第 5 章 分析結果と考察
5.2 質的分析
5.2.2 Reflection sheet 分析
ペアでの読解後、自分達が作成したポートフォリオを見ながら、Reflection sheetを用い た振り返り活動を行った。この振り返り活動は、ポートフォリオを作成してから数日経っ てから行った。回収しておいたポートフォリオを返却し、改めて自分達の読解過程につい て振り返らせる。
方略使用への意識を高めるため、自分達が使用した方略について振り返らせるような質 問項目を用意した。使用した方略同士、関係するものはありますか?それはどのような点 ですか?等が、それらにあたる。Reflection sheet①②についてそれぞれまとめたのが次の表
17である。
124 表17.1
Reflection sheetのまとめ(1回目)
関係し合う方略 その理由
下線引き&段落分け 日本語訳をする時に便利
キーワード&重要語に○をつける
キーワードが分かるだけで、内容を予測 出来る
下線引き&キーワード
キーワードがあるところには前後に重要 な文がある
段落分け&キーワード 一目で見て分かり易い
段落分け&段落ごとの要約 段落ごとに区切って訳を進めるため
スラッシュ&段落分け
段落分けをした後、スラッシュ・リーデ ィングで更に細かくして読み進められる
キーワード&図を描く
キーワードに印をした後、図を描くと要 約をし易くなる
図を描く&要約をする 要約をすると、図でまとめ易くなる 段落分け&絵や図を描く 段落の流れをつかみ易くするため
表17.2
Reflection sheetのまとめ(2回目)
関係し合う方略 その理由
キーワード&要約 キーワードを踏まえて要約をする 段落分け&スラッシュ 文の構造を知る上で読み易くなる キーワード&下線引き 文の流れをつかむため
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スラッシュ&段落ごとの要約 短くまとめ、分かり易くする
重要語句に○をつける&訳 訳をする上で、重要語句が必要だから
下線引き&要約
大切なポイントのところで和訳すること により、もっと分かり易くなった 下線引き&段落分け 文の意味・流れをつかむ
下線引き&引き出し線
下線を引いて、そこを引き出して訳をし た
スラッシュ&文法の意味を書く
文法とキーワードによって何となく本文 を類推出来た
キーワード&文構造
キーワードから原因と結果という文構造 が分かった
キーワード&絵を描く
キーワードを絵や図にすることによって 分かり易くなった
方略同士の関わりについて、特にキーワードに着目することが文構造の理解につなが り、その後の内容を予測することを可能にすることに気が付いているペアがいた。キーワ ードに着目するという方略は、使用が定着している方略である。ただキーワードに印をつ けることに留まらず、そのキーワードがテクストの中でどのような役割を果たしているの かを理解していた。
組み合わせで、ポートフォリオ①②両方で、下線引き+段落分けがあった。その理由に ついて、ポートフォリオ①では、日本語訳をする時に便利であった。また、ポートフォリ オ②では、文の意味・流れをつかむというものであった。この記述からも、テクスト全体 の大まかな構造をつかもうとしていることが窺える。ポートフォリオ①では、分からない 単語に下線を引くペアが多かった。その下線引きは、ポートフォリオ①の記述にあるよう に、日本語訳をする際にその単語の意味をペアと確認するためのものだと考えられる。
また、一人ではなく、ペアで協力して読むという活動をしてみてどうでしたか?という 質問に対しては、次の表18のような記述があった。
126 表18
Reflection sheetのまとめ(自由記述)
自分一人で分からなかった所も、ペアの人がいたので理解出来た。
二人の視点から文章を読んでいって、それぞれお互いの分からないところ等を補完する ことが出来た。
自分が理解出来なかったところを、カバーし合えた。
二人で考えることで新たな切り口が見つかって、面白かった。
自分にない考えを取り入れることが出来て良かったと思う。
一人で考えるより、ペアの人と分からない文を考えることが出来たので、納得できるこ とが多く、何より楽しい!
二人で考えるので心強かった。
一人で読むより、相手の意見を聞くことで考えが広がった。
一人では分からないことを教えてもらいながら読むことが出来た。
分担出来て、知らないところを説明し合えた。
一人よりか、違う視点からの訳も出来て、出来ない所が少なくなった。
自分が分からなくても、相手が分かることがあって、一人の時より解けたし、楽しく解く ことが出来た。
人任せになった。
分からない所は教えてくれたので良かった。
自分の知らない単語を相手が知っていたりした。
一人でやるより集中出来た。
お互いの足りない所を補うことが出来た。
僕は何も出来ませんでした。次は頑張る!
一人より分かり易くて、退屈しなくて良い。
一人の時より、色々な方略を使うことが出来た。
意見の交換が出来るので良かった。
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この自由記述から、相互教授法の目的である、お互いに分からない所を補い合うという ことが出来ているペアが多いことが判った。また、これも相互教授法の重要な目的である が、間違った方向に行こうとしている時に、それを正しい方向に軌道修正してくれるとい う意見もあった。これらの記述から、学習者がペアでの読解の意義について理解している ことが判った。
上記は、Reflection sheet①に記述させた、ペアでの活動についての自由記述部の分析で ある。ペアでの活動を通して、自分の考えと相手の考えを意識し、理解を深めることが出来 たことが窺える。これまで、今回の研究の対象生徒に対してペアで読解を行う活動は行って いない。授業においては、ペアで活動する時間はあったものの、今回の実践のように、1時 間の大半をペアでの活動に使うことはなかった。そのため、ペアで一緒に読解を行うという 活動について、楽しいと感じる学習者が多く見られた。その点は、下記の図17においても、
黒ノードで表されており、頻度が高いことからも判る。また、それぞれお互いの分からない 箇所を補い合うという相互教授も行われており、生徒がこの活動の目的を理解しているこ とが判る。更に、分からない箇所の補完だけでなく、自分とは異なるペアの視点に気づき、
これまで一人の読解では気がつかなかった点にも着目することが出来たようである。また、
ペアの意見を聞くことによって、自分自身の考えが広がることも意識していることが判る。
一人じゃ分からないことも、ペアの意見を聞いてまとめることが出来るので良かった。
自分が間違った方向に行こうとしている時、ペアが軌道修正してくれた。
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図17 Reflection sheet分析(Reflection sheet①)
図18は、Reflection sheet②における自由記述の分析である。
図18 Reflection sheet分析(Reflection sheet②)
このKeyGraphからも、生徒がペアで活動することによって、知らない単語の意味を教
え合うことによって、内容理解を行っていることが判った。更に、このReflection sheetで は、知らない単語の意味を教え合うというようなことだけでなく、ペアと意見をお互いに交
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換したことも窺える。クリティカル・リーディングである、テクストに対する自分の意見を 表し、更にそれを他者と話し合うという活動を行うことが出来ている。また、メタ認知的活 動である、自分の意見について振り返り、必要であれば軌道修正を行うことも出来ているこ とが判る。回を追うごとに、生徒が本研究におけるペア活動について理解し、これまでの単 語の教え合いにとどまらず、クリティカル・リーディングを行っていることが判った。
本研究では、回を追うごとに発問をポートフォリオに書き込む生徒が増えた。また、発問 の方略について指導により、text-basedの発問に留まらず、推論を必要とするものや、クリ ティカル・リーディングに繋がる発問を行うことが出来るようになった。この発問が、相手 の意見を引き出し、相手の意見を聞いて、お互いに意見を交換することによって、自分自身 の読解過程や内容理解について振り返る、メタ認知的活動が可能になっている。