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博 士 ( 歯 学 ) 山 崎 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 歯 学 ) 山 崎 学 位 論 文 題 名

放射線被曝を伴わない簡便な顎顔面形態計測装置の開発 学位論文内容の要旨

緒言

  これまで顎顔面部の骨格形態を調べる方法としては,セファログラムが多く用いられて きた.しかし放射線被曝という欠点があり,現時点では矯正治療を希望する患者にしか適 用できなぃ.非侵襲的,即時的に顎顔面部の骨格的な特徴を把握することができれば歯科 医院に相談にくる患者に対してや,歯科検診時に追加診査として利用することができると 思われる.そこで今回われわれは,放射線を用いることなく簡単に上下顎骨の前後的位置 関係を数値として表す装置(Quick Angle Checker,以下QAC)を開発することを目的とし,

以下の検討を行った.

方法

  1.精度お よび計測誤差の検討

1)アクリル 板計測によるQAC本体の計測 精度

  矯 正臨 床経 験2年以上の当科医 局員12人が、自作のアクリル板プロファイル模型によ り設 定し たANB角をQACにより5回 計測した,またアクリル板をトレース用紙の上におき 直接 トレ ース し,トレーシングペーパー上でANB角を分度器にて5回計測した.各カ5回 の計測値の平均値を各計測者の計測値と し,2群間における平均値の差の検定を行った.

2)軟組織の 被圧変位性の検討

  当科医局員の成人男性5名を対象とし,自作の被圧変位性計測装置を用いて顔面軟組織 をogから450gまで50g間隔で圧接 し,軟組織の変位量(被圧変位性)を調べた,圧接部 位はsN 点(鼻根部),sA点(鼻下点) ,sB点(下顎骨最陥凹点)とし、計測回数は5回 とした.

3)生体計測 時の計測誤差の検討

  計測者間に存在する計測誤差,被験者間に存在する不特定の誤差などを調査するため、

    ‑ 685―

(2)

QACに よ る 計 測 時 にN点 を2種 類 設 定 し て 計 測 誤 差 の 比 較 を 行 っ た . ひ と っ は 硬 組 織N点 に 近 似 す る と さ れ る 左 右 上 眼 瞼 溝 を 結 ぶ 直 線 と 正中 矢 状面 との 交点(sN)を 設定 したANB角

(Q−ANB)、もうひ とっは鼻根部の彎曲の最陥凹点(sN )を設定したANB角(Q一AN B)である.

  当 科 医 局 員 で 既 に セ フ ァ ロ グ ラ ム を 有 す る 成 人 男 性7名 , 成 人 女 性1名 を 対象 と し, 矯 正 臨 床 経 験4年 以 上 の 当 科 医 局 員10名 が 各 被 験 者 に 対 し てQ―ANBとQ−AN Bの 計 測 を5 回 ず つ , ま た セ フ ァ ロ グ ラ ム よ り 通 法 に 従 いcepANBの 計 測 を5回 行 っ た ,   評 価 方 法 と し て は , 計 測 者 ご と に 上 記 で 行 っ た5回の 計測 値 にお ける 最大 値と 最 小値 の 差 を そ れ ぞ れ の 被 験 者 に お い て ま ず 算 出 し , 計 測者 ご とに 被験 者8名の 平均 値を 求 めた . そ 、 し て 、 10人 の 計 測 者 が 出 し た 計 測 誤 差 の 平 均 を 全 体 の 計 測 誤 差 と し た .   そ し て そ の 値 をQーANB,Q―AN Bな ら び にcepANBの3群 間 で 比 較 す る と とも に,3群 間 の有意差の検定をウ ィルコクスン検定にて行っ た.

  2.セファログラ ムとQACの計測値の比較 1)被験者の上下顎 関係の分布に関する検討

  77名 の セ フ ァ ロ グ ラ ム よ りcepANBを 計 測 し , 分 布 の 正 規 性 を 検 討 し た , 正規 性 の検 定 には歪度,尖度を用 いた.

2)QACの計測値から セファログラムの計測値を 推定する方法の検討

  77名 のQACから 得 られ たQ一ANB角 ,Q一AN B角 およ び セフ ァロ グラ ムか ら 得ら れたcepANB 角 よ り ,QACの 各 計 測 値 とcepANBの 相 関 を 検 討 す る と と も にQACの 計 測 値 か らcepANBを 推定する回帰方程式 と決定係数R を求めた.

結 果

  1. 精 度 お よ び 計 測 誤 差 の 検 討

1) ア ク リ ル 板 計 測 に よ るQAC本 体 の 計 測 精 度

  QACと ト レ ー シ ン グ に よ る 計 測 の 結 果 , 両 者 の 平均 値お よび 標準 偏 差は ほば 等し く, 平 均 値 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た .

  2) 軟 組 織 の 被 圧 変 位 性 の 検 討

  軟 組 織 はOg〜150gの 問で 急激 に 変位 し,300g圧 接時 には ほば 収束 し てい た,300 '‑‑450 g聞 に お い て はsN 点 で 最 大0.Imm,sA点 で 最 大O.4mm,sB点 では 最 大O.3mmの変 位量 し か 認 め ら れ な か っ た . これ を角 度 に換 算す ると , 最大0.6゜の 誤差 を 生じ るこ とが わか っ た .

    ―686―

(3)

3) 生 体 計 測 時 の 計 測 誤 差 の 検 討

  ウ ィ ル コ ク ス ン 検 定 の 結 果 ,Q−ANBとQ一AN Bの 間にp<O. 01で,Q一ANBとcepANBの聞 にp<0. 05で有 意差 が認 め られ たがQ−AN BとcepANBの 間に は有 意 差は 認め られ な かっ た.

  ま た 個 々 の 計 測 値 に お け る 最 大 値 と 最 小 値 の 差 の 最 も 大 き な 値 に お い て もQ一AN Bが 1.5゜,Q−ANBが2.5°とQ−AN Bの方が小さ いものであった.

  2.セファログラ ムとQACの計測値の比較 1)被験者の上下顎 関係の分布に関する検討

  被 験 者 全 体 に お け るcepANBの平 均値 は2.82゜, 標 準偏 差は3.30゜ であ った . また 検定 の結果,正規分布し ていると判断された(p〈0.05).

2)QACの計測値から セファログラムの計測値を 推定する方法の検討

  cepANBとQ−ANB間 にお け る相 関係 数は 〓−O.93,cepANBとQ―AN Bの場合はr=0. 94とな り,両方ともp<0. 01で相関が認められた,

  Q−ANBからcepANBを予測する回帰方程式はy−―O.92x−O.12,決定係数はRz=0. 86であった.

ま たQ−AN Bか らcepANBを 予測 する 回 帰方 程式 はy=0. 93x−0.59,決 定係 数はR2=0. 89で あった.

考 察

  1. 精度 およ び 計測 誤差 の検 討

1)ア クリ ル板 計 測に よるQAC本体 の計 測精 度

QACの 計 測 器 自 体 が 有 す る 計 測 誤 差 は , 従 来 用 い ら れ て いる セフ ァ ログ ラム 分析 の 方法 が 潜 在的 に 有す る計 測誤 差と 同 等の もの であ る と判 断さ れた .

2)軟 組織 の被 圧 変位 性の 検討

  得 ら れ た 軟 組 織 の 変 位 量 か ら ,300〜450gの カ で 圧 接 した 場合 に はQ一AN Bの 値 のば ら っ き は 最 大 で もO.6゜ の 範 囲 で ある こと が計 算 され た。 一方 ,被 験 者77名の セフ ァ ログ ラ ム のANB角(cepANB角 ) を5回 計 測 し た と き の 各 被 験 者 に おけ る最 大 値と 最小 値の 差 の最 大 値 ,平 均 値な らぴ に標 準偏 差 を求 めた とこ ろ ,最大値 は1. 85゜,平均値はO.63゜そして標 準 偏 差 は0.34゜ で あ っ た . こ の こ と か らQACを 正 確 に 顔 面 の3点 に 位置 付け るこ と がで き れ ば 誤 差 は セ フ ァ ロ グ ラ ム 分 析 に お い て 別 々 に3点 を プ 由ッ トす る より も小 さく な る可 能 性 が高 い とい うこ とが わか っ た.

3)生 体計 測時 の 計測 誤差 の検 討     ‑ 687―

(4)

誤差の点から見るとsN 点を用いた計測値Q一AN Bのほうが精度が高いことがわかった.

これは計測者が同じ点をより正確に位置付けられることによるのではないかと考えられる.

  2.セファログラムとQACの計測値の比較 1)被験者の上下顎関係の分布に関する検討

  被 験者全体 のcepANBの平均値,標準偏差の値が現在臨床的に用いられている日本人の 標準値の値とほぼひとしいことから,本研究は一般集団の標本を対象としていると判断し た.

2) QACの 計 測 値 か ら セ フ ァ ロ グ ラ ム の 計 測 値 を 推 定 す る 方 法 の 検 討   本研究において導出されたこの回帰方程式を用いると変数の分散の89%が説明されるも のと理解される.また,決定係数R2がQ―ANB―cepANBの回帰直線よりもQ一AN B−cepANBの ほう が大き かったこ とは,計測に用いたsN 点がsN点よりも正確に位置付けられること に よ り 計 測 者 間 の 誤 差 が 少 な か っ た こ と に 起 因 す る と 考 え ら れ る .

結 論

本 研究に て開発し たQACは,放射 線被曝を 伴わずに上下顎骨の前後的位置関係を把握で き る簡便 な装置と 考えら れた.

‑ 688

(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

放射線被曝を伴わない簡便な顎顔面形態計測装置の開発

審 査 は 審 査 委 員 が 一 同 に 会 し て 、 口 頭 試 問の 形 式 によ っ て 行わ れ た 。ま ず 申 請者 に 論 文 の 慨 要の 説 明を 求めると ともに適 宜解説 を求め、 次いで その内容 および 関連分野 に・つ い て 試 問し た 。

  申 請者 か ら は以 下 の よ う橙 内 容 につ い て の論 述 が なさ れ た 。

(日的)本研究の目的は、放射線被曝を伴うことなく簡便に上・F顎骨の前後的位麗関係を計測す る装鐙を開発することであるョ

(方 法)本研 究のた めに製作 した顎関 係計測 装鐙(Quick Angle Checker: QAC)について以Fの 検討を行った。

1.精度および計測誤差の検討

QACが顎関係計測装置として実用に耐えうるかどうかを調査するために、装置自体の計測精度の 検証、安定した計測値を得るための軟組織に対する至適圧接カの検討、ならびに安定した計測値 を得るための計測点の設定の検討を行った。

2.セファログラムとQACの計測値の比較

QACの 計 測値か らセファ ログラ ムの計測 値を推 定する方 法の検 討として 、成人77名を対象 に QACか ら 得 られ たANB角 と セフ ァ ロ グラ ム か ら得 ら れ たANB角 を比 較 検 討し た 。QACに よる ANB角 と セファ ログラム によるANB角の 相関を 調査する ととも にヾQACの計測値 からセ ファロ グラムによるANB角を推定する回帰方程式と決定係数R2を求めた。

(結果と考察)

1..精度および計測誤差の検討

  QAC本体の計 測誤差 はトレー シング により生 じる計測 誤差と ほば等し く、QACの計測器自体 が有する計測誤差は、従来用いられているセファログラム分析の方法が潜在的に有する計測誤差 と同等のものであると判断された。

  軟組織に対する至適圧接カの検討の結果、圧接力300g以.ヒでは軟組織はほとんど変化せず、

ANB角の計測誤差としては最大O.ざであることがわかった。

  ‥. 方、被験 者77名のセファログラムのANB角を5回計測したときの各被験者における誤差の

689

郎 保

一  

  夫

順 太

田 村

飯 中

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

平均 値は0.630、標 準偏 差は0.340で あ った 。こ のこ とか らQACを 正 確に 顔面 の3点に位 置付 けることができれば誤差はセファログラム分析において別々に3点をプロットするよりも小さく なる可能性が高いとぃうことがわかった。

  さらに計測点の設定の検討として、N点を2箇 所設定したが、その結果N点 を鼻根部の彎曲部 の最陥凹点に設定するほうが、硬組織ナジオンに近似するとされる左右上眼瞼溝を結ぶ直線と正 中線との交点を設定するよりも安定した計測値が得られた。これは計測者が同じ点をより正確に 位置付けられることによるのではないかと考え られる。

以上の検討の結果、本装置は実用に耐えるもの と判断された。

2.セファログラムとQACの計測値の比較

  QACに よ るANB角 とセ フ ァロ グラ ムに よるANB角の 相 関係 数はr‑ 0.94であ りpく0.01で相 関 が 認 め ら れ た。 また 、QACによ るANB角か らセ ファ ログ ラム によ るANB角を 推定 する 回帰 方程式はy−−O.93x‐O.59,決定係数はR2=0.89であった。

  これより、本研究において導出されたこの回帰方程式を用いると変数の分散の89%が説明され るものと理解される。

(結論)本研究にて開発したQACは、放射線被曝を伴わずに簡便かつ即時的にIヒ下顎骨の前後 的位置関係を把握できる簡便な装置と考えられ た。

  以上の論述に引き続き以下の項目を中心に口 頭試問を行った。

    1.軟組織を圧 接して計測する意義について     2.圧接カの強 さの妥当性について

    3.軟組織の厚 みの個人差が計測値に与える影響について     4.回帰方程式 の信頼性を向上させる方法について     5.本研究結果 を得るまでに、他に試みた計測法について     6.今後の装置 の改良点ならぴに本研究の展開について   これらの試問に対して申請者は明快な回答、 説明を行った。

  本研究は現在歯科矯正学の臨床において顎顔面骨格形態を把握するために用いられている頭部 エックス線規格写真が潜在的に有する放射線被爆という欠点をなくし、正確に上下顎骨の前後的 位置の計測を行う装置を開発したものである。開発した装置の有する誤差の大きさを従来の頭部 エックス線規格写真分析法と比較検討し、有意差のなぃものであることを明らかにした上で、こ れまでに判断基準として用いられている頭部エ ックス線規格写真分析法におけるANB角を推定 する回帰方程式を求めている。本研究で開発された装置及ぴ計測法は、これまでは不正咬合を訴 え来院した患者にしか適応できなかった頭部エックス線規格写真分析法とは異なり、広く疫学調 査や検診にも使用することが出来ることから、歯科矯正学の発展に寄与するところが火であると 高く評価できる。更に、試問の内容から、学位申請者は、関連分野にも幅広い学識を有している と認められたと同時に、今後も更に詳細な研究の準備を進めており、将来性についても評価され た。よって審査担当者全員は、申請者は博士(歯学)の学位を授与される資格を有するものと認 めた。

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参照

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