よ び 滅 菌 法 ヒ ト全 唾 液の50倍 希 釈液 を汚 染 源と して , ハン ドピース を1分間 浸漬し,唾液由来の 細菌で汚 染 さ せ た 。a. 消 毒 用 ア ル コ ー ル(70% 工 タ ノ ー ル)b.消 毒 用 薬 剤 ス プ レ 一(GERMISPRAY) c. 紫 外 線 殺 菌 器 ( #10000ス ー パ ー 殺 菌 器 ) d.オ ― ト ク レ ー ブ ( ク レ ーブ ト ロンDA―3) e. 無 処 理 の5種 類 の 方 法 で ハ ン ド ピ ー ス を 消 毒 し ,a.b.c. にっ いて は30秒 ,60秒 ,90秒 と消 毒時 間 を変 化さ せ それ ぞれ の 消毒 時間 に っい てハ ン ドピ ース を30本 ,d.e.にっ いては30 本を 試料 と した 。そ の 後ハ ンド ピースごとチオグ リコレ―ト培地を 用いて唾液由来の細 菌の培養 を行いそれぞれ の消毒効果を培地の 混濁で汚染度を(十十),(十),(―)に分類し判定した。ま た , 唾 液 由 来 の 細 菌 の 付 着 部 位と 分布 範 囲の 確認 はMS寒 天培 地 を用 いて 唾 液中 に合 ま れる レ ンサ球菌のコロ ニーを指標として調 べた。
あるハンドピースに対し暗室内で血液の残留の有無をルミノール発光試験を用いて調ベ,ハンド ピースが紫青色に 発光する程度で汚染度を( 十十),(十),(―)に分類し判定した。
実 験2工 ア 一 夕 一 ビ ン ハ ン ド ピ ー ス の 簡 易 消 毒 器 の 試 作 と 性 能 評 価 貫流式ボイラーを用いて発生させた高圧蒸気による清掃を応用してハンドピースの簡易消毒器を 試作し,実験1と同様に唾液由来の細菌によって汚染させたハンドピースを用い,試作簡易消毒 器で30秒,60秒,90秒と消毒時間を変化させチオグリコレート培地を用いて汚染度を判定した。
また,血液によって汚染させたハンドピースに対しても同様に洗滌時間を30秒,60秒,90秒と変 化 さ せ , ル ミ ノ ー ル 発 光 試 験 に よ っ て 血 液 残 留 の 有 無 を 調 べ 汚 染 度 を 判 定 し た 。 実験1および実験2の結果より以下の結論が得られた。
1.歯科臨床の中で,一般的に行われている消毒用アルコール(70%工夕ノール)による清拭消 毒や,今回用いた市販の消毒装置では,患者の交代時間として想定した2分以内の消毒時間では 実験的に付着させた唾液由来の細菌および血液を完全に消毒および除去することができないこと が確認できた。
2.オートクレーブ以外の各種の消毒法で除去しきれない唾液由来の細菌および血液の大部分は エアータービンハンドビース先端部と把持部の接続部分の溝や把持部に設けられたすべり止めの 凸凹部分に残留することが確認でき,消毒清掃に有効なハンドピースの形状の検討か必要と考え られた。
3,試作した高圧蒸気を応用したハンドピースの簡易消毒器によるエア一夕一ビンハンドピ―ス の消毒法は2分間の使用で唾液由来の細菌および血液を除去できることが確認できたが,消毒後 にエアー夕一ビンハンドピースが高温となり,しばらくの間使用不可能になることが明らかにな り,消毒後のハンドピースの冷却方法の検討が必要と考えられた。
以上の研究内容にっいて主査,副査が一同に会して論文提出者に種々質問を試み,審査を行つ た結果,文章表現などにやや不十分な部分が認められたが,その部分を訂正すれば本研究は内容 的にエアー夕一ビンハンドピースの消毒法にっいてこれまでの消毒法に優る消毒装置を開発でき た こ と で 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 値 す る 研 究 で あ る こ と を 認 め た 。