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博士(歯学)青山洋子 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)青山洋子 学位論文題名

ヒト歯髄におけるりンパ管の微細分布に関する      酵素組織化学的研究

学位論文内容の要旨

  歯牙に何 らかの傷 害が加わ った際の歯 髄の反応 およびそ の修復過 程において、

血管系か ら組織間 隙に多量 に滲出した 組織液を いかにす みやかに 取り除くかは、

その後の 治癒およ び予後の 良否を左右 すると言 っても過 言ではな い。このような 組織液の 吸収・排 除にはり ンパ管系が 重要な役 割を果た している わけであるが、

歯髄のり ン/ヤ管については、歴史的にその存在の有無そのものが論争の的となっ てきてい るが、近 年、透過 型電子顕微 鏡を用い た観察に よって、 歯髄にりンパ管 が存在す ることが 相次いで 明らかにさ れ、リン パ管の有 無そのも のに関すろ論争 には終止 符が打た れた。す なわち、そ れぞれ不 規則な外 形、非常 に薄い内皮細胞 壁、 不 完 全あ る いは 欠 如 したbasallamina、内 皮 細胞の 離開、およ びanchoring 皿amentなど、 微細構造 的に明ら かにりンノ く管であると同定される特徴を有する 管腔構造 が存在す ることを ヒト歯髄や ネコ歯髄 で明らか にしてい る。しかしなが ら、透過 型電子顕 微鏡によ る検索では 微細分布 ・構築に 関しては 、ほとんど明ら かにする ことはで きないこ とから、光 学顕微鏡 にてりン パ管を同 定する方法の開 発が待ち望まれていた。

1989年、Katoは凍結切片標本に5 .nucleotidase‑ alkal̲ine phosphatase二重染 色を施す ことによ り、酵素 組織化学的 にりンパ 管と血管 を鑑別す る染色法を新た に開発し た。これは両管壁の酵素活性の差、すなわちりンノく管内皮では血管内皮 に比べて5'‑nucleotidase活性が著 レく高い こと、また逆に血管内皮ではりンパ管 内皮 に 比 べてaLkaline phosphatase活性 が 著 しく 高いこ とに着目 したもので あ り、光学顕微鏡レベルでりンパ管を同定する方法では画期的である。そこで、,5|.

nucleotidase‑ alkaline phosphatase二重染色 法をヒト 歯髄組織 に応用し、歯髄 における りンパ管 の存在を 光学顕微鏡 ならびに 透過型電 子顕微鏡 で明らかにした が、その 過程でそれらの分布には個体差がある可能性に気づしヽた。そこで本研究 では、ヒ ト歯世におけるりンノマ管の微細分布、特にその差興に注目して検索を行 った。

〔材料と 方法】本 学歯学部 附属病院口 腔外科外 来におい て、外科 的理由により抜 歯さ れ た18〜25歳 の ヒト 上 下 顎第 三 大臼 歯34本 を 用いた。こ のうち根 完成歯は 16本 、 根未 完 成歯 は18本 で あ った 。 抜歯 後 た だち にマイセ ルにて分 割して歯 蝕 組 織 の み を 取 り 出 し 、 剃 刀 を 用 い て 幅 約 l mmに 横 断 ・ 細 切 し た 後 、

(2)

O.C.T.compoundに て 包 埋 し て‑20℃ の ク リ オス タ ッ ト 内 で 厚 さ 約10型mの凍 結 横 断 連 続 切 片 をス ライ ドグ ラス に張 り付 けたの ち、 冷6%p araformaldehydeで 10分 間 固 定 し た。 そ し て 、Katoの 方 法 に 準 じ て5I‑ nucleotidase‑ alkaline phosphatase二 重染 色を 施し て光 学顕 微鏡 で観 察し た。 なお、 連続する切片の一 部にはH‑E染色を施した。

〔結 果と考察】検索に用いたすべての歯髄において5..nucleotidase反応陽性を 示す りン パ管 の存 在が 確認 された が、その数および分布は特に冠部歯髄において 著レく異なっており、歯髄のりンノく管分布には個体差のあることが明らかとなっ た。 すな わち 、@ 髄角 部を 除く歯 髄全体でりンパ管が観察されろもの、◎冠部歯 髄 の 中 央1/2以 下に なら ない とり ンパ 管が 観察 され ない もの 、◎ 歯頚 側1/3以下 にな ってはじめてりンノく管の分布が観察されるものの3つのタイプに大別される こと が明 らか とな った 。こ のこと は、歯科臨床においてしばしば経験される歯髄 炎な どの 臨床 症状 、お よび 治療の 予後などにおける歯髄反応の個体差と深く関わ って いる 可能 性を 示唆 して いると 思われた。今後さらに炎症歯髄を用いた検索を 行うことによってこのことが明らかにされるであろう。

また,根完成歯において、リンノく管が観察され始める冠部歯髄の咳頭側では歯髄 辺縁 部に 近い 領域 で観 察さ れたが 、歯頚側に向かうにっれて次第に歯謎の中心部 寄り で観 察さ れる よう にな り、根 部歯髄ではそのほとんどが歯髄の中心部寄りで 観察された。このこと(ま、歯髄リンノく管は主として冠部歯髄の辺縁部から起こり、

次第に集まって集合リンノく管となり、根尖孔から出て行くものであることを示唆 レて いる が、 歯髄 にお ける 炎症の ほとんどが冠部歯髄の辺縁部から始まることを 考え ると 、冠 部歯 髄に おけ るりン パ管の多くが歯髄辺縁部に近い領域に位置して いるのfま、合目的的であると思われた。そして歯髄辺縁部におけるりンノく管の起 始に つい ては 、象 牙芽 細胞 層の下 層に位置するものはみられたものの、明らかに 象牙 芽細 胞層 に進 入し てい ると思 われる所見は得られなかった。但し、毛細血管 が象牙芽細胞中に観察されるのは象牙質が活発に形成されている時期のみであり、

それ以外の時期では毛細血管は象牙芽細胞層の下層に観察されることを考えると、

この 観察 結果 から だけ では ただち に、象牙芽細胞層の中にりンパ管は存在しない とは 言い 切れ ない 。今 後、 象牙質 形成期にある歯髄における経時的観察を行う必 要が ある と思 われ る。 一方 、根未 完成歯では、根完成歯に比べて観察されるその 数が 多く 、レ かも 辺縁 部よ りはむ しろ中心部寄りに位置する傾向にあぅた。この こと は、 歯根 形成 に伴 い歯 髄リン パ管の分布が変化、あるいは再構築される可能 性を 示唆 して いる もの と思 われた 。これを明らかにするためには、今後さらに、

乳歯歯髄ならびに永久歯歯髄の加齢変化も.含めた歯牙の形成過程における経時的 変化 に関 する 検索 を行 う必 要があ ると思われる。また、歯髄の中心部寄りで観察 されるりンノく管の一部には、その周囲にalkaline phosphatase陽性反応を示すも の も み ら れ た が、 こ れ ま で に も 種 々 の 動 物 ・ 組織 にお いて 行わ れて いる5|.

nucleotidase‑ aLkaline phosphatase二重染色法を用いたりンノく管の研究では全 く報 告さ れて いな いこ とか ら、こ れは歯髄リンパ管における特殊な機能を示唆し て し ヽ る 可 能 性 が あ る と は 思 わ れ た も の の 、 そ の 詳 細 は 不 明 で あ る 。

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【 結 論 〕 酵 素 組 織 化 学 的 リ ン パ 管 検 出 法 で あ る5'‑nucleotidase‑alkaline phosphatase二 重 染 色 法 を 用 い てヒ ト上 下顎 第三 大臼 歯歯 髄の 凍結 横断 切片標 本を観察した結果、以下の結論を得た。

1.検索したすべての歯髄でりンパ管の存在が確認された。

2.歯髄のりンノく管は、一部は冠部歯髄の中心部に近い領域から起こるものもあ るが 、主 とし て冠 部歯 髄の辺縁部から起こり、次第に集まって集合リンパ管とな り 、 根 尖 孔 か ら 出 て 行 く も の で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 3.歯髄のりンノャ管分布には個体差が認められた。このりン/ぐ管分布の個体差は 歯科 臨床 にお いて しば しば経験する歯髄炎などの臨床症状の程度および治療の予 後における歯髄反応と関連レている可能性が示唆された。

4.根完成歯と根未完成歯における歯髄リンノヾ管の分布状況から、歯根形成に伴 い 歯 髄 リ ン パ 管 の 分 布 が変 化 、 あ る い は 再 構 築 さ れ る 可 能 性 が示 唆さ れた。

5. 一部 の歯 髄リ ンパ管 周囲 に認 めら れるalkaline phosphatase陽性反応は、歯 髄 の り ン パ 管 に お け る 特殊 な 機 能 を 示 唆 し て い る 可 能 性 が あ ると 思わ れた。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ヒト歯髄におけるりンパ管の微細分布に関する      酵素組織化学的研究

  審 査は主査お よび副査 の個別の 口頭試問 により、 研究の目 的ならびに 内容につ い て詳細に実 施された 。先に、5l‑Nase‑ALPase二重染色 法を用い てヒト歯髄組織 を光顕ならびにTEMにて検索レ、歯髄におけるりンノく管の存在を明らかにしたが、

そ の際に歯髄 のりンパ 管分布に は個体差 が存在す る可能性 が示唆され た。そこで 本 研究では、 ヒト歯髄 における りンパ管 の微細分 布、特に その差異に 注目して検 索を行うことを目的とした。

  実験 に は 、外 科 的 理由 に より 抜 歯 され た18〜25歳 のヒト上 下顎第三 大臼歯34 本 を用いた。 抜歯後た だちに歯 髄を摘出 レ、−20℃ のクリオ スタット内 で厚さ約 10餌mの 凍 結横 断 連 続切 片 を作 製 レ た後 、5| .Nase‑ALPase二 重染 色 を 施し て 光顕で検索レた。

  そ の結果、検 索に用いたすべての歯髄において5,‑Nase反応陽性を示すりンノく 管 の存在が確 認された が、その 数および 分布は特 に冠部歯 髄において 著しく異な っ ており、歯 髄のりン ノく管分 布には個 体差のあることが明白となり、3つのタイ プ に大別され ることが 明らかと なった。 すなわち 、@髄角 部を除く歯 髄全体でり ン ノく管が観 察される もの、@ 冠部歯髄 の中央1/2以下にならないとりンパ管が観 察 さ れな い も の、 ◎ 歯頚側1/3以下にな ってはじ めてりン パ管の分 布が観察 され る も のの3つ の タ イプ に大別 されるこ とが明ら かとなっ た。この ことは、 歯科臨 床 においてし ばしば経 験される 歯髄炎な どの臨床 症状、お よび治療の 予後などに お ける歯髄反 応の個体 差と深く 関わって いる可能 性を示唆 していると 思われた。

また、根完成歯におしヽて、リンノく管が観察され始める冠部歯髄の咬頭側では歯・髄 辺 縁部に近い 領域で観 察された が、歯頚 側に向う にっれて 次第に歯髄 の中心部寄 り で観察され るように なり、根 部歯髄で はそのほ とんどが 歯髄の中心 部寄りで観 察 された。こ のことは 、歯髄リ ンパ管は 主として 冠部歯髄 の辺縁部か ら起こり、

次 第に集まっ て集合リ ンパ管と なり、根 尖孔から 出て行く ものである ことを示唆

久 光

春 重

口 田

小 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

し てい るが 、歯 髄における炎症のほとんどが冠部歯髄の辺縁部から始まることを 考 える と、 冠部 歯髄におけるりンパ管の多くが歯髄辺縁部に近い領域に位置レて い るの は、 合目 的的であると思われた。そして歯髄辺縁部におけるりンパ管の起 始 につ いて は、 象牙芽細胞層の下層に位置するものはみられたものの、明らかに 象 牙芽 細胞 層に 進入していると思われる所見は得られなかった。一方、根未完成 歯 では 、根 完成 歯に比べて観察されるその数が多く、しかも辺縁部よりはむレろ 中 心部 寄り に位 置する傾向にあった。このことは、歯根形成に伴い歯髄リンパ管 の 分布 が変 化、 あるいは再構築される可能性を示唆しているものと思われた。ま た 、歯 髄の 中心 部寄りで観察されるりンノく管の一部には、その周囲にALPase陽 性 反応 を示 すも のもみられたが、これは歯髄リンパ管における特殊な機能を示唆 レ て い る 可 能 性 が あ る と は 思 わ れ た も の の 、 そ の 詳 細 は 不 明 で あ る 。   以上 の結 果よ り、 酵素 組織 化学 的リ ンパ 管検出法である5 ‑Nase‑ALPase二重 染 色法 を用 いて ヒト上下顎第三大臼歯歯髄の凍結横断切片標本の観察から、以下 の結諭を得た。

1. 検 索 し た す べ て の 歯 髄 で り ン ノ ヾ 管 の 存 在 が 確 認 さ れ た 。 2.歯髄のりンノャ管は、一部は冠部歯髄の中心部に近い領域から起こるものもあ る が、 主と レて 冠部歯髄の辺縁部から起こり、次第に集まって集合リンパ管とな り 、 根 尖 孔 か ら 出 て 行 く も の で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 3.歯 髄の りン パ管 分布に は佃 体差 が認 めら れた。このりンパ管分布の個体差は 歯 科臨 床に おい てしばしば経験する歯髄炎などの臨床症状の程度および治療の予 後における歯髄反応と関連している可能性が示唆された。

4.根 完成 歯と 根未 完成歯 にお ける 歯髄 リン パ管の分布状況から、歯根形成に伴 い 歯 髄 リ ン パ 管 の 分 布 が 変 化 、 あ る い は 再 構 築 さ れ る可 能 性が 示唆 され た。

5.一 部の 歯髄 リンノく管周囲に認められるALP ase陽性反応は、歯髄のりンパ管 に お け る 特 殊 な 機 能 を 示 唆 し て い る 可 能 性 が あ る と 思 わ れ た 。   以上 のよ うな 学位申請者からの説明に基づいて、個別に主査および副査から本 論 文の 内容 につ いて詳細な説明が求められ、次いで本論文に関連して質問された が申請者tまそれらに対して正し.く理解した上で明快な解答を述べた。また、将来 に お け る 本 研 究 の 発 展 の 可 能 性 に つ い て も 明 確 な 展 望 を 述 べ た 。   本研 究は 、歯 科医学の発展に十分貢献するものであり、審査の結果、審査担当 者 全員 によ って 、本研究の論文は博士(歯学)の学位授与に値するものと認めら れた。

参照

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