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全体的なまとめと考察

第 5 章 分析結果と考察

5.3 全体的なまとめと考察

先行研究の中には、期間をおいた方略指導についてのものが見られた。Ikeda and Takeuchi(2003)の研究のように、明示的な方略指導は、方略指導頻度の変化においてプラス の効果があったというものや、読解能力育成については効果がなかったというものなど、

方略指導が様々な能力の育成に効果があるのかどうか検証されてきた。本研究において は、

教師が全体に対して方略使用のモデリングを行った。その後は、ペアでの読解を中心に行 うが、その中ではペアがお互いに分かるところを教え合うというスタイルである。つま り、

教師からのモデリングと、ペア同士での教え合いという明示的な方略指導を行った。ま た、

Ikeda and Takeuchi(2006)の研究のように、テクストに書き込みをさせたものをポートフォリ

オとして保存、分析し、能力の差で方略使用にどのような違いがあるのか検証するために 用いた。テクストに使用した方略をそのまま書き込ませ、それをポートフォリオとして保 存しておく。その保存したポートフォリオを後で振り返る際の材料として使う。このポー トフォリオ自体が、明示的な方略指導のための有効的なツールである。

ここまで述べてきたように、ポートフォリオを使って、ペアや個人で効果的に振り返り を行うことが出来た。ポートフォリオに使用した方略を書き込ませることはペアでの読解

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と個人での読解の両方で行った。実践中、方略使用のモデリングと、文構造に着目させる ために、グラフィック・オーガナイザーを紹介しながら明示的な指導を行った。

また発問が、本研究で育成を目指しているクリティカル・リーディングのための有効的 な方略であるということは、先行研究の章で述べた通りである。ペアでの読解において は、お互いに質問をし合うことで、相手の理解度を確認したり、増したりする効果がある と同時に、質問をした自分自身がテクストの内容などを、どの程度分かっているのかを確 認するメタ認知的な側面もある。このようなタイプの発問には慣れていないため、最初の ポートフォリオには記述がなかった。しかし、教師によるモデリングや、一斉授業におい て発問のタイプについて確認をすることによって、実際にテクストを読む際に使用するこ とが出来るペアが増えたものと考えられる。予備的研究において、疑問に感じた点に?マ ークをつけるように指示をした。生徒は、意味が分からなかった表現や単語にも?マーク をつけていた。本研究では、このような予備的研究による気づきを受けて、きちんと方略 の意味やその効果について明確に示すことを心がけた。発問についても、まずは生徒に自 由にペアに当てた発問を考えさせた。その後で、その発問をクラス全体で共有し、どのよ うな発問が効果的なのかを一緒に考えた。また、それぞれの発問が、どのようなタイプの ものなのかを考えさせた。この授業により、生徒はそれまで知らなかった発問のタイプを 知り、それがどのような場面で使用出来るのかを考えるようになった。

また、個人での読解における自問自答は、この節で紹介した生徒のポートフォリオから も分かるように、テクストの内容とともに、文構造への理解にも繋がる。生徒は、読解中 に感じた疑問点に?マークをつけていた。自問自答しなら読み進めていくことで、読解の 途中で修正などコントロールを行うことが出来る。このように、発問はメタ認知を促す。

そして、このメタ認知によってテクストと自分の知識や経験とを照らし合わせながら読解 をする、クリティカル・リーディングの育成が図られる。

発問について、授業で実際にペアに対して発問をするという活動をさせた。先行研究で 挙げた、池野(2000)による発問の種類の中でも、教師からの一方的な発問という形態に慣 れている生徒に、いきなり質問を考えながら読解をさせるのは難しかった。そこで、予備 的研究の章で紹介したような、発問に焦点を当てた活動を行った。ペアに対する質問を考 えながら読むということを念頭におきながら読解をさせた。予備的研究において、この発

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問をすることに特化した活動により、その後のメタ認知を促す発問をスムーズに行うこと が出来るということが確認出来た。本研究においても、ペアでお互いに質問をしながら読 解をさせた。その活動後に行った振り返りでは、お互いに質問をし合いながら読解を行う ことについて振り返りをさせた。ポートフォリオに書かれた発問をタイプごとに分類した が、テクストに明示的に答えが書かれている発問だけでなく、ペアの意見を引き出した り、ペアの理解度を確認したりする発問も回を追うごとに記述されていた。

Reflection sheetには、「自分が理解出来なかったところをカバーし合えた」「一人では分

からないことを教えてもらいながら読むことが出来た」「自分が間違った方向に行こうと している時、ペアが軌道修正してくれた」等の記述があった。ペアと一緒に読むことで、

自分とは違った視点でテクストを見ることが出来るとともに、読解中お互いに質問をし合 うことで、ペアと自分自身両方の読解過程についてモニタリングすることが可能になる。

本研究の実践において、テクストに答えが書かれている内容についての質問が多かったペ アが、徐々にペアの持っている知識や経験を引き出しながら考えさせる質問をするように なったことは、先に紹介した。この種の質問をするためには、質問をする自分自身が内容 について深く理解することが前提であり、質問を出しながら自分自身もメタ認知を利用し ながら自問自答を行っている。

本研究において、保存しておいたポートフォリオにそれぞれ特徴があることも判った。

とにかく気がついたことを書き込む生徒や、全文訳に近い要約を書く生徒、図や絵を使っ てテクストの内容をまとめている生徒など、ペアや生徒の数と同じだけ、様々なポートフ ォリオがあることが判った。更に、ポートフォリオを分析することで、英語の能力ごと に特徴があることも判った。

また、実践前と後で行ったアンケートから、方略に対する意識や使用頻度において、実 践前と後とで変化があることが判った。このアンケートは、池田氏によるものであり、許 可をいただいた上で使用した。更に、本研究で育成を目指している、クリティカル・リー ディングの方略についての項目を設けた。それぞれ、実践前と後とで有意な差があり、方 略に対する意識が高まっていることが判った。

ポートフォリオ分析からも方略使用頻度の変化について把握することが出来、本研究の 実践を通して方略に対する意識や使用頻度が高まったと言える。本研究で特に育成するこ

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とを目的としているクリティカル・リーディングを行うための方略については、発問や相 互教授などを日々の授業における実践を通して指導をしてきた。その変化について、ポー トフォリオや読解後のReflection sheetを用いて確認した。また、その変化についてThe Critical Reading Inventoryテストを用いて検証した。

The Critical Reading Inventoryでは、第3グループで有意差が見られた。特にこのグルー

プの生徒にとっては、ペアから教えてもらえることは多いと言える。Reflection sheetの自 由記述にもあったように、ペアでの読解を行うことによって、分からない所を教え合った り、軌道修正をしたりすることが、相互教授によって可能になったことが考えられる。

本研究は、ポートフォリオ分析による質的研究と、事前・事後テストの統計的分析を含む、

統合的研究である。質的研究について Richards(2009, p. 47)は、「質的データは、複雑で、

コンテクストの中にある観察または相互行為の記録であり、簡単に数字には置き換えられ ない。」と定義している。

確かに、質的研究において、ある程度の結果の予測はつくものの、予想もしていなかった 結果が出たり、先程述べたように、検出されたデータから新しい気づきが生まれたりもする。

もちろん、実践の前後のテストの得点については、データそのものを分析するが、例えばポ ートフォリオの分析においては、簡単に数字化できないデータもある。生徒が書いたポート フォリオに残されたデータから、複数のデータが導き出される場合もある。これは、ここま でに述べてきたことでもあるが、質的研究においては、集めたデータの中に一つではない、

複数の答えが含まれている。データの中には、活動への取り組み等のような、数字化できな いデータも含まれており、そのようなデータからも研究目的に繋がるような貴重な要素が 得られるとしている。

本研究では、ケース・スタディ等において、事前と事後に行った The Critical Reading

Inventoryの結果、ペアと個人で書き込みをさせたポートフォリオ、インタビュー等、様々

な方法を突き合わせて分析を行った。このように、量的、質的なデータを突き合わせたり、

組み合わせたりすることで、分析結果についての内的・外的妥当性を確保することが出来た。

ケース・スタディにおいては、分析結果を生徒に伝えて内的妥当性を確認した。また、上記 のポートフォリオや Reflection sheet やアンケートの自由記述についての分析結果と考察 等において厚い記述を行い、外的妥当性を確保した。