第2部 IT による企業活動の見える化技術~EEMS 適用の際のポイント~
3. 高効率化技術に関する取り組み事例
3.3. クラウド・ストレージシステム((株)アイピーコア研究所)
ができる新しいストレージシステムの開発と、その消費電力を抑える取り組みが重要であ る。
3.3.2. 従来型ストレージシステムの課題
(1) ストレージの種類とそれぞれの課題
ストレージは、表 3.3-1 に示す4種類が通常使用されている。元々は DAS(Direct Attached Storage)のみであったが、DASの欠点を補うべくRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disk)が登場した。RAIDはエンタプライズシステムのデータベースを最適に 動作するように改良され、今日では殆どの重要なシステムはRAIDが使用されている。
表 3.3-1 ストレージの種別と特徴
一方、2次記憶装置は、1次記憶装置の故障でデータが欠損する為、定期的に内容をバッ クアップする必要があり、記憶容量は当初150KB程度だったが、USBメモリは256GBに もなり、30年強で約100万倍の容量増大に対応できた。
2次記憶装置の特長は、保管時のエネルギー消費が“ゼロ”である。しかしながら、保管 媒体が 1 個のみでは、それ自身がエラーを起こしたり紛失したりすると、重要な記録は全 て抹殺される。そのような事が無いように 2 次記憶メディアも複数保管が必要とされ、更 に管理が煩雑になる。
ストレージの見落としてはならない項目に管理単位(“ブロック”か“ファイル”か)が ある。この違いが決定的な方向の違いになる。従来は性能中心で考えた為に、ブロック管 理に成らざるを得なかった。しかし、情報爆発時代は性能より拡張性が重要項目となる為 に、管理単位をファイル管理に変えた方がより先進的な運用が可能になる。
(2) RAID ストレージの課題
表 3.3-2 にRAID ストレージの課題をまとめる。従来のエンタープライズシステム(基 幹システム)向けの RAID もインターネット上では欠点が目立つ。それでも現場で RAID が使われているのは、具体的なRAIDに勝るストレージが無い為である。RAIDの基本はデ
ック化する事でより性能を向上させた。ブロック化そのものが、拡張性では壁となった。
表 3.3-2 RAIDストレージシステムの課題
(3) インターネットの利用で求められるストレージは?
エンタープライズ用とインターネット用のストレージは異なる。表 3.3-3 に両者の違い を示す。エンタープライズ用とインターネット用ではほぼ正反対である事が分かる。
表 3.3-3 エンタープライズ用とインターネット用のストレージは異なる
次に、図 3.3-2 に情報爆発時代に求められるストレージの特長を示す。管理単位をブロ ックからファイル単位に変更し、インターネットの構造とストレージの構造を同一化させ、
性能向上と安全性の為にデータをIP上に分割する。RAIDの如く同期してデータを扱うの では無く非同期で行う。全体性能はRAIDの1/10以下になるが、RAIDでもファイル転送 モードでの転送速度は 20MB/s 前後が普通であり、この程度ならインターネット経由でも 充分性能が出せる。ファイル管理にする事でシステムは自由に選択でき、記憶媒体もその 時代に併せて自由に選択できる。
最大の特長はクラウドサービス故に、無限の拡張性が確保できることである。欠点とし ては、小さなデータを大量に取り扱うのは苦手な点がある。論理的には可能であるが、性 能を確保して分散保管するため一定量のデータ量が必要なためである。
図 3.3-2 情報爆発時代に求められるストレージ
3.3.3. LX100ストレージシステムによる実証例
(1) 情報爆発時代に対応するストレージ
図 3.3-3 に新シテムのアーキテクチャを示す。左側はRAID で右側は新シテムを実現す るLX100systemストレージシステムである。
図 3.3-3 従来RAIDシステムと新システムのアーキテクチャ*19
NodeはHDD自身や記憶媒体に直接IPのインタフェースが内蔵されているのが理想で あるが、現実には無理である。そのため、実存する技術をベースに必要な機能を実現した ものがNodeの概念であり、それを商品化したのがLX100systemである。その設計思想は 以下の通りである。
①Nodeはストレージに必要な機能を総て盛込む
②制御装置はNode内の制御に充分な性能(小型、低消費電力)でよい
③Node自身は消費電力を最少にすべく開発。未使用のNodeはスリープ状態
④Nodeをネットワーク上に分散し全体で信頼性と絶対性能を得る
⑤Nodeは機能が同じなら異なる機種でも良い
⑥障害時は障害が発生したNodeのみを切り離す事で解決
⑦規模が大きくなればなる程、信頼性と全体の性能が増加
上記の仕組みにより、LX100Systemは保存するデータを複数のNode配下のHDDに分 散保存することができ、ハードウェア障害などによるデータ滅失を防止する。また、イン ターネットで用いられている仕組みをストレージシステムに応用することにより、HDD容 量の容易な拡縮を可能にし、Nodeの接続台数や設置場所といった係数を増やすことで冗長 性のある仕組みを実現する。これらの事と、8~12TBの容量を実装しても、35Wという僅 かな電力での稼働を同時に実現した。同容量を実装した一般的なストレージの消費電力が 400~500Wであるのと比べて、約1/10の消費電力を実現した。
表 3.3-4にLX100systemの仕様と図 3.3-4に本体外観を示す。19インチラック(40U)
の両面に搭載が可能な 1U ハーフサイズを採用しているため、1ラック当たり 640TB~
1.28PB の容量を実装しても、消費電力 3.2kW である。すなわち、ペタバイトクラスのス
トレージシステムを1ラック当たり4kVAの供給電力で運用可能である。データセンタ事業 者にとってはスペースの有効活用が図れ、利用者は運用コストの削減が期待できる。
表 3.3-4 LX100system の仕様*20
図 3.3-4 LX100systemの外観*20
例えば、LX100systemで1PBのストレージシステムを1年間(365日、24時間)運用 した場合の消費電力量は約3万kWhになる。そこで、一般のストレージシステムを10倍 とすると約27万kWhの削減ができ、データセンタの電気代を1kWh当たり20円とする と 540 万円の削減が可能となる。他にもラック本数の削減分を考慮すると、データセンタ の運用コストとしては1千万円近い削減も見えてくる。
*20 (株)アイピーコア研究所提供
(2) クラウドストレージサービス実現例
LX100system をスカパーJSAT 株式会社が提供するクラウド・ストレージサービス
『S*Plex3』[4]と組み合わせることで、省電力なクラウド・ストレージシステムを実現した 例を示す。S*Plex3では、図 3.3-5に示すようにファイルを符号化・断片化して7ヶ所以上 のデータセンタに広域分散保管を行う。オリジナルのデータがそのままの形では存在しな く、仮に断片化されたファイルをコピーされて情報が漏れたとしても、それだけでは復元 をすることができない。S*Plex3はクラウドサービスでは国内初のコモンクライテリア認証 を取得しており、個人情報もクラウド・ストレージサービスに登録する事が可能である。
図 3.3-5 ファイルの符号化・断片化と広域分散保管の流れ*21
また、符号化の際の数式を工夫する事により分散保管したデータの 50%を損失してもオリ ジナルデータが復元可能である。そのため、広域分散保管した数ヶ所のデータセンタが甚 大な災害を受けても、他のデータセンタに残っているデータからリアルタイムに復元がで きるため、継続した運用が可能になる。このことから、ディザスタリカバリーシステムの 構築やバックアップ作業が不要になり、大幅なシステム運用・維持コストの削減を図れる。
さらに、ハードウェアの耐久年数による 3~5 年ごとの大規模なデータ移行作業が不要にな り、ハードウェアメーカや機種を問わないため、製品サイクルによる制約を受けない。そ のため、その時点で利用可能な最もビットコストの安い記録メディアを自由に選択でき、
データ保管にかかるコストを抑えることが可能になる。
3.3.4. まとめ
(1) 情報爆発への対応策
インターネット上でのデジタルコンテンツの保管には、1次ストレージと、2 次ストレー ジ(バックアップ)を兼ねることができるクラウド・ストレージシステムを用いることが 最適である。LX100systemなどを採用すれば懸念されている電力問題の対策にも最も効果 がある。
(2) データの安全保管には広域分散保管が有効
従来は分散保管としてディザスタリカバリーがあるが、自前でシステムを構築して維持
するためには高いコストや対応できるシステム要員が必要になる。そのような高いコスト をかけずに利用できるクラウド・ストレージサービスは、データ保管を行うシステムイン フラとして最も有効かつ安全である。
参考文献
[1] 世界中で増加しているデータ量を示すチェッカー
http://japan.emc.com/leadership/digital-universe/expanding-digital-universe.htm [2] 総務省統計局「世界の統計2011」第6章エネルギー
http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/06.pdf または http://www.stat.go.jp/data/sekai/zuhyou/0604.xls
[3] 2008年度版 グリーンIT推進協議会 調査分析委員会報告書
[4] スカパーJSAT株式会社 クラウド・ストレージサービス『S*Plex3』
http://www.splex3.com/