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クリティカル・リーディングのためのメタ認知的方略

第 2 章 先行研究

2.3 クリティカル・リーディングのためのメタ認知的方略

クリティカル・リーディングは内省的な活動である。内省活動とは自分の読解過程を振 り返り(モニタリング)、必要であれば修正(コントロール)を行う、メタ認知的活動で ある。同じように甲田(2009)は、読解におけるメタ認知について、読んでいる過程で理解 をモニターする、理解出来ないと認識したら、修正力を働かせる(修正・補償)というよ うな、自分の認知過程に意識的に気づく能力であるとしている。また、熟達した読み手 は、難易度の高い題材を読む時に、自分の理解を意識的にうまく捉え、自分の理解をモニ タリングすることが出来るとしている。熟達した学習者が持つ、このメタ認知的方略を指 導することにより、熟達していない学習者も使えるようになることが考えられる。

犬塚(2006)は、読解のプロセスには、様々な読み手のスキルや能力が影響しているとし

ている。犬塚(2006)によるメタ認知的スキルを分かりやすく図式化したものが次の図7で

28 ある。

(犬塚, 2006, p. 106を基にし、修正し

た)

図7 メタ認知スキル

そのスキルの一つであるメタ認知スキルについて、自らの理解状態を評価吟味するメタ 認知的モニタリングと、読解プロセスを調整したり方略使用を調整したりするメタ認知的 コントロールからなるとしている。上の図7が示しているメタ認知的モニタリング・メタ 認知的コントロール、それぞれのスキルが身についているかどうかが、文章読解において は重要である。またそれらのスキルは、読解中に矛盾に気がつくかどうか、読んでいる文 章を理解出来ているのか(モニタリング)を行うことや、異なる状況下において適切な方 略を適切な箇所で使用出来ているか(コントロール)を行うことを意味している。しか

メタ認知的スキル

モニタリング メタ認知的モニタリング

自らの理解状態の評価・吟味

メタ認知的コントロール コントロール

方略の使用、読解のプロセスの調整 測定

・矛盾検出 (モニタリング)

・理解度評価(モニタリング)

・方略使用 (コントロール)

理 解

文章

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し、測定については、その測定が、どのような「読解力」を測定しようとしているのか、

育成すべき読解力としてどのようなモデルを想定するのかを明確化し、それに沿った課題 や指導法の作成や開発が必要である。

Grabe(2009)は、方略を認知的なものと、メタ認知的なものとに分類した。認知的方略と

は、推測したり、会話の流れをメモしたり、著者に質問をしたりするようなもので、使う ための訓練をする。一方で、メタ認知的方略とは、読解そのものへの明示的な気づき等で あり、理解についてモニタリングをするということであると述べている。先に挙げた犬塚

(2006)の図7のように、自らの理解状態の吟味・評価がメタ認知的方略である。

Sheorey and Mokhtari(2001)は、読み手の読解に関するメタ認知知識とは、様々な読解方略 に気づくことであるとしている。更に、読解は、このメタ認知的気づきによって影響を受け るとも述べており、自分がどのような読解方略を使用するかを意識し、実際にどのような読 解方略を用いたのかに気づくこと、つまりメタ認知が、深くテクストを読み解くことにおい て必要不可欠な要素であるとしている。

メタ認知方略について、池田(2010)は、メタ認知方略には①目標設定 ②自己モニター

③評価 ④修正という4 つの行動が含まれるとしている。本研究においては、この4 つの 行動をペアでの相互教授法を通して行う。読解中に作成するポートフォリオによって、②の 自己モニターと、④の修正を行う。また、読解後のReflection sheetを通して、③の評価を行

う。このReflection sheetは、読解全体の振り返りを促すとともに、どのような読解過程であ

ったかを確認することによって、読解中の振り返りにも貢献する。更に、評価を行った上で、

次回の読解をどのように行うかという、①の目標設定へと繋がっていく。

本研究においては、方略指導を通してクリティカル・リーディング能力を育成していくこ とを目的としているため、このような振り返り活動を通して、次の読解ではどのようにすれ ば良いかをペアで話し合わせることが、能力の向上に繋がっていくと考える。このペアでの 相互教授の詳細については、第3章で述べる。

尾関(2010)は、メタ認知方略とは、学習者が自分の学習をコントロール出来るように認 知を統括している方略であるとしている。また、この中には、学習を計画したり

(planning)、学習をモニタリングしたり(self-monitoring)、学習を自己評価したり (self-evaluation)、問題を見極めたりする(problem identification)方略が含まれるとしている。つま

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り、テクストをきちんと読めているか、また学習した方略を適切に使えているかどうかに ついて考えることは、メタ認知であり、このメタ認知は、クリティカル・リーディングに 寄与するものである。本研究においては、これらの方略をペアでの読解において使用させ る。学習者一人で行うのではなく、上記の方略使用をペアで行う。メタ認知を、Schraw

and Moshman(1995)は、メタ認知的知識(知識について人が知っていること)とメタ認知的

コントロールプロセス(人がどのように認知を調整するためにメタ認知的知識を使うか)

とに分けた。また、メタ認知に含まれる、planning, monitoring, evaluationは、多くの学習環 境において意識されないかもしれない、としている。更に、Schraw and Moshman(1995) は、メタ認知には他者との社会的関わりがあるとし、Geil and Moshman(1994)の研究を紹介 している。大学生を対象とした彼らの研究では、読解において、個人よりもグループで活 動した方が、高度な仮説を立てることが出来、問題解決に効果があるという結果であっ た。この研究から、自分のメタ認知概念と他人の持つものとを照らし合わせて、それを一 つの考えに統一することは、概念を明確化し、複雑な問題解決の改善に繋がっていくとい うことが判った。この点も、ペアでのポートフォリオを活用したクリティカル・リーディ ングにおけるメタ認知的活動の有効性を示唆していると言える。