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第 1 グループの生徒 A

第 5 章 分析結果と考察

5.2 質的分析

5.2.5 ケース・スタディ

5.2.5.1 第 1 グループの生徒 A

まず、第1グループの生徒について見ていく。次の表20は、第1グループのある生徒の ポートフォリオの記述についてまとめたものである。実際のポートフォリオを、付録7-1に 掲載する。

表20

ポートフォリオのまとめ(生徒A)

ポートフォリオ

ポートフォリオ② ポートフォリオ③ ポートフォリオ④

・スラッシュ

・段落分け

・キーワードに着 目

する

キーワードを□

で囲み、文構造 について考える

・下線引き 分からない単語

に下線を引く

・スラッシュ

・段落分け 段落に分け、そ

れぞれの段落ご とに要約を書く

・キーワードに着 目する

キーワードを□

で囲み、文構造 について図に描 いてまとめる

・分からない単語 に下線を引く 分からない単語

や重要なキーワ ードに下線を引

・スラッシュ

・段落分け

・キーワードに着 目

する

キーワードを□

囲み、テクスト の内容について まとめる

・下線引き 重要だと思う箇 所

に下線を引く

・ペアへの発問 テクストに答え

・スラッシュ

・段落分け

・キーワードに着 目

する

・下線引き 分からない単語

やキーワードに 下線を引く

・時系列に沿って テ

クストをまとめ る

・ペアへの発問 テクストに答え

が明示的に載っ

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く が明示的に載っ

ている質問。テ クストの内容に 沿って推論を必 要とする質問。

相手の意見を引 き出すような質 問。テクストの 内容について理 解できたかを確 認する質問

ている質問。テ クストの内容に 沿って推論を必 要とする質問。

相手の意見を引 き出すような質 問。テクストの 内容について理 解できたかを確 認する質問

表21

データ分析(生徒A)

データ The Critical Reading Inventory1 方略に関するアンケート平均2

実践前→実践後 10→12 3.0→3.6

1Max=16, 2Max=5

方略についてポートフォリオに沿って見ていくと、スラッシュを入れながら読むことや、

段落に分けるという方略の使用は定着している。また、下線引きという方略について、ポー トフォリオ①では、分からない単語に下線を引いていたが、ポートフォリオ②③④では、キ ーワードや重要と思う箇所に下線を引いている。キーワードや重要な箇所に下線を引くこ とによって、文構造への意識も高まる。

また、ポートフォリオ④で用いたテクストは、登場人物の生い立ちから、テクストで紹介 されている新しいシステムをどのようにして作り出したのかが、その年号とともに紹介さ れている。そのため、ポートフォリオ④では、時系列に沿ってテクストの内容をまとめると いう方略を用いて読解している。スラッシュや段落分けなどのような、使用が定着している 方略は勿論のこと、テクストに応じた方略を使えるようになっていることが判る。

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この生徒は、The Critical Reading Inventoryにおいては、inferenceに関するスコアが 実践後に伸びている(2→4)。これについて、上のポートフォリオのまとめからも判るよう に、ポートフォリオ③、④では、text-basedな発問とともに、推論を必要とする発問も行っ ている。方略を指導することにより、学習者はその方略使用に対する意識を高め、使用する ことが出来る。方略に関するアンケートにおいても、実践後にスコアが高くなっており、方 略への意識が高まったことが窺える。

ポートフォリオへの書き込みからも判るように、この生徒Aは、文構造への意識が高い。

また、3回目と4回目のポートフォリオでは、テクストの内容を踏まえて推論する発問が見 られる。文構造について理解し、テクスト全体がどのような構造なのかを把握することによ り内容理解が深まったと言える。その結果、テクストの内容から推測をすることも可能にな った。

ペアでの読解後の振り返り時に用いたReflection sheetの記述について見ていく。ポート フォリオ①の自由記述欄には、「2 人で考えることで、新たな切り口が見つかって面白かっ た」と書いている。また、ポートフォリオ②では、「やっぱり分かり易いし、一人でやるよ りやり易い」という記述があった。これらの記述から、この生徒がペアでの読解の目的や効 果について理解出来ていることが判る。更に、使用した方略が効果的であったか、という点 において、Reflection sheet②の記述に変化が見られた。使用した方略が効果的であったそ の理由について、Reflection sheet①では、「分かり易かった」「簡単だった」というように 漠然としたものであった。しかし、Reflection sheet②では、「段落毎の話題が分かり易くな った」「重要なことを一目で判るから」のように、より具体的な記述になっていた。

この生徒Aは、先に挙げたようにpost-testにおいて点数が伸びている。こ生徒は、もと もと方略を使えており、文全体の内容を、効果的な方略を用いて捉えることが出来ている。

特に、pre-testとpost-test のretelling において顕著な変化が見られた。この生徒の pre-testとpost-testのretellingは表22の通りである。

表22

Retellingの変化(生徒A)

Pre-test Post-test

141 オオカミは私達の世界ではあまりよく 理解されていない。オオカミはずる賢く、

危険だと思われている。「赤ずきん」や「オ オカミ男」伝説はあくまでイメージであ り、本当ではないのだ。

オオカミは2~10頭の大人・子供の群れ で生活する。大人のオオカミは子供のオオ カミにしっかり責任をもち、育てる。

オオカミの遠吠えは、なぜ起こるのか。

オオカミの遠吠えは群れを見つけるため ではないかとされる。もしはぐれても、そ れが遠い距離であっても、遠吠えによって 再会できることがあるのだ。赤ちゃんオオ カミの場合、助けを求めて遠吠えしても来 ないかもしれない。赤ちゃんは敵に見つか って殺されているだろう。それは赤ちゃん オオカミがまだ遠吠えしていい場所や時 間のタイミングを理解していないからだ。

赤ちゃんオオカミは狙われ易いのだ。遠吠 えには獲物を捕らえる時の警告としての 意味もあるのではないかとされる。

もしあなたが今後オオカミの遠吠えを 聞いたとしても、怖がることはない。彼ら は見失った群れをさがしているだけだか らである。

毎年夏、アメリカではサメの事故につい てよく聞く。一部では、サメが岸の近くを 泳ぐため、閉鎖されるビーチも出ている。

多くの科学者は、2~3匹のサメが人を襲 うのは本当に間違いであると信じている。

私達が日焼けして足の一部が茶色くなっ たり、白かったりするのが、サメには多く の魚がいるように見えるらしい。私達をサ メの大好物であるアシカやオットセイと 見間違っていることもある。しかし、サメ は自分達の間違いに気づくと、獲物を吐き 出して去るのだ。

サメは私達が彼らを恐れているよりも っと、私達のことを恐れるべきだと思う。

私達はサメをいろんなことに使う。ふかひ れスープはサメのヒレを使う高級料理で ある。このフカヒレを捕るのに地元の漁師 は 1 匹まるごと捕まえ、全身を使うが、

な漁師は、ヒレだけを切り取り、また海に 返してしまう。傷ついたサメは病気になっ たり、死んだりする。サメの数は、人間が 大量に捕ったことにより、とても少なくな っている。

上記の表の下線はテクストの大きな柱であるmacro pointで、波線は、その大きな柱を支 えるmicro pointである。この生徒Aは、pre-testの段階から、かなりの量をretellingす

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ることが出来ている。テクストを詳しく読み込むのではなく、大まかな流れが分かるように、

話の流れをきちんと理解しながら読解を行うことが出来ている。Pre-testでは、macro point が1、micro pointが2であったのに対し、post-testでは、macro pointが3、micro point が3と大きく変化した。

先に述べたように、実践前と後に方略に関するアンケートを実施した。Pre-testと post-testにおける変化については、紹介した通り3.0 (pre-test)→3.6(post-test)であった。特に、

パラグラフの切れ目を意識して読み進めたという項目(2→5)、文の構造に着目して読み進め た(2→5)、パラグラフ毎に要約をする(1→5)等の項目で意識が向上していた。Reflection

sheet分析で述べたように、この生徒Aは、方略を使用することにより、段落ごとの内容が

分かり易くなったと感じている。このことからも、この生徒A が、実践を通して、キーワ ード等に着目したり、段落ごとに理解をしたりすることにより、文構造を意識しながら読解 を行うことが出来るようになったことが判る。

実践の終わりに、これまでの授業を振り返るためのアンケートを行った。このアンケート から、ペアでの読解活動を通して方略への意識が高まり、個人での読解においても、方略使 用が出来るようになったと感じていることが判った。また、ペアでの読解がどのような点で 効果的であったかという質問に対しては、考え方や文章の受け取り方も違うので、新たな発 見があったと記述している。更に、実践で指導した発問について、読解において効果的に使 用できたかを尋ねる質問には、かなり出来たと答えていた。一方で、個人での読解において 自問自答しながら読解を行うことについては、たいてい出来たという回答であった。全体的 な感想としては、英語の長文について解き易いと思うようになったとコメントしている。こ のアンケートからも、実践を通して方略への意識が高まり、またその使用についても効果を 感じていることが判る。

次に、個人での読解において作成したポートフォリオの記述について表 23 にまとめる。

表23

個人でのポートフォリオ(生徒A)

個人でのポートフォリオ