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第2部 IT による企業活動の見える化技術~EEMS 適用の際のポイント~

3. 高効率化技術に関する取り組み事例

3.5. 国内外ナノテクノロジー拠点におけるキーデバイス技術開発

3.5.1. TIA-nano

TIA-nanoでは、5つの基本理念のもと、産学官に開かれた融合拠点として、ナノテクの

産業化と人材育成を一体的に推進するため、以下に示す 6 つのコア研究領域の拠点研究運 営の推進と3つのコアインフラの構築を行っている[3]。

 6つのコア研究領域: (1)ナノエレクトロニクス、(2)パワーエレクトロニクス、(3)N

-MEMS、(4)カーボンナノチューブ、(5)ナノグリーン、(6)ナノ材料安全性評価

 3 つのコアインフラ: (1)ナノテク共用施設、(2)ナノデバイス・実証ファンドリー、

図 3.5-1 TIAのコア研究領域とコアインフラ[4]

このうち、ナノエレクトロニクスにおいては、More Moore、More than Moore、Beyond CMOS の各領域において研究が進められ、More Moore領域では、NEDOプロジェクト である半導体 MIRAI プロジェクトと(株)半導体先端テクノロジーズ(Selete)で過去 10 年間蓄積された技術に TIA 各機関の技術を融合し新たな価値創造を行うことを試み、

More than MooreやBeyond CMOS領域では、ナノエレクトロニクス領域での新たなコ ンセプトが生まれることに期待して、以下の4つのR&Dプロジェクトが進められる。

内閣府による最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)に採択された中心研 究者による各プログラム、「フォトエレクトロニクス融合(東京大学 荒川泰彦教授)」、「省 エネルギー・スピントロニクス論理集積回路(東北大学 大野英男教授)」、「グリーン・

ナノエレクトロニクス(富士通研究所 横山直樹フェロー)」、「超低電圧デバイス技術研 究組合(Low-power Electronics Association & Project;LEAP)」が経済産業省の委託*28 を受けて実施する「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」、全体で 100 名以上の研究者がつくばのスーパークリーンルームに集結している。

パワーエレクトロニクスにおいては、早い段階での実用化が期待されるSiCパワー半導 体 に フ ォ ー カ ス し 、「 技 術 研 究 組 合 次 世 代 パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス 研 究 開 発 機 構

(FUPET:R&D Partnership for Future Power Electronics Technology)」や新たに発足

*28 2011年度よりNEDO委託事業に移管。

した「SiCアライアンス*29」の活用により、大学や公的研究機関を中心とした基礎研究と 産業界による実用化研究および開発・試作をシームレスに繋ぐイノベーションハブを構築 する試みを行っている。

新成長戦略にもグリーン・イノベーションが大きな柱として掲げられているように、エ レクトロニクスを電力技術へ応用して電力エネルギーを自在に制御して、環境負荷の低減 やエネルギー効率の高効率化が強く求められている。

以降では、ナノエレクトロニクスの研究組織として、連携研究体グリーン・ナノエレク トロニクスセンターとLEAPを、パワーエレクトロニクスの研究組織として、(独)産業 技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センターと FUPET の研究内容をまと めた。

(2) グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(GNC)

連携研究体グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(Green Nanoelectronics Center;

GNC)では、横山連携研究体長のもと産官の研究者60名程度を結集させ、IT機器を構成

する半導体LSIの消費電力を1/10~1/100に低減するためのコア技術の開発を行っている。

具体的には、富士通研究所、東芝、日立製作所、ルネサスエレクトロニクス、アルバック から総勢30名程度の研究者を本連携研究体に派遣し、産総研の研究者30名程度を融合し た組織となっている。さらに、東京工業大学、名古屋大学、東京大学、東北大学、京都大 学、九州大学、慶応大学の研究者との委託研究・共同研究を通じ、大学との連携を強化し た体制となっている。また、物質・材料研究機構、高輝度光科学研究センターとの連携も 行っている。

GNCの研究テーマは、図 3.5-2に示すように(1)低電圧動作CMOS技術の開発(新 材料・新構造CMOSの研究開発、新動作原理CMOSデバイスの研究開発)、(2)ナノカ ーボン材料の開発と応用(CNT の合成とデバイス応用、グラフェンの合成とトランジス タ応用、CNT/グラフェンの配線応用)、(3)バックエンドデバイス(相変化膜超格子素子 の低電圧材料・プロセス技術の開発)、を三本柱としている[5]。

図 3.5-2 GNCの3つの技術開発サブテーマ[5]

(3) 低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト(LEAP)

低炭素社会を実現するため、IT、エレクトロニクス機器の消費電力を抜本的に低減する 低電圧化技術の重要性が重要度を増していることを背景に、「超低電圧デバイス技術研究組 合(Low-power Electronics Association & Project, LEAP)」は、㈱荏原製作所、東京エレ クトロン㈱、㈱東芝、日本電気㈱、㈱日立製作所、富士通㈱、富士通セミコンダクター㈱、

三菱電機㈱、ルネサスエレクトロニクス㈱の9社*30により2010年5月21日に設立され、

経済産業省委託の「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」を2010年8月 からスタートした[6]。

本プロジェクトは、「つくばイノベーションアリーナ-TIA」の拠点活用プロジェクトの一 環に位置づけられており、図 3.5-3 に示すようにLSI の配線層(BEOL)に集積可能な抵 抗変化型の超低電圧(0.4V 以下)不揮発動作デバイスおよび集積化基盤技術を開発し、エ レクトロニクス機器の超低電力化を通して低炭素社会に貢献することを目的としている。

LEAPは、2014年度までの5年間に亙り、情報の不揮発性を利用した新機能創生、利便 性などの高付加価値を実現し、超低電圧デバイスの研究開発を行い、IT、エレクトロニク ス産業にインパクトを与えることを目指している。

具体的には、後述する5つの技術テーマの研究開発を行い、ロジック集積回路の0.4V以 下の超低電圧動作を可能とする。そして、情報の不揮発性を利用した新機能創生、利便性 などの高付加価値を実現するデバイス技術とそのプラットフォーム化により、新たな市場 を創出すること、オープン・イノベーションの場を提供し、日本のエレクトロニクス産業

*30 20114月時点で組合員は、(株)日立国際電気を加えた10社。

の活性化に大きく貢献することを目指している。

図 3.5-3 LEAPの研究概要 [6]

① 磁性変化デバイス

現状のロジック集積回路に混載される一次メモリの中のキャッシュメモリは SRAM や DRAMが用いられているが、これらは電源オフ時に蓄えていた情報を失う揮発性メモリの ため常時通電しておく必要があることと、内部に電荷として情報を蓄えるメモリであるた め低電圧化が困難である。今後も混載されるメモリの容量が大きくなっていくため、この ままでは動作時および待機時の消費電力が大問題となってくる。

磁性変化デバイスは、抵抗変化型のメモリデバイスであり、このデバイスは低電圧動作 と不揮発性の特性に加え、高集積、高速読み出し/書き換え、書き換え回数無制限、などの 特徴を有し、ロジック集積回路の配線層に集積可能であり、待機時の消費電力を大幅に削 減することが可能となる。更にこの磁性変化デバイスで、集積回路の配線に流れる電流の リアルタイムセンシング機能の実証を行い、従来にない高機能化を目指している。

② 相変化デバイス

ハードディスクドライブに代表されるストレージデバイスは、メカニカルな駆動原理と 遅いデータ転送特性(主としてキャッシュメモリへのアクセスに要する時間)のために動

ジ型の不揮発メモリとして、原子を人工的に並べた積層超格子素子を用いた相変化デバイ スを開発し、従来比1/10以下の書き換え電力量の実用化を目指す。

積層超格子素子は、相変化時の原子移動が高速かつ小さいため、従来の相変化素子で課 題となっていた余分なエネルギー消費を低減でき、書き換え耐性に優れたストレージ向け のバックエンドデバイスとして配線間に高集積に製造することができる。

③ 原子移動型スイッチ

プログラマブルロジック(PLD)LSI の回路再構成に用いられている、パストランジス タとSRAM を組み合わせた SRAM スイッチは、動作時および待機時の電力が大きく、低 消費電力化が困難であった。このSRAMスイッチに代わる素子として、原子移動型スイッ チの開発を行う。

原子移動型スイッチは、金属原子や酸素原子の移動による電極間における金属架橋の形 成・消滅を動作原理とし、高いON/OFF抵抗比、状態を保持するために電力を要しないこ と、面積も非常に小さくバックエンドに形成可能であることが特長である。

原子移動型スイッチによりPLDの動作時および待機時の電力を削減することが可能となる。

④ 三次元ナノカーボン配線

不揮発デバイスの大容量化・高集積化のためには、配線においても高度の三次元化・微 細化が必要となる。量子閉じ込め効果により細線状態でも高い伝導特性が得られるカーボ ンナノチューブやグラフェン等のナノカーボン材料を用いて、これらの要求に応える集積 化基盤技術として配線技術開発を推進する。

具体的には、不揮発デバイスの三次元集積化に不可欠なカーボンナノチューブによる深 いコンタクトホールへの埋め込みや、グラフェンによる微細幅横方向配線等の技術を開発

し、300mmベースでの実証を目指す。これらの技術は、不揮発デバイスの高度集積化を支

えるとともに、半導体微細集積化の基盤技術として広く応用が期待される。

⑤ ナノトランジスタ構造デバイス

高集積なCMOSデバイスは、トランジスタ特性(主としてオン状態-オフ状態の境目を 決めるしきい値電圧 Vth)のばらつきのために動作電圧の低減が困難であった。超低電圧 動作可能な論理回路用CMOSデバイスとして、ドーパントレストランジスタSOTB (Silicon on Thin Buried Oxide)による集積化基盤技術開発を行う。

SOTBは、従来のCMOSでばらつきの主原因となっていた不純物の濃度が低く(ドーパ ントレス)、従来と比べて半分から1/3以下にばらつきが低減できる。これによりばらつき 分を補償する電圧マージンが少なくてすみ、低電圧動作が可能になる。また、従来のCMOS とのハイブリッドプラットフォームを構築することで、過去の設計資産を活かしながら、

低消費電力化の利点を追求することができる。