第 5 章 分析結果と考察
5.1 量的分析
5.1.2 方略に関するアンケート分析
先に述べた通り、このアンケートは池田氏によるものであり、使用の許可をいただいた 上で用いた。事前のクリティカル・リーディング方略を含むアンケート全体のクロンバッ クαは.878であり、高い信頼性があることが判った。また、池田氏の方略に関するアンケ ートと、著者によるクリティカル・リーディング方略についての、実践前と後とでの平均 点の変化について、グループ毎に次の図11のようにグラフ化した。
図11.1 実践後の変化(第1グループ)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
事前 事後
第 1 グループ
方略アンケート
クリティカル・リーディン グ
第3グループ 1.55 1.01
平均値 (Max5) 標準偏差
第1グループ 3.1 0.32
第2グループ 3.3 0.27
第3グループ 3.1 0.69
100
図11.2 実践後の変化(第2グループ)
図11.3 実践後の変化(第3グループ)
これらのグラフは、実践前の方略アンケートでは、グループ間の差がほとんどないことを 示している。順序尺度であるため、クラスカルウォリス検定を用いて分析を行った結果、
p=0.55で、グループ間に有意な差がないことが判った。更に、2グループ間での多重比較を
Steel-Dwass法で分析した。その結果、第1グループと第2グループ間でp=0.42、第1グル
ープと第3グループ間でp=0.99、第2グループと第3グループ間でp=0.48で、それぞれの 0
0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
事前 事後
第 2 グループ
方略アンケート
クリティカル・リーディン グ
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
事前 事後
第 3 グループ
方略アンケート クリティカル・リーディング
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2グループの間において有意な差がないことが判った。また、クリティカル・リーディング 方略に関するアンケートでは、実践前にグループ間に差はほとんどなく、クラスカルウォリ ス検定を用いて分析を行った結果、p=0.52でグループ間に有意な差はなかった。また、
Steel-Dwass法では、第1グループと第2グループ間でp=0.79、第1グループと第3グループで
p=0.69、第2グループと第3グループ間でp=0.57で、どの2グループ間にも有意差はなか
った。各グループの平均値の変化については、次の表11の通りである。
表11
方略アンケートのグループごとの変化(平均値)
方略アンケート クリティカル・リーディング方 略
第1グループ (SD)
3.1→3.5*
(0.370) (0.521)
2.7→3.2*
(0.580) (0.689) 第2グループ
(SD)
3.3→3.5 (0.330) (0.478)
2.9→3.2 (0.548) (0.784) 第3グループ
(SD)
3.1→3.3 (0.785) (0.527)
2.5→3.0 (0.739) (1.007)
注 *は5%水準で有意差あり
また、実践前と後における方略アンケートの間に有意差があるかどうかを、順序尺度で あるため、ノンパラメトリック検定であるWilcoxonの符号付き順位和検定で分析を行っ た。その結果、多くの生徒(26/38人)が、実践前に比べて、実践後に方略への意識が高まっ たという結果であった。また、クラス全体の事前と事後での変化については、p=0.00で、
有意水準5%において有意な差があった。
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また、クリティカル・リーディング方略についても、Wilcoxonの符号付き順位和検定で 分析を行ったところ、p=0.00でクラス全体の事前と事後で有意水準5%において有意な差 があった。
それぞれのグループにおいて、Wilcoxonの符号付き順位和検定により分析をした結果、
方略アンケートについて、第1グループにおいてp=0.00で、有意水準5%において有意な 差があった。また、クリティカル・リーディング方略について、第1グループにおいて、
p=0.02であり、有意水準5%において有意な差があった。その他のグループにおいては、
平均での向上は見られたが、有意な差はなかった。
Pre-testにおける、この方略に関するアンケートと、The Critical Reading Inventoryとの関 係を見るために、ピアソンの積率相関係数を用いて分析した。その結果、クラス全体におい て、方略に関するアンケートと、The Critical Reading Inventory全体との間に相関関係はなか った。更に、グループ毎に、方略に関するアンケートと、The Critical Reading Inventoryそれ ぞれの項目(text-based, inference, critical response, retelling)との間で分析を行った。その結果、
方略アンケートと、第1グループのinference、第2グループのcritical response、第3グルー
プのcritical responseとの間に中程度の相関が見られた。
また、post-testにおける、方略に関するアンケートと、The Critical Reading Inventoryとの 関係をピアソンの積率相関係数で分析した。クラス全体において、方略アンケートと The
Critical Reading Inventory全体との間で相関はなかった。更に、グループ毎に分析を行った結
果、第2グループの方略アンケートとretellingとの間に中程度の相関があった。
同じく、クリティカル・リーディング方略とThe Critical Reading Inventoryとの関係につい てピアソンの積率相関係数で分析した。その結果、クラス全体において、クリティカル・リ ーディング方略とThe Critical Reading Inventoryとの間には、pre-test、post-testともに相関は 見られなかった。グループ毎にクリティカル・リーディング方略と The Critical Reading
Inventoryのそれぞれの項目との相関についても分析を行った。その結果、pre-testにおいて、
第2グループのinferenceとの間に中程度の相関が見られた。また、第3グループのcritical responseとの間にも中程度の相関があった。Post-testでは、第1グループのtext-based、inference との間にそれぞれ中程度の相関があった。更に、第3 グループのcritical responseとの間に も中程度の相関が見られた。このように、特に、読解の熟達度のより低いグループにおいて、
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クリティカル・リーディング方略に関する意識が高い学習者は、critical responseにおいて、
より高い得点を収める傾向があった。
5.1.3 The Critical Reading Inventoryによるテスト結果の分析
実践の始めと終わりに、The Critical Reading Inventoryテストを実施し、実践前と後での変 化について分析した。このテストについては、先に述べた通りである。実践前のThe Critical
Reading Inventoryの得点を用いて、Levene検定による等分散性の検定と、Shapiro-Wilk検定
による正規分布の検定を行った。その結果、両検定とも有意水準5%において有意な差はな く、正規分布を示し、各グループは等分散であることが判った。更にこの結果を受けて、分 散分析を行った結果、p=0.03であり、有意水準5%でグループ間に有意な差があるというこ とが判った。また、TukeyのHSD法による多重比較の結果、第1グループと第3グループ 間において、p=0.03であり、有意水準5%で有意な差があることが判った。
実践の前と後のThe Critical Reading Inventoryの得点について、Shapiro-Wilk検定により 正規性の検定を行った。その結果、実践前では、Pの値がp=0.61であり、有意水準5%に おいて有意差はなく、正規分布の結果であった。また、実践後においても、Pの値が
p=0.05であり、有意水準5%において有意な差はなかった。この結果を受けて、対応のあ
るt検定を行った。クラスのThe Critical Reading Inventory全体の結果において、Pの値が
p=0.00であり、有意水準5%水準において実践前と後とで有意差が見られた。また、グル
ープごとに分析を行った結果、第3グループのPの値が、p=0.00であり、有意水準5%に おいて有意差が見られた。予備的研究や、pre-testの結果から、テクストの内容と、自分自 身の知識や経験を照らし合わせて読むことが出来ない傾向にあることが判ったため、本研 究では、特に発問に力を入れた読解活動を行ってきた。ペアでの読解というスタイルを採 り、お互いに自分のペアに対する発問を作成させた。発問については、実践当初、テクス トに答えが明示されているタイプのものが圧倒的に多かった。授業において、教師がモデ ルとして発問のタイプを紹介し、教えられたタイプの発問を意識しながら発問を作成させ た。推測を必要とする発問を考えさせることによって、答える側は勿論のこと、発問を作 成する学習者自身も、作成の段階で推測することを求められる。今回の実践において、事 前・事後のThe Critical Reading Inventoryの得点とともに、特にcritical responseについての
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項目で有意差が見られたのは、このような発問を取り入れた読解活動の効果であると言え る(Critical responseの事前・事後の有意差は表12を参照)。
更に、それぞれのグループごとの実践前と実践後の変化について検証した。平均点の推 移をまとめたのは、次の表12である。
表12
The Critical Reading Inventoryのグループごとの変化(平均値)
The Critical Reading Inventory
text-based1 inference2 critical response3 retelling4 第1グループ
(SD)
2.88→2.83 (0.725) (0.725)
1.66→2.11 (0.849) (0.857)
3.22→3.55 (0.970) (1.096)
1.83→1.72 (0.514) (1.131) 第2グループ
(SD)
2.36→2.27 (0.809) (1.103)
1.36→1.27 (0.504) (0.646)
1.27→3.09*
(1.348) (1.044)
1.45→1.09 (0.820) (1.044) 第3グループ
(SD)
1.55→2.44*
(0.527) (0.881)
0.66→1.33*
(0.707) (0.5)
0.88→2.66*
(1.054) (1.141)
0.66→1.44 (0.866) (1.013)
1 Max=4, 2Max=4, 3Max=4, 4Max=4
注 *は有意水準5%で有意差あり
各テスト項目・各グループ毎に行ったShapiro-Wilk検定の結果により、事前・事後の得 点が正規分布していないことが判ったので、Wilcoxonの符号付順位和検定を行った。その 結果、第2グループのcritical responseにおいてPの値が、p=0.02であり、有意水準5%に おいて有意差があった。第3グループでは、text-basedがp=0.02 であり、5%水準で、
inferenceがp=0.03であり5%水準で、critical responseがp=0.03であり5%水準で、それぞ れ有意差があった。また、retellingがp=0.08であり10%水準で有意傾向にあることが判っ た。
次に、田中等(2011)の研究を参照して、The Critical Reading Inventoryにおけるそれぞれの テスト項目とcritical responseとの関係について分析を行った。
最初に、text-basedの点数により、下記の表13.1のように4つのグループに分けた。それ
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ぞれのグループのtext-basedの得点と、critical responseの平均点により、その関係について 分析した。
表13.1
Text-basedとcritical responseとの関係 text-based合計点1 n
(人)
critical resonse2平均点
1 4 3.5
2 13 2.5
3 14 3.6
4 7 3.7
1Max=4, 2Max=4
次に、inferenceの点数により、下記の表13.2のように3つのグループに分け、それぞれ
のグループのinferenceの得点と、critical responseの平均点により、その関係について分析し た。
表13.2
Inferenceとcritical responseとの関係
inference合計点1 n
(人)
critical response平均点
0~1 17 2.9
2 15 3.2
3~4 6 4.0
1Max=4
また、retellingの点数により、下記の表13.3のように4つのグループに分け、それぞれ グループのretellingの得点と、critical responseの平均点により、その関係について分析し