• 検索結果がありません。

ベトナムの産業

ドキュメント内 I 32 9,315km , , (ページ 103-119)

第8章  主要産業の動向

I. ベトナムの産業

1.自動車産業  (1) 生産動向 

  ベトナム政府は、自動車産業を主要戦略産業の一つとの位置付け、1991年以降、自動車 産業育成のために外資誘致を行ってきた。その結果、現在では日系 7社33(トヨタ、三菱、

スズキ、日野、いすゞ、ホンダ)をはじめ、フォード、メルセデスベンツなど外資企業 18 社34が操業している。

  政府は2004年7月に自動車工業マスタープランを策定した。工業省が策定した同計画は、

2020年までに自動車産業が同国の重点産業となるよう振興し、国内需要を満たし、国際市 場への進出を目標とするものである。具体的目標として、国産自動車の生産台数を2010年 までに24万台とする意欲的な数値例が掲げられ、また、現地調達比率を60%とすることが 目標とされている。現在、2007年1月にWTO加盟が実現し自由貿易の流れが加速する中、

本政策に対して産業界等から見直しが求められている。今後、ASEAN域内における共通効 果特恵関税(CEPT :Common Effective Preferential Tariff)により輸入完成車にかかる 関税が引き下げられ、ASEAN諸国から価格競争力のある完成車が流入すれば、自動車完成 車についての内外価格差が縮小し、ベトナムで生産を行うメーカーにとっては厳しい事業 環境となることは否めない。こうしたことを受けて、すでに進出している自動車メーカー からは、今後は ASEAN 域内での分業、協業態勢による棲み分け、再編を検討する展開も ありうるかもしれないとの声も聞かれている。

  生産規模は、1995年以降右肩上がりで拡大してきたが、2003年以降の販売不振等を受け て、最近では2005年5.9万台をピークに、2006年は4.2万台まで減少した(図表 8-3)。 企業形態別でみると、外資の占めるシェアが2000年までの100%より、2005年は60%ま で低下した。また、2006年になって、特に国営企業の減少幅が大きい。他方、私有企業の シェアが年々拡大傾向にある(図表 8-4)。

  なお、裾野産業については、工業省は、これまでも部品メーカーの進出を促進する狙い から、国内の自動車メーカーに対しては現地調達比率の引き上げを促し、また部品メーカ ーの進出については独資での進出も例外的に可能として積極的に誘致を行ってきた。しか し、現時点でも、自動車に不可欠なエンジンや電気電子部品の企業などが育成されておら ず、素材、機械、電気などの産業が未成熟であるため、自動車生産は原材料、部品を輸入 し、安価な労働力を利用しての組立工場にならざるを得ない状況であり、現地調達率はベ トナムメーカーで20%、外国自動車メーカーでは2〜10%に止まっている35

33 ダイハツ工業は、20076月、ベトナム、日本、インドネシアの企業により1996年に設立した合弁会 社の解散を発表。同社は、ベトナムにおいて市場開拓を目指してきたが、販売が伸びず、解散を決めた と報じられている。他方、2006年からは現代自動車のほか、金杯汽車、福田汽車等の中国ブランド(商 用車)やロシアブランド(商用車)が市場に参入している。また、2007年初めに日産の現地組立開始が 報じられたが、その後の動向については明らかにされていない。

34 工業省の調査によれば、このうち、競争力があるのは11社のみで、他の24社は競争力が低く、また、

残り10社は破産に近い状態である。

35 政策研究大学院大学、「日系企業から見たベトナム裾野産業」、20066月。

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 国営企業

非国営企業 外資企業

(千台)

0 10 20 30 40 50 60

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 生産台数

販売台数

(千台)

 

図表 8-3  四輪車生産・販売台数の推移      図表 8-4  四輪車生産台数(形態別) 

(2) 市場動向 

  国内販売台数は2004年4.4万台をピークに、2005年4.0万台まで減少したが、2006年 は商用車を中心に販売が上向き4.1万台、2007年には10月末時点で5.8万台に達している。

2006年以降販売が上向いた背景には、好調な経済を背景に商用車需要が高まっていること がある。経済成長によるビル、工場、道路、橋等の工事建設ラッシュにより、地場トラッ クメーカーが手頃な価格と適度な品質から、堅調に販売を伸ばしている(図表 8-3)。

  ベトナムの四輪車市場は未だ小規模である。2006 年の自動車販売台数は、タイの 68.2 万台、中国の721.6万台に対して、ベトナムは4.1万台に過ぎない(図表 8-5)。また、保 有の割合を他のASEAN諸国との比較でみても、マレーシアが3.9人、タイでは6.5人に一 人が乗用車を保有しているのに対し、ベトナムでは 196.0 人に一人しか保有しておらず、

一人あたり GDPがベトナムよりも低いカンボジア(同 84.5 人)との比較においても自動 車保有台数が少ないことが分かる。普及の割合の低さの背景には、所得水準の差に加え、

ベトナムは公共交通機関が発達していないことから二輪車中心の市場であるということ、

道路交通上の問題(駐車場・道路のインフラの遅れ、渋滞等)があり自動車保有コストが 高くつくことなどがあるといわれている。

 

(出所)GSO, Statistical Yearbook (出所)GSO, Statistical Yearbook.

図表 8-5  東アジアの自動車市場規模 

(出所) IMF, IFS

台湾行政院主計処資料

ホンダ、2007年版世界二輪車概況、20078月。

(財)日本自動車工業会、「世界自動車統計年報(第6集) 2007年」、2007年3月。

  各社別の新車販売シェアは、年毎に変動的ではあるものの、近年はトヨタが安定して第1 位を維持している。2007年は、1月から6月までではトヨタが28.4%(前年36.1%)、次い で韓国の大宇が9.6%(同4.9%)、フォードが7.1%(同10.8%)となっている。トヨタお よびフォードは、特にブランド力の強さが販売につながっていると見られており、他方で 大宇については、販売網・宣伝力の充実、また価格帯を 1 万ドル強とする低価格戦略をと ることで他社と差別化を図り、最近販売を大きく伸ばしている(図表 8-6)。

図表 8-6  メーカー別自動車販売台数およびシェア 

台 シェア 台 シェア 台 シェア 台 シェア

日系 10,526 54.7 23,109 58.3 25,338 61.6 14,988 52.1 トヨタ 5,759 29.9 11,813 29.8 14,784 35.9 8,162 28.4 いすず 590 3.1 2,369 6.0 2,512 6.1 1,542 5.4 ホンダ 22 0.1 - - 1,110 2.7 1,676 5.8 スズキ 1,508 7.8 3,425 8.6 1,984 4.8 1,113 3.9 ふそう 81 0.4 1,066 2.7 1,335 3.2 960 3.3 三菱 1,315 6.8 3,146 7.9 2,063 5.0 772 2.7 日野 104 0.5 546 1.4 714 1.7 475 1.7 ダイハツ 469 2.4 453 1.1 530 1.3 173 0.6 マツダ 678 3.5 291 0.7 306 0.7 115 0.4 非日系 8,705 45.3 16,558 41.7 15,795 38.4 13,765 47.9

大宇 2,903 15.1 4,198 10.6 1,634 4.0 2,746 9.6 Ford 1,917 10.0 5,040 12.7 3,610 8.8 2,055 7.1 Mercedes

-Benz 1,690 8.8 1,684 4.2 1,202 2.9 865 3.0 その他 2,195 11.4 5,636 14.2 9,349 22.7 8,099 28.2 合計 19,231 100.0 39,667 100.0 41,133 100.0 28,753 100.0

2001 2005 2006 2007.1-6

      (出所)各種報道

販売台数 保有台数 販売台数 保有台数

(十億ドル) (百万人) (ドル) (1,000 台) (1,000 台) (人/台) (1,000 台) (1,000 台) (人/台)

(2006) (2006) (2006) (2006) (2006) (2006) (2006) (2005) (2005)

ベトナム 61 84 723 2,371 17,277 4.9 41 429 196.0

台湾 369 23 16,098 738 13,557 1.7 366 6,668 3.4

マレーシア 156 26 5,978 423 7,733 3.4 491 6,732 3.9

タイ 206 63 3,251 2,062 15,650 4.1 682 9,795 6.5

中国 2,774 1,321 2,100 12,690 81,473 16.2 7,216 30,880 42.8 インドネシア 364 229 1,593 4,471 36,908 6.2 319 14,472 15.8

フィリピン 118 86 1,363 605 2,405 35.9 100 2,878 30.0

ラオス 3 6 605 n.a. 453 12.7 n.a. 21 274.3

カンボジア 7 14 512 n.a. n.a. n.a. n.a. 168 84.5

(参考)

日本 4,366 128 34,126 700 13,056 9.8 5,740 75,686 1.7 GDP 人口 1 人当り

GDP

二輪車

普及割合 普及割合

四輪車

  需要構成は、官需(政府などでの需要)、民需と2種類ある。割合としては、4割は官需、

6割が民需であるといわれており、民需では、個人企業のオーナーなどの購入が最近ではみ られる。1995年に会社設立法が制定され、それ以降に小規模企業が多く立ち上がり、民間 企業のオーナーが小金を持つようになった。地域別にみると、南部が全体の 50%、北部が

40%、中部が 10%程度であり、中でもホーチミン、ハノイの大都市での販売シェアが大き

い。また、2007年になって北部・中部のシェア拡大が目覚しい。

2.二輪車産業  (1) 生産動向 

  ベトナム市場に出回る二輪車は、1990年代以前はラオス経由のタイ製輸入品が主であっ たが、90年代に外資系メーカーの進出によって国内生産が始まった。1993年に台湾の慶豊 グループ(現・三陽工業)の進出を契機として、その後 1995年にスズキ、1996年末に本 田技研工業(以下ホンダ)、1999年7月にヤマハ発動機(以下ヤマハ)が操業を開始した。

現在、日系 3社が市場の6割を占めており、その他としては、中国系、台湾系の外資系企 業、地場企業約45社が参入している。

  生産台数は、2002年に100万台を突破した後、2006年209万台に達した。4年で倍増 したことになる(図表 8-7)。なお、こうした好調さを背景に、スズキ、ホンダ、ヤマハの 主要日系メーカーは、インド・中国に続く投資先として生産能力増強を進めることを発表 している。2006年には、スズキが南部ビエンホア市に新工場を開設し、生産能力を年間10 万台から20万台に高めた。ホンダは2007年5月に既存工場の生産能力を86万台から100 万台に増強し、さらに、2008年後半には第2工場をハノイ郊外のビンフック省に建設して、

生産能力を計150万台とすることを発表している。また、ヤマハも、2008年10月にハノ イ市に第2工場の建設を予定し、合計年間70万台を目指す。

      図表 8-7  二輪車生産台数の推移 

      (出所)GSO, Statistical Yearbook 0

500 1,000 1,500 2,000 2,500

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

(千台)

  企業形態別では、2001年以降国営企業のシェアが大幅に減少し、外資のシェアが拡大し ていたが、2003年以降は私有企業も目立つようになっている(図表 8-8)。2000年以降国 営企業のシェアが低下した背景には、ベトナム人の所得水準の向上および消費者の品質追 求志向の高まりなどから、品質面で優位性の高い日本製が人気を集めていた事等がある。

また、2003年に、二輪車所有者の登録制が強化され、二輪車所有者の1人1台規制が実施 されたことは、ベトナム人の品質志向意識を高める結果となったといわれている36。       図表 8-8  二輪車生産台数(形態別) 

      (出所)GSO, Statistical Yearbook

(2) 市場動向 

  二輪車のベトナム全土での保有台数は1,728万台(2006年)であり、約4.9人に1人が 二輪車を保有している。実際は、一家に数台所有することも珍しくない。近隣諸国と比較 すると、インドネシア6.2人、タイ4.1人、マレーシア3.4人、台湾1.7人の順となってい る。ベトナムの二輪車保有率は、インドネシアの水準は上回っているものの、近隣のタイ、

マレーシアに比べると70〜80%程度、台湾の3分の1に止まっている。

  販売台数は、2000年に中国から日系メーカーの安価なコピー車が大量に流入したことに より、99年の47万台から、2000年には169万台へと一気に増加した37。しかし、2003年 に二輪車所有の登録制が強化され、一人複数台の二輪車所有が禁止されたこと等の影響を 受けて、2003年は117万台へと減少した。その後は、中国製コピーバイクに 10 数%のシ ェアを奪われたホンダが2002年初めに従来モデルの半額以下の廉価製品「ウェイブアルフ

36 二輪車1台しか保有出来ない場合、その1台が故障してしまうと、通勤時などでの利用に影響が出るた め、出来るだけ故障の少ない品質のよい二輪車を志向する傾向がみられる。なお、本規制は200512 月に解除された。

37 中国製のコピーバイクは、日系メーカー製品の約4分の1という価格帯(約500ドル程度)であったた め、これまで二輪車を購入できなかった層も取り込んだ結果である。しかしながら、買った後のアフタ ーケアがなく、しかも故障が多いために、結局修理などで高く付くことに気づいたベトナム人からの人 気は急速にしぼみ始めたといわれる。

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400

2000 2001 2002 2003 2004 2005

国営 私有 外資

(千台)

ドキュメント内 I 32 9,315km , , (ページ 103-119)