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4.2 米国政府による政策的支援とその効果

4.2.2 R&D プログラムの概要

米国シェール革命に係る技術革新において、1970 年代以降、DOE が実施した各種 R&D プログラムが重要な役割を果たした。以下、Eastern Gas Shales Programにおける詳細につい て把握し、シェール革命に対して与えた影響について考察した。

(1) Eastern Gas Shales Program  1) 概要   

非在来型天然ガス研究プログラムは、1976年度にERDAのMorgantown Energy Research

Center(METC)によって開始され、DOEへの組織統合移行も継続された。このプログラムは、

Eastern Gas Shales Program、Western Gas Sands Program、Methane Recovery from Coalbeds Programの3つのプログラムから構成され、この中でもEastern Gas Shales Programは、東部地 域(Appalachian、Michigan、Illinois Basinsなど)に分布するDevonian-age shalesにおけるシェー ルガス開発プロジェクトである。

このプログラムは、シェール資源基盤を、量及び流通、地質的特徴の観点から評価する ことを目的としており、小規模独立生産者により構成された当該業界に対して、より洗練 された技術等を導入することとしている305

DOEは当該プログラムに対し、1978〜1992年にかけて1億3,700万ドルを投入しており、

DOEによる支出に加えて、ERDAは2,000万ドル、ガス産業による非営利団体であるGRI(Gas Research Institute)は約3,000万ドル、民間企業も3,500万ドルを研究開発費に投入した。

2) プログラムの詳細306,307 

開始当初 5年間(1976年〜1981年)は、当該地域におけるシェールの地質学的研究が中心 に実施された。1980 年代初頭からは、研究の重点は、詳細な貯留層の性能解析と、破砕さ れたシェールのための貯留槽シミュレータの開発に移った。プロジェクト開始年の1976年

にはDevonian shalesからの生産は65Bcf/年であったが、1992年にはより広範な地域から年

間200Bcfにまで生産するに至った。

(プログラム設計)

先述の通り、プログラム初期は、シェールガス資源の地質的特性と規模を決定し、資源 基盤から天然ガスの生産を増やすことに向けられており、以下の地域ごとに計画された。

  −ケンタッキー州やウェストバージニア州のその時点で生産していた地域

  −オハイオ州及び近隣地域(ニューヨーク州、ペンシンルバニア州西部、ウェストバージ

305 <https://energy.gov/fe/science-innovation/oil-gas-research/shale-gas-rd>

306<http://www.rff.org/files/sharepoint/WorkImages/Download/RFF-DP-13-12.pdf>

307 <http://www.geographic.org/unconventional_gas_research/eastern_gas.html>

92 ニア州北部)

  −アパラチア山脈の東側(ペンシルバニア州、メリーランド州、ウェストバージニア州、

バージニア州)

  −アパラチア油田(ペンシルバニア州、ウェストバージニア州)   −イリノイ油田、ミシガン油田

  −東部諸州の探索エリア

  プログラムは、評価(Evaluation)、資源及び地質特性(Resource and Site Characterization)、研 究・実施・モデリング(Research, Instrumentation, and Modeling)、生産技術の開発(Production Technology Development)に分類される。

表 4-2  Eastern Gas Shales Programの内容 評価  −最新の技術開発と産業界の活動とのすりあわせ 

−環境規制の遵守と地域特有の環境問題への対応 

−潜在資源量の再評価モデルの開発 

−技術的、地質学的、経済的なデータを統合する計画策定及び計画の 進行管理 

資源及び地質特性  −デボン紀のシェールが存在する地域の特徴把握や理論的根拠を含 む資源開発に必要な資源データベースの開発 

−収集対象としたデータは、ガスが充満し破砕するシステムを識別する ために必要な層位学的、構造的、堆積学的、物理的、化学的なデー タ。 

※データ ベースは大学や州の地質研究機関と 連携して開発さ れ、

USGS が統合し、各地に提供した。 

研究・実施・モデリング  −潜在貯蔵量を正確に予測する新しい診断ツール、斬新なアプローチ の開発 

生産技術の開発  −さまざまな地質に対し効果的かつ斬新な技術の開発 

(主要プロジェクト)

当該プログラムにおける様々なプロジェクトを通じて革新的な技術開発が実施され、数 多くの技術や製品が後に商業的な成功を収めることとなった。また東部地域におけるシェ ール層に関する膨大な量の地質学的データ及び生産データの取得・普及に大きく寄与した。

当該データは、シェールガス貯留層の性質とその生産の仕組みに重要な新たな洞察をもた らすことになった。以下に、Eastern Gas Shales Programにおける主要プロジェクトを示す。

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表 4-3  Eastern Gas Shales Programの主要プロジェクト

プロジェクト名  実施主体  実施期間  実施目的 

Massive Hydraulic  Fracturing Tests 

Columbia Gas  Systems Service  Corp. (Columbus, OH) 

1975 ‒ 1978  大規模水圧破砕技術の適用可能性を示 すこと 

Directionally Drilled Well  in the Devonian Shale 

Consolidated Gas  Supply Corporation 

1976 ‒ 1977  デボン紀の頁岩で最適な破砕位置と好ま しい割れ方向を決定する地球物理学的 技術(遠隔探査、近い表面にストレスをか ける方法等)の開発、 

複数の水圧破砕を同時に行い、シェール オイル/ガスの輸送と貯蔵の改善に資す る掘削技術の開発 

Analysis of Structural  Geological Parameters  that Influence Gas  Production from the  Devonian Shale of the  Appalachian Basin 

West Virginia  University 

1976 - 1977  シェールガス生産の可能性を有する頁岩 の掘削適地を選定する手法の開発 

Massive Hydraulic  Fracturing Program for  Gas Stimulation 

Lawrence Livermore  Laboratory 

(Livermore, CA) 

1977  大容量の水圧破砕と関連技術により、頁

岩等から得られるガス生成量の改善に資 するデータベース及び予測方法の開発  (出所)DOD`s Unconventional Gas Research Progarams 1976-1995308

(プロジェクトの成果) 

当該プロジェクトの研究成果は、米国シェール革命を可能にした技術的要素として重要 な役割占める水平坑井技術及び水圧破砕技術に対して大きな影響を与えた。当該プロジェ クトの一環として、1977年にDOEは、東Devonianシェールにおいて初めて大規模水圧破 砕(Massive Hydro Fracturing)に成功したのに続き、1986年にはWest Virginia州のWayen群に おいてベンチャー企業とのパートナーシップを通じて多段階水平坑井に成功した。更に 1991年には、GRIによる補助金も活用しつつ、Barnettシェールにおいて水平坑井による掘 削が実施された。このようなプロジェクトの成果を基盤として、1998年にはMichel Energy

社によるSlick Waterの開発を通じて、シェール開発商業化が実現された。

(2) その他 

  1998年、DOEは、Seismic Technology Programとして3Dサイスミックイメージングに係

308 <http://www.geographic.org/unconventional_gas_research/subsequent_developments.html>

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る研究開発を実施しており、1989年から2000年にかけて約1億ドルが投入された。当該研 究も、マイクロサイスミック技術の進展に大きく起用した。GRI は、DOEと共同しつつ、

これらの研究開発を支援しており、シェール革命に大きく寄与した。