第5章 外資制度の概要 6
VIII. 税制
1.ベトナムの税体系 (1) ベトナムの税制
ベトナムの税制は、法人所得税、付加価値税、特別消費税、個人所得税、外国契約者税 などの源泉税、輸入・輸出関税、資本譲渡利益税、天然資源開発税、不動産税等で構成さ れている。各税は、税法のほか、政令、規則、決定、通達(ガイドライン)によって細目 が規定され、複雑になっている。また、税法だけでなく、政令等も含めて改定(変更、追 加、削除)が頻繁に行なわれ、しかもその範囲も広範で、結果的に税制の現状が把握しに くくなっているところから、十分注意する必要がある13。
(2) 最近の税制改正
2004年1月以降、法人所得税、個人所得税、付加価値税、特別消費税等に大幅な改定が 加えられている。また、図表 5-20の通り、WTO加盟に対応し、2005年以降も多くの法改 正が行われており、最新の情報を確認する必要がある。
13 税務や会計の資料として、次の報告書が参考となる;進出日系中小企業等支援事業 平成18年度事業 報告(ベトナム編)「ベトナム進出日系中小企業の経営課題とその対応 〜税務・会計・投資〜」(財団 法人海外貿易開発協会、2007年3月)。
図表 5-20 主な税法の改定状況 税法 改定の内容
法人所得税法 ・2004 年1月以降、外資系企業(合弁企業、100%外資系企業のほか事業協力契約の 外国側当事者を含む)と国内企業の税率(それぞれ25%、32%)が別扱いであった ものを一本化(28%に統一)。その代わり、課税強化となった外資系企業に対しては、
従来課税されていた利益送金税が撤廃された。
・法人所得税申告時に、関係事業者間の事業取引とその算定方法も申告することになっ た(移転価格税制の整備)。
・WTO加盟に伴い、輸出加工企業(EPE)に付与されていた優遇措置の扱いを含め、
法人税の優遇措置を規定した新しい施行細則Decree No.24/2007/ND-CPが2007年 2月14日付で公布された(発効済み)。
付加価値税法 ・従来、特別消費税しか課せられていなかった財・サービスに付加価値税を課す一方、
付加価値税の税率構造を4段階から3段階に簡素化(20%税率を廃止)した。2010 年を目処とする税制改革では、最終的に10%に統一することを考えている。
特別消費税法 ・従来課税対象品目が付加価値税と峻別されていたが、改正後は重課されることになっ たほか、宝くじや賭け事に関する娯楽も課税対象となった。
個人所得税法 ・2004年7月以降、最高税率を50%から40%へ引き下げたほか、滞在日数30日未満 の外国人もベトナム源泉所得に課税されることとなった。また、ベトナム国民に対す る非課税限度額の引き上げ(年収300万ドンから500万ドンへ)と30%付加税の撤 廃を行った。
・2007年11月、新個人所得税法案が国会で可決、2009年1月1日施行へ。これによ り、ベトナム人と外国人居住者の個人所得税率を一本化。外国人居住者の最高税率は 35%へ(現行40%)。
(出所)各種報道より作成
2.法人所得税
標準税率は2003年までは、外国投資法の適用を受ける企業の場合25%、国内企業の場合
は32%と違いがあったが、2004年1月から28%に統一され、国内企業、外資系企業(BCC
の外国当事者を含む)、外国企業の支店及び外国契約者を含む全ての企業に適用されること となった。課税所得の計算は財務諸表を基礎として行われ、欠損金は 5 年間繰り越すこと が可能である。また、従来外国投資法で規定されていた法人所得税の優遇措置は改められ、
法人所得税法で規定されることとなった。すなわち投資優遇事業分野あるいは投資奨励地 域への投資に関しては、その度合に応じて、一定期間 10%、15%、20%のいずれかの優遇税 率が適用される。
当該優遇税率適用期間(それぞれ15年、12年、10年)終了後は標準の28%に戻ること となるが、さらに、引き続いて一定期間、法人所得税の減免税措置(タックス・ホリデー)
が適用されることもある(詳細は「VI.主要投資インセンティブ」の項を参照)。なお、石油・
ガスその他の稀少資源の開発業者は関連法規に従い、28%〜50%の税率が適用される。
また、近年、ベトナムでは移転価格税制の整備が進められている。財務省は関係当事者 間の事業取引における市場価格の計算に関するガイダンスとして、2005 年 12 月 19 日付 Circular No.117/2005/TT-BTC、および同2006年1月4日付Decision No.37/QD-BTCを
発行した。Circular No.117により、毎年の法人所得税の申告時に、所定の書式に基づいて 関係当事者間の事業取引とその計算方法を申告することとが義務化され、また、税務当局 から要請があれば、30日以内に移転価格設定に関する分析資料を提出しなければならない。
これらの文書は非常に詳細で、準備には一定期間を要するとの指摘がある。担当者の教育 が追いつかないなど、ベトナムの税務当局側の準備が必ずしも整っていない点は否めない が、ベトナムが本格的に取り組む前に、必要な書類の文書化を進めておくことが望ましい14。
3.付加価値税と特別消費税
ベトナムでは1999年1月より、取引税に代わり欧州型の付加価値税が導入された。付加 価値税は、特定の免税品目を除く全ての製造、商業、輸入およびサービスの提供に対して 適用される。税率は当初、0%(輸出品・輸出サービス)、5%(必需品・必需的サービス)、
10%(標準税率)、20%(高級品・奢侈的サービス)の4段階で課税されていたが、2004年
1月から20%税率が廃止となり、現在は0%、5%、10%の3段階となっている。
一方、特別消費税の対象品目は、物品では、タバコ、酒、ビール、自動車、石油、エア コン、トランプ等、サービスでは、ディスコ、マッサージ、カラオケ、カジノ、ゴルフク ラブ、競馬、オートレース等で、これらは付加価値税の課税対象にもなっている。税率は 10〜80%まで様々である。
4.個人所得税
ベトナムにおける個人所得税の課税対象者は、①ベトナム国内のみならず海外に居住す る者も含め所得を得ているベトナム国民、②期限を定めずベトナムに居住し所得を得てい る外国人、③ベトナムで所得を得ている外国人である。年間 183 日以上ベトナムに滞在す る者は外国人居住者として扱われ、その外国人の全世界所得に対して累進税率が課せられ る。また、年間 183 日未満ベトナムに滞在する外国人は非居住者として扱われ、ベトナム 源泉所得に対して一律25%課税される。なお、従来、滞在日数年間30日未満の外国人は課 税されていなかったが、2004年7月からは、滞在日数年間30日未満の非居住外国人につ いてもベトナム源泉所得に25%課税されることになった。
課税対象所得は現物支給を含めベトナム内外で得た収入の合計である。2003年までは、
定期収入と不定期収入とで適用税率が異なっていたが、2004年7月からはこの区別がなく なった。非課税所得としては、危険手当、遠隔地手当、出張手当、失業手当、転勤手当、
労災給付金、社会保険料、保険金、訓練手当等がある。
2007年11月、国会で新個人所得税法案が可決され、2009年1月1日より施行されるこ とになった。主な変更点は次の通りである。
14 移転価格税制については、KPMGジャパンのニューズレターを参考とした(2007年6月)。
・ベトナム人と外国人居住者の課税規定を一本化
・課税率は5〜35%(外国人居住者から見ると、現行の10〜40%からへ引き下げ)
・課税最低所得は月400万ドン(外国人居住者から見ると、現行の月800万ドンから 400万ドンへ引き下げ)
新法施行後の個人所得税の課税率は図表 5-21の通り。
図表 5-21 個人所得税率
①現行 ②新法施行後
段階 月収(万ドン) 税率(%) 段階 月収(万ドン) 税率(%)
1 800〜2,000 10 1 400〜500 5
2 2,000〜5,000 20 2 500〜1,000 10
3 5,000〜8,000 30 3 1,000〜1,800 15
4 8,000〜 40 4 1,800〜3,200 20
5 3,200〜5,200 25
6 5,200〜8,000 30
7 8,000〜 35
(出所)各種報道より作成
雇用主は、毎月個人所得税の源泉徴収を行い、翌月には仮納付を行うほか、毎暦年末ま での実際の所得に基づいて確定申告を行うこととされている。過納付額についての還付は なく、翌年の確定申告時に調整される。
ただし、日本人については、租税条約(日越二重課税回避条約(1996 年 1 月発効))に よって、ベトナム在住期間が 183 日未満の場合や報酬支払い者がベトナム居住者でない場 合には、個人所得税は課税されない。また、援助プロジェクトをベトナム国内で実施して いる非営利団体で働く専門家についても、個人所得税が免除される。
5.輸出入関税
2006年1月1日に発効した輸出入関税法(Law No.45/2005/QH11)は、旧外国投資法、
旧国内投資奨励法、石油法、科学技術法などに示されていた輸出入関税の免税、減税、還 付に関わる規定を1本化した法律である。
輸出関税(0〜45%)が課せられるのは、米、鉱産品、林産品、水産品等の天然資源のほ か、スクラップ等の一部の物品に限られている。
輸入に際しては、原則として関税が課せられる。従価税による関税を適用し、輸入関税 率は、全般的な傾向として、消費財、特に贅沢品については高く、投資財や原材料、特に ベトナムで生産されない物については低く、場合によっては免税にもなる。ベトナムは、
アセアン自由貿易地域(AFTA)への参加に伴い、共通効果特恵関税(CEPT)プログラム に基づき対象品目の税率を5%以下に引き下げるなど、各種国際機関との協調、WTOへの 加盟等の観点から関税の引き下げの方向にある。