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博士(歯学)田村一央 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)田村一央 学位論文題名

生体に及ぼす微粒子のナノトキシコロジー効果

(Nanotoxycological effect of particles on biocompatibility)

学位論文内容の要旨

【緒言】

  現在各分野で精力的に行われているナノテクノロジーの研究開発については、

その プラ ス面 ばか りが 強調 され てい るが 、ナ ノ. マイクロ微粒子が健康に及ば す影 響も 検討 する 必要 があ る。 また 、生 体親 和性 に優れ医療分野で広く応用さ れているバイオマテリアルも、過酷な生体内環境での使用により摩耗・溶出し、

その 微粒 子や イオ ンが 生体 組織 の炎 症・ 壊死 、イ ンプラントの弛み、全身反応 などを超こすことが知られている。

  我 々は ナノ トキ シコ ロジ ーの 研究 を進 める 上で 、ナノ・マイクロ微粒子がin vitroで ヒト 培養 細胞 (好 中球 ・マ クロ ファ ージ )を 用いて 評価 する 方法 を確 立 し、 さら に動 物体 内へ の擬似 摩耗 粉を 埋入 し、in vivoで の微 粒子 の経 時的 な生 体毒 性評 価を 進め てき た。 本研 究で は、 材質 ・粒子サイズの違いが、微粒 子化 した 材料 の組 織為 害作 用に 与え る影 響を 病理 学的・生化学的に検討するこ とを目的とした。

  第 一部(Effects of Partlcle Stze on Cell Functton ancl Morphology lnn and Ni)では チタ ンの 粒子 サイ ズに 依存 した 組織 為害 作用に つい て、 第二 部・

第 三 部(Effects of Ceramic Micro/Nano Particle Size on Cell Function and Morphology.Pathobiological Response of Car・bonnan0‐tubeSand Micro/nanoparncles)で はチ タン に加 え二 酸化 チタ ンやカ ーボ ンナ ノチ ュー ブ(CNT冫を 用い 、ナ ノ.マイクロ微粒子に対するinvitroでの細胞およびinuv0 で の 組 織 の 反 応 に つ い て 、 第 四 部 (Effectsof恥 ,NiandFepardClesonCell FunCtionandpartiCleSiZedependentCytotoXiCit・y)で| まチ タン ・鉄 ・ニ ッケ ルの 各微 粒子 のサ イズ を同 一に 調整 し、 材料 特異的な化学的効果と材料非 特異的な物理的サイズ効果について検討した。

(2)

【 材 料 お よ び 方 法 】

  試 料 と し て 金 属 ( チ タ ン . ニ ッ ケ ル ・ 鉄 ) 、 セ ラ ミ ッ ク ス (二 酸化 チタ ン )、

カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ(CNT)の 各 微 粒 子 を 用 い た 。 そ れ ぞ れ の 微 粒 子 を50nm か ら150ymま で の 各 種 サ イ ズ に 調 整 し た 。

(in vitroで 各 微 粒 子 と ヒ ト ま た は ラ ッ ト の 生 細 胞 を 重 量 比 も し く は 粒 子 数 / 細 胞 数 を 同 一 に し て 混 和 し 、 生 存 率 .LDH活 性 ・ サ イ ト カ イ ン 産 生 量 ・ 活 性 酸 索 産 生 量 を 測 定 し 、 細 胞 の 形 態 変 化 をSEM(電 子 頭 微 鏡 ) で 観 察 し た 。 ま た 、 生 細 胞 が 反 応 す る 臨 界 寸 法 を 測 定 す る こ と を 目 的 と し 、CNTを 用 い 同 様 な 生 化 学 的 ア ッ セ イ を 行 っ た 。

@in vitroで の 反 応 と 比 較 す る た め 、in vivoで ラ ッ ト 皮 下 埋 入 試 験 を 行 い 、 経 時 的 な 周 囲 組 織 の 変 化 を 病 理 組 織 学 的 に 検 討 し た 。

【結果および考察】

第 一 部 〜 チ タ ン 微 粒 子 に 対 す る 生 体 反 応 の サ イ ズ 依 存 性 〜   培 養 液 中 の チ タ ン の イ オ ン 溶 出 量 はICP(誘 導 プ ラ ズ マ イ オ ン 質 量 分 析 装 置 ) の 測 定 限 界 以 下 で あ り 、 化 学 的 効 果 は 無 視 で き た 。in vitroで3ymの チ タ ン 微 粒 子 に 対 し 細 胞 は 著 名 な サ イ トカ イ ン・ 活性 酸素 の産 生を 認め た。 一方 、10yim 以 上 の チ タ ン 微 粒 子 に 対 し て は 細 胞 の 反 応 は 低 下 し た 。in vivoで の 動 物 埋 入 試 験 で も3ym粒 子 の 周 囲 組 織 に は 強 い 細 胞 浸 潤 を 認 め る 炎 症 が 観 察 さ れ た 。 し か し 細 胞 障 害 性 の あ る イ オ ン を 溶 出 す る ニ ッ ケ ル と は 異 な り 壊 死 組 織 は 認 め な か っ た 。50ym以 上 の チ タ ン 粒 子 は 線 維 性 結 合 組 織 で 覆 わ れ マ ク ロ の チ タ ン イ ン プ ラ ン ト に 近 い 反 応 で 、in vivoで も サ イ ズ 依 存 性 を 示 しin vitroの 実 験 結 果 と 良 い 相 関 を 示 し た 。 生 体 親 和 性 の 高 い チ タ ン も3斗mの 粒 子 に な る と , 細 胞 に 取 り 込 ま れ 、 炎 症 や 活 性 酸 索 の 放 出 の 原 因 と な り う る こ と が 示 唆 さ れ た 。

第 二 部‑‑in vitroで の ナ ノ . マ イ ク ロ 微 粒 子 に 対 す る 細 胞 の 反 応 〜   in vitroで の マ イ ク ロ 微 粒 子 に 対 す る 細 胞 反 応 に は サ イ ズ依 存性 が認 めら れ、

細 胞 に 取 り 込 ま れ る3ym‑500nmで は 最 大 の 反 応 を 示 し た 。 生 体 内 不 活 性 の 二 酸 化 チ タ ン も こ の 範 囲 で は チ タ ン 粒 子 と 同 様 の 傾 向 を 示 し た 。 ま た 、500nm 以 下 の 粒 子 に 対 し て も 細 胞 は 反 応 し 、 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン や 活 性 酸 素 の 放 出 を 検 出 し 、 細 胞 表 面 性 状 の 変 化 を 認 め た 。 ナ ノ 粒 子 に 対 し て 活 性 酸 素 ・ サ イ ト カ イ ン 産 生 量 は3pLm粒 子 と 有 意 差 が な か っ た が 細 胞 生 存 率 は 高 か っ た こ と か ら 、 ナ ノ レ ベ ル のCNTや 二 酸 化 チ タ ン 粒 子 に は 細 胞 墹 激 性 は あ る が 細 胞 障 害 性 は

(3)

低いことが示された。細胞に反応を超こさせない臨界寸法は50nm より小さい サイズであることと50nm の粒子も炎症の原因になりうることが示唆された。

第 三 部

, in vivo

で の ナ ノ ・ マ イ ク ロ 微 粒 子 に 対 す る 組 織 の 反 応 〜

  in vivo

のラット皮下組織への埋入実験の結果から微粒子の組織への影響に はサイズ依存性があることが示された。1 0l,.m 粒子は貪食されず組織で分散し ないが、3pm 粒子ぼ分散し貪食像を認めた。炎症は3y,m 粒子に対して強く、in

vitro

の細胞実験を支持する結果が得られた。ナノレベルのCNT .二酸化チタ ンを皮下組織に埋入した場合もマイクロ粒子と同様に,周囲組織には血管拡 張・細胞浸潤が観察され、炎症を惹起したが、

3plm

‐500nm の粒子に比ベ炎 症の程度は低かった。

CNT

の一部は組織内で凝集し貪食像も認めたが、分散 した

CNT

は組織内で確認できなかった。ナノ粒子も生体内で炎症を弓I き起こ すことが明らかになった。

〜微粒子の細胞為害作用の材質依存性とサイズ依存性〜

  

培養液中のニッケルと鉄のイオン溶出量をICP で計測したところ、鉄はニツ ケルの4‑5 倍の溶出し、どちらの粒子もサイズが小さいほど表面積が大きくな るため溶出速度が増加した。ニッケル微粒子は溶出イオンによる細胞膜障害作 用が強く、細胞生存率は有意に減少した。ニッケル粒子の組織為害作用は主と してイオン溶出による化学的為害作用で微粒子の表面積の増加や物理的サイズ 効果は副次的なものであった。一方、鉄微粒子のイオン溶出量はニッケルより 大きいにもかかわらず、溶出が無視できるチタン粒子とほぼ同等なサイズ依存 性を示した。鉄イオンは生体に対し毒性が少ないため、同じサイズの鉄とチタ ンの粒子に対する細胞のサイトカイン・活性酸索の放出量はほば同じになった。

鉄微粒子の為害作用ぼ材料非特異的な物理的サイズ効果が主であったと考えら れる。

【結諭】

  

一般に材料の組織障害作用は、細胞毒性を持っイオンの溶出による材料特異

的な化学的影響が大きい。しかし、ほとんどイオン溶出しないバイオマテリア

ルも微粒子となると、マクロの材料とは異なり生体為害性を示す。数マイクロ

以下の微粒子になると材料非特異的な物理的サイズ効果が重要になる。細胞は

ナノ・マイクロ微粒子を取り込んで刺激を受け活性化する。

in vitro

でマクロ

ファージや好中球は

50nm

までの微粒子に反応して活性酸素やサイトカインを

(4)

放出し、

in vivo

でもナノレペルの粒子は周囲組織に炎症を起こした。また、

動物実験からはナノ・マイクロ微粒子は組織内で拡散し残留することで炎症が 持続する可能性も示唆された。

  

本研究で明らかにされた微粒子の物理的なサイズ効果による生体為害作用は、

微粒子の体内分布・動態、あるいは炎症や免疫システムへの影響といったナノ

トキシコロジーの最も基本的な現象であり、ナノテクノロジーが生体ヘ及ばす

影響を検討する上で必須の知見と考えられる。

(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

生体に及ぼす微粒子のナノトキシコロジー効果

(Nanotoxycological effect of particles on biocompatibility)

  審 査 は , 審 査 員 全 員 出 席 の 下 に , 申 請 者 に 対 し て 提 出 論 文 と そ れ に 関 連 した 学科 目 に つ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た ・

  審 査 論 文 は4部 構 成 で , そ の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .

  本 研 究 は , 微 粒 子 に お い て , 材 質 や 粒 子 サ イ ズ の 違 い が 組 織 為 害 作 用 に 及 ぽ す 影 響 を 明 ら か に す る た め に ,50nm〜150 ymサ イ ズ に 微 粒 子 化 し た 材 料 を 用 い て 細 胞 や 組 織 に 与 え る 影 響 を 病 理 組 織 学 的 な ら び に 生 化 学 的 に 検 討 し た も の で あ る .   試 料 と し て 金 属 ( チ タ ン . ニ ッ ケ ル ・鉄 ), セ ラミ ヅク ス( 二酸 化チ タン ), カー ボ ン ナ ノ チ ュ ー プ (CNT)を 用 い , そ れ そ れ を 50nmか ら150 ymま で の 微 粒 子 サ イ ズ に 調 整 し た . ま ず ,in vitroで 各 微 粒 子 と ヒ ト ま た は ラ ッ ト の 生 細 胞 ( 好 中 球 ・ マ ク ロ フ ァ ー ジ ) を 一 定 の 比 率 で 混 和 し , 生 存 率 .LDH活 性 ・ サ イ ト カ イ ン 産 生 量 ・ 活 性 酸 素 産 生 量 を 測 定 し , 細 胞 の 形 態 変 化 をSEM(電 子 顕 微 鏡 ) で 観 察 し た . 次 にin vivoで ラ ッ ト 皮 下 埋 入 試 験 を 行 い , 経 時 的 な 周 囲 組 織 の 変 化 を 病 理 組 織 学 的 に 検 討 し た .

  ま ず , チ タ ン ・ 鉄 . 二 ッ ケ ル の 各 微 粒 子 の サ イ ズ を 同 一 に 調 整 し , 材 料 特 異 的 な 化 学 的 効 果 と 材 料 非 特 異 的 な 物 理 的 サ イ ズ 効 果 と を み る と , ニ ッ ケ ル 粒 子 の 組 織 為 害 作 用 は 主 に 細 胞 膜 障 害 作 用 の 強 い イ オ ン の 溶 出 に よ る も の で , 微 粒 子 の 表 面 積 の 増 加 や サ イ ズ 効 果 は 副 次 的 な も の で あ っ た . 一 方 , 鉄 微 粒 子 の イ オ ン 溶 出 量 は ニ ヅ ケ ル よ り 大 き い に も か か わ ら ず , 溶 出 が 無 視 で き る チ タ ン 粒 子 ( チ タ ン イ オ ン の 溶 出 量 は 測 定 限 界 以 下 ) と ほ ぼ 同 等 な サ イ ズ 依 存 性 を 示 し , 鉄 微 粒 子 の 為 害 作 用 は 物 理 的 サ イ ズ 効 果 が 主 で あ る こ と が 示 さ れ た ・

  チ タ ン 微 粒 子 に 対 す る 生 体 反 応 の サ イ ズ 依 存 性 を み る と , 細 胞 は3 ymの チ タ ン 微 粒 子 に 対 し て は サ イ ト カ イ ン ・ 活 性 酸 素 の 著 し い 産 生 を 示 し た が ,10ym以 上 の 微 粒 子 で は 反 応 は 低 か っ た . 動 物 埋 入 試 験 で も3 Vm粒 子 の 周 囲 組 織 で は 強 い 炎 症 性 細 胞

則 夫

靖 文

塚 野

戸 亘

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

浸潤 を認 めた が,

50pm

以上 のチ タン粒 子は 線維 性結 合組 織で 覆われ,サイズ依存性 が確 認された.なお,二ッケルとは異なり壊死組織は認めなかった,生体親和性の高 いチ タン も3 ym の 粒子 にな ると 細胞に 取り 込ま れ, 炎症 や活 性酸素放出の原因とな ることが示唆された.

  in vitro

でのナノ・マイクロ微粒子に対する細胞の反応をみると,マイクロ微粒子 に対 する細胞反応にはサイズ依存性がみられ,3 Vm ‑ 500nm で最大の反応を示した.

生体内不活性の二酸化チタンもこの範囲ではチタン粒子と同様の傾向を示した.また,

500nm

以 下 のナ ノ粒 子に 対し ても 細胞 は反 応し ,活 性酸素 やサ イト カイ ン産 生量 は

3

m

粒 子 と 有 意 差が な か っ た . た だ し , 細 胞 生 存 率 は 高 く , ナ ノ レ ベル のCNT や 二酸 化チタン粒子は細胞刺激性を有しているものの,細胞障害性は低いことが示され た . さ ら に ,

50nm

の 粒 子 も 炎 症 の 原 因 に な り う る こ と が 示 唆 さ れ た ・

  in vivo

での ナノ ・マ イク ロ微 粒子に対する組織の反応をみると,ラット皮下組織 への 埋入実験の結果から微粒子の組織への影響にはサイズ依存性があることが示され た . す な わ ち

10ym

粒 子 は 貪 食 さ れ ず 組 織 で 分 散 し な い が ,

3ym

粒 子 は 分散 し貪 食 像を 示し,炎症性反応も強く,in vitro の細胞実験を支持する結果であった.ナノレ ベ ル の

CNT

.二 酸化 チタ ンを 皮下 組織 に埋 入し た場 合もマ イク ロ粒 子と 同様 に, 周 囲組 織に は血 管拡 張・ 細胞 浸潤 が観察 され ,炎 症を 惹起 した が,3 ym ‑ 500nm の粒 子に比べその程度は低かった・

  

論文の審査にあたって,論文申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならぴに関 連する研究について質問が行われた.

主詮質問事項は,1 )微粒子を作用させた際の細胞の活性化とは,2 )微粒子が細胞に

取り込まれたことの確認法,3 )線維芽細胞は微粒子貪食後に死滅するのか,4 )埋入

実験 におい て微 粒子 を貪 食し ている細胞の種類は,5 )イオン化と線維性被包,慢性

炎症との関係,6 )生体内での微粒子の移動・蓄積について,7 ) CNT の発ガン性,8 )本

実験 を行う 際に 最も 難し かっ たこと,9 )微粒子凝集への対処法などであった.いず

れの質問についても,論文申請者から明快な回答が得られ,また将来の研究の方向性

についても具体的に示された.本研究は,チタンなどのバイオマテリアルもナノ・マ

イクロ微粒子となると生体為害性があること,数マイクロ以下の微粒子では材料非特

異的 な物理 的サ イズ 効果 が重 要で ある こと ,さ らに

50nm

.の微粒子にもマクロフア

ージや好中球は反応し,in vivo でも周囲組織に炎症を弓I き起こすことを明らかにし

た点が高く評価された.本研究の業績は,口腔外科の分野はもとより,関連領域にも

寄 与す る と こ ろ 大 で あ り , 博 士 ( 歯 学) の学 位授 与に 値す るも のと 認め られ た.

参照

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