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2.4.1 概要 

近年では、アクセスのし易い大規模油田の新規開発が難しくなってきており、既存油田 の可採埋蔵量を増やす技術の重要性が高まってきている。油の回収方法は自然の排油エネ ルギー(油層の持つ圧力)やポンプによるくみ上げを行う「一次回収」、自然の排油エネルギ ーが減退した後、水やガスを圧入することで、油層内の圧力を高めて回収する「二次回収」、 さらにその後に、油層内の留岩中の小さな孔に残っている油に対して、熱や炭酸ガスなど 他のエネルギーを使い、物理的、化学的に性状を変化させて回収する「三次回収」がある。

一次・二次回収は多くの油井で実施され既に成熟した技術となっており、現在は三次回収 に係る技術開発が行われている91,92

三次回収に位置づけられる増進回収法(EOR: Enhanced Oil Recovery)は、主に用いられてい る技術として、熱攻法、ガス攻法、化学攻法の 3 つに大きく分類される。以下、概要を示 す。

表 2-5  三次回収方法の技術内容と対象とする油層

  技術内容  対象とする油層  主な手法 

熱攻法  熱エネルギーを油層に 与え、原油の温度を上 昇させることによりその 粘性を低下させる 

重質油や粘性の高い原 油(タールサンド等) 

・ 火攻法 

・ 水蒸気圧入法 

ガス攻法  油層にガスを圧入し、ガ スの油への溶解による 油の膨張や粘性低下、

ガスによる油の置換を 行う 

炭 酸 塩 岩 や 砂 岩 層 の 軽質油油層 

・ 炭化水素ミシブル攻 法 

・ 窒素・煙道ガス攻法 

・ 二酸化炭素攻法 

化学攻法  油層に化学薬品を圧入 し、油相の有効浸透率 を低下させることなく水 相の粘性を増加させ、

易動比を改善させる 

砂岩層  ・ 界面活剤・ポリマー 攻法 

・ ポリマー攻法 

・ アルカリ攻法 

(出所) JOGMEC石油開発技術本部(2014)よりMURC作成

現在、EOR の事例としては熱攻法が最も多く、サイトとしては米国、カナダ、ベネズエ ラ、インドネシア、中国での実施例が多い。次いで多いのがガス攻法であり、米国、カナ ダ、ベネズエラでの実施例が多い93,94

91 JOGMEC石油開発技術本部(2014)「石油・天然ガスをめぐる技術的な課題-克服するための最新技術は何

か-」, 石油・天然ガスレビュー, 2014.1, Vol. 48、No. 1

92 石油技術協会「石油鉱業便覧」(2013), 6.2 EOR , p. 701

93 JOGMEC石油開発技術本部(2014)

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2.4.2 重要技術の整理 

(1) 熱攻法95 

熱攻法は、油の粘性を下げる技術であり、熱エネルギーの与え方によって、火攻法と水 蒸気圧入法に大別される。火攻法は、油層に空気又は酸素を圧入し、原油の一部を燃焼さ せることで熱エネルギーを与えることによって油の粘性を低下させ、燃焼ガスによって油 を移動させる。

一方、水蒸気圧入法は、地上で発生させた熱を油層に送り込む手法である。水蒸気圧入 法は、圧入井から連続的に水蒸気を圧入する水蒸気攻法と、水蒸気を坑井に圧入した後に 坑井を数日密閉し、熱を十分に行きわたらせた後、油の生産に切り替える水蒸気刺激法の2 つに分類することが出来る。

(2) ガス攻法 

ガス攻法は、油層に圧入した溶媒に原油を溶解させ、抽出する技術である。ガス攻法の 一つであるCO2-EORは、圧入流体としてCO2を用いており、油やガスの生産に伴って出て くる天然のCO2源が存在する北米を中心に実施されている。CO2-EORの課題としては、圧 入する CO2と油の比重差から、比較的厚い貯留層では油層の上部のみからの回収となるこ と、また不均質性の高い貯留層では、原油に比べ粘性の低い CO2が浸透性の高い部分のみ を移動するなどにより、石油の回収率が低下すること等が指摘されている96

JOGMECでは、こうした課題を解決するため、平成27年度からマイクロバブルCO2圧入

による石油増進回収技術に関する技術開発及び実フィールドへの適応検討を開始している。

圧入する CO2をマイクロバブル化することにより、油層中への分散・溶解を高め、油の回 収率が向上することが期待されている。

(3) 化学攻法 

1) Smart Water Flooding 

Smart Water Flooding(SWF)は、含有イオンを調製した水を油層に圧入し、原油回収率を向 上させる手法であり、狭義では低塩分濃度水攻法(LSWF: Low Salinity Water Flooding)と呼 ば れ る 。SWF は 開 発 各 社 で 異 な る 名 称 で 呼 ば れ て お り 、LosalTM(BP 社)、Designer Waterflood(Shell社)、Advanced Ion ManagementSM(AIM)(ExxonMobil社)等の名称で呼ばれて いる。

これまでに主に砂岩油層を対象にフィールド試験、パイロットテストが実施されており、

良好な結果が得られている。現在、考えられている回収増進のメカニズムを以下に示す97

94 石油技術協会「石油鉱業便覧」(2013), p. 706-707

95 石油技術協会「石油鉱業便覧」(2013年), p. 702

96 JOGMECプレスリリース資料<http://www.jogmec.go.jp/news/release/content/300305243.pdf>

97 JOGMEC石油開発技術本部(2014)

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図 2-13  BP社LosalTMの回収増進メカニズム(原油中の極性成分の脱着)

(出所) BP 社公開資料「LosalTM EOR Process From Laboratory to Field」, Exploration &

Production Technology FORCE Workshop, May 200898

表 2-6  SWFによる回収増進メカニズムの例

メカニズム  概要 

粘土鉱物微粒子の移動  ・ 塩分濃度が異なる水を油層に圧入した場合、岩石中に含 有される粘土鉱物粒子が脱着し、この粘土鉱物に付着し ている原油とともに生産される 

・ 脱着した粘土鉱物粒子が流路を塞ふさぐことにより新たな 流路が形成され、その部分に存在する原油が新たに回収 される 

pH の上昇  ・ 低塩分濃度水が油層に圧入された場合、油層中に存在す る水の pH が上昇する。このことにより、低塩分濃度水が 界面活性剤として作用し、油水間の界面張力が低下し原 油の回収率が向上する 

原油中の極性成分の脱着  ・ 低塩分濃度水が圧入されると、油層水中のイオン平衡が 崩れ、粘土鉱物中に吸着している二価の陽イオンが水素 イオンとイオン交換することにより、二価の陽イオン及び極 性原油成分が脱落し、原油の回収率が向上する 

(出所) JOGMEC石油開発技術本部(2014)よりMURC作成

 

 

98<http://www.force.org/archive/PDW-Seminars/Low%20salinity_15_May_2008/BP_NPD_FORCE_Workshop_KJ W_Internet_version.pdf>

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2.4.3 主要プレイヤーの競争優位性 

EORに係る技術的優位性及び実績を有する主要企業としてはBP社、Shell社、ExxonMobil 社等のIOCが挙げられる。これら企業は、IOR、EORの技術開発を約40年以上続けてきて おり、自身がオペレーションを行っている世界各国の油井で技術の導入を行っている99。ま た新たなEOR技術として、CO2-EORやSWF技術等の開発を進めている。

図 2-14  EOR各種手法の開発時間と技術成熟度の関係 (出所)Shell公開資料「Hydrocarbon Recovery Optimization」(2016)

Shell社は、2014年から北海におけるCO2-EORの研究プロジェクト(プロジェクト・リー

ダー:Scottish Carbon Capture & Storage社)へ参加している。当該プロジェクトはEOR運用 における CO2利用についての理解を深めることに焦点を置いており、発電所、工場等から 回収された CO2を利用して石油増進回収を行い北海油田を延命させること、CO2を海底油 田に永久貯留することを目的としている100,101

またBP社はSWF技術開発を進めており、既に実際の油井への導入をおこなっている。

BP が開発している技術には「BrightWater®」と「LoSal®EOR」がある。BrightWater®は、サ ブミクロンオーダーの熱活性粒子を含んだ流体を油層を圧入することで油の回収量を増加 させる。BPは全世界で140井以上にBrightWaterを導入しており、導入に係る平均費用は1 バレル当り約6 ドルであるとしている。LoSal®EOR は、塩分等の含有イオン濃度を低くコ ントロールした水を用いることで、従来の海水を用いた水攻法に比べて油回収率を向上さ

99 Shell公開資料「Hydrocarbon Recovery Optimisation」(2016)

100 ENERGY DIGITAL(20143月) <http://www.energydigital.com/utilities/2710/Shell-explores-using-CO2-for-enhanced-oil-recovery>

101 GLOBAL CCS INSTITUTE(20156)<https://www.globalccsinstitute.com/insights/authors/PeterBrownsort /2015/06/23/sccs-launch-report-joint-industry-project-co2-eor>

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せる低塩分水浸水技術である。北海のClair Ridgeフィールドにおいて当該技術の世界初の 導入が行われている102,103

一方、我が国企業における実績としては、石油資源開発(株)が新潟県岩船沖油ガス田で実 施したガス攻法-EOR プロジェクト104、国際石油開発帝石(株)が新潟県頸城油田で実施した CO2-EORプロジェクト105、その他にはJX 石油開発(株)がベトナムランドン油田でJOGMEC と共同で実施しているGAS-EOR のパイロットプロジェクト106、米国電力会社NRG Energy 社と共同で進めているCO2-EORプロジェクトなどが挙げられる107

海外石油メジャーは様々なタイプの油井のオペレーションを行っており、油井に合わせ た種々のEOR手法の開発を進めている。日本企業は海外の石油メジャーと比較すると、オ ペレーションを行っている(参画している)油井の数は少なく、技術開発を進めるための実験 場へのアクセスの点で大きく劣っている。こうした状況から、日本企業の当該分野への進 出状況は、少数のCO2-EORプロジェクトにとどまっている。

102 BP Webサイト<http://www.bp.com/en/global/corporate/technology/technology-now/enhanced-oil-recovery.html

>

103 ChrisReddick VicePresident,EnhancedOilRecovery,BP, At Scale Deployment of Enhanced Oil Recovery in BP 2012

104 石油資源開発Webサイト<http://www.japex.co.jp/business/ep_j/domesticfields.html#field07>

105 国際石油開発帝石Webサイト<http://www.inpex.co.jp/business/rd/rd01.html>

106 JX石油開発プレスリース(201311月)

<http://www.hd.jx-group.co.jp/irrelease/20131111_01_01_1100163.pdf>

107 JX石油開発プレスリース(20171月)<http://www.nex.jx-group.co.jp/newsrelease/2016/co2_1.html>

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