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博士(歯学)泉山ゆり 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)泉山ゆり 学位論文題名

舌扁平上皮がんにおける EIAF による MTi‑MrvIP の発現亢進と悪性形質との関連

学位論文内容の要旨

【 緒 言】 が んの浸 潤転移は 細胞接着 の減少、 運動能の亢 進など様 々なステ ップを経 て生じる 。 そ の 中 で も マト リ ック ス メ タロ プ ロ テア ー ゼ(MMP)のよ う なプ ロ テ アー ゼ に よる 細 胞外 基 質 (ECM)の分解が重要な役割を担っている。

  EIAFは、N末端 側に転写 活性化に 関わって いるacidic domain、glutamine rich domainC 端 側 にDNA結 合配列で あるets domainを機 能構造と してもつetsがん遺伝子 群転写因 子である 。 これまでに、EIAFはMMP−1、−3、―9の転写を亢進し、口腔扁平上皮がん由来細胞株や実際の患者 EIAFの発現亢 進がMMPの活性 化を導き 、腫瘍細 胞の浸潤 性増殖に 関連して いることが報告され ている。MMPー2はMMPー9と同様のtype IVコラゲナーゼ/ゼラチナーゼで、その転写調節領域にはets 結 合 配列 が 存 在す る こ とが 示 され て い るが 、MMP−2のreporterassayを行 ったとこ ろ、EIAF よ る転写亢 進はみられ なかった 。頭頚部 がんでは りンパ節転移とMMPー2の発現が相関しているこ と が報告さ れており、MMP‑2の転写活 性化機構 にEIAFがどの ように関 わってい るのかについて検 索 すること は意味のあ ることと 思われる 。MMP―2は潜在型MMPー2として主に周囲問質細胞から分 泌 され、そ の活性化に は膜型マ トリック スメタロ プロテアーゼ1 (MT1―MMP)が関与していること が 示されて いる。MTl‑MMPのプ ロモータ ー領域の 塩基配列を検索するとSP1やCCAAT―boxなどの転 写因子結合モチーフに加えて、Ets結合モチーフが存在した。

  今回、MMP―2の活性化に深く関わるとされるMT1―MMPの活性化にEIAFが関与しているかどうか、

さ らに舌扁 平上皮がん の浸潤・ 転移活性 にEIAFとMTl‑MMPの発 現が関係 しているかにっいて検討 を行った。

【 材 料と 方 法・結 果】MT1―MMPの プロモー ター領域 (―998〜十192)を 組み込ん だCATreporter plasmid5gEIAF発現 ベ クタ ーpCMVEIAF 0.5,2,5,10pgを ヒ ト 骨肉 腫 細胞 株MG63に 遺伝 子 導 入し 、EIAFによるMT1―MMPの活性 化につい て検索し た。EIAFの遺伝 子導入に より、濃 度依     ―857

(2)

存性にMT1―MMPの転写亢進が認められ、EIAF発現ベクターを1011g導入したものではEIAFを 導入しないものに比べて、40倍以上の転写活性化が認められた。

  北海道大学歯学部付属病院口腔外科で治療を行った舌扁平上皮がん25例の新鮮材料から抽出   したRNAを用い、定量RT―PCRによりEIAFとMT1―MMPの発現について検索した。その結果、25 症例中13例にEIAFの高発現が認められ、この13例中11例(85%)はMT1−MMPを高発現してい   た。これに対して、EIAFが低発現であった12症例のうちMT1―MMPを高発現している症例は4 症 例 (33% ) の み で 、EIAFとMTl‑MMPの 発 現 は 有 意 に 相 関 し て い た (pくO.05)。     凍結新鮮標本の得られた18症例にっいてin situ zymographyを行い、ゼラチナーゼの活性   の有無を調べた。ゼラチナーゼ活性は8例に認められ、これらはMMPインヒビター(1−10ー phenanthroline)処理によりその活性が抑制されたことから、type IVコラゲナーゼノゼラチナ   ーゼを発現していることが明らかになった。定量PCRでMT1−MMPを高発現している11症例中7 症 例 で ゼ ラ チ ナー ゼ 活 性 が 認 め ら れ 、 両 者 は有 意 の 相 関 を 示し ていた (pく0. 05)。     定量PCRおよぴin situ zymographyの結果と臨床病理学的パラメーターとの比較検討を行つ   たところ、MT1ーMMPを高発現していた15例中10例はりンパ節転移をきたしており、低発現症 例では10例中4例にのみ転移が認められた。

  【考察】今回著者は、EIAFがMT1ーMMPを転写亢進することを見いだした。CAT reporter assay   で、EIAFはMT1―MMPの転写を濃度依存性に亢進し、EIAFがMT1―MMP promorterを活性化するこ   とが証明された。実際の口腔扁平上皮がん症例においても、EIAFとMT1ーMMPの相関した発現亢 進がみられ、MTl‑MMPの発現とin situ zymographyによるゼラチナーゼ活性の発現には相関性   が認められた。このことは、EIAFは直接MMP―2の転写活性化を起こさないが、MT1ーMMPの発現 亢進を介してMMPー2を活性化し、舌扁平上皮がん細胞の浸潤・転移に関与していることを示唆   している。臨床病理学的なパラメーターと比較検討したところ、T分類、WHO分類、腫瘍の浸潤 様式とEIAF、MT1−MMPの発現との間には有意な関連は認められなかった。しかしMT1−MMPを高 発現している症例では、リンパ節転移の多い傾向が認められ、MT1ーMMPが舌扁平上皮がんにお   い て り ン パ 節 転 移 の 臨 床 的 な パ ラ メ ー タ ー に な り う る 可 能 性 を 示 唆 し て い た 。     これまで病理組織学的に浸潤型の増殖を示す口腔扁平上皮がんは悪性度が高く、リンパ節転 移等を引き起こし予後不良であり、一方膨張型の増殖を示すものは悪性度が低いと考えられて   きた。実際、今回検索した25例のなかで膨張型の増殖を示した10例中転移の認められたもの   は4例にすぎず、一方浸潤型15例中11例に転移がみられ、腫瘍の浸潤様式が転移を含めた予   後に深く関わっていることは実際に明らかである。その一方で、術前の臨床病理学的な予測と     ―858−

(3)

は異なる進展を示す腫瘍も存在し、口腔がんの治療成績の向上を図るためには浸潤・転移機構 の解明を通してさらに新しい分子標的の検索による悪性度の評価が必要とされている。今回の 検索で、膨張型増殖を示しながらMT1―MMPを高発現していた6症例中3症例では転移が認めら れ、膨張型を示す舌扁平上皮がんでもMT1ーMMPの発現の高いものは転移が多い傾向を示した。

  以上の結果は、EIAFがMT1−MMPの転写亢進を介してMMP―2を活性化することで口腔扁平上皮 がんのりンパ節転移を含む悪性形質の発現と深く関係し、EIAFおよびMT1−MMPの発現検索が口 腔 扁 平 上皮 が ん の 術 前 予 測 判 定 因 子の ー っ と な る 可 能 性 を 示 唆 する も の で あっ た。

(4)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

戸 塚 靖 則 向 後 隆 男 鈴 木 邦 明 進 藤 正 信

学 位 論 文 題 名

舌 扁 平 上 皮 が ん に お け る EIAF に よ る MTl‑MIVIP の 発 現 亢 進 と 悪 性形 質と の関 連

審 査 は 、 審 査 員 全 員 出 席 の 下 に 、 申 請 者 に 対 し て 提 出 論 文 と そ れ に 関 連 し た 学 科 目 に つ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 、 以 下 の 通 り で あ る ・

  EIAFetsが ん 遺 伝 子 群 転 写 因 子 の1つ で 、MMP‑1、 ‐3、 −9の 転 写 亢 進 を 介 し て 、 が ん 細 胞 の 浸 潤 ・ 転 移 に 関 与 す る こ と が 知 ら れ て い る.MMP‑2MMP‑9と 同 様 にtype IVコ ラ ゲ ナ ー ゼ / ゼ ラ チ ナ ー ゼ で 、 そ の 転 写 調 節 領 域 にets結 合 配 列 が 存 在 す る こ と が 知 ら れ て い る が 、EIAFに よ る 転 写 亢 進 は み ら れ な い . 本 研 究 は 、MMP‑2の 活 性 化 に 深 く 関 わ る と さ れ るMTl‑MMPの 活 性 化 へ のEIAFの 関 与 、 な ら ぴ に 舌 扁 平 上 皮 が ん の 浸 潤 ・ 転 移 に お け るEIAFMTl‑MMPの 係 わ り に つ い て 検 討 し た も の で あ る .

  最 初 に 、MTl‑MMPの プ ロ モ ー タ ー 領 域 を 組 み 込 ん だCATreporter plasmid5g EIAF発 現 ベ ク タ ーpCMVEIAF 0.52510gを ヒ ト 骨 肉 腫 細 胞 株MG63に 遺 伝 子 導 入 し 、EIAFに よ るMTl‑MMPの 活 性 化 に つ い て 検 索 し た . そ の 結 果 、EIAF の 濃 度 依 存 性 にMTl‑MMPの 転 写 亢 進 が 認 め ら れ た . 次 い で 、 北 海 道 大 学 歯 学 部 付 属 病 院 口 腔 外 科 で 治 療 を 行 っ た 舌 扁 平 上 皮 が ん25例 の 新 鮮 材 料 か ら 抽 出 し たRNA を 用 い 、 定 量RT‑PCRに よ りEIAFMTl‑MMPの 発 現 に つ い て 検 索 し た . そ の 結 果 、25症 例 中13例 にEIAFの 高 発 現 が 認 め ら れ 、 こ の13例 中11例 (85% ) はMTl‑MMP を 高 発 現 し て い た . こ れ に 対 し て 、EIAFが 低 発 現 で あ っ た12症 例 の う ちMTl‑MMP を 高 発 現 し て い る 症 例 は4症 例(33% ) の み で 、 EIAFMTl‑MMPの 発 現 の 間 に 有 意 の 相 関 が 認 め ら れ た (pO05) .さ らに 、凍 結新 鮮標 本の 得ら れた 他症 例に つい てz situ zymographyを 行 い 、 ゼ ラ チ ナ ー ゼ の 活 性 の 有 無 を 調 べ た . ゼ ラ チ ナ ー ゼ 活 性 は8 例 に 認 め ら れ 、 こ れ ら はMMPイ ン ヒ ピ タ ー (l‑10‑phenanthroline)処 理 に よ り そ の 活 性 が 抑 制 さ れ た こ と か ら 、type IVコ ラ ゲ ナ ー ゼ / ゼ ラ チ ナ ー ゼ を 発 現 し て い る こ と が

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明 ら か に な った . 定 量PCRでMTl‑MMPを 高発 現 し てい る11症例中7症例で ゼラ チナ ーゼ 活性 が認め られ 、一方MTl‑MMP低発現の7症例中ゼラチナーゼ活性が認 められのは1症例ので、MT1−MMPの発現とゼラチナーゼ活性は有意に相関していた

(pく0.05).これらの結果は、EIAFは、直接MMP‑2の転写活性化を起こすことはな いが 、MTl‑MMPの 発現 亢進を 介してMMP‑2を活性化し、舌扁平上皮がんのりンバ 節 転 移 を 含 む 悪 性 形 質 の 発 現 に 深 く 関 係 し て い る こ と を 示 し て い る .   一方、定量PCRおよぴin situ zymographyの結果と臨床病理学的パラメーターとの 比 較 で は 、T分 類 、WHO分 類 、 腫 瘍 の 浸 潤様 式 とEIAF丶MTl‑MMPの 発現と の間 に有意な関連は認められなかった.しかし、MTl‑MMPを高発現していた15例中10 例にりンパ節転移がみられたのに対して、低発現症例では転移は10例中4例のみで、

MTl‑MMPが舌扁平上皮がんのりンバ節転移に関して臨床的なバラメーターになる可 能性のあることが示唆された.

  論文の審査にあたって、論文申請者による研究の要旨の説明後、本研究ならびに関 連する研究について質問が行われた.主な質問事項は、EIAFが直接MMP‑2の転写 を亢進しないのはなぜか、MTl‑MMPだけではゼラチナーゼ活性を示さないのか、臨 床 的に見 てMMP‑2とMMP‑9とで はどちらが浸潤・転移に深く関わっていると考え られるか、口腔癌患者の予後を推定するためには今後どのような研究を行うべきか、

等であった.いずれの質問についても、論文申請者から明快な回答が得られ、また将 来の研究の方向性についても具体的に示された.本研究は、EIAFはMTl‑MMPの発 現亢進を介してMMP‑2を活性化させ、舌扁平上皮がんの浸潤や転移に深く係わって いることを明らかにした点が高く評価された.本研究の業績は、口腔外科の分野はも とより、関連領域にも寄与するところ大であり、博士(歯学)の学位授与に値するも のと認められた.

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