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2.5 海洋生産システム

2.5.3 主要プレイヤーの競争優位性

1) 浮体式生産設備 

FPSOに関しては、MODEC社、SBM社、次いでBW Offshore社が市場において競争優位 性を有している。SBM社とBW Offshore社は、それぞれオランダ、ノルウェーの会社であ り、北海油田におけるプロジェクト経験を経てここまで成長してきた。

上位2社であるMODEC社及びSBM社ともに、トータルの優位性に加え、自社製の係留

設備を保有していることが技術的強みとなっている。例えば MODEC 社は、係留設備のモ ジュールだけを、子会社であるSOFEC社を通じて供給することもある。

2) サブシー技術  (各社の技術的強み) 

SPSサプライヤー4社(FMC Technologies社、OneSubsea社、Aker Solutions社、GE Oil & Gas 社)に関しては、大水深・HPHT 対応状況に関しても大きな差異はないが、各社の事業内容 やサブシープロセッシングへの対応方針には若干の差異がある。

FMC Technologies社は、2017年1月にアンビリカルの製造や海洋設置工事を行うTechnip

社と合併してTechnipFMC社となっており145、事業構造が大きく変化しつつある。同社は、

これまでアンビリカルやライザー類の製造を行わず、サブシープロセッシングを含む SPS 機器製造のみに特化して世界展開をしてきた。サブシープロセッシングに関しては、メキ シコ湾大水深でのニーズに沿って世界初のサブシーセパレータを開発したように、現在も

R&Dに力を入れている。ただ汎用性が高いサブシー多相流ポンプが中心で、サブシーガス

コンプレッサは対象としていない。

OneSubsea社は、元々Schlumberger社とCameron社の合弁会社であったが、Schlumberger

社が Cameron 社を買収した結果、Schlumberger 社の完全子会社になっている146。事業対象

としてはFMC Technologies社と同じようにサブシープロセッシングを含むSPS機器製造に

特化しているが、Schlumberger社の持つ電子関連技術・制御技術を用いて、Cameron社の弱 点と言われていたコントロール部分の改良に力を入れるとともに、サブシープロセッシン グにも力を入れている。

AKER Solutions 社は、ノルウェー企業であるため北海を中心にした欧州系企業を対象に

事業展開をしている。メキシコ湾では使用実績が少ないが、唯一アンビリカルを生産して いることから SPS コントロール部分に強みがあり、他社のコントロールを同社が納入する 場合がある点が特徴である。サブシープロセッシングに関しても積極的に様々なR&Dを行 っているが、特にサブシーガスコンプレッサに注力しているのはノルウェーの特殊性によ るものである147

145 <https://www.fmctechnologies.com/#>

146 <http://cameron.slb.com/onesubsea>

147 ノルウェーの場合、非常に高い炭素税を課せられるため、洋上生産設備の殆どは生産ガスを用いた自家 発電をせず、陸上水力発電所から供給された電力を使用して炭素税を回避している。

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GE Oil & Gas社に関しては、大水深・HPHT対応では十分な技術を持っているものの、2000

年頃にはFMC Technologies社と双璧をなしていた市場占有率が大きく減少している。この

理由としては、同社はOrmen Langeガス田にサブシーコンプレッサを納入しているものの サブシープロセッシング開発には積極的ではないこと、生産拠点を分散しておらず一部の 石油開発会社からはローカルコンテントを満足しないため採用できないという意見が出さ れていることが挙げられる。このため、同社では生産拠点を分散する方向に軌道修正を行 っている。

 

(サブシー産業における M&A、提携の状況) 

サブシー産業界でM&A・提携が進んでいる背景は、開発対象油ガス田の大水深化によっ て開発業務が複雑化していること、複雑な開発業務の合理化のために大資本を有する少数 のサービス会社への寡占化が進んでいることが挙げられる。

元来サブシー機器業者は基本設計で定められた仕様に沿った機器を納入する形態で事業 を行ってきたが、大水深油ガス田の開発ではサブシープロセッシング機器等の新規開発が 重要であるため、基本設計を行う会社と関係を持つことで、使用するサブシープロセッシ ング機器の最適化を行うことが求められている。また、大水深では設置工事が占める費用 が非常に大きいことから、大規模設置工事会社・周辺機器製造業者との関係を強化するこ とで、大水深での設置工事方法の最適化を目指している。

このため、M&A・提携の相手は、基本設計会社から設置工事会社まで幅広くあるが、設 計業務に関しては非常に強い協業関係が求められるが、設置工事の場合では工事用船舶の 常駐場所・使用状況・船籍等の影響を受けるため、資本関係に縛られない緩やかな協業と なると想定される。以下、主要なSPSサプライヤーのM&A、協業体制の事例について示す。

・  FMC Technologies社…2015年にTechnip社との合弁会社としてForsys Subsea社を設立

した。2017年1月には両者正式に合併に関する協議が完了し、TechnipFMC社として新 会社を始動した。Technip社は設計業務から工事まで行う大規模サービス会社で多数の 設置工事用船舶も有しているが、設置工事に関しては今後もSubsea7社等が行う場合が 多数発生すると思われる。

・  Onesubsea社…Schlumberger社とCameron社が設立した合弁会社で、Schlumberger社の

Cameron 社買収によって、現在は Schlumberger 社の完全子会社となっている。またサ

ブシー関連の設計業務のためにSubsea 7社と提携関係を有するとともに、Workover等 の坑井作業のためにHelix社とも提携関係を有している。

・  Aker Solutions社…サブシー関連基本設計並びにサブシー機器開発のため、Baker Hughes

社と「Subsea Production Alliance」を組成している。また、設置工事に関してはSaipem 社と提携関係を有している。

・  GE Oil & Gas社…基本設計業務のためにMcDermott社と提携関係を有している。2016

年末にBaker Hughes社との新会社設立による事実上の合併が発表されており、2017年

中には完了予定である。

46 (2) 我が国企業の動向 

(浮体式生産設備) 

MODEC 社は、FPSO、FSO、TLP 等の浮体式生産設備を、設計から資材調達、建造、据

付、試運転まで一括で石油開発会社に提供するサービスを構築しており148、他企業との差 別化を図っている。このEPCIサービス149において同社は、工場をもたないファブレス企業 として工程・品質管理を中心としたプロジェクトマネジメントに特化し、建造工事やFPSO 等に搭載する設備の製作並びに据付工事に関しては、海外造船所や専門の業者に外注して いる150

図 2-18  MODEC社によるEPCIサービスの概要 

(出所) MODEC社 Webサイトより151

またEPCIに加えて、リース、O&M(Operation & Maintenance)、チャーターなどのサービ ス形態を提供している152。リースは、MODEC関係会社が保有するFPSO/FSOを石油開発会 社にリースするサービスであり、MODEC 本社が、FPSO 等の建造を実施した後、MODEC 関係会社に対して引き渡し、この関係会社からリースを行うものである。

図 2-19  MODEC社によるリースサービスの概要 

(出所) MODEC社 Webサイトより153

148 <http://www.modec.com/jp/business/service/epci.html>

149 設計(Engineering)、資材調達(Procurement)、建造(Construction)、据付(Installation)の頭文字をとってEPCI と呼ばれる。

150 これにより最も条件の良い外注業者や造船所サイトを選択することが可能となる。

151 <http://www.modec.com/jp/business/service/epci.html>

152 <http://www.modec.com/jp/business/service/lease_operation.html>

153 <http://www.modec.com/jp/business/service/lease_operation.html>

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一方、O&Mは、FPSO/FSOに乗組員を提供し、生産、貯蔵、積出といった一連の運転オ ペレーション(Operation)及び保守点検(Maintenance)を提供するサービスである。

図 2-20  MODEC社によるO&Mサービスの概要 

(出所) MODEC社 Webサイトより154

更にチャーターとは、リース+O&Mという位置づけであり、リースチャーター期間を定

めて FPSO/FSO の保有から運転オペレーション・保守点検まで全てのサービスを石油開発

会社に提供する。当該サービス形態では、MODEC 本社が、FPSO 等の建造を実施した後、

MODEC関係会社に対して引き渡しを行う。この関係会社から石油会社等に対してリースを

行うとともに、O&Mまで提供するものである。

(海洋生産システム) 

我が国エンジニアリング会社も、近年、協業関係の構築や実績のある海外企業の買収に よって当該分野に進出している。例えば、東洋エンジニアリング(株)ではサブシー油ガス田

開発でBaker Hughes社及びAKER Solutions社との協業関係を構築している。また千代田化

工建設(株)は基本設計会社である Xodus 社を買収するとともに、海洋設置工事会社である

EMAS AMCと合弁会社を設立している155,156

 

154 <http://www.modec.com/jp/business/service/lease_operation.html>

155 <https://www.chiyoda-corp.com/news/pressrelease/2013/070401.pdf>

156 <http://www.emas.com/index.php/our-expertise/emas-chiyoda/>

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