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博士(歯学)金子 潤 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)金子   潤 学位論文題名

各 種 無 髄 歯 漂 白 法 に お け る 漂 白効 果 お よ び 漂 白 剤 が べ ー ス 材 の 封 鎖 性 に 与 え る 影 響

学 位 論 文内 容 の 要 旨

    言

  Walking bleach法やThermocatalytic法などの無髄歯漂白法にお ける問題点のひとつに、漂白処置後の齲頚部における歯根の外部吸 収がある。この原因は、漂白剤として用いた過酸化水素水が歯頚部 付近の象牙細管を透過して根表而に遵し、局所のpH値を低下させ 炎症性反応を惹起するためとぃわれている。対策として、安全性の 高いSpasscrの漂白法や、根管口において根充材の上をぺース材で 封鎖する方法が、現在一般に推奨されている。しかしながら、これ らの漂白法の漂白効果やべース材の封鎖性について比較検討した報 告は少なく、不明な点が多い。本研究では、より効果的で安全性の 高い無髄歯漂自法を見いだすために、各種漂白剤の性状とくにpH 値および気体発生量を調べるとともに、各漂白法の漂白効果を比較 検討した。さらに漂白剤が各種ベース材の封鎖性に与える影響につ いても検討を加えた。

    材料および方法

  本 研 究 に 用 い た 無 髄 歯 漂 自 法 は 、Spasserの 漂 白法(SM)、 Walking bleach法(WB)、Thermocatalytic法(TC)とWBを併用した Combination法(CM)の3種である。また、蒸留水のみ(DW)および 3 096過酸化水素水のみ(HP)をコントロールとした。一方、ベース材 としては、グラスアイオノマーセメント(GI)、りん酸亜鉛セメント (ZP)、ポリカルボキシレートセメント(PC)、およぴべース材のなぃ 場合を想定した根管充填用ユージノール系シーラー(RS)の4種を用

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いた。

実験1:各種漂白剤の性状

SM、 WB、DW、HPの 4群 に っ き 、 漂 白 剤 の pH値 お よ び 漂 白 剤 か らの1時間 あた り の気 体発 生 量を 、漂 白剤 調製直後から24時間ご と に96時間後まで測定した。

実験2:各種漂自法の漂白効果

採 取 し た ヒ ト 血 液 を ス タ ー ラ ー に て 攪 拌 し 、 硫 化 鉄(FeS)を過 飽 和 状 態 に な るま で 混和 後、 抜 去歯 を浸 漬 し、 温度37℃ 、相 対 湿度 95% 以上 の 条件 下で1週間 保管 し て変 色歯を作 製した。その後、 各 種 漂 白 剤 中 に浸 漬 し、20日 間漂 白処 置 を行 った 。 変色 歯作 製 前後 お よ び 漂 白 処 置5日 目 ご と に 、MINOLTA社 製 試 作 歯 科 用 色 彩 計 を 用いて、各試料の歯根象牙質而の他彩測定を行った。表色はL.a.b. 表色系により、変色操作前の測色値を0として、変化量を表す△L.、

△a.、△b.の値に置き換えた。また、漂白処置を行った歯の色調が、

漂 白20日 目に お いて 、ど れ だけ 変色 操 作前 の状 態 にま で回 復 した かを 評価するために、変 色操作前後の色差 および変色操作前 と漂白 20日目と の色差から、各種漂 白法の漂白効果率 を設定し算出した 。   実 験 3: 漂 白 剤 が べ ー ス 材 の 封 鎖 性 に 与 え る 影 響   1.崩壊率試験

  JIS規 格(T6602‑85)の試験方法に 準じて、漂白剤によ る各種ベー ス 材 の 崩 壊 率 試 験 を 行 っ た 。 漂 白 法 はWB、CMの2群 と し、 コン ト ロ ー ル と し てDWを 用 い た 。 漂 白 処 置 は20日 問 行 い、5日ご とに 崩 壊率を累積値として算出した。

  2.根管封鎖性試験

  ヒ ト 抜 去単 根 歯の 歯冠 部 を切 断除 去 し、 通法 に 従っ て根 管 拡大 およ び根管充填を行い、GI、ZP、PC、 およびNB(べース材な し)の 4グ ル ー ブ に 分 け た 。 そ の 後 、 根 管 口 部 分 に 直 径3mm、 深さ4mmの 窩 洞 を 形 成 し て 、 各 ベ ー ス 材 を 充 填 し 、WBま た はCMに よ っ て20 日 間 漂 白 処 置 を 行 っ た 。 漂 白 終 了 後 、 窩 洞 お よ ぴ 周囲Immを 除い た部分にネイ ルノヾーニッシュを 塗布し、1%メチレンプルー溶液中 に24時 間 浸漬 し た。 試料 を 歯軸 方向 に 割断 して 、 歯冠 側断 端 から の色 素浸透距離を測定す るとともに、ベー ス材が歯冠側断端 から最 も深 く溶解した部位まで の距離を、ベニス 材の溶解深さとし て測定

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した。

    結果および考察   1.漂白剤のpH値測定

  SMは10.09〜11.09、WBは7.55〜9.71を示し、終始アルカリ性 で推 移していたのに対し、HPでは4.29‑4.48と酸性の状態を示し てい た。実 験結果 から、TC単独 あるい はTCとWBを併用するCMの ように、30%過酸化水素水単味を加熱する処置では、漂白剤が歯 周組織ヘ漏洩した際、局所におけるpH値を低下させる可能性が示 唆されたふ

2.漂白剤からの気体発生量の測定

24時 間後以 降では 、WBが 有意に 他群よ り高い気体発生量を示し ていた。これは、30%過酸化水素水の分解が、過ほう酸ナトリウ ム混和によるアルカリ化によって促進されたためと考えられる。

一方 、SMに おける 気体発 生量は 実験期 間を通じてわずかであっ た。したがって、分解によって遊離する過酸化水素はごく少量であ り、漂白効果も低いと推察される。

3.各種漂白法の漂白効果

  漂白処置によってL.が変色操作前の状態より商くなったのは、

WB、CM、HPの3群 であっ た。とく にCMお よびHPはL.がきわめて 高い値となった。これは、温度や浸漬時間は異なるが、両群とも 30%過酸化水素水単味の中に浸漬する処世を行ったためと思われ る。 CMの際のTC、あるいはHPでは、酸性環境下に置かれた象牙 質而が脱灰されて、過酸化水素水の浸透が助長されることに加えて、

変色の原因物質のみならず脱灰により露出した象牙質の有機性成分 をも、変性、脱色したため、L.がきわめて高値になった可能性があ る。また、WBでは漂白処置後にL.が変色操作前の値近くまで回復 していた。この理由としては、漂白剤がアルカリ性のため、無機成 分の脱灰作用や、それに伴う有機成分の露出および変性、脱色作用 はほとんどなく、おもに象牙細管内に沈着した硫化鉄などの変色原 因 物 質 に 対 し て 漂 白 作 用 を 及 ぽ し た た め と 思 わ れ る 。   漂白効果率に関しては、WBが51.0%と最も高い値を示し、L.、

a.、b.が調和して回復することが明らかとなった。 CMでは32.7%

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と、WBより も低い漂白効果率で あった。すなわち 、CMではa.、b. の回復よりも早くL.が回復してしまい、最終的にa.とb.が変色操作 前の値 に近づぃた時点では 、すでにL.が上昇しすぎて白っぽくなり す ぎ る 傾 向 を 示 し て い た 。 一 方 、SMに お い て は ―45.1% の 漂 白 効果率 であり、漂白効果を 発揮するには長期 間を要するものと思わ れた。

4.ベース材の崩壊率試験および根管封鎖性試験

NBで は 、 裏 層 し た 場 合 に 比 べ て 根 管 封 鎖 性 が 有 意 に 劣 っ た 。PC は漂白 剤に対する崩壊性が 高く、根管封鎖性 においても劣っていた ことか ら、漂白処置におけ るべース材として は好ましくないと思わ れ た 。GIでは 漂白 剤 に対 する 根 管封 鎖性 は 優れ てい る が、 崩壊 性 が 高 く、ZPで は崩 壊 性は 低い が 、歯 質と の 界面 にお け る漂 白剤 の 漏洩が 大きいため、どちら を用いても確実に 漂白剤に対する封鎖効 果が得 られるとは限らなぃ 。しかし、漂白剤 の漏洩に対する危険性 を少な くするために、必ず べース材による裏 層は行うべきである。

    結  論

以 上 のこ とか ら 、Walking bleach法を 単独 で 行う 場合 が 、安 全か つ最 も効果的な無髄歯 漂自法であることが 明らかとなった。また、

ベー ス材の選択にあた っては、その特性を 十分に理解し、漂白剤交 換時 には歯の色調のみ にとらわれることな く、ペース材の崩壊状態 等に ついても十分な注 意を払う必要がある 。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主 査  教 授  下 河 辺 宏功 副 査   教 授   加 藤   熈 副 査   教 授   内 山 洋 一

学 位 論 文 題 名

各 種 無 髄 歯 漂 白 法 に お け る 漂 白 効 果 お よ び 漂 白 剤 が べ ー ス 材 の 封 鎖 性 に 与 え る 影 響

審査は主査、副査全員が一同に会し口頭でなされた。はじめに 申請者に対し本論文の要旨の説明を求めたところ、以下の内容に ついて論述した。

  無髄歯漂自法における問題点のひとつに、漂白剤の漏洩による 歯根の外部吸収がある。この対策として、安全性の高いSpasserの 漂白法や、根管□において根充材の上をべース材で封鎖する方法 が推奨されている。しかし、これらの漂自法の漂白効果やべース 材の封鎖性については、不明な点が多い。本研究では、より効果 的で安全性の高い無髄歯漂白法を見いだすために、各種漂白剤の 性状とくにpH値および気体発生量を調べるとともに、各漂白法の 漂白効果を比較検討した。さらに漂白剤が各種ベース材の封鎖性 に与える影響についても検討を加えた。

    材料および方法

本 研 究 に 用 い た 無 髄 歯 漂 白 法 は 、Spasserの 漂 自 法(SM) 、 Walking bleach法(WB)、Thermocatalytic法(TC)とWBを併用し たCombination法(CM)の3種である。また、蒸留水のみ(DW)およ び30%過酸化水素水のみ(HP)をコントロールとした。ベース材と しては、グラスアイオノマーセメント(GI)、りん酸亜鉛セメント (ZP) 、 ポ1Jカ ル ボ キ シ レ ー ト セ メ ン ト (PC) を 用 い た 。

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  実 験1で は 、各 種 漂白 剤の 性 状と して 、 漂白 剤のpH値 お よび 漂 白 剤 か ら の1時 間あ たり の 気体 発生 量 を、 漂白 剤 調製 直後 か ら24 時間ごとに96時間後まで測定した。

実 験2で は 、 各 種漂 自法 の 漂白 効果 を 評価 した 。 すな わち 、 ヒト 血 液と硫化鉄(FeS)によって抜 去歯を人工的に変 色させ、これを 20日 問 各種 漂白 法 によ って 漂 白し た。 変色歯作製 前後および漂白 処 置5日 目 ご と に 、MINOLTA社 製 試 作 歯 科 用 色 彩 計を 用い て 、各 試 料の 歯根 象 牙質 面の 色 彩測 定を 行 った。測 定結果から、各種漂 白法の漂白効果率を設定し算出した。

  ま た、実験3では、漂白剤が各 種ベース材の封鎖 性に与える影響 に つい て、 ベ ース 材の 崩 壊率 試験 お よび根管 封鎖性試験によって 評 価した。崩壊 率試験は、JIS規 格の試験方法に準 じて行い、漂白 処 置 は20日 問 とし 、5日 ごと に 崩壊 率を 累 積値 とし て 算出 した 。 根 管封 鎖性 試 験は 、抜 去 歯の 歯冠 部 を切断除 去して根管充填を行 い 、 根 管 □ 部 分 に 直 径3mm、 深 さ4mmの 窩 洞 を 形 成 後、 各ベ ー ス 材 を 充 填 し た 。 これ を20日間 漂 白後 、窩 洞 およ び周 囲Immを除 い た 部 分 に ネ イ ル バー ニッ シ ュを 塗布 し 、1%メ チ レン ブル ー 溶液 中 に24時間 浸漬 し た。 この 試 料を 歯軸 方向に割断 して、色素浸透 距離を測定した。

    結果および考察

  漂 白 剤のpH値 は、SMとWBで は終 始 ア冫レカ リ性で推移してい た の に 対 し 、HPで は 酸 性 の 状 態 を 示 し て い た 。 実 験 結 果か ら、30

% 過酸 化水 素 水単 味を 加 熱す る処 置 では、漂 白剤が歯周組織へ漏 洩 した 際、 局 所に おけ るpH値 を低 下さ せる可能性 が示唆された。

  ま た 、 漂 白 剤 か ら の 気 体 発 生 量 は 、24時 間 後 以 降WBが他 群 よ り 高い 値を 示 して いた 。 これ は、30% 過酸化水素 水の分解が、過 ほ う酸 ナト リ ウム 混和 に よる アル カ リ化によ って促進されたため と 考え られ る 。一 方、SMで は 気体 発生 量は実験期 間を通じてわず か であ った 。 した がっ て 、分 解に よ って遊離 する過酸化水素はご く少量であり、漂白効果も低いと推察された。

  各 種 漂 白 法 の 漂 白 効 果 率 で は 、WBが51.0% と 最も 高い 値 を示 し、L 、a.、b.が調和して回復することが明らかとなった。CMでは 32.7% と 、WBよ り も 低 い 漂 白 効 果 率 で あ っ た 。 一 方 、SMは ー

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45.1%であり、漂白効果を発揮するには長期間を要するものと思 われた。

  ベース材の崩壊率試験お′よび根管封鎖性試験では、以下の結果 が得られた。NB(ベース材なし)では、裏層した場合に比べて根 管封鎖性が有意に劣った。PCは漂白剤に対する崩壊性が高く、根 管封鎖性においても劣っていたことから、漂白処置におけるべー ス材としては好ましくないと思われた。GIでは漂白剤に対する根 管封鎖性は優れているが、崩壊性が高く、ZPでは崩壊性は低いが、

歯質との界而における漂白剤の漏洩が大きいため、どちらを用い ても確実に漂白剤に対する封鎖効果が得られるとは限らない。し かし、危険性を少なくするために、必ずべース材による裏層は行 うべきである。

    結  論

  以上のことから、Walking bleach法を単独で行う場合が、安全 かつ最も効果的な無髄歯漂白法であることが明らかとなった。ま た、ベース材の選択にあたっては、その特性を十分に理解し、漂 白剤交換時には、ベース材の崩壊状態等についても十分な注意を 払う必要がある。

  ひきっづき各審査員と申請者のあいだで、本論文の内容とその 関連項目について質疑応答がなされた。これらに対して、申請者 は本研究から得た知見と文献を引用して明快かつ適切な回答を行っ た。その結果、本研究において、Walking bleach法を単独で行う 場合が安全かつ最も自然感を得られる無髄歯漂自法であることを 示した点と、漂白剤の漏洩防止に使用されている各種ベース材の 漂白剤に対する特性を明らかにした点は、今後臨床において変色 無髄歯の治療を行う上できわめて有意義な研究であることが認め られた。

  以上より、審査委員は全員、本研究が学位論文として十分値し、

申 請 者 が 歯 学 博 士 の 学 位 授 与 に ふ さ わ し い と 認 定 し た 。

参照

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