第5章 外資制度の概要 6
I. WTO 加盟と法改正 1.法改正の状況
ベトナムでは、WTO加盟に伴い国内法の整備が進められている。図表 5-1に、最近の法 制度の整備状況をまとめてみた。
共通投資法と統一企業法(次項「Ⅱ.主要外資関連法規」参照)に関連する施行細則が公布 されたほか、税制上の優遇措置に関連する法人所得税法、商業活動に関連する改正商法につ いても、施行細則や補足する法令が出されている。また、これまでベトナム人と外国人で違 いのあった個人所得税も、法律が改正され、2009年1月より一本化される予定である。
図表 5-1 最近の法整備状況
法律 施行細則等の整備状況
新個人所得税法(No.04/2007/QH11) 2007年11月、新個人所得税法案が国会で可決、2009年1月1 日施行予定。
法曹人法 2006年5〜6月の国会で採択、2007年1月1日発効予定。
改正商法 (No.36/2005/QH11) 2006年1月1日発効。
【施行細則】①2006年7月25付Decree No.72/2006/ND-CP
(外資系企業の代表事務所と支店に関するもの)、②2007年 2 月12付Decree No.23/2007/ND-CP(外国投資企業による商業 および商業に直接関連するその他の活動に関するもの)
【商工省7による施行ガイダンス】①2006年9月28付Circular No.11/2006/TT-BTM、②2007年7月17日付Circular No.09/2007/TT-BTM
改正税関法 (No.42/2005/QH11) 2006年1月1日発効。輸出入活動の円滑な運用を実現するため に、税関の新しい行政管理法を定めている。
輸出入関税法 (No.45/2005/QH11) 2006年1月1日発効。納税者、国境地帯貿易、税額計算、ダン ピング防止措置などについて規定。
【施行細則】2005年12月20日付Decree No. 149/2005/ND-CP
【 施 行 ガ イ ド ラ イ ン 】2005 年 12 月 15 日 付 Circular No.113/2005/TT-BTC、これを修正する 2007 年 6 月 15 付 Circular No.59/2007/TT-BTC
譲渡性証券法 (No.49/2005/QH11) 2006年7月1日発効。受取手形、支払手形、小切手と関連する 金融・銀行取引の法的枠組み作りを目的とする。1999年12月 24日付の商業手形Ordinanceに替わるもの。
知的財産法 (No.50/2005/QH11) 2006年7月1日発効。
電子取引法 (No.51/2005/QH11) 2006年3月1日発効。
6 本章における記述は、ベトナムの各種法律、ベトナムMPI、JETRO、アセアンセンター等のホームペー ジ情報、に依拠している。
7 2007年7月の中央省庁の再編により、商業省は工業省と統合され、商工省(Ministry of Industry and Trade)となった。
法律 施行細則等の整備状況 汚職防止対策法 (No.55/2005/QH11) 2006年6月1日発効。
住宅法 (No.56/2005/QH11) 2006年7月1日発効。
【施行細則】2006年7月25日付(同年8月10日発効)。 改正付加価値税及び特別売上税法
(No.57/2005/QH11)
2006年1月1日発効。
【施行細則】2005年12月51日付Decree No.156/2005/ ND-CP
(2006年1月1日発効)
共通投資法 (No.59/2005/QH11) 2006年7月1日発効。
【施行細則】2006年9月22日付Decree No.108/ 2006/ND-CP
【商業省による上記の施行ガイダンス】2007年4月4日付 Circular No.04/2007/TT-BTM
統一企業法 (No.60/2005/QH11) 2006年7月1日発効。
【施行細則】①2006年8月29日付Decree No.88/2006/ND-CP
(事業登録に関するもの)、②2006 年 9 月 21 日付 Decree No.101/2006/ND-CP(既存外資系企業の再登録に関するもの)、
③2007年9月5日付Decree No.139/2007/ND-CP(法人設立、
組織再編等に関するもの)
入札法 (No.61/2005/QH11) 2006年4月1日発効。
【施行細則】2006年9月29日付Decree No.111/2006/ND-CP
(改正)法人所得税法
(No.09/2003/QH11)
【施行細則】2007年2月14日付Decree No.24/2007/ND-CP
(優遇税率に関するもの)
(注)施行細則は、基本的に官報に掲載された15日後に発効する。
(出所)JETROホームページ、各種資料より作成
2.輸出加工企業への優遇措置の扱い
これまで輸出加工企業(EPE)が享受していた、輸出実績に連動した税制上の優遇措置は、
WTO 加盟によって、廃止されることになった(詳細は「第 5章VI.主要投資インセンテ
ィブ 1.法人所得税の優遇制度」を参照)。なかでも、繊維・縫製の輸出企業に対する優
遇措置は、2007年度より即時撤廃となった。その他の分野については、5年後に廃止され る。
3.サービス分野の市場開放スケジュール
WTO加盟の合意文書によると、各分野共通のコミットメントとして、次のような点が示 されている(個別に指摘されている場合はそれに従う)。
・外国投資企業はBCC、合弁、100%外資でベトナムに進出可能。
・外国のサービス事業者の駐在員事務所をベトナムに設立することは認められるが、直接的に 利益を得る事業を行うことはできない。
・外国のサービス事業者はベトナム企業の株式を取得できるが、ベトナムの法律などで規定さ れない限り、その上限は定款に定められた資本の 30%まで。WTO加盟から1 年後、この 規制は撤廃。
図表 5-2 に、具体的な市場開放スケジュール例を挙げておく。なお、これらの開放スケ ジュールを実施していくため、関係する法律や施行細則が徐々に発表されている。
図表 5-2 サービス分野の市場開放スケジュール例
分野(注 1) 内容
建設 ・WTO加盟後ただちに外資100%での現法設立可能。WTO加盟から2年間
は、外資100%の企業はベトナムの外資系企業および外資に資金提供された
プロジェクトにのみサービス提供可能。
・WTO加盟から3年後に、支店展開(branching)が可能。
流通業 ・代理店・卸売・小売サービス・フランチャイズの進出形態 2007年末まで…合弁での進出、外資の出資比率は49%まで。
2008年1月1日以降…外資は49%以上の出資が可能。
2009年1月1日以降…外資100%での進出可能。
・WTO 加盟と同時に、流通事業(distribution)を行う外資系企業は、輸入 および国内生産品の代理店、卸売、小売事業が可能(注 2)。
・フランチャイズは、WTO加盟から3年後に支店展開が可能。
銀 行 ・2007年4月1日以降、外資100%での現法設立が可能。
・WTO加盟から5年間は、払込済み資本金の割合に応じて、外国銀行による ベトナム人のベトナムドンでの預金受入れ可能。2011年1月1日より規制 撤廃。
証券 ・WTO加盟と同時に、外資系証券会社は駐在員事務所および合弁企業(外資 出資比率は49%まで)の設立が可能。
・WTO加盟から5年後に、外資100%の現法設立が可能。
保険 ・WTO加盟後ただちに外資100%の現法設立可能。
・2007年末まで、外資100%の保険会社による法定保険事業(自動車損害賠 償責任保険、建設にかかる保険、石油ガスプロジェクトにかかる保険など)
の取扱は認められない。
・WTO加盟から5年後に、外資系保険会社による損害保険の取扱が可能。
医療サービス ・WTO加盟と同時に外資100%の病院設立が可能。ただし、病院事業におけ る最低資本金額の規制がある(病院は2000万ドル、外来患者診療は200万 ドル、専門科は20万ドル)。
(注 1)WTO加盟の合意文書には、上記分野のほか、実務サービス(法的サービス・会計・監査など)、
通信、教育、観光・旅行、娯楽・文化・スポーツ、環境、運輸などの分野について、市場開放スケ ジュールが示されている。
(注2)次の商品については、WTO加盟後3年以内に順次対象に含めていく:セメント、タイヤ、紙、ト
ラクター、二輪・四輪車、鉄鋼、音響機器、ワイン、肥料など。
(出所)ベトナムのWTO加盟の作業部会の文書(Schedule CLX – Viet Nam, Part II - Schedule of Specific Commitments in Services, List of Article II MFN Exemptions、2006年10月)
多数のサービス分野で市場開放スケジュールが示されたことは評価できるが、その一方 で、市場開放が後退した分野も見受けられる。その一つが運輸部門である。例えば、WTO 加盟以前には外資100%で進出可能であった倉庫業の場合、WTO加盟時は合弁での進出が 認められ(外資の出資比率は51%まで)、加盟から7年後にこの規制は撤廃されるとされて いる(運輸業については、2007年9月5日付Decree No.140/2007/ND-CPに参入条件が規 定されている)。