第2部 IT による企業活動の見える化技術~EEMS 適用の際のポイント~
5. 総括と提言
Enterprise Energy Management System)によるエネルギー利用効率の最適化を目指した 取組みが進んでいるが、IT機器やその複合体であるITシステム(データセンタ等)がEEMS 等と連携を深めることが予想される。そこで重要となる技術も、本報告で取り上げた電力 消費効率の動的な評価技術(見える化技術)とそれに基づいた適応制御(最適化技術)で あると考えている。今後もIT機器自身の省エネ(Green of IT)技術研究開発をさらに強化す べきと考える。
第2部
IT による企業活動の見える化技術
~EEMS 適用の際のポイント~
(技術検討委員会 WG2/Green by IT)
― 第2部 要旨 ―
平成 22 年度技術検討委員会 WG(タスクフォース)が活動の対象とした事業者エネルギーマ ネージメントシステム(EEMS:Enterprise Energy Management System)とは、従来、事業者 内で個別に行われてきたエネルギーの管理を事業者という単位で捉え、種々のエネルギー 関連アプリケーションを実現するためのシステム技術である。
一昨年度および昨年度(平成 20~21 年度)技術検討委員会活動では、「日本の低炭素社 会の実現に向けた情報通信機器技術開発の提言」として、省エネ法の改正や、ISO50001 の 動向からみて、事業者としての統合的なエネルギーマネージメントシステムが将来必要に なることから、EEMS(Enterprise Energy Management System)の考え方を議論し、おおむ ね5年先をイメージした事業者に必要となるエネルギー関連サービスを構築するためのシ ステム技術に着眼し、特に見える化などで代表されるエネルギーの情報化システムについ て議論を行った。
本年度は、EEMS の議論をより深化させ、EEMS にもとめられる見える化技術(エネルギー の情報化)に焦点をあてて、その将来像について議論を行った。
将来像を実際の事例から検討を行うために、①省エネルギーセンター(以降、ECCJ と記 載)によるエネルギー管理の実際、②ISO50001 でのエネルギーマネジメントの検討状況、
③ユーザ事例として、コクヨ株式会社、東大グリーン ICT プロジェクト、④IEC Energy Efficiency の状況、⑤2010 年グリーン IT アワード受賞の三菱電機の事例について講演を いただいた。講演者を交えてあらためて EEMS のアーキテクチャ、フレームワークのブラッ シュアップ、EEMS の普及に向けたポイントの抽出等を行ったうえで、前年度提言した EEMS の4つの視点やアーキテクチャの概念を深化させて、フレームワークの詳細な定義を明確 にした。
また、最終年度として EEMS 適用の際に必要になると想定される「良い KPI」、「やる気を だせる見える化」、「普及のためのサービス」、「EEMS の役割と利害関係」という4つのポイ ントについて提言を行った。
今回とりまとめをしたフレームワーク詳細や事例、そして提言が EEMS の導入や開発にあ たっての参考になれば幸いである。
技術検討委員会 WG2
― 目次 ―
1. 背景と目的 ... 136 1.1. EEMSのあるべき姿と適用されるアプリケーション ... 137 1.2. 本年度WGでの取り組み ... 140 2. EEMSのフレームワーク ... 142 2.1. EEMSの視点 ... 142 2.1.1. ECCJより提案された事業者内での各レベル(事業者内での視点) ... 142 2.1.2. 4つのEEMS活用者の視点 ... 142 2.1.3. EEMS活用者の定義と業務および目的 ... 143 2.2. EEMSのアーキテクチャ ... 147 2.2.1. EEMSの概要 ... 147 2.2.2. 概念的なEEMSアーキテクチャの検討 ... 147 2.2.3. 各レイヤの検討 ... 149 2.3. フレームワークの詳細 ... 159 3. 事例 ... 164 3.1. ISO50001と事業者視点のエネルギー管理 ... 164 3.2. 省エネ法と事業者視点のエネルギー管理 ... 171 3.3. IEC Energy Efficiency ... 182 3.4. EEMSに関連する技術:コクヨエコライブオフィス ... 186 3.5. EEMSに関連する技術:東大グリーンICTプロジェクト ... 190 3.6. EEMSに関連する技術:三菱電機 ... 197 4. EEMS適用の際のポイント ... 204 4.1. 良いKPIとは? ... 204 4.1.1. 検討ポイントの概要と重要性 ... 204 4.1.2. EEMS適用に向けて ... 204 4.1.3. まとめ ... 206 4.2. やる気を出せる見える化とは? ... 208 4.2.1. 検討ポイントの概要と重要性 ... 208 4.2.2. EEMS適用に向けて ... 210 4.2.3. まとめ ... 211 4.3. EEMSの普及に向けたサービスとは? ... 212
4.3.1. 検討ポイントの概要と重要性 ... 212
4.3.3. まとめ ... 214 4.4. EEMSの役割と利害関係の整理 ... 216 4.4.1. 検討ポイントの概要と重要性 ... 216 4.4.2. 関係者間での共通認識をもつこと ... 217 4.4.3. データの測定に関する認識の共通化 ... 217 4.4.4. まとめ ... 217 5. まとめ~EEMS普及について~ ... 219 5.1. EEMSの機能と構成について ... 219 5.2. EEMS構築にあたり考慮すべき項目 ... 219 5.3. おわりに ... 220
1. 背景と目的
エネルギーをめぐる様々な取り組みが、国内外で活発化してきている。我が国では、2008 年に改正省エネ法(正式名:エネルギーの使用の合理化に関する法律)が成立し、今まで の工場といった単位でのエネルギーの管理の方法から、事業者全体でのエネルギーの管理 の重要性が認識されてきた。また、国際的な動きとしては、2011 年 7 月に発行を目指して、
ISO50001 国際規格が審議中であり、ISO50001 の制定をまって JIS 化される予定である。
ISO50001 は「組織のエネルギーパフォーマンスおよびマネジメントシステムを継続的に改 善するマネジメントシステム規格」であり、組織がエネルギーパフォーマンスの改善に必 要なシステムプロセスを確立できることを目的としている。
本ワーキンググループ(以降、WG と記載)では、IT 技術を積極活用することによって、
このような組織全体としてエネルギーの使用の諸課題を情報の視点から解決をはかるエネ ルギー管理システム(EMS:Energy Management System)の EEMS フレームワークの検討を進 めてきた。事業者エネルギー管理システム(EEMS:Enterprise Energy Management System) とは、従来、事業者内で個別に行われてきたエネルギーの管理を事業者という単位で捉え、
様々なエネルギー関連アプリケーションを実現するためのシステム技術である。上記で説 明した省エネ法の改正や ISO50001 の動向からみて、数年後には個別の EMS ではなく、様々 な課題の解決をめざした EEMS の考え方が必要となると考えている。図 1-1に EEMS の概念 について示す。
工場
EEMS
FEMS LEMS REMS
BEMS DEMS OEMS
ビル データセンタ オフィス
輸送 店舗
基幹システム
生産・販売・会計管理
報告
情報収集・制御
・外部ステークホルダ
・経営層
・従業員
・エネルギー管理者 見える化
領域別エネルギーマネージメントシステム
センシング・
モニタリングネットワーク
工場
EEMS
FEMS LEMS REMS
BEMS DEMS OEMS
ビル データセンタ オフィス
輸送 店舗
基幹システム
生産・販売・会計管理
報告
情報収集・制御
・外部ステークホルダ
・経営層
・従業員
・エネルギー管理者 見える化
領域別エネルギーマネージメントシステム
センシング・
モニタリングネットワーク
工場
EEMS
FEMS LEMS REMS
BEMS DEMS OEMS
ビル データセンタ オフィス
輸送 店舗
基幹システム
生産・販売・会計管理
報告
情報収集・制御
・外部ステークホルダ
・経営層
・従業員
・エネルギー管理者 見える化
領域別エネルギーマネージメントシステム
センシング・
モニタリングネットワーク
赤破線で囲んだ領域が本年度の検討対象
図 1-1 EEMS の構成
EEMS は図 1-1に示すように、様々なエネルギー管理システム(xEMS*1)を統合するエネ ルギー管理システムである。EEMS では、単に xEMS の集約をする EMS ではなく、xEMS を包
実現する概念である。
*1 xEMS の種類について下記に示す。
• BEMS(Building EMS:ビルディングエネルギー・管理システム)
• DEMS(Data Center EMS:データセンタエネルギー・管理システム)
• OEMS(Office EMS:オフィスエネルギー・管理システム)
• FEMS(Factory EMS:工場エネルギー・管理システム)
• LEMS(Logistic EMS:輸送に関わるエネルギー・管理システム)
• REMS(Retail EMS:店舗エネルギー・管理システム)
1.1. EEMS のあるべき姿と適用されるアプリケーション
ここでは、前年度取りまとめた、事業者のエネルギー管理システムとして重要であると 考える 3 つの要件とアプリケーションについて説明する。
<事業者のエネルギー管理システムとして重要であると考える 3 つの要件>
(1)事業者の目的に合わせたインフラであること
EEMS の目的で述べたように、事業者のエネルギー関連ニーズに対応し多彩なアプリケー ションが出現すると考えられる。金融取引に関連するもの、製品の特性に関連するもの、
行政や社内環境システム、イントラネットやインターネットとの連携など様々な企業サー ビスに対応できるインフラであることが求められる。
(2)事業者としての最適化が可能なこと
個々のエネルギーの合理化は、領域別のエネルギー管理システムによって実現可能であ るが、事業者としてのエネルギーの合理化の視点から複数の領域に渡る最適化が必要にな る場合がある。例えば、A 工場の生産、B 営業所の営業活動および顧客までのロジスティッ クを考えると、工場の合理性だけで比較するとより合理的な A 工場ではなく、合理的とは いえない D 工場で生産したほうが、総合的にみると効率的な場合もある。このような問題 を見つけ、適切なフィードバックを意思決定者や領域別エネルギー管理システムにするこ とが求められる。
(3)見える化に 4 つの視点をもつこと
EEMS は、従来エネルギー管理者のためのシステムであったエネルギー管理システムを、
事業者全体のためのエネルギー管理システムへと転換したものである。このために、事業 者の 4 つの視点に対応できることが重要である。
•外部ステークホルダ
株主や製品やサービスを使う顧客、省エネ法の報告をする監督諸官庁など、様々な 目的が考えられる。
•経営者
将来、事業者のエネルギー施策の重要度が増してくる。このために、エネルギーの 使用状況を経営指標の一部として表現する必要がある。
•従業員
エネルギーの使用の合理化をするためには、設備の改善だけでなく人手の運用によ る改善も重要な施策である。一般の従業員にわかりやすいエネルギー利用の可視化、
継続的に運用していくための仕組みが必要である。
•エネルギー管理者
より高度なエネルギー使用の最適化を実施するために、様々な分析手法の提供が必 要である。
<EEMS のアプリケーション>
事業者における、エネルギー管理にはエネルギーの使用の合理化に加えて、図 1-2 に示 すようにさまざまな目的やアプリケーションが考えられる。これらアプリケーションには、
生産活動に関わるエネルギーの視点だけでなく、CO2 など温暖化ガスに関する管理も主要な 目的となってくる。
EEMS
目的:事業者として
CSR向上 都環境確保
条例
温対法 LCA
カーボン フットプリント
ISO 50001 ISO 14001
グリーン 電力認証
排出権 取引
国内 CDM
エネルギー利用の最適化
コストダウン
省エネ法
EEMS
目的:事業者として
CSR向上 都環境確保
条例
温対法 LCA
カーボン フットプリント
ISO 50001 ISO 14001
グリーン 電力認証
排出権 取引
国内 CDM
エネルギー利用の最適化
コストダウン
省エネ法
図 1-2 EEMS のアプリケーション例
(1)事業者全体のエネルギー利用の最適化
EEMS の基本とも言えるアプリケーションである。事業活動におけるエネルギー利用の最 適化や CO2 削減は、それぞれの工場やロジスティックの改善など様々な方法によって個別