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平成 28 年度石油産業体制等調査研究 原油等開発に要する技術動向に関する調査 報告書 平成 29 年 2 月 28 日

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平成28年度石油産業体制等調査研究

原油等開発に要する技術動向に関する調査

報告書

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平成 28 年度石油産業体制等調査研究 原油等開発に要する技術動向に関する調査 目 次 1 石油・ガス上流産業の概要 ... 1 1.1 石油・ガス上流産業を取り巻く環境 ... 1 1.2 石油・ガス上流産業のバリューチェーン ... 3 2 石油・ガス開発における重要技術と主要プレイヤーの競争優位性 ... 5 2.1 探査・探鉱 ... 5 2.1.1 概要 ... 5 2.1.2 重要技術の整理 ... 5 2.1.3 主要プレイヤーの競争優位性 ... 8 2.2 坑井調査 ... 11 2.2.1 概要 ... 11 2.2.2 重要技術の整理 ... 11 2.2.3 主要プレイヤーの競争優位性 ... 13 2.3 掘削・坑井仕上... 17 2.3.1 概要 ... 17 2.3.2 重要技術の整理 ... 17 2.3.3 主要プレイヤーの競争優位性 ... 30 2.4 開発・生産 ... 31 2.4.1 概要 ... 31 2.4.2 重要技術の整理 ... 32 2.4.3 主要プレイヤーの競争優位性 ... 34 2.5 海洋生産システム ... 36 2.5.1 概要 ... 36 2.5.2 重要技術の整理 ... 37 2.5.3 主要プレイヤーの競争優位性 ... 44 2.6 LNG チェーン ... 48 2.6.1 概要 ... 48 2.6.2 重要技術の整理 ... 48 2.6.3 今後の技術開発トレンド ... 55 3 石油・ガス産業に係る分野横断的技術の最新動向 ... 58 3.1 素材関連技術... 58 3.1.1 HP/HT 対策技術 ... 58 3.1.2 ハイドレート・ワックス対策技術 ... 59

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3.1.3 新規素材関連技術 ... 60 3.2 IoT 関連技術 ... 62 3.2.1 生産性向上... 62 3.2.2 保守・管理... 63 3.2.3 機械学習... 64 3.3 ROV・AUV 関連技術 ... 65 3.3.1 ROV ... 65 3.3.2 AUV ... 69 3.4 環境対応技術... 71 3.4.1 随伴水処理技術 ... 71 3.4.2 フレアリング対策技術 ... 73 4 シェール革命が実現した背景等の整理・分析 ... 76 4.1 米国における事例分析 ... 76 4.1.1 技術的要素に係る整理 ... 76 4.1.2 社会・経済的要素に係る整理 ... 84 4.2 米国政府による政策的支援とその効果 ... 89 4.2.1 米国政府による政策変遷 ... 89 4.2.2 R&D プログラムの概要 ... 91 4.2.3 政策実施による効果 ... 94 4.2.4 米国以外のシェール賦存国の動向 ... 95 5 まとめ ... 100 5.1 我が国が取得に注力すべき技術分野の考え方 ... 100 5.1.1 我が国における政策動向 ... 100 5.1.2 強みを有する技術 ... 100 5.2 諸外国における動向 ... 102

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1 石油・ガス上流産業の概要

1.1 石油・ガス上流産業を取り巻く環境

(1) 油価低迷とその影響

2014 年後半以降の油価低迷を背景として、石油・ガス上流開発投資が停滞している。2016 年 9 月に国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が発表した「World Energy Investment 20161」によると、2015 年における世界のエネルギー総投資額は 1 兆 8,300 億ド ルとなっており、前年比 8%減となった。この中でも石油・ガス上流部門に対する投資額は 5,830 億ドルであり、依然として総投資額の約 1/3 を占めているが、前年比で見ると 25%も の大幅減少となっている。また 2016 年における当該部門に対する投資額は 4,000 億ドル強 (2015 年比 24%減)と予測されており、引き続き大幅減少となっている。 図 1-1 石油・ガス上流部門投資額の推移

(出所) IEA「World Energy Investment 2016」、高木路子(2017)「欧米メジャー、相次ぐ資産買

収発表の動き」,JOGMEC 石油・天然ガス資源資料2 一方、2016 年後半以降、原油価格は回復傾向にあり、上流開発投資についても回復の兆 しが見えつつある。特に 2016 年第 4 四半期には数多くの資産買収案件が発表されたが、そ のトレンドとして、欧米メジャーが財政難に苦しむ産油国国営企業や経営が苦しい中小企 業が保有する優良資産を積極的に買収し、将来の開発案件に繋げていく動きを加速させて いる3 1 <https://www.iea.org/newsroom/news/2016/september/world-energy-investment-2016.html> 2 <https://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1701_m_majors_divestment%2epdf&id=7909> 3 高木(2017)

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2 (2) フロンティア地域開発への移行 経済成長に伴い資源需要は伸びるが、埋蔵されている地下資源の量は有限であるため、 資源開発のフロンティアはより技術的に困難な地域・空間に移行せざるを得なくなる。過 去においては、「陸域・浅部」における掘削・採取が資源開発の主流であったが、現在では 技術的により難易度の高い「海域・深部」へと資源開発のフロンティアが移行している4 一方で、2017 年 2 月時点において原油価格(Brent)は 50 ドル/バレル強まで回復しており、 今後更に上昇を続ければ、ブラジルのプレソルトを始めとする大水深開発も再び動き出す 可能性がある。2016 年後半以降の欧米メジャーによる M&A 成約動向を見ると、大水深油 ガス田開発が依然として戦略的な投資ターゲットのひとつとなっており、更には中小開発 企業が保有する既発見の未開発資産に対して買収を仕掛けているケースもみられる5 先述した探鉱地域の成熟化によって、新規の大規模探鉱は、将来的に大水深海域や極圏 などの「フロンティア地域」と呼ばれる地域に移行すると考えられる。従って、これに対 応する新たな技術開発が必要となる。 (3) 環境・安全性等に対する社会的要請 2010 年 4 月にメキシコ湾において発生した BP 社の石油掘削施設 Deep Horizon の暴噴及 び原油流出事故以来、石油・ガス開発の安全対策及び環境対策に対する社会的要請がより 強まることとなった。環境と調和した石油・ガス開発が求められる中、近年では特に CO2 排出量増加に伴う地球温暖化が大きな課題となっており、関連技術の重要性が増している。 図 1-2 石油・ガス上流開発技術のトレンド (出所)MURC 作成 4 総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会中間論点整理 (平成 28 年 7 月 19 日) <http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shigen_nenryo/report_03.html> 5 高木(2017) 要素①: 資源価格低迷に伴う上流開発投資停滞 要素②: フロンティア地域開発への移行 要素③:環境・安全性等に対する社会的要請 上流開発技術ニーズに対する トレンドを形成 耐温・耐圧化技術、 高度IT技術 等 自動化・自律化、 安全性向上 等 最適化・効率化、 無駄削減など

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1.2 石油・ガス上流産業のバリューチェーン

石油・ガス上流産業の開発には巨額のリスクマネーを必要とすることから、リスク分散 のために、複数の石油会社が共同で権益を取得することが一般的に行われている。近年は、 欧米メジャーともいわれる国際石油会社(IOC: International Oil Company)と比較して国営石 油会社(NOC:National Oil Company)による生産規模及び影響力が増大しつつあり、これに伴 い石油・ガス上流産業の構造も変化の兆しがある。

欧米メジャー(例: Exxon Mobil 社、BP 社、Shell 社、Chevron 社、Total 社等)は、高い研究 開発能力を持つ R&D 部門を保有しており、オペレーターとして自らのニーズに沿った技術 開発を石油サービス会社(例: Schlumberger 社、 Halliburton 社、 Baker Hughes 社等)と共に実 施してきた。しかし上記の通り、国際原油市場において NOC が台頭するにつれ、石油サー ビス会社の主要クライアントも IOC から NOC へと変化している。これに伴い、石油サービ ス会社は、IOC と比較して技術的優位性を持たない NOC に対して、上流開発に係る包括的 なサービスを提供するようになっており、石油・ガス上流産業におけるプレゼンスが向上 した。大手石油サービス会社は、自らの R&D 部門において開発した新規技術を石油開発会 社に対して売り込むなど、技術的なトレンドを形成する役割を担っている。 石油・ガス上流産業のバリューチェーンは、オペレーターとなる石油開発会社、更には 石油サービス会社を核として形成される。石油開発会社のニーズに応じて、その下請けと なる掘削会社、探査会社、検層・エンジニアリング会社などが技術開発を実施する。更に これらに加えて構成機器メーカー、サービス提供会社、分野横断的関連企業などが存在し ており、石油・ガス開発上流産業のバリューチェーンは、極めて多層的な構造となる。

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4 図 1-3 石油・ガス上流産業のバリューチェーン構造 (出所)MURC 作成 探査・探鉱等 坑井調査等 掘削・坑井仕上等 開発・生産 運用・輸送等 石油・ガス開発会社(操業主体) IOC(Exxon Mobil、Shell、BP、Chevron、Total、INPEX、JAPEX等)、NOC 海洋掘削 Transocean、Seadrill 、Ensco 、 Noble DrillingJ DC等 石油サービス会社

Schlumberger、 Halliburton、 Baker Hughes等

地震探鉱関連 WesternGeco、CGG、PGS 等 物理検層関連 Schlumberger、 Halliburton、 Baker Hughes等 水圧破砕、掘削・仕上 Schlumberger、 Halliburton、 Baker Hughes等 EOR オペレータ-企業が中心となり実施 LNG液化 液化技術: APCI、 Bechtel LNG輸送 タンク技術: MOSS、 GTT,SPB(JMU)等 石油サービス会社が 包括的にサービスを実施 洋上生産(浮体式生産設備(FPSO等)) SBM、MODEC、BW Offshore 海底生産

機器製造: TechnipFMC、OneSubsea、Aker Solutions、GE Oil & Gas

エンジニアリング会社が 設計等に係るサービスを実施 Bechtel、KBR、Technip 日揮、千代田化工、TEC Technip, Saipem、 千代田化工、TEC等 Technip, Saipem、 McDermott 、 日揮、千代田化工等

LNG バリューチェーン

素材関連: 新日鉄住金、 Sandvik 等 IoT関連: GE、Siemens、ABB等

ROV/AUV関連: Oceaneering, SMD, Kongsberg 環境対応関連(例:随伴水処理) : Veolia、GE 等 海運会社 石油・ガス上流関連産業 造船会社等が 建造などに係る サービスを提供 Hyundai、Samsung、Daewoo、 三菱重工、川崎重工、IHI・ JMU、三井造船等 海洋生産 バリ ュ ーチェーン 分野横断的関連産業

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2 石油・ガス開発における重要技術と主要プレイヤーの競争

優位性

2.1 探査・探鉱

2.1.1 概要

物理探査とは、地球の内部構造あるいは地下資源に直接触れることなく、それらの物理 的な性質を手がかりとして間接的に探査する技術の総称である。掘削作業など対象物に直 接触れて計測する場合の費用に比べ、安価で広域を調査することができる。坑井内検層、 遠隔探知(リモートセンシング)なども広義には物理探査の分野に分類される6 以下、石油・ガスの探査・探鉱で利用される重要技術として、地震探査に加え、重力探 査、磁力探査、電磁探査について示す。

2.1.2 重要技術の整理

(1) 地震探査 地震探査は、地震波を利用する物理探査である。地震探査には人工震源を用いた反射法 地震探査、屈折法地震探査のほか、地層内で発生する破壊音など計測する AE(マイクロサイ スミック)計測などが含まれる。この中でも、反射法地震探査は、構造評価及び貯留層評価 から、生産段階における油田管理にまで幅広く利用されている。 1) 反射法地震探査 反射法地震探査7は、地表で発生させた振動に対する地層境界面からの反射波を観測する。 反射波が戻るまでの時間の違いを用いて地下構造の画像(地震探査記録)を獲得するととも に、振幅の変化を解析して貯留層の性状を探る。方式の違いにより 2 次元、3 次元、4 次元 に大別すること出来る。以下、概要を示す8 6 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“物理探査” <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?freeword=%E7%89%A9%E7%90%86%E6%8E%A2%E6%9F%BB&t arget=KEYEQ> 7 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“反射法地震探査” <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?freeword=%E5%8F%8D%E5%B0%84%E6%B3%95%E5%9C%B0% E9%9C%87%E6%8E%A2%E6%9F%BB&target=KEYEQ> 8 石油技術協会(2013)「石油鉱業便覧」,“ 2.4 地震探査”, p140-141

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6 (2 次元反射地震探査法) 2 次元反射地震探査法(2D 地震探査)は、“測線”と呼ぶ直線状の線に沿って調査され、測 線直下の地震探査記録が作成される。3 次元的な地下状況を把握するために、通常、測線は 複数本がそれぞれ交差するように設定される。石油・ガス探査では主に概要調査において 用いられる。 (3 次元反射地震探査法9) 2D 地震探査では得られる記録も 2 次元の断面図であるのに対して、3 次元反射法地震探 査法(3D 地震探査)では受発震点を面的に配置させることにより、反射点分布をある領域内 に均等に分布させて 3 次元的なボリュームのデータを得ることができる。陸域地震探査の 場合、震源としてダイナマイトやバイブレータを用いる。震源と受振点の配置が海上に比 べて自由度が高いため、様々な配置法が用いられている。一方、海域地震探査では、震源 として主にエアガンを用いる。複数個の震源と複数本のストリーマー・ケーブルを用いて 一度に長方形のエリアのデータを取得し、調査地域を往復しながら調査域全域をカバーし ていく。 (4 次元反射地震探査法) 4 次元反射地震探査法(4D 地震探査)は、繰り返し実施される 3D 地震探査であり、同じ場 所で 3D 地震探査を繰り返し行うことで、地下で起きている時間変化をモニタリングする手 法である。主に増進回収法(EOR: Enhanced Oil Recovery)が適用されるフィールドでの貯留層

モニタリングで利用されている10。4D 地震探査データ処理に特徴的で代表的なものとして、 データの再現性を向上させるために行われる 4D binning がある。 2) AE(マイクロサイスミック)計測 AE(Acoustic Emission) と は 、 岩 盤 が 破 壊 さ れ る と き に 放 出 さ れ る 微 小 な 弾 性 波 (micro-seismic)である。この音を近くの観測井に設置されたセンサーで計測し、割れ目の位 置を評定する手法が AE(マイクロサイスミック)計測である11 探査会社の 1 つである Weatherford 社は、マイクロサイスミックサービスとして、受振 器を観測井に対してではなく、水圧破砕を実施する坑井に展開する技術を提供している。 9 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“3 次元反射法地震探査” <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?sort=KANA&sortidx=1&target=KEYEQ&freeword=%EF%BC%93%E 6%AC%A1%E5%85%83%E5%8F%8D%E5%B0%84%E6%B3%95%E5%9C%B0%E9%9C%87%E6%8E%A2%E 6%9F%BB> 10 貯留層内での炭化水素の流体挙動を知るためには 4D 地震探査の実施が有効である。この貯留層内の流 体挙動は生産計画の最適化や生産量の最大化等において、非常に重要な情報である。例えば、効率的な生 産を行うための最適な坑井位置や原油増進回収法の効果を評価する際の一助とすることができる。 (出所 : JOGMEC 石油開発技術本部(2014)「石油・天然ガス開発をめぐる技術的な課題-克服するための最新 技術は何か-」,JOGMEC 石油・天然ガスレビュー 2014.1 Vol.48 No.1)

<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/5/5126/201401_033a.pdf>

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これにより、マイクロサイスミックを近くで捉えられることから、その活動をより詳細に

把握することができ、フラクチャ形状の制御にも利用されている12。また、Schlumberger 社

は、30 秒間以内のマイクロサイスミック活動をリアルタイムにモニタリングするサービス で あ る StimMAP Hydraulic Fracture Mapping Service13を 提 供 し て い る 。 同 社 の CMM(Coalescence Microseismic Mapping)に基づき、毎分単位でより多くのマイクロサイスミ ックを処理することが可能であり、同じデータセットの場合、現実のフラクチャのジオメ トリにより適合する結果が得ることが可能である。 (2) 重力探査14 重力探査は、重力異常15からの地下の密度分布を求め、地下構造を推定する手法であり、 探査・探鉱の初期段階の概要調査において、主に地質構造調査の一環として利用される。 近年、サブソルト層(海底岩塩下層)において探鉱活動が活発になっているが、当該地域にお いては、先述した反射法地震探査のみでは構造をイメージするのは難しい。こうした地域 において重力探査は有効な手段である。具体的には、新しい火山岩類の下位の堆積盆地や 断層構造の検出や反射法地震探査ではイメージングが困難なサブソルトの構造形上を、密 度構造から推定することが期待される。 (3) 磁力探査16 磁力探査は、磁気異常(大局的な磁場からの局所的な変化の空間分布)を測定して地下の磁 気的構造を解明する物理探査手法である。石油探鉱における適用例として、堆積盆地規模 での空中磁気探査が挙げられる。空中磁気探査は、広域を迅速且つ廉価に調査出来る特徴 があるため、堆積盆地の広がりや厚さの推定に用いることが出来る。 (4) 電磁探査17 電 磁 探 査 は 、 大 地 の 電 気 的 特 性 を 調 べ る 手 法 で あ り 、 石 油 探 鉱 で は 主 に MT(Magnetotelluric)法18と海洋 CSEM(Controlled Source Electro Magnetic)法が利用される。海 洋 CSEM 法は、人工電流源電磁探査法とも呼ばれており、人工的に発生させた電磁波(制御 12 <http://www.weatherford.com/en/products-services/drilling-formation-evaluation/wireline-services/borehole-seismi c-services/microseismic-services> 13 <http://www.slb.com/services/completions/stimulation/microseismic/stimmap.aspx> 14 石油技術協会(2013)「石油鉱業便覧」,“ 2.5.1 重力探査”, p185-187 15 地球上で観測される重力値は、地下の密度構造変化の影響、又は観測高度によって異なる。均質な地球 楕円体を仮定した重力値(正規重力値)に対する測定重力値の差異を重力異常と呼ぶ。 16 石油技術協会(2013)「石油鉱業便覧」,“ 2.5.2 磁力探査”, p188 17 石油技術協会(2013)「石油鉱業便覧」,“ 2.5.3 電磁探査”, p190 18 MT 法は、主に自然界の電磁場変動を観測する手法であり、太陽風や赤道付近で発生した空電現象に起 因する外部磁場擾乱により、大地にどのような電流が生じるかを電磁誘導現象に基づいて理解し、大地の 比抵抗構造を推定する調査技術である。 (出所 : 山根 修(2008)「油ガス田探鉱における海洋電磁法の適用可能性」,JOGMEC 石油・天然ガスレビュ ー 2008.3 Vol.42 No.2) <https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/1/1936/200803_055a.pdf>

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8 電流源)によって探査対象領域(通常地下)の比抵抗異常領域に発生した電磁場を測定、解析 することで地下の比抵抗構造を推定する19 2000 年 10 月にはアンゴラ沖合において、Statoil 社が中心となり、サザンプトン大学の制 御電流源(DASI)とスクリプス海洋研究所の観測装置を使った試験航海が実施され、石油探 鉱を目的とした最初の人工電流源を用いた周波数領域の海洋 CSEM 法が実施された。翌年 の 2001 年 11 月には、Statoil 社に加えて Exxon Mobil 社も参加して、再び海洋 CSEM 法の試

験航海が行われ、同じく油ガス層を検出した20

2.1.3 主要プレイヤーの競争優位性

地震探査分野における主要プレイヤーとしては、WesternGeco 社21、Petroleum Geo-Services ASA 社(以下、PGS 社)、Compagnie Générale de Géophysique 社(以下、CGG 社)などが存在し

ている22。この 3 社の技術的差異を比較してみると、データ処理技術においては、3 社とも 最新処理技術に対応しており、複雑な地下構造の下でもより鮮明な記録を得ることが出来 るため、データ処理技術については大きな差は無いと思われる。その一方、データ収録技 術においては、それぞれ特徴がある。以下、各社の主要技術を示す。 (WesternGeco 社) 海上での収録作業では、通常は震源として 50∼100m の間隔で 2 つの発振器(airgun)のセ ットを使うが、WesternGeco 社は発振器セットの間隔を 250m に広げることによって牽引す る 複 数 の ケ ー ブ ル と 直 交 す る crossline 方 向 の 記 録 密 度 を 増 加 さ せ て い る (Isometric Technology)23。さらに別の船で発振器セットを曳航し、発振器セットの間隔をさらに広げ、 一度の収録で 2 倍の広さの範囲のデータを収録することも可能となる。WesternGeco 社は受 振器ケーブルの深度と位置をリモートでコントロールできる翼で調整し、各受振器の位置 を正確に記録することによってデータ処理の精度を上げている24 WesternGeco 社の Q-Marine 収録システム25は、各発振信号を記録しそれを調整すること によって震源信号の再現性と精度を上げている。また、各受振器は波などにより動いてい るが、Q-Marine 収録システムではこれによるノイズを各受振器の信号から取り除いてデー 19

AIST Web サイト<https://unit.aist.go.jp/georesenv/explogeo/casestudy2.html>

20

Steven Constable1 and Leonard J. Srnka2「An introduction to marine controlled-sourceelectromagneticmethods for hydrocarbon exploration」, GEOPHYSICS, VOL. 72, NO. 2 _MARCH-APRIL 2007

<https://pdfs.semanticscholar.org/c168/a7169175fbc7c173d18aa3a252887a6d5106.pdf> 21 現在、同社は、Schlumberger 社の地震探査部門となっている。 22 我が国における物理探査実施企業としては、(株)地球科学総合研究所などが存在している。また経済産 業省所有の公船として導入した物理探査船「資源」が洋上における 3D 地震探査も実施している。 23 <http://www.slb.com/services/seismic/marine/technologies/isometrix.aspx> 24 後述する PGS 社と同様に受振器ケーブルの深度を深く設定しデータのノイズを減らすことで収録する 反射波の精度を向上させている。 25 <http://www.slb.com/services/seismic/marine/technologies/qmarine.aspx>

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タの精度を上げている。また同社の eSource Bandwidth-Controlled Seismic Source Technology26 は周波数領域を調整することによって、鯨などの海洋哺乳動物への影響を最小限にできる としている。

陸上震探データ収録では UniQ Land Seismic Acquisition27システムを用いている。このシ ステムでは受振器(GAC, geophone accelerometer)の加速度計の余分なコイルの動きを減らす ことでノイズを減らし、周波数領域を広げている。データ処理の際、各受振器の記録は GPS 時刻基準によって正確に同期化される。また、一度に 20,000 チャンネルのデータを記録で きるので、広い範囲に受振器を配置することによって海上と同じように広い範囲で多方向 のデータを収録できる28。震源の vibroseis の振動を正確に調整することによってデータの精 度と再現性を上げ、複数の vibrator を一度に使用しその振動を調整することも可能である。 受振器と発振器の最適な配置は iMage ソフトウェアを用いることによって計画でき、収録 日数の短縮も可能となる。 (PGS 社) 震探データ収録作業は海上のみで行っており、陸上での収録作業は行っていない。デー タ処理作業は海上のみでなく陸上震探データについても行っているが、海上データ処理が 中心となっている。 データ収録の技術上の特徴としては、まず、1990 年代前半に受振器のついたケーブル (streamer cable)を多数(6-20 本)牽引する船尾の広い三角形の震探船を最初に開発し、データ 収録作業の効率とデータ密度と精度を上げたことである。1990 年代後半になると他社も同 様の震探船を使用するようになった。 PGS 社は 20-30m の深度で受振器(hydrophone, 圧力データセンサー)とその動きも感知す るセンサー(motion sensor, 速度データセンサー)を付けたケーブル(Geo Streamer, dual-sensor

cable) 29を牽引することにより、天候の影響と余計な受振器の動きや海面からの反射などの ノイズを減らし、深い深度の地層からも反射が得られる低周波成分と解像度の高い記録を 得られる高周波成分の多い記録を収録する技術を開発した。 PGS 社の開発した震源である GeoSource30は、複数の発振器(airgun)のセットを深度と発振 の時間をずらせて組み合わせ、ノイズを減らし、周波数領域を広げている。また、震源の 位置をコンピューターで制御された翼によって正確に制御することにより、シグナルの再 現性向上を図っている。 (CGG 社) 震探データ収録作業は陸上でも海上でも行っており、震探データ収録機器も開発製造し 26 <http://www.slb.com/services/seismic/marine/technologies/esource-seismic-source.aspx> 27 <http://www.slb.com/services/seismic/marine/technologies/qmarine.aspx> 28 <http://www.slb.com/services/seismic/marine/techniques/wideazimuth.aspx> 29 <http://www.cgg.com/en/Search?q=TopSeis> 30 <https://www.pgs.com/marine-acquisition/tools-and-techniques/marine-seismic-sources/examples/geosource-anima tion/>

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10 ている。

海上震探作業は、一隻もしくは複数の震探船を用いた broadband, wide-azimuth, ultra-long offset, full-azimuth から 4D 震探まで幅広く行っている(BroadSeis、StagSeis)31が、油価の下 落に伴い現在は保有する震探船を減らしている。CGG 社の海上震探データ収録は、斜めに 深度を変化させる受振ケーブル(Variable-depth streamer)に特徴づけられる。このケーブルに よって受振記録の周波数領域を広めている。また、震源には PGS 社と同じく複数の発振器 のセットを深度と発振の時間をずらせて組み合わせ、ノイズを減らし、周波数領域を広げ ている。これらの特別な受振ケーブルと震源のセットでデータを取得するため、独自に特 殊な処理プログラムを開発している。CGG 社は受振ケーブルの中央の上に発振器を置き、 反射角度の小さい near-offset データを多く記録する技術(TopSeis) 32も開発している。これに よって特に水深 100m 以上の区域の地下の浅∼中部で精度の高い記録が得られるとしてい る。 陸上震探作業は、中東の既開発巨大油田から北米のシェールオイル・ガスまで世界各地 で幅広く行っている。収録方法としては、中東のように地下浅部に硬石膏層など高速度層 が 分 布 し 精 度 の 高 い 震 探 デ ー タ の 収 録 が 困 難 な 地 域 で 高 密 度 の デ ー タ 収 録 を 行 う UltraSeis33や周波数領域の広いデータ収録を行う EmphaSeis 震源システム(vibroseis)34、ノイ

ズの少ない低周波領域のデータを多くする CleanSweep 発振システム35など様々な技術に対

応している。受信機には MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の加速度計を使った QuietSeis システムを使いノイズを減らす技術も開発している36。 31 <http://www.cgg.com/en/What-We-Do/Offshore> 32 <http://www.cgg.com/en/What-We-Do/Offshore> 33 <http://www.slb.com/services/seismic/marine/techniques/wideazimuth.aspx> 34 <http://www.cgg.com/en/What-We-Do/Onshore/Broadband/EmphaSeis> 35 <http://www.cgg.com/en/What-We-Do/Onshore/Broadband/CleanSweep> 36 <http://www.cgg.com/en/What-We-Do/Onshore/Broadband>

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2.2 坑井調査

2.2.1 概要

坑井調査は、掘進中及び掘削終了後の坑井において実施される調査・測定のすべてを包 括37するプロセスである。具体的には、泥水検層や物理検層などが実施される38

2.2.2 重要技術の整理

(1) 泥水検層39 泥水検層(mud logging)は、坑内を循環する掘削泥水から地層に含まれるガス情報やカッテ ィングスの各種調査を行い、石油・ガス層の検知や評価等を実施する。泥水検層の測定項 目は、マッド・ガス測定、カッティングス・ガス測定、掘削データ測定、泥水性状の測定、 岩質調査等により構成される。 (2) 物理検層40 物理検層とは、掘削後または掘削中の坑井に計測機器を降下し、油ガス層評価や抗内状 況を把握するため、各種の物理量を想定する手法である。物理検層としては、ワイヤライ ン検層に加え、掘削同時検層(MWD、LWD)、音響検層などが、石油・ガス開発において主 に利用されている。 1) ワイヤライン検層 ケーシングセット予定深度まで掘り進むと、掘削編成を抗内から引き上げ、裸抗状態で 物理検層を行う41。ワイヤライン検層とは、検層機器をワイヤライン42と呼ばれるケーブル で抗内につりさげ、地層の物理的性質を測定する検層のことである。ワイヤラインで行う 37 <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?sort=KANA&sortidx=1&target=KEYEQ&freeword=%E5%9D%91% E4%BA%95%E8%AA%BF%E6%9F%BB> 38 検層とは、掘削された坑井により交差した地層の物理的特性、坑井あるいはケーシングの幾何学的特性 (孔径、方位・傾斜等)、油層の流れの挙動等を深度毎に記録したものである。検層(Logging)は坑井が裸孔か ケーシング坑井によって、裸坑検層(Open-hole logging)と管内検層(ケーシング坑井検層:Cased-hole logging) に分けられる。(出所: JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“検層”) <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?target=KEYEQ&freeword=%E6%A4%9C%E5%B1%A4> 39 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“泥水検層” <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?freeword=%E6%B3%A5%E6%B0%B4%E6%A4%9C%E5%B1%A4& target=KEYEQ> 40 石油技術協会(2013)「石油鉱業便覧」,“ 2.6.2 物理検層”, p207 41 通常、電気検層(electric logging) と呼ぶ 42 ワイヤラインは心線、7芯の導線からなる金属性の螺旋状に織り込まれた外装ケーブルであり、検層器 と地表のデータ取得システムの間でのデータやコマンドの送受信や電力を測定器に送る役割を持っている。 (出所: JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“ワイヤーライン・ログ”) <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?sort=KANA&sortidx=1&target=KEYEQ&freeword=%E3%83%AF%E 3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E 3%82%B0>

(15)

12 検層の種類には,比抵抗検層(電気検層、インダクション検層、ラテロ検層、マイクロ比抵 抗検層) 、孔隙率検層(音波検層、密度検層、中性子検層) 、その他(ガンマレイ検層、セメ ントボンドログ、ディップメータ、キャリパー検層、プロダクション検層、核磁気検層)な どがある43 2) 掘削同時検層(MWD、LWD) 44 ワイヤライン検層は、掘削終了後、坑井から一旦掘削機などを引き上げた後に、坑井の 中にワイヤーで降ろして実施する。これに対し、掘削同時検層は、測定機器が掘削アセン ブリーに装備されており掘進しながら測定をする方法であり、MWD(Measurement While Drilling)と LWD(Logging While Drilling)の 2 つの方式がある。一般には傾斜井や水平井等、 形状が複雑でワイヤラインによる検層ツールの降下が不可能な場合に LWD が使われる。掘 削と同時に地層データを取得することによって、掘削流体による汚染の少ない地層の特性 を知ることが可能となる。 (MWD) 掘削中にビット直下に配置した各種センサーで方位、傾斜、ツール・フェイス(ビットの向 き)、荷重、トルク、温度、圧力等の坑底データを計測するとともに、これらの計測データ をリアルタイムに地上へ伝送する技術である。坑底データの伝送方式については、現在主 流の泥水圧力波を利用したマッドパルス方式や泥水圧力連続波方式(マッドサイレン)、電磁 波方式(EM-MWD)及び計測データを一旦ツール内のメモリーに蓄積して揚管時に回収する 方式などがある。 (LWD) MWD 技術のうち、比抵抗、孔隙率、音波速度、ガンマ線など検層を主目的したものを LWD と呼ぶ。LWD は、坑底掘削装置に統合された測定機器を使用して、比抵抗、孔隙率、 音波速度及びガンマ線等を測定する。掘進と共に測定するので、泥水濾過水の浸入前、あ るいは浸入直後の地層の物性値を測定できるので、貯留層のインベージョンが起こってい ない状態での物理検層データを取得することができる。このデータを利用し油層評価を正 確に行なうことができる。

3) 坑井地震探査(VSP: Vertical Seismic Profile) 45

VSP は、坑井を利用した反射法地震探査手法の一つである。坑井内に地震波の受信機を セットして、小規模の地震探鉱を行い、震探記録との比較検討に供する。最近では、水圧 破砕法により発生する微小地震のモニタリングにも使用されている。坑口付近に地表震源 43 <https://www.japt.org/html/iinkai/drilling/yougo/main_wa.html> 44 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“検層” 45 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“VSP” <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?sort=KANA&sortidx=1&target=KEYEQ&freeword=VSP>

(16)

13 を設置するものをゼロオフセット VSP、震源が一定距離離れているものをオフセット VSP、 坑口から複数のオフセット距離に震源を配置したものをウォークアウェイ VSP またはマル チオフセット VSP と呼ぶ。 オフセット VSP やウォークアウェイ VSP は、主として坑井近傍(最大で、坑井からオフ セット距離の半分の範囲まで)の反射記録断面を得ることを目的に実施される。これらの反 射記録では、地表反射記録に比較して反射波の経路がほぼ半分程度であるため、地表付近 の高減衰域の影響も半分になり、高い分解能を得ることができる。最近では震源を地表で 面的に配置した 3 次元 VSP の実施例も多くなってきている。

2.2.3 主要プレイヤーの競争優位性

物理検層など坑井調査における主要プレイヤーとしては、Schlumberger 社、 Halliburton 社、 Baker Hughes 社などが存在している46。上記 3 社は、自らは鉱区権益を持たず、鉱区 権益を持つ石油開発会社に対して技術的なサービスを行う石油関連サービス会社の上位 3 社であるが、各社の発祥となった事業を見た場合、Schlumberger 社は物理検層であるのに対 して、Halliburton 社はセメンチング・ポンピングサービス、Baker Hughes 社はビットをはじ めとする掘削関連機器提供と異なっており、現在でもその影響が残っている。 ワイヤライン検層に関して Schlumberger 社が圧倒的に高い市場占有率を誇っている。海 洋でのワイヤライン物理検層に関しては、市場シェアの 90%弱を Schlumberger 社が占めて おり、残りの殆どを Halliburton 社が握っている状態である。ここで、Schlumberger 社と Halliburton 社を比較した場合、主要な測定項目は業界標準として共通していることから、明 らかな技術的な差異は認められない。しかしながら、大手石油開発会社の場合、信頼性・ 実績の面から Schlumberger 社を選択することが多いと言われている47 一方、LWD に関して、海洋においては Schlumberger 社が約 45%を占めており、残り約 50%を Halliburton 社と Baker Hughes 社が占めている。また、陸上においては、約 60%を Halliburton 社及び Baker Hughes 社、約 20%を Schlumberger 社が占めており、Halliburton 社 がトップランナーで、これに Schlumberger 社と Baker Hughes 社が続いている状態である。 ここで Halliburton 社の市場占有率が高いのは LWD 開発の先駆者であることが理由であり、 Baker Hughes 社は、元々が坑内機器を提供するサービス会社であったことに由来するものと 考えられる48,49 46 我が国における物理検層実施企業としては、(株)物理計測コンサルタントなどが存在している。 47 ワイヤライン物理検層については概ね完成された技術であることから、現在の石油会社側のニーズは HPHT 環境での耐久性がメインとなっている。 48 <http://www.corporatecrimereporter.com/news/200/justice-department-sues-to-block-halliburton-baker-hughes-mer ger/> 49 LWD が発達した背景には、物理検層機器降下のための揚降管時間削減があり、依然として発展途上で、 測定項目はワイヤライン物理検層ほど多くないが、信頼性の面ではワイヤライン物理検層に近付きつつあ る。また、ワイヤラインでは一般的になっている地層圧測定・流体サンプル採取(例:Schlumberger 社 MDT)

(17)

14 以下、各社の主要技術を示す。

(Schlumberger 社)

Sonic Scope50は、縦波及び横波の音波測定を掘削と同時に実施する技術であり、LWD の

最新技術となっている。この他にも同社は、音波検層装置として VSI(Versatile Seismic Imager) 51や DSI(Dipole Shear Sonic Imager) 52などの優れた技術を保有している。同じく音響検層装 置である Sonic Scanner53は、坑井周辺の音波測定を 3 次元で可能としただけでなく、傾斜し た坑井や坑径の大きな坑井、音速の非常に小さな地層での測定、あるいは地層のわずかな 方向差による音速の違いも測定することが可能である。

なお Schlumberger 社は、2000 年に Baker Hughes 社との間で設立した Western Geco 社(持株 比率: Schlumberger 社 70%、 Baker Hughes 社 30%)に関して、2006 年には Baker Hughes 社か ら株式 30%を完全取得することにより、完全統合した。現在、WesternGeco 社は、同社の地 震探査部門となっており、3D 及び 4D 地震探査サービスを提供している。更に 2016 年には、 Cameron 社の買収を完了した。これにより Schlumberger 社の事業部門は、評価部門、掘削 部門、生産部門に加え、Cameron 部門を加えた 4 部門体制となった。 Cameron 社は表層掘 削技術に優れており、 Schlumberger 社の坑内掘削技術と併せて統合的サービスを実現して いる54

を LWD で行うツール(例:Baker Hughes 社 TesTrak)も開発されている。Schlumberger 社、Halliburton 社、Baker Hughes 社で技術的差異や方向性の違いは認められず、ワイヤライン物理検層と同様に HP/HT 対応が大きな 課題である。 50 <http://www.slb.com/services/drilling/mwd_lwd/acoustics/sonicscope.aspx> 51 地上で起こした人工地震波を、地下の異なる深度で同時測定、更に坑内地震計を 1-40 機まで自由に構 成出来るようにし、油層評価の効率性を各段に進めた 。 <http://www.slb.com/services/characterization/geophysics/wireline/borehole-integrated-seismic-system/vertical_seis mic_imager.aspx > 52 音波を使って岩盤中の音の伝達速度を測定するダイポール型の音波検層装置として開発 < http://www.slb.com/services/characterization/geomechanics/wireline/dipole_shear_sonic_imager.aspx > 53 <http://www.slb.com/services/characterization/geomechanics/wireline/sonic_scanner.aspx> 54 <http://www.slb.com/news/press_releases/2016/2016_0401_cameron_merger_complete.aspx>

(18)

15

図 2-1 Schlumberger 社の事業構造 (出所) Schlumberger 社投資家向け資料より55

(Halliburton 社)

Halliburton 社は、同社事業部門である Sperry Drilling56を通じて、主力製品である Quasar PulseSM M/ LWD サービスを提供している57。同製品は、センサーの範囲を 392°F / 200°C の 温度と 25,000 psi(172 MPa)の圧力に拡大しており、厳しい坑内環境においても信頼性の高い 測定が可能となっている。Quasar Pulse センサーは、ダウンホールの振動に耐えるように設 計されており、困難な HP / HT 環境下でも優れた性能を発揮する。更に 2017 年には、LWD として 9.5 インチ径の方位角地層密度検層(ALD: Azimuthal Lithodensity)のサービス開始を発

表した58。当該技術により、14.5 インチ径超の掘削孔でのリアルタイム密度検層と画像提供

が可能になる。

また同社は、先述のマイクロサイスミック関連技術として Pinnacle を提供しており、当該

分野における世界標準となっている59

(Baker Hughes 社)

Baker Hughes 社が開発した Downhole Data Transmission は、Sentio CCL を使ってマイニン グの最適化等を実施するものである60。Sentio は、介入操作(intervention operations)において downhole sensors からリアルタイムデータを提供するものであり、オペレーション最適化を 55 <http://investorcenter.slb.com/phoenix.zhtml?c=97513&p=irol-irhome> 56 <http://www.halliburton.com/en-US/ps/sperry/sperry-drilling/default.page?node-id=hfvq7ixm> 57 <http://www.halliburton.com/en-US/ps/sperry/drilling/logging-while-drilling/quasar-pulse.page> 58 <http://www.halliburton.com/en-US/ps/sperry/drilling/geosteering-services/ald-azimuthal-lithodensity-sensor.page> 59 < http://www.halliburton.com/en-US/ps/pinnacle/default.page?node-id=hgoxbxfo > 60 <https://www.bakerhughes.com/products-and-services/completions/wellbore-intervention/fishing-services/sentio-s mart-intervention-services>

(19)

16

可能にする。この他にも Wired Completion Control(坑井仕上管理)に係る主要製品として、 MultiNode という製品が存在する61。MultiNode は、全電子化及びインテリジェント化を通じ て、複数の坑井を同時にリモート管理出来るシステムである。Wired Monitoring としては、 常設の downhole 監視システムである SureSENS62や、光ファイバ監視を実施する Sure VIEW63 などがある。また BEACOM は、リアルタイムの遠隔操作共同基盤(Remote Collaboration Platform)として機能している64。

なお後述する通り、Baker Hughes 社は、General Electric 社との間で石油・ガス事業分野を 統合することに合意している。 図 2-2 石油サービス会社の再編(合意を含む) (出所)高木(2016) 61 <https://www.bakerhughes.com/products-and-services/production/intelligent-production-systems/intelligent-well-sy stems/multinode-all-electric-intelligent-well-system> 62 <https://www.bakerhughes.com/products-and-services/production/intelligent-production-systems/well-monitoring-s ervices/electronic-well-monitoring-solutions/permanent-downhole-gauge-systems> 63 <https://www.bakerhughes.com/news-and-media/resources/brochures/sureview-p-t-monitoring-system-overview> 64 <https://www.bakerhughes.com/products-and-services/reservoir-development-services/remote-operations-services>

(20)

17

2.3 掘削・坑井仕上

2.3.1 概要

大水深海域での掘削は、水深の増加に伴い難易度は大きく増加することから、事故防止 も念頭に置いて様々な高度技術開発が必要とされる。具体的には、掘削中における海底面 からの暴噴に備えた噴出防止装置(BOP: Blow-Out Preventer)や、坑井内部を海水と隔離する ためにライザーパイプが必要とされる。また潮流や波浪の影響を受ける浮体式掘削装置の 場合は、自動船位保持装置システム(DPS: Dynamic Positioning System)などの高精度ポジショ ニング技術も必要となる。更には大水深化によって貯留層深度も大きくなっており、高い 掘削能力を持った掘削装置が必要とされている。 また坑井仕上では、坑井の掘削終了後、石油・ガスを生産するために必要となるプロダ クション・ケーシングの設置、パーフォレーションの実施、チュービング・ストリング、 クリスマスツリーの設置などの作業を行う。産出層の特性により、穿孔仕上げ方式、アン カー仕上げ方式、チュービングレス仕上げ方式などが選択される65

2.3.2 重要技術の整理

(1) 陸上掘削 陸上における開発では、新たな資源を求めて従来よりも技術的に掘削の難易度が高いフ ィールドへとシフトしてきており、掘削技術の高度化が進められている。具体的には複雑 な軌跡の傾斜坑井の掘削技術が利用されている。 1) ロータリー掘削66 ロータリー掘削は、先端に岩石を砕くビットを装着したドリルストリング67を坑井の中に 吊り下ろし、上から荷重をかけながら地下に掘り進んでいく掘削の基本的な方式である。 掘削中は、マッドポンプから泥水をドリルストリング内に送り込み、先端のビットから噴 出させ、ビットで破砕された掘屑をドリルストリングと坑井の環状の隙間を通って地上ま で運び出す。地上では泥水から堀屑を分離し、調泥後、再度ドリルストリング内へ圧送す る。 2) 大偏屈掘削(ERD) 近年、石油・天然ガス等の資源が存在している地下に向けて坑井を掘る際に、経済性や 65 JOGMEC 石油・天然ガス用語辞典“坑井仕上” <http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?freeword=%E5%9D%91%E4%BA%95%E4%BB%95%E4%B8%8A% E3%81%92&target=KEYEQ > 66 長縄成実(2006)「最新の坑井技術(その 1)」, 石油開発時報, No. 148 67 ケリー、ドリルパイプ(掘管)、ドリルカラーを連結したもの

(21)

18

環境保全等の問題から地層の真上からの掘削が困難である場合が増加している。この場合、 ターゲットとなる地層から離れた地点から傾斜掘り技術を用いて掘削を進めることが必 要となる。この傾斜堀り技術を更に進化させた、水平方向により遠くの地点まで坑井を掘 る技術が大偏距掘削(ERD :Extended Reach Drilling)である。以前は偏距と垂直深度の比が 2 以上の坑井を ERD 坑井と呼んでいたが、現在は ERD 坑井の明確な定義は存在していない 68,69,70

図 2-3 大偏距掘削のイメージ図

(出所) 大備勝洋(2005)「大幅コストダウンと環境保護に威力:大偏距掘削(ERD)技術サハリ ン 1 開発等での実用化進む技術革新」, JOGMEC 石油・天然ガスレビュー2005.7 Vol. 39 No. 4

ERD 掘削に必要とされる主たる技術要素課題を以下に示す。主には坑内の安定性、坑内 のトルク・ドラグ対策、掘り屑の対策が挙げられる。必要とされる技術は多岐に渡り、そ れぞれが複雑に関連したものとなっている。 68 北村(2008) 69 大備勝洋(2005)「大幅コストダウンと環境保護に威力:大偏距掘削(ERD)技術サハリン 1 開発等での実用 化進む技術革新」, JOGMEC 石油・天然ガスレビュー, 2005.7 Vol. 39 No. 4

70

(22)

19 表 2-1 ERD 掘削に必要とされる主たる技術要素課題 技術要素 課題 課題の概要 対応策 坑 内 安 定 性 ・ 掘削時のトルクや揚降管時のドラ ッグを可能な限り低く抑えるため に、より滑らかな坑井軌跡とする 必要がある ・ 計画立案段階における地層圧・地 層破壊圧予測モデリング技術 ・ 作 業 実 施 段 階 で PWD(Pressure While Drilling)ツールなどによるリ アルタイムでの坑内状況の監視 ト ル ク & ド ラグ対策 ・ 坑壁と掘削機器との間の摩擦が 大きくなり、掘進中及びケーシング 降下中のトルクやドラグ(負荷)が 増大することが多い ・ ドリルパイプやケーシングにセット して使用するタイプのツール(トル クリダクションツール)を用いて機 械的に摩擦を減少させる ・ 油系泥水などの潤滑性の高い掘 削泥水、または機械的に摩擦を減 少させる効果を持つ小径ビーズな どを混入した掘削泥水を用いる ・ RSS(Rotary Steerable System)を

使 用 し 、 従 来 の PDM(Positive Displacement Motor)を使用したも のと比較して滑らかな坑跡を達成 することにより、摩擦を軽減させる ケ ー シ ン グ 降 下 技 術 ・ ケーシング降下時のドラグは大き く ERD 坑井では通常の方法では 降下できなくなるほどドラグが大き くなることもある ・ 掘削泥水や特殊機器を用いてド ラグを減少させる ・ ケーシングの一部(または全部) に意図的に泥水を補充しないこ とにより、ケーシングに浮力を与 え 、 摩 擦 を 減 少 さ せ る (Casing Floatation) ホールクリ ーニング ・ 坑井の高傾斜部においてはカッテ ィング(掘り屑)を十分に除去できな いことによりさまざまなトラブルを 引き起こすことがある ・ 掘削泥水によるホールクリーニ ングやポンプ流量の適正化 ・ 循環中にドリルパイプを高速で 回転、バックリーミング(揚管中の 浚さらい)の実施 (出所)北村(2008)、大備(2005)等より MURC 作成 3) 掘削同時検層(MWD) 傾斜掘削では、掘り進めている坑井が計画した軌跡通りとなっているかどうかを常に確 認する必要がある。そのため、掘削先端の坑底情報を採取し、リアルタイムで地上に伝送 するシステムの開発が行われてきた。 データ伝送としてはマッドパルス方式が主に採用されているが、ERD 坑井などの掘削の 難易度が高い坑井では、坑井状況に関するより多くの情報を必要とする場合があり、大容 量の情報の伝達が可能となる技術の開発が行われている71 大容量の情報伝達方式としてはドリルパイプ内に電気信号ケーブルを通した有線方式 71 北村(2008)

(23)

20 が挙げられる。有線方式では大容量、高レートでのデータ送信が可能であるが、ドリルパ イプの連結部分での信号ケーブルの接続が大きな技術課題となっていた。この課題をクリ アする手法としてジョイント部分のデータ伝送を電磁誘導を用いて非接触で行う方式を 採用したシステムの開発が行われている72,73 図 2-4 IntelliServ システムの概要図 (出所)National Oilwell Varco 社「INTELLISERV HANDBOOK」

72

長縄(2006)

73

National Oilwell Varco 社「INTELLISERV HANDBOOK」

IntelliServシステム全体像

IntelliCoil(非接触のデータ送信デバイス)

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21 (2) 海洋掘削 1) 海上掘削リグ74 海洋掘削リグは構造上の特徴から接地式であるジャッキアップ型と、浮遊式であるセミ サブマージブル型及びドリルシップ型に大別される。 ジャッキアップ型は、リグに搭載された昇降装置を使用して脚(レグ)を海底に向けて伸 ばして着底させ、船体(プラットホーム)を海面より持ち上げた状態で掘削を行う。プラッ トフォームが海面上にあることから、波浪の影響を受けにくく、気象条件の悪い海でも稼 働が可能という特徴を持つ。レグを海底に着底させる機構であることから比較的浅い海で の掘削に使用される。 セミサブマージブル型 (半潜水型)は、概ね 100m 以深のサイトで使用される。曳航時を 除いて、下部構造を水面下で半潜水の状態で浮遊させ、海底への係留や DPS を用いて位置 の保持が行われる。半潜水の状態で浮遊させていることから波浪中の動揺性能に優れてお り、ジャッキアップ型と比較して深い水深での稼働が可能である。 ドリルシップ型は、中水深から大水深での掘削に使用される。船体の中央部に開口を有 し、その上に掘削機器を搭載した構成となっている。位置保持システムは、係留または DPS が使用される。船型であることから移動時の抵抗が少なく、排水量が大きいことから搭載 する機器の重量を大きくできる特徴を持ち、大水深掘削で有利となるが、波浪中の運動性 能についてはセミサブマージブルリグに劣る。 図 2-5 主な海洋掘削リグの種類 (出所)日本海洋掘削株式会社 web サイト75 74 石油技術協会(2013)「石油鉱業便覧」,“4.4 海洋掘削”,, p. 449-452 75 <http://www.jdc.co.jp/business/offshore/rigtype.php>

(25)

22 2) ライザー掘削 大水深の坑井掘削においては、主にライザー掘削方式が用いられる。ライザー掘削方式 では海底面と掘削リグの間をマリンライザー(立ち上げ管)で接続し、泥水循環により坑内 の環境をコントロールしながら掘削を実施する76 図 2-6 ライザー掘削とライザーレス掘削 (出所)長縄成実(2008)、「最新の坑井技術(その 4)」, 石油開発時報, No. 159 大水深掘削装置に特有な技術・機器を以下に整理する。具体的には、Multiplex (MUX) Control System、ライザー浮力体、Emergency Disconnect Sequence(EDS ライザー緊急離脱)、 Deadman (Automatic Mode) System、予備的な BOP コントロール・システムがあげられる77。

76

長縄成実(2008)「最新の坑井技術(その 4)」, 石油開発時報, No. 159

77

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23

表 2-2 大水深掘削装置に特有な技術・機器

技術・機器 概要

電 子 多 重 制 御 シ ス テ ム

(Multiplex (MUX) Control

System) ・ 大水深掘削用 BOP で問題となるのは海上の掘削リグ からの距離であり、米国石油協会(API)ではラムタイプ 30 秒、最大でも 45 秒以内に閉まることと規定されてい る ・ BOP の迅速な操作を可能にするために、従来の全油 圧 式 に 代 わ っ て 電 子 制 御 油 圧 式 (EH-MUX : electro hydraulic multiplex control system)が装備されている ラ イ ザ ー 浮 力 体 (Buoyancy Module) ・ ライザーパイプの水中重量を軽減し、ライザーテンショ ナーの負荷を下げるために浮力体がライザーに設置さ れる ・ 浮力体はシンタクチックフォームと繊維材料の球体。通 常 95∼98 の重量軽減、中には 100%を超える浮力を受 ける場合もある ライザー緊急離脱 Emergency Disconnect Sequence(EDS)、 デ ッ ド マ ン 装 置 (Deadman (Automatic Mode) System)

・ EDS は DPS リグが位置保持を失った際に Lower Marine Riser Package (LMR)コネクターによりライザーを切り離 す操作 ・ Deadman System は海上又はサブシーのコントロール・ システムが、電気的・ハイドロリック的に失われた場合、 意図せずに LMRP が切り離された場合に自動で BOP を作動させる 予備的な BOP コントロール・シ ステム ・ メインのコントロール・システムとは別にアコースティッ ク(音響伝搬)コントロール・システム、ROV によるコント ロール・システムがある (出所)石油技術協会「石油鉱業便覧」(2013 年)より MURC 作成

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24

3) デュアルグラディエント掘削

大水深掘削では、狭い掘削ウィンドウにおける坑内圧力のコントロールが問題となる。 デュアルグラディエント掘削(DGD: Dual Gradient Drilling)は、圧力を制御しながら掘削する 方法の総称であり、MPD(Managed Pressure Drilling)の一種である78。3,000m 級の大深水と なると、泥水の比重だけでコントロールすることは難しく、そこで 2 種類の圧力勾配の泥 水を用いて、海底の坑井直上に掘削装置が設置されているかのような圧力プロファイルを 実現する79 図 2-7 デュアルグラディエント掘削方式概略図 (出所)長縄成実(2008)「最新の坑井技術(その 4)」, 石油開発時報, No. 159 DGD 掘削技術にはライザーレスで使用するものと、ライザーを設置した後に使用するも のがある。主要なシステムを以下に示す。

(Riserless Mud Recovery システム(AGR 社))

ライザーレスで使用する DGD 掘削技術には、AGR 社(ノルウェー)が開発したライザー レスマッドリカバリーシステム(RMR:Riserless Mud Recovery)がある。このシステムでは 海底にポンプを設置することでマリンライザーを設置せずに泥水循環を行うことができ る。このシステムでは 20 インチのサーフェスケーシングを使用せず、13-5/8 インチのケー シングを 2,350m(7,710ft)以上に設定することに成功している80 ,81 78 JOGMEC 石油開発技術本部(2014)「石油・天然ガスをめぐる技術的な課題-克服するための最新技術は何 か-」, 石油・天然ガスレビュー, 2014.1, Vol. 48、No. 1 79 長縄成実(2008)「最新の坑井技術(その 4)」, 石油開発時報, No. 159 80 吉田肇(2015)「海洋での掘削技術」, 日本マリンエンジニアリング学会誌, 第 50 巻第 5 号(2015) 81 <http://www.enhanced-drilling.com/solutions/rmr-riserless-mud-recovery>

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25 図 2-8 ARG 社 RMR システム概念図 (出所)AGR 社資料82 (EC-DrillTM(AGR 社)) ライザー設置後に使用する DGD 掘削技術として、AGR 社が開発した EC-DrillTM があ る。このシステムは、マリン・ライザーの中間部にマッド・リフト・ポンプを設置して泥 水循環を行い、海中ポンプによってライザー内の泥水液面位置を調整し、坑底圧をコント ロールすることができる83 図 2-9 AGR 社 EC-DrillTM 概念図 (出所)AGR 社資料84 82 < https://www.japt.org/html/iinkai/drilling/bunkakai/daisuisinn/data/MeetingPresen/RMR_system.pdf > 83 吉田(2015) 84 <http://www.enhanced-drilling.com/solutions/ec-drill-pressure-drilling?gclid=Cj0KEQiAt9vEBRDQmPSow-q5gs 8BEiQAaWSEDiDvtNcV0pkKKaH5KhRaaBIyXfYaW2IfIOTKHLdpHDQaAvwj8P8HAQ>

(29)

26 (3) 抗井仕上 1) 水平抗井 水平抗井仕上げは、石油・ガス層を水平(又は高傾斜)で掘削し、石油・ガス層との接触 面積を増やすことで生産量の向上を目的とした仕上げ方法である。また、水平に掘削を行 うことによりガス又は水のコーニング(隆起/沈降現象)問題を低減させることも目的として いる。排油体積が大きいことから、浸透率の低い(タイトな)貯留層やフラクチャ貯留層、 重質油層などに適用されることが多い。 仕上げ方法は、孔明管(スロッテッドライナー)を適用する方法から、裸坑仕上げが主流 となっている。坑壁の崩壊が予想されない場合には、まず裸坑仕上げにて生産し、コーニ ング対策や坑井刺激が必要な場合には、選択的な仕上げ方法が適用される85 2) マルチラテラル(Multi Lateral)仕上げ マルチラテラル仕上げは、1 本の基坑井から石油・ガス層に複数の水平枝掘り坑井を掘 削し、同時に仕上げを行う方法である。複数の貯留層を同時に仕上げることにより、開発 コストを削減することが可能となると共に、坑井の生産性を向上させることも可能になる。 マルチラテラル坑井の種別は、坑井が枝分かれするジャンクションの複雑さによりレベ ル 1 からレベル 6 までの分類が行われている。レベル 2 以上のジャンクションではサイド トラック坑(枝坑)の中にライナー管を降下して設置し、主坑井のケーシングとの接続、セ メンチング、圧力のコントロールを行い、複雑なジャンクションを仕上げる86 図 2-10 マルチラテラル坑井のジャンクションの分類

(出所) DRILING CONTRACTOR Web サイト87

85 石油技術協会「石油鉱業便覧」(2013 年), “4.5 坑生仕上”, p. 470-471 86

長縄成実(2006)「最新の坑井技術(その 2)」, 石油開発時報, No. 149、北村(2008)「大偏距・マルチラテラ ル坑井の掘削・仕上げ技術の最新動向」, JOGMEC 石油・天然ガスレビュー, 2008.9 Vol. 42 No. 5

87

(30)

27 マルチラテラル坑井仕上げを行う際には、以下の技術が重要な要素として挙げられる。 表 2-3 マルチラテラル坑井仕上げの要素技術 要素技術 技術概要 カッティング(削り屑)除去 ・ 高傾斜井となる MLT 坑井ではホールクリーニングが課題 ・ ジャンクション(分岐点)においてケーシング切削を行うこと が多く、地層の削り屑に加えて、鉄屑対策も必要 ジャンクションデザイン及 び設置技術 ・ ジャンクション部は MLT 坑井において最も重要なものの 一つであり、その設計には以下の点を総合的に考慮する 必要がある  リエントリーの可能性  出砂対策の必要性  フローコントロール(生産層の選択)の必要性 改修作業 ・ MLT 坑井では通常の坑井と比較して、仕上げ編成の内径 が小さくなることが多く、将来的な改修作業の手法などに 関して、事前検討が必要 ・ 複数の貯留層を仕上げている場合には改修前の抑圧が 容易でないことが多く、事前の検討が必要 フローコントロール ・ 水平坑井内のすべての個所から油・ガスを均一に生産す るように、圧力損失等の影響に対する対処が必要 ・ Inflow Control Device は、坑内からの均一なフローを実現

するために使用されるシステム。ケーブルなどを介し地上 からの信号によりバルブを開閉して、その生産量を調整 するシステムが主流であるが、チュービングの内径を微 妙に変化させることにより生産量を調整する、簡便な仕組 みのものもある (出所)北村(2008)等より MURC 作成 3) 大偏距坑井 先述した通り、大偏距坑井(ERD 坑井)は、水平方向に遠く離れた対象に向かって掘削す ることを目的とした坑井であり、70 度を超える傾斜の非常に長い沿角区間を掘削すること が必要となる。大偏屈掘削(ERD 掘削)と同様に、坑井内に鋼管類を降ろしていく際に発生 する坑内安定性確保、トルク&ドラグ対策、ケーシング降下技術、ホールクリーニング等 の技術課題があり、これらを考慮しつつ坑跡の最適化を行うことが必要とされる88 。 88 北村(2008)

(31)

28

図 2-11 英国 Wytch Farm フィールドの大偏屈坑井(M16 号井) (出所)北村(2008)

4) Intelligent Well Completion(IWC)

掘削工程の MDW と同様に、坑井仕上段階においても、坑井内に設置した各種センサー から、貯留層の状況をリアルタイムでモニタリングすることで、生産計画を最適化し、坑 井への圧入や坑井からの生産を制御するシステムの開発・導入が進められている。

Schlumberger 社の Intelligent Completion(IC)システムでは、油層坑底圧及び流動坑底圧を 遠隔で測定、制御を行うことが可能となる。Intelligent Completion(IC)の複数のゾーンはそ れぞれが隔離されており、モニタリング及び制御が行われる。Zone 1 のフローコントロー ルバルブ(FCV 1)を閉じることで、Zone 2 からの油の流れによる流動坑底圧が測定され、 Zone 1 の油層坑底圧が測定される。Zone 2 の頭にあるフローコントロールバルブ(FCV 2) を閉じ、Zone 1 の FCV 1 を開けることで、Zone 2 の油層坑底圧、Zone 1 の流動坑底圧が測 定されるシステムとなっている。

(32)

29

図 2-12 Schlumberger 社の Intelligent Completion システム概略図

(出所) Oilfield Review(2011)「Intelligent Completions at the Ready」, Autumn 2011, 23, No. 3

Intelligent Well Completion の事例として、Schlumberger 社は中東の極端に不均質でオフシ ョ ア の 炭 酸 塩貯 留 層 に対 し て 、 層 のモ ニ タ リン グ と 制 御 のた め に 同社 の Intelligent Completion システムを導入している。同社によると、当該システムにより年間約 5%の石

油生産増が可能になったと報告している89

89

Schlumberger 社 Web サイト<http://www.slb.com/resources/case_studies/completions/intelligent_completions/ic-esp-carbonates-cs.aspx>

(33)

30

2.3.3 主要プレイヤーの競争優位性

陸上における掘削・仕上に係る主要プレイヤーは、Schlumberger 社、 Halliburton 社、 Baker Hughes 社などの大手石油サービス会社となっている。海洋掘削における主要プレイヤーと しては、Tranceocean 社、Noble Drilling 社、ENSCO 社、Diamond Offshore 社などが存在して

いる90。海洋掘削リグの保有数でみると、Tranceocean 社が世界でトップであり、ジャッキア

ップ、セミサブ、ドリルシップを合わせて 65 基を保有している(2017 年 2 月時点)。Tranceocean 社は大水深掘削向けのセミサブ型、ドリルシップ型のリグの保有比率が高い。次いで保有 リグ数が多いのが Seadrill 社、ENSCO 社であり、比較的浅い海域での掘削用のジャッキア ップ型を多く保有している。

このように大水深での掘削は Transocean 社、ENSCO 社、Seadrill 社、Diamond Offshore 社 等の大水深用リグを所有する大手掘削会社の寡占状態となっている。 表 2-4 海洋掘削主要企業の掘削リグ保有状況 ジャッキアップ セミサブ ドリルシップ 最大水深 最大水深 最大水深 Tranceocean 15 基 400 ft. 23 基 10,000 ft. 27 基 12,000 ft. Seadrill 29 基 400 ft. 14 基 10,000 ft. 15 基 12,000 ft. ENSCO 32 基 400 ft. 12 基 8,500 ft. 8 基 12,000 ft. Noble Drilling 14 基 500 ft. 6 基 12,000 ft. 8 基 12,000 ft. Diamond Offshore 2 基 350 ft. 19 基 10,000 ft. 4 基 12,000 ft. 日本海洋掘削 7 基 400 ft. 2 基 1,640 ft 1 基 8,200 ft.

(出所) Rigzone Web サイトより MURC 作成(2017 年 2 月時点)

90

国内企業として日本海洋掘削(株)が存在するが、所有する掘削リグは浅海用がメインである。また、JA MSTEC は地球深部探査船「ちきゅう」を保有しているが、建造時には世界最高の掘削能力(8,200 ft.)であ ったものの、現在は海外の大手掘削会社も同規模のドリルシップを多数保有している。

(34)

31

2.4 開発・生産

2.4.1 概要

近年では、アクセスのし易い大規模油田の新規開発が難しくなってきており、既存油田 の可採埋蔵量を増やす技術の重要性が高まってきている。油の回収方法は自然の排油エネ ルギー(油層の持つ圧力)やポンプによるくみ上げを行う「一次回収」、自然の排油エネルギ ーが減退した後、水やガスを圧入することで、油層内の圧力を高めて回収する「二次回収」、 さらにその後に、油層内の留岩中の小さな孔に残っている油に対して、熱や炭酸ガスなど 他のエネルギーを使い、物理的、化学的に性状を変化させて回収する「三次回収」がある。 一次・二次回収は多くの油井で実施され既に成熟した技術となっており、現在は三次回収 に係る技術開発が行われている91,92

三次回収に位置づけられる増進回収法(EOR: Enhanced Oil Recovery)は、主に用いられてい る技術として、熱攻法、ガス攻法、化学攻法の 3 つに大きく分類される。以下、概要を示 す。 表 2-5 三次回収方法の技術内容と対象とする油層 技術内容 対象とする油層 主な手法 熱攻法 熱エネルギーを油層に 与え、原油の温度を上 昇させることによりその 粘性を低下させる 重質油や粘性の高い原 油(タールサンド等) ・ 火攻法 ・ 水蒸気圧入法 ガス攻法 油層にガスを圧入し、ガ スの油への溶解による 油の膨張や粘性低下、 ガスによる油の置換を 行う 炭 酸 塩 岩 や 砂 岩 層 の 軽質油油層 ・ 炭化水素ミシブル攻 法 ・ 窒素・煙道ガス攻法 ・ 二酸化炭素攻法 化学攻法 油層に化学薬品を圧入 し、油相の有効浸透率 を低下させることなく水 相の粘性を増加させ、 易動比を改善させる 砂岩層 ・ 界面活剤・ポリマー 攻法 ・ ポリマー攻法 ・ アルカリ攻法 (出所) JOGMEC 石油開発技術本部(2014)より MURC 作成 現在、EOR の事例としては熱攻法が最も多く、サイトとしては米国、カナダ、ベネズエ ラ、インドネシア、中国での実施例が多い。次いで多いのがガス攻法であり、米国、カナ ダ、ベネズエラでの実施例が多い93,94 91 JOGMEC 石油開発技術本部(2014)「石油・天然ガスをめぐる技術的な課題-克服するための最新技術は何 か-」, 石油・天然ガスレビュー, 2014.1, Vol. 48、No. 1 92 石油技術協会「石油鉱業便覧」(2013 年), “6.2 EOR”, p. 701 93 JOGMEC 石油開発技術本部(2014)

図  2-1    Schlumberger 社の事業構造  (出所) Schlumberger 社投資家向け資料より 55
図  2-3  大偏距掘削のイメージ図
表  2-2  大水深掘削装置に特有な技術・機器
図  2-11  英国 Wytch Farm フィールドの大偏屈坑井(M16 号井)  (出所)北村(2008)
+7

参照

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