博士(歯学)山崎英俊 学位論文題名
HTLV − Ienv − pX 遺 伝 子 導 入 フッ ト に おけ る 膠原 病の発 症と自己抗体の産生
‑HTLV‑I env ―pX 遺伝子導入モデルラット一
学位論文内容の要旨
[緒言]
ヒトT細胞白血病ウイルス(以下HTLV・I)は,成人T細胞白血病のほか痙性脊髄麻痺.慢性関節症,ぶど う膜炎の原因ウイルスであるほか,シェーグレン症f暎群,肺胞性気管支炎,多発性筋炎,感染性皮膚炎をも 引 き 起こ す と 考え ら れ てお り , そ の発症機 序解明の ためモ デル動物 の作製 が求めら れてい る.
【目的]
本研究ではこれらのHTLV・I関連疾患発症機序解明を目指し,疾患発症に深く関与していると考えられ て い る envお よ びpX領 域 遺 f云 子 をHTLV‑Iに 感 染 感 受 性 の あ る ラ ッ 卜 に 導 入 し た .
[実験方法]
1.卜ランスシェニックラッ卜の作製 過排卵誘起したF344およびWKAHの受精卵にHTLV.I LTR (10ng terminal repeatをブ口モ―夕一としたenv,pX領域遺f云子を有する発現コンストラク卜をマイク口インゾェ クション法にて注入し.産仔を得,系統化した.
2.導入遺f云子の解析 ラット尾部よりDNAを抽出し.polymefasech血nfeacdon(PCR)法およびサザン法 にて導入遺f云子の組込みの確認をした,
3.導入遺伝子発現の解析 各臓器よりmRNAを抽出し,/一ザン法にて導入遺f云子の発現を検索した.
また,微量の発現を検索するために,rcver覽tran鷺dpcaseGT)・PCR法も同時におこなった.牌細胞および 関節腫脹部,心筋組織から可溶化蛋白を抽出し.抗envおよび抗pX抗体によるウエスタンプ口ット法によ って導入遺伝子産物の同定を試みた.
4.トランスジェニックラットにおける病態の解析
1)組織学的検索 env・pXラットの各臓器,組織は.10%ホルマリン固定,ヘマ卜キシリン,エオジン染 色後病理組織学的観察をおこなった,
2)血液生化学的解析 env・pX丶ラットの末梢血について,各種血液学的および生化学的検査をおこな った,
3)免疫学的解析
(a)自己抗体の測定 env,pXラットの血漿中の抗1本鎖DNA抗体,抗2本鎖DNA抗体,抗キ亥抗体,リ ウマチ因子.抗カルジオリビン抗体価を測定した.
(b)抗HTLV・I抗体の検出 env.pXラット血清中の導入遺伝子産物に対する抗体の検出は,ヒトならび
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に ラ ッ トHTLV・1産 生T細 胞 株MT‑2お よ びWKA,Sl細 胞 の 可 溶 化 蛋 白 を 抗 原 と す る ウ エ ス タ ン プ ロ ッ 卜 法によ りお こなっ た.
(c)リ ンバ球 機能 の検討
i) 自 己 増 殖 能 の 検 定 env‑ pXラ ッ ト 頚 部 リ ン ノ ヾ 節 細 胞 を 未 処 理 培 養 ,concanavalin A(Con A)存 在 下 培 養 あ る い はmitomycinCで 処 理 し たLEJラ ッ ト リ ン バ 節 細 胞 と の 混 合 培 養 に よ り , そ の 自 律 的 増 殖 能 , 非 特 異 的量 曽 殖 能 お よび ア 口 特 異 的± 曽 殖 能 を ^H‑ thymidincの 馭 り 込み 量 によ り検出 し,同 週齢non‑卜ラン スジ ェ ニック ラッ トリン ノヾ節 細胞の それぞ れの 増殖能 と比較 した.
【結果 】
1. ト ラ ン ス シ ェ ニ ッ ク ラ ッ ト の 作 製 WKAHで は 注 入 卵 数2886個 , 全 産 仔 数115豆 頁 の う ち2豆 頁 (Tg17,
′rg62) に 導 入 遺 伝 子 の 組 み 込 み が 確 認 さ れ た が ,F344で は注 入 卵 数348個 , 全 産 仔数49頭 の うち1頭 も 確 認 されな かっ た.1、g17.rr.g62は と.も に欠 失なく 導入遊f云予が子孫に伝達し,その導入遺f云子の量は1′/ノムあ たり約lOコピ ―以上 と考え られ た,
2. 導 入 造f云 子 の 発 現 cnv.pXラ ッ ト の 病 変 を 認 め な い 肺 , 脾 臓 , 大 脳 , 睾 丸 お よ び 病 変 を お こ し た 心 筋 , 関 節 で2.lKbのpXmRNAに 相 当 す る バ ン ド が 認 め ら れ た . し か し , こ の レ ベ ル で はenvmRNAに 相 当 す る 約4kbの ノ ` ン ド は 確 認 さ れ な か っ た . 一 方 ,RT.PCR法 で は 検 索 し た す べ て の 組 織 でenv,pXと も そ の mess昭eの 発 現 が 確 認 さ れ た . 蛋 白 発 現 に つ い て は ノ ― ザ ン ブ 口 ッ ト で そ の 発 現 が み ら れ た 牌 臓 お よ び 病 変 を 伴 う 心 筋 , 関 節 か ら の 可 溶 化 蛋白 の ウ エ ス タン ブ 口 ッ ト 法に よ り 検 出 を 試み た が ,Tg17,Tg62と もEnv. T弧 に相当 する蛋 白の 発現は 確認さ れなか った.
3. 疾患の 発症と その 病態
1) 組 繍 病 理 学 的 解 析 T・g17,Tg62で は , と も に 約5週 齢 以 降 に 後 肢 足 関 節 部 に 一 致 し て 慢 性 関 節 リ ウ マ チ 類 似 の 関 節 炎 を 発 症 し た . さ ら に 関 節 炎 の ほ か 病 理 組 織 学 的 に , 壊 死 性 血 管 炎 , 血 栓 形 成 . 筋 炎, 心 筋 炎, シ ェ ー グ レン 症 候 群 類 似の 慢 性 唾 液 腺 炎, 涙 腺 炎 な どcoll昭env2峪cul釘disea饗sの 病 像を 伴って いた . また, 約半 数のenv.pXラ ットに 顕著 な体重 減少と 胸腺萎 縮も 認めた ,
2) 血 液 生fヒ 学 的 解 析 齟v・pX` ラ ッ 卜 の 末 梢 血 で は , 好 中 球 数 の 増 加 を 認 め た が り ン バ 球 数 に 著 変 な く , 異 型 リ ン ノ ヾ 球 の 出 現 も 確 認 され な か っ た .ま た ,env・pXラ ッ卜 は 高 ガ ン マ グ口 ツ リ ン 血 症を 呈 し て い た.
3) 免疫学 的検討
(a) 自 己 抗 体 の 測 定 cnv・pXラ ッ ト で は り ウ マ チ 因 子 , 抗2本 鎖DNA抗 体 や 抗 カ ル ジ オ リ ビ ン 抗 体 が 高 値 を 示 し た , し か し , 特 に 高 値 を 示 し た り ウ マ チ 因 子 な ど は 関 節 炎 の 程 度 や 血 管 炎 , 筋 炎 , 心 筋 炎. 唾 液 腺 炎 な ど の 発 症 に は 相 関 し な か っ た , 間 接 螢 光 抗 体 法 で は 核 辺 緑 が 強 染 す る 抗 核 抗 体 を 検 出 し 、 抗2本 鎖DNA抗体陽 性の 所見と 一致し た.
(b) 抗hv. 抗T巛 抗 綣 の 産 生 に つ い て HTLV・I産 生 培 養 細 胞 可 溶fヒ 抗 原 を 標 的 と し た ウ エ ス タ ン ツ 口ット 法で は導入 遺f云子産 物に対 する抗 体は検 出さ れなか った.
(c) リ ン バ 球 機 能 に つ い て env・pXラ ッ ト リ ン バ 球 は 非 刺 激 下 で 強 い 自 律 性 増 殖 能 が 確 認 さ れ た が , ConAやア ロ抗原 に対し ての 反応性 はコン ト口ー ルと 差がな かった .
(考察 ]
j虫 立 し た2系 統 のenv,pXラ ッ ト で はRTヤCR法 に よ り 広 汎 な 臓 器 に 導 入 遺f云 子 の 発 現 を 検 出 で き た が , 通 常 の ノ ー ザ ン レ ベ ル で は 困 難 で あ る こ と か ら ,env・pXラ ッ 卜 内 で のHTLV・IL11Rの ブ 口 モ 一 夕 ― 活 性 は 弱 く , 特 異 性 も 岻 い と 考 え ら れ る , ま た2系 統 と も 導 入 遺f云 子 が 異 な る 位 置 にtandemに 組 み 込 ま れ てい る に も か か わ ら ず 同 一 の 疾 患 を 誘 導 し 得 た こ と よ り , 発 症 し た疾 患 | よ 組 込ま れ た 位 置 効 果に よ る 可 能 性よ り
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も 、 導 入 遺f云 子 産 物 に よ り 直 接 的 あ る い は 間 接 的 に 誘 導 さ れ た 結 果 と 考 え ら れ る , 神経線維腫症,関節炎, シエ―グレン症候群,胸腺萎 縮はすでにpXやenv・pXトラ ンスジェニックマウス でも幸駸告されているが,これらにカ‖えていままで報告がない壊死性血管炎,筋炎,心筋炎もenv‑ pXラッ卜 では高率に発症し,これら 多種類にわたる疾患あるいは 異常が同一1固体に高率に発症するというキR告は本 研究が最初である.
本研究において,env.pXラッ卜の血清中にりウマチ因子、抗核抗体.抗カル、ンオリピン抗体など自己抗体 が検出される.現在のとこ ろ,env―pX遺伝子による自 己に対する免疫学的寛容の破 綻の機序は不明である が ,env‑pX領 域 産 物 が 自 己 免 疫 現 象 を 誘 導 し う る こ と は ほIま 間 違 い な い と 考 え ら れ た , 以上,本研究で樹立したcnv‑pXラッ卜はHTLV,I関連 疾患モテル動物となるばかり でなくヒトのcollagen vascular dise‑iisesの発症に関与するレト口ウイルスの病因的役割を調べる上での非常に有用なモデルになり うると考えられる.
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