第2部 IT による企業活動の見える化技術~EEMS 適用の際のポイント~
3. 高効率化技術に関する取り組み事例
3.1. IT 機器・システム基盤省エネルギー技術開発(グリーンネットワーク・システム
3.1.5. 電力消費効率評価技術に関する取り組み
3.1.4. 「革新的省エネルギーネットワーク・ルータ技術」における取り組み
(1)省エネルータ技術(日立製作所、アラクサラネットワークス、横河電機、九州工業大学)
ネットワーク・ルータは、システム上の要求を100%満足する情報量で転送が可能な性能 の下で動作しており、情報量が少ない低負荷時や待機時のような本来消費電力が小さくて も良い状況でも大きな電力消費をしている。そこで、情報量に応じて動的に性能増減を実 現する省エネルギーのネットワーク・ルータ技術を開発している。
・ 情報量(トラフィック量)に応じて動的にネットワーク・ルータの性能を増減させるた めに、トラフィック量を動的かつ高速に観測する技術開発、観測したトラフィック量に 基づいてネットワーク・ルータのトラフィック量を動的かつ高速に予測する技術開発、
予測したトラフィック量に基づいてルータの最適な転送性能を予測する技術開発と、ネ ットワーク・ルータの消費電力の可視化技術の開発。
・ 複数のエンジンを備え、エンジン性能を多段階に増減することで省電力モードを実現す るマルチエンジンのルータアーキテクチャの開発。
これらの技術を開発することによって、ルータ消費電力の30%以上削減を目指している。
なお、この技術開発の成果は一部製品化されており、従来製品の日時や時刻の指定によ るスケジューリング機能以外に、通信トラフィック量を計測して通信トラフィック量に応 じて省電力機能を自動的に制御する機能が追加されている[2]。
(2) ネットワークモデル設計(日本電気、産業技術総合研究所、名古屋大学)
社会インフラとしての省エネルギーネットワーク・ルータシステムの実現可能性と有効 性を評価、確認するために、トータルなネットワーク・ルータシステムとしてのモデル設 計とその検証を実施している。
・ 将来のネットワーク・ルータのあるべき姿を予見するため、将来におけるネットワーク の利用形態および利用コンテンツとネットワーク上を流通する情報量の予測と、ネット ワークに対する社会ニーズとそれを満たすネットワークシステム、機器、構成および技 術の予測。
・ 今後のトラフィックの粒度・容量を調査し、電気と光の機能分担の最適化の検討など電 力最適化ネットワークアーキテクチャ技術の開発。
上記の開発成果を統合し、ネットワークとルータシステムトータルで消費電力の最適化 が可能なアーキテクチャを構築し、ネットワーク・ルータシステムの評価モデルを開発し、
ネットワーク・ルータにおける年間消費電力量の30%以上の削減を目指している。
費電力削減効果を評価する手法を研究開発している。各要素技術が消費電力を削減する範 囲は相互に関連するため、各IT機器の要素毎の電力内訳までも含めたデータセンタモデル を開発し、データセンタ・サーバシステムトータルでの電力削減効果を試算している。ま た、既存のPUE指標の課題を明らかにするとともに、省エネルギー性を評価できる新たな 指標も研究開発中である。
(1) データセンタモデル
データセンタにはネットワーク装置やストレージ装置、サーバなどのIT機器と、空調や 電源などの設備が設置され、それぞれ電力を消費している。またIT機器も負荷状態かアイ ドル状態かにより消費する電力が異なる。データセンタのモデル開発では、図 3.1-1 に示 すようにIT機器を構成する機能毎(冷却するためのファン電力、ストレージが消費する電 力、電源ロスによる電力、CPUの負荷電力など)に消費する電力を分割し、研究開発中の 各要素技術が電力削減効果に寄与する範囲を定めている。さらに、「ストレージシステム」
のようにディスクドライブの台数削減による電力削減か、「電源」のように電源効率向上に よる電力削減かを加味して、データセンタ・サーバシステムトータルの電力削減効果を見 積もる手法を開発している。
図 3.1-1 IT機器のモデル化*10
*10(出典)NEDO グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト提供
27.5 32.2 10 14.5 16
22 1.6
2.8 27.5
55
アイドル時 高負荷時 CPU 等
memory HDD FAN
PSU ロス
725
955 112 192 3499
アイドル時
390 170
64 160
1862
高負荷時 CPU 等
memory HDD FAN PSU ロス
ラックサーバ ブレードサーバ
消費電力(W) 消費電力(W)
(2) 既存指標の課題と新たな省エネルギー指標の開発
上記の IT機器のモデル化では、ファンや PSUをサーバの部品として捉えているが、デ ータセンタを一つの大きなコンピュータとして見た場合、ファンやPSUが必ずしもサーバ の内部に存在している必要はない。すなわち、装置としての区切りをどこに選ぶかには自 由度が存在するのである。この考察から、既存のPUE指標では課題が生じることは明らか である。IT機器内(あるいはIT機器を搭載するラック内)に冷却装置や電源を搭載するか どうかで、同じ性能かつ同じ総電力を持つ2つのデータセンタでもPUEの値が変わってし まう。図 3.1-2に示すように、データセンタAはサーバ側にファンとUPS電源を搭載する。
一方、データセンタB のサーバはファンレスかつ電源は DC/DCコンバータのみとし、フ ァシリティ側に送風設備とUPS電源設備を置いたとすると、性能も総電力も同じ2つのデ ータセンタにおいて、データセンタAの方がPUE=1.2となり、より省エネルギー性が高い ということになってしまう。
そこで、装置毎に電力を分けるのではなく、機能毎に電力を分けることで公平な省エネ ルギー性を評価することができると考え、指標を研究開発している。
図 3.1-2 既存指標の盲点*11
本技術、指標の考え方の妥当性については、各研究開発プロジェクトの成果を統合して Examples Data center A Data center B
Server
Performance 50GFlops 50GFlops Performance/Watt
( GFlops / W) 0.2 0. 3
Power facility Alternating current, no UPS
Direct current with UPS Cooling Facility Low airflow Heat remove
by air pressure Total power / year 30GWh 30GWh
PUE* 1.2 1.8
No fan
DC/DC trans. no UPS Large Fan
PSU with UPS
loss loss
*PUE=Total power consumption / power consumption by IT
効果を検証する実証実験及び統合シミュレーションによって確認する。