第2部 IT による企業活動の見える化技術~EEMS 適用の際のポイント~
3. 高効率化技術に関する取り組み事例
3.1. IT 機器・システム基盤省エネルギー技術開発(グリーンネットワーク・システム
3.1.2. 目標
最適化技術を開発することにより、ディスクドライブの容量削減とアクセス性能を向上。
・ データ書き込みを逐次化するデータ配置最適化技術の開発により、長さが変化するファ イルへのランダムアクセスを高速化。
これらの運用技術によりハードディスクの利用効率を上げ、ディスクドライブの台数(必 要なスピンドル数)の削減を目指している。
(3) グリーン・クラウド(日本電気、IIJ イノベーションインスティテュート、産業技術総 合研究所)
データ中心の観点からシステムを構築・制御し、大量のデータの蓄積・処理に要する消 費電力を削減する新たなクラウド・コンピューティング・アーキテクチャを創出すること で、電力消費効率の高いクラウド運用技術を研究開発している。要素技術として、次の 5 つのサブテーマに取り組んでいる。
・ データの重複を検出するアルゴリズムの開発により、データ格納容量を削減。データア クセスを少数のサーバに圧縮することで空いた、遊休サーバを停止。
・ ネットワークのスループットを向上させるために、ディスクドライブよりも高速な半導 体ストレージを利用するタスク分散処理技術の開発。
・ 動画、テキストなどデータの特性と、ベクトル計算、グラフィックス描画などのサーバ の特性をマッチングさせる、データの処理先と格納先を柔軟に変更できる処理分配制御 技術の開発。
・ 分散ストレージをローカルストレージに見せるデバイス共有ネットワーク構成技術開 発により、ノード間のデータ転送の向上によるストレージのI/O改善による消費電力の 削減。
・ 遠方のサーバストレージのアクセスを分散キャッシュ化することで、ネットワークの通 信電力を削減。
これら、サーバアーキテクチャとストレージシステム、グリーン・クラウドはそれぞれ の技術をインテグレーションした効果として、データセンタ・サーバシステムトータルと してのデータセンタ年間消費電力の30%以上削減を目指している。
(4) サーバ抜熱(日本電気、産業技術総合研究所、宇都宮大学、九州大学、SOHKi)
データセンタにおける消費電力量の内訳について、本来のIT機器による消費電力量は全 消費電力量の半分以下という試算があり、特に空調系と給電系が多くの電力を消費してい るとされている。現在のデータセンタの空調は、IT 機器や電源等で発生する熱による温度 上昇を防止するために、サーバを納めるデータセンタ全体の空気を冷却しているために冷 却効率が低く、効率改善の余地が大きいと指摘されている。データセンタ・サーバにおけ
・ CPU等高温のLSIチップが発する熱を放熱フィンと効率の悪い小型空冷ファンによっ て空中にまき散らすのではなく、単相流あるいは沸騰型2相流ヒートパイプによって筐 体外に伝熱させ、大きなファンで空中に発散させる。CPUファンの電力を削減する。
・ 筐体外に引き出した熱をプラグイン配管によって直接2次伝熱系に引き渡し、空中に飛 散させることなく屋外にまで取り出す。高温のまま屋外に伝熱させられるので自然風で の冷却が可能となり、ヒートポンプ電力を削減できる。
・ ナノ粒子を熱媒体に混入することにより熱伝導の効率を向上させる。
これらの技術により、データセンタ・サーバシステムトータルとして、データセンタの冷 却装置が使用する年間消費電力の30%以上削減を目指している。
(5) 電源(NTT ファシリティーズ、三菱電機、長崎大学、名古屋大学、産業技術総合研究所)
サーバをはじめとしたデータセンタ全体へのエネルギー供給源である電源については、
最大負荷時や停電時における安定供給を図ることが優先されているため、エネルギー使用 効率的には改善の余地が大きいことが指摘されており、データセンタ・サーバの低消費電 力化に繋がる電源システムに関する基盤技術を確立するため、次の要素技術を開発してい る。
・ サーバにおける情報と電力の高速・動的な観測および分析技術を開発し、複数の電源系 を全て冗長運転させるのではなく、負荷に応じて必要な台数だけ運転し、定格付近の高 効率領域を使用する最適電源マネージメント技術により、電源システム全体の効率を向 上。
・ 直流給電技術を開発することによって、電力変換段数を削減し、AC/DC 変換ロスと送 電ロスを低減。
これらの技術を開発することによって、データセンタの電源システムの年間消費電力の 30%以上削減を目指している。
(6) データセンタのモデル設計と統合評価(産業技術総合研究所、NTT コミュニケーション ズ、筑波大学)
上記のデータセンタに関する技術開発、研究を通じて得られた成果をデータセンタ・サ ーバシステムとして統合した場合の有効性を評価、確認するため、以下に示すデータセン タのモデル設計と統合評価を行っている。
・ データセンタ・サーバシステムの省エネルギー性を評価できる指標および枠組みを確立 し、データセンタに関する全プロジェクト成果を合算。
・ データセンタ全体でエネルギー利用を最適化可能な、消費電力量測定の基準となるデー タセンタのリファレンスモデルを開発。
これらの開発によって、データセンタに関する全プロジェクトの成果を統合し、データセ ンタの年間消費電力が30%以上削減可能であることの実証を目指している。
3.1.4. 「革新的省エネルギーネットワーク・ルータ技術」における取り組み
(1)省エネルータ技術(日立製作所、アラクサラネットワークス、横河電機、九州工業大学)
ネットワーク・ルータは、システム上の要求を100%満足する情報量で転送が可能な性能 の下で動作しており、情報量が少ない低負荷時や待機時のような本来消費電力が小さくて も良い状況でも大きな電力消費をしている。そこで、情報量に応じて動的に性能増減を実 現する省エネルギーのネットワーク・ルータ技術を開発している。
・ 情報量(トラフィック量)に応じて動的にネットワーク・ルータの性能を増減させるた めに、トラフィック量を動的かつ高速に観測する技術開発、観測したトラフィック量に 基づいてネットワーク・ルータのトラフィック量を動的かつ高速に予測する技術開発、
予測したトラフィック量に基づいてルータの最適な転送性能を予測する技術開発と、ネ ットワーク・ルータの消費電力の可視化技術の開発。
・ 複数のエンジンを備え、エンジン性能を多段階に増減することで省電力モードを実現す るマルチエンジンのルータアーキテクチャの開発。
これらの技術を開発することによって、ルータ消費電力の30%以上削減を目指している。
なお、この技術開発の成果は一部製品化されており、従来製品の日時や時刻の指定によ るスケジューリング機能以外に、通信トラフィック量を計測して通信トラフィック量に応 じて省電力機能を自動的に制御する機能が追加されている[2]。
(2) ネットワークモデル設計(日本電気、産業技術総合研究所、名古屋大学)
社会インフラとしての省エネルギーネットワーク・ルータシステムの実現可能性と有効 性を評価、確認するために、トータルなネットワーク・ルータシステムとしてのモデル設 計とその検証を実施している。
・ 将来のネットワーク・ルータのあるべき姿を予見するため、将来におけるネットワーク の利用形態および利用コンテンツとネットワーク上を流通する情報量の予測と、ネット ワークに対する社会ニーズとそれを満たすネットワークシステム、機器、構成および技 術の予測。
・ 今後のトラフィックの粒度・容量を調査し、電気と光の機能分担の最適化の検討など電 力最適化ネットワークアーキテクチャ技術の開発。
上記の開発成果を統合し、ネットワークとルータシステムトータルで消費電力の最適化 が可能なアーキテクチャを構築し、ネットワーク・ルータシステムの評価モデルを開発し、
ネットワーク・ルータにおける年間消費電力量の30%以上の削減を目指している。