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第 2 章 先行研究

2.7 研究方法

2.7.1 ケース・スタディ

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Merriam(2004)は、ケース・スタディとは、ある単一体、現象、社会的単位の集約的で全 体論的な記述と分析であるとしている。またその目的について、ある単一の現象や実態(

ケース)を集中的に注目することによって、調査者は、ある現象に特徴的な、重要な要因間 の相互作用を示すためであるとしている。一方、Gerring(2007)は、ケース・スタディとは、

同じようなまとまりの、大きなクラスを理解することを目的とした集中的な研究であると している。

大学や高等学校においては、一つのクラスに、様々な能力の学習者がいる。このような環 境において、行う実践が全てのレベルの学習者に適応するものなのか、もしくはある特定の 能力を持つ学習者にとって効果的なのかを検証することは重要であると言える。クラスを3 つのグループに分け、それぞれのグループから、生徒を1人ずつ選び、多様なデータに基づ いて、ケース・スタディとして、時系列で詳細に分析することが考えられる。ポートフォリ オの記述やテストの変化とともに、活動中に感じていたことや、ポートフォリオ等への書き 込みについて知るために、インタビューを行うことも求められる。実際に自分が書き込みを したポートフォリオを見せながらインタビューを行うことにより、その時のペアでの読解 活動の様子を思い出しながら、どのような意図でそれぞれの方略を使用したのかを説明し てもらうことも考えられる。このインタビューについては、ケース・スタディで分析する生 徒一人ずつ行い、録音したものを文字起こしする必要がある。また、テキストマイニングの プログラムであるKeyGraph を用いて、発言にどのような特徴があるのかについても分析 していくことが考えられる。KeyGraphについて、野村(2007)は、文章構成のキーワード抽 出を行うソフトであり、その文章の形態素と形態素の関係性をマップ上に可視化するもの であるとしている。KeyGraphにより、重要なキーワードが明らかになり、それぞれのキー ワードが何を意味するのかを分析しやすくなる。

2.7.2 混合研究法

混合研究法の研究手法は、研究において量的かつ質的データを集め分析し、混合すること に焦点を当てる(Creswell, 2010)。この混合研究法を用いた研究として、Ikeda(2007)の研究 を挙げる。この研究は、日本人大学生103人を対象として行われた。研究課題として、リー ディング・ポートフォリオを含む方略指導が、学習者の方略使用に効果的かどうか?リーデ

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ィング・ポートフォリオを含む方略指導は、様々なレベルの学習者に効果的かどうか?とい う2つを設定した。この研究の手法は、授業を通した方略指導と、使用した方略についての 統計的調査、ポートフォリオの記述の分析を行う混合研究法である。まず、テストによりク ラスを3つに分け、その後9週間に渡って方略指導を行う。実践後、方略使用についての アンケートと、ポートフォリオにおける記述の分析を行う。

この研究では、英語の能力を測定するためのテストやアンケート、ポートフォリオの分析 を行っている。テストのスコアだけでは把握できない、学習者のメタ認知的な側面を、アン ケートを通して分析し、読解の過程についてポートフォリオで分析を行っている。

この研究は、一定の期間を通して継続的に実践を行うため、その過程を観察することが重 要であることを示唆している。そこで、読解の過程を検証する方法として、ポートフォリオ を用いることが考えられるが、Ikeda(2007)の研究とは異なり、ペアでの協調的な読解活動 においてポートフォリオを活用することが考えられる。

実践を通して学習者のクリティカル・リーディング能力がどのように変化したのかを見 るためのテストも行う必要がある。また、アンケートやインタビューも取り入れ、実際に学 習者が感じたことを把握する。このように、テストやアンケートなどの量的なデータと、ポ ートフォリオやアンケートの自由記述、インタビューなどの質的なデータの両方を収集し 分析する混合研究法によって、より多角的に学習者の時系列に沿った変化を確認すること が可能になると考えられる。

2.7.3 研究の妥当性と信頼性

妥当性は、データと結果の質についてチェックする目的に役立つ。また、信頼性とは、研 究の参加者から受け取ったスコアが長期にわたって一貫性を持ち安定していることを意味

する(Creswell, 2010)。また、Merriam(2004)は、信頼性とは、調査結果がどの程度再現され

うるかを意味するものであるとしている。また、もしその調査が反復されても、やはり同じ 結果がもたらされるのかということである。信頼性は、質的データの一部を時間を置いて再 度分析したり、テストの結果等を 2 名で評定することなどによって確保することが出来る と考えられる。

また、妥当性には、内的妥当性と外的妥当性がある。Merriam(2004)は、内的妥当性につ

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内的妥当性は、いかに調査結果がリアリティ(日常世界・現実世界)に即してい るかという問題にかかわっている。分析結果が、いかにリアリティと合致してい るのか?分析結果はほんとうにそこにあるものをとらえているのか?調査者は、

自分で測定しているつもりのものを、きちんと観察し測定しているのか?この ように、あらゆる調査の内的妥当性とは、リアリティの意味づけにかかわってい るのである。

(Merriam, 2004, p. 294)

本田・髙木(2008)は、内的妥当性とは、測定したい対象が正確に測定できているか、デー タから結果が導けるかであるとしている。Merriam(2004)は、内的妥当性を高めるための基 本的方策として、①トライアンギュレーション ②メンバーチェック ③調査現場での長 期観察 ④仲間同士での検証 ⑤参加的で協同的な調査のモードという5つを挙げている。

Merriam(2004)は、メンバーチェックの定義を、データと暫定的な解釈をデータ提供者のも

とに持って行き、その分析結果が現実的に妥当なものかを尋ねることであるとしている。つ まり、自分が考えていたことが、被験者が意図していたことと同じかどうかを確認するため のものである。学習者が作成したポートフォリオ等を分析した結果が、学習者の意図したも のと異なったものになっていないかをチェックしてもらうことが必要である。

また、外的妥当性とは、得られた統計的推測や結論を、異なる母集団へ一般化することが 可能なことであるとしている。Merriam(2004)は、外的妥当性とは、ある調査結果がどの程 度、他の状況に適用出来るのかということと関わっているか、つまり、調査結果をどの程度 一般化出来るのかという問題であるとしている。外的妥当性とは、厚い記述を行い、実践し た過程や結果について詳しく説明することであるとしている。

2.7.4 まとめ

先に述べたように、内的妥当性を確保するために、事前・事後のアンケート、テスト、ポ ートフォリオ、インタビュー等の多岐に渡るデータ収集法を含むトライアンギュレーショ

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ンデザインを用いることが大切である。Richards(2009)は、トライアンギュレーションとは、

異なる種類のデータや異なるデータの取り扱い方が、一つの「研究上の問いかけ」に用いら れる調査デザインとして広く使用されることであると定義している。このトライアンギュ レーションを用いることは、研究の妥当性を高めることに貢献する。

分析結果の内的妥当性を確認するためのメンバーチェックは、分析した結果とその解釈 が、研究の対象者が意図したものと同じであるかを確認するために必要である。研究上の問 いかけに対して、間違った方向に進んでいないか、独りよがりの勝手な結論を導いていない かどうかを振り返ることは、妥当性のある研究にしていく上で重要である。また、外的妥当 性を確保するために、研究方法、分析結果と考察等において、可能な限り厚い記述を行うこ とが求められる。