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3.3 ROV・AUV 関連技術

3.3.1 ROV

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図 3-2  Work Class ROVの概要

(出所) 佐尾 邦久(2006) 「特集:深海へ向かう世界の石油・天然ガス開発事業水深 2,000m

を超えた生産井─油・ガス田開発の進歩」,JOGMEC石油・天然ガスレビュー 2006.9 Vol.40 No.5 220

(2) 重要技術の整理 

浅海用途の場合、ROV は、直接ケーブルを通じて母船の制御システムに接続され、電源 ユニットからの駆動電力や、制御盤からの駆動指令を受け取る。ROV につながるケーブル はクレーンで巻き取られる。一方、深海用途の場合、大水深での作業となりケーブルが長 くなると、ケーブルにかかる水の抵抗によりROVの機動性が損なわれる。そこで、ケーブ ルの先端にテザー・マネジメント・システム(TMS: Tether Management System)と呼ばれるケ ーシング(外箱)を接続し、このTMSとROVを別のケーブル(テザーケーブル)で接続するこ とにより、水の抵抗による影響を緩和することができる。またROVをケーシングに格納す ることで荒天時でも安全に進水・揚収が出来るとともに、ウインチにより短時間で深海に 到達することが出来る。

220 <https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/687/200609_031a.pdf>

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図 3-3  ROVの全体システム (出所)Saab Seaeye社Webサイトより221

石油・ガス分野におけるROVの用途としては、主に①現地調査、②掘削作業のサポート、

③海中据え付け作業のサポート、④オペレーションのサポート、⑤検査、⑥保守整備・修 繕の6つが挙げられる。

表 3-3  海底資源開発におけるROVの作業例

適用分野  作業例  主な使用機器 

現地調査  海底地形図作成、海底資源探

査 

マルチビーム・エコー・サウンダー、ソナ ー、サブボトム・プロファイラー 

掘削作業のサポート  海底測位、試料採集、機器クリ ーニング、機器の目視検査 

マニピュレーター、採水器、センサー、ブ ラシ、カメラ、 

海中据え付け作業のサ ポート 

サブシー機器・パイプライン等 の据え付け 

マニピュレーター、ウォータージェット、ク ローラー 

オペレーションのサポー ト 

バルブ操作、薬剤注入  マニピュレーター、ポンプ 

検査   

腐食の目視検査、機器クリーニ ング、クラック探知 

ビデオ、カメラ、ブラシ、超音波スキャナ、

ソナー 

保守整備・修繕  補修、モジュール交換  マニピュレーター、カッター 

(出所)Yong Bai, Qiang Bai (2012)「Subsea Engineering Handbook」, Gulf Professional Publishing よりMURC作成

221 SAAB SEAAEYEウェブサイト< http://www.seaeye.com/rovs.html >

電源ユニット

モニター

制御盤

外部 電源 可搬式

制御盤

ドラム ケーブル クレーン・

ダビット

ROV

電源ユニット

モニター

制御盤

外部 電源 可搬式

制御盤

ウインチ ケーブル 新水・回収

システム

ROV

浅海用途(自由航行) 深海用途(テザー・マネジメント・システム)

テザー・マネジメント・

システム テザー ケーブル

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なおこれまでのユーザーインターフェースを一新する取り組みとして、仮想現実(VR)を 活用したROVのオペレーションも検討されている222。体のジェスチャーを検知するモーシ ョンキャプチャーとヘッドマウントディスプレイを組み合わせ、ジェスチャーによる直観 的な動作でROVを操作可能とすることなどが研究されている223

(3) 主要プレイヤーの競争優位性  1) 主要プレイヤーの概要 

ROV機器の製造に関しては、Oceaneering International Inc社(以下、Oceaneering社)(米国)224、 Perry Slings Systems社 (米国Forum Energy Technologies社225が買収)、Soil Machine Dynamics 社(以下、SMD社)226などが高いシェアを占めている。一方、ROVの運用は、専門のオペレ ータ企業が機器を所有し、当該企業の従業員が現場で操作するといった形式が一般的とな っており、Oceaneering 社やSubsea7 社(イギリス) 227など海洋掘削に関連する企業が当該サ ービスを実施している。

ROV機器製造及び運用の双方においてリーディングカンパニーであるOceaneering社は、

海洋資源の掘削や生産に関連する機器やサービスを提供しており、同社の2015年度売上高 の27%をROV関連事業が占めている228。同社は世界各地にサービス拠点を設けているほか、

シミュレーターを利用したオペレーター訓練施設も各所に設けており、主要な石油・ガス 開発拠点の近郊で育成可能な体制を整えている229。また、操作性が優れたインタフェース の開発や 4K カメラによる作業サイトの視認性向上といった、ROV をより容易に操作する ための研究開発も推進している230

2) 我が国企業の動向 

我が国においても三菱重工(株)、三井造船(株)、(株)IHI、川崎重工(株)などの大手企業が、

当該技術に取り組んでいるが、基礎研究用途での受注生産が多く、石油・ガス開発分野向 けの量産機に関する実績はほとんど存在しない231。また国主導の取り組みとして、2015 年 より海洋研究開発機構(JAMSTEC)と民間企業が参画する戦略的イノベーション創造プログ

222 ROVのオペレーションは、専門のトレーニングセンターでの訓練が必要であるなど、習熟するのに時

間がかかる。ROVを操作するためのインタフェースを改善することは、オペレーターの教育コストを下げ るほか、不要な操作ミスによる事故を減らすことにもつながるため、主要企業が注力している

<http://www.oceaneering.com/rovs/rov-technology/ >

223 Stian Surén“Controlling virtual ROVs using gestures”(2016)

224 <http://www.oceaneering.com/>

225 <http://www.f-e-t.com/our_products_technologies/subsea-solutions>

226 SMD社は英国企業であったが、20152月に中国の鉄道車両製造大手である中国南車集団の子会社株

洲南車時代電気により買収された。

<https://www.smd.co.uk/>

227 <http://www.subsea7.com/en/index.html>

228 Oceaneering Invester Presentation (2016 )

<http://www.oceaneering.com/wp-content/uploads/2016/06/06-June-OII-Presentation-RBC-Capital-Markets.pdf>

229 <http://www.oceaneering.com/rovs/rov-personnel-and-training/>

230 <http://www.oceaneering.com/rovs/rov-technology/ >

231 三菱重工業株式会社(2015)「海洋事業の課題と技術動向について」,東京大学寄付講座技術セミナー

<http://riodeut.k.u-tokyo.ac.jp/150616.pdf >

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ラム「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画) 232」が開始されており、当該分野につ いて「ROVによる高効率海中システム233」の開発が実施されている。

3.3.2 AUV