2.6 LNG チェーン
2.6.2 重要技術の整理
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Cascade方式が採用されていた。その後、Cascade方式に続いて1種類のMCR160を使用する
プロセスが利用されていたが、現在は予冷システムに純プロパンを使用したプロパン予冷 式MCR方式が標準的に利用されており、中でもAPCI社のC3-MCR方式が約9割のシェア を占めている。
1) Cascade 方式
Cascade方式は、プロパン、エチレン、メタンを冷媒に使用し、それぞれで独立した冷凍
サイクルを構成して、原料天然ガスを順次冷却するものである。3つの異なる圧力レベルの 冷媒を用意するため、それぞれが別個の圧縮機と動力タービンを保有することになる161。 このプロセスは、天然ガスを液化する主熱交換器にアルミ蝋付のプレート・フィン型主熱 交換器を使用している。
図 2-21 Cascade方式の概略フロー (出所) 宮崎(2005)
2) 混合冷媒方式(MCR 方式)
MCR 方式は、Cascade方式の複雑な機器構成を改善すべく開発された方式である。MCR 方式の冷却原理はCascade方式と基本的に同じであるが、この方式では、メタン、エタン、
プロパンを主成分とする混合冷媒を使用する。MCR方式には、冷媒の断熱膨張や予冷シス テムなどに応じてプロセスやバリュエーションが多く、1段階圧力式MCR方式、2段階圧 力式MCR方式、予冷式MCR方式(混合冷媒予冷、プロパン予冷)等の各プロセスがある。
160 プロパン、エタン、メタンに窒素を加えた混合冷媒を使用
161 そのため、他の方式と比較して、プロセスが複雑になる。
50 (1 段階圧力式 MCR 方式)
1段階圧力式MCR方式としては、APCI社の開発したAPCIプロセスやPrichard/旧神戸製
鋼所のPRICOプロセスがある。このプロセスでは、冷媒の断熱膨張を主熱交換器のみで行
う。
(2 段階式圧力 MCR 方式)
2段階圧力式MCR方式は、メタン、エタン、プロパンに加え窒素を混合冷媒として用い る。冷却過程において、混合冷媒を中圧と低圧の2段階の圧力で断熱膨張させることから、
2段階圧力式といわれている。この液化プロセスとしては、TEAL社の開発したARC(Auto Refrigerated Cascade) プロセスがある。
(プロパン予冷式 MCR 方式)
プロパン予冷式MCR方式は、プロパン予冷系(天然ガス予冷+混合冷媒冷却)と混合冷媒系 (天然ガスを冷却・液化)の2つの冷凍サイクルから構成されるプロセスである。プロパン予 冷系を設けることによって、混合冷媒の負荷を削減し、主熱交換器の縮小を図ることが出 来る162。先述の通り、APCI社によるC3-MCR式が標準的に利用されている。
図 2-22 プロパン予冷式MCR方式の概略フロー (出所) 宮崎(2005)
(混合冷媒予冷式 MCR 方式)
混合冷媒予冷式MCR方式は、2段階圧力式MCR方式における中圧の混合冷媒系の代わ りに、混合冷媒による独立した予冷サイクルを組み込んだプロセスである163。この予冷系
162 このプロパン予冷系は、天然ガスを主熱交換器で冷却、液化する前に予冷、一部凝縮させ、さらに、
混合冷媒を予冷、一部凝縮させるものである。混合冷媒系には、メタン、エタン、プロパン、窒素の混合 冷媒が使用される。(出所: 宮崎(2005)
163 プロパン予冷式MCR方式における予冷系のプロパンを、混合冷媒に置き換えたもの
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の混合冷媒には、エタン、プロパン、ブタンが使用される。
原料天然ガスを常温からマイナス 50℃程度まで、予冷混合冷媒(PMR :Precool Mix
Refrigerant) により冷却し、そこからマイナス162℃まではPMRによって予冷された混合冷
媒により、冷却、液化する。なお当該方式は、Shell の SakhalinⅡプロジェクトでの採用さ れており、Shell 社DMR方式とも呼ばれる。
(Linde MFC 方式)
Linde MFC(Mixed Fluid Cascade)方式は、冷却過程を予冷サイクル、液化サイクル、サブク ールサイクルの3サイクルに分け、混合冷媒により液化を行うものであり、ドイツLinde社に より開発された。先行する予冷サイクルはプレート・フィン型主熱交換器、続く液化サイ クル及びサブクールサイクルはSpoolWound型が利用される。当該方式は、ノルウェーの Snøhvit LNGプロジェクトにおいて導入されている。
3) 主な構成機器 (冷媒コンプレッサー駆動機)
冷媒コンプレッサー駆動方式として1980年代以前は蒸気タービンが主に用いられていた が、1980 年代以降はガスタービンの採用が進められてきた。当初は産業用ガスタービンと
してGE社製Frame-5(28MW)が導入されていたが、1990年代以降は大型化が進められ、同
社の系列製品であるFrame-7(87MW)が数多く利用されてきた。また2000年以降は、カター ルLNG プロジェクトにおいて同じく同社の系列製品である Frame-9(130MW)が採用される など、更なる大規模化が進められてきた164。
(主熱交換器)
主熱交換器は、アルミ蝋付プレート・フィン型165とSpool Wound型166の2つのタイプに 分類される。前者は主にCascade方式及びPRICO方式で採用されており、後者はC3-MCR 式にて採用されている。導入実績はSpool Wound型が圧倒的に多く、大部分のものはAPCI 社のものである。なおLinde社もSpoolWound型を開発しており、APCI社Spool Wound型 と同様の基本的構造をもつが、2基の並列設置になる点などに相違点がある。
164 この他にも航空機転用ガスタービンで発電し、電気モーターにより冷媒圧縮機を駆動している事例も ある。
165 両端をシールした平板を重ね、それぞれの平板間に波状の板を流対方向に挿入した形状をとっている。
この平板の間の波状の板の部分に熱交換をさせる流体を流しており、多流体の熱交換が可能な形となって いる。(出所: 宮崎(2005)
166 低温用の特徴である、熱損失をできるだけ小さくし、かつ伝熱面積を大きくという要求を満たすため、
直径約10mmの細いパイプを格納容器(シェル)の中に巻いた構造となっている。(出所: 宮崎(2005)
52 (2) LNG 輸送技術
LNGは主に海上輸送されているため、ここではLNG 船のタンク方式について説明する。
実用化されている主なLNGタンク方式としては、SPB方式、MOSS方式、更にはメンブレ ン方式の3つがある。
図 2-23 GT駆動方式とMotor駆動方式
(出所)JMU「LNG貯蔵・輸送・燃料タンク」, IHI技報 Vol.52 No.3(2012) 167
1) 独立タンク方式
独立タンク方式は、船体とタンクが独立構造となっており、船体の中に自立タンクが配 置されている方式である。独立タンク方式はMOSS方式とSPB 方式に分類されるが、両方 式ともに後述するメンブレン方式と比較して、スロッシングに強いという特徴がある。
(MOSS 方式)
MOSS方式は、MOSS ROSENBERG社(ノルウェー) 168が開発した方式であ。タンクは独 立玉形の構造となり、材質はアルミ合金または9%ニッケルが使用される169。球形シェル構 造のタンクとなっているため、全ての液荷重はタンク板材の膜応力で受け持つので、応力 集中が避けられる。また、球形シェルは円筒形の支持構造で船体に据え付けられているた め、球形タンクの熱伸縮変形は、このスカートの撓たわみによって無理なく吸収されるの が特徴である170。
(SPB 方式171)
SPB 方式172の大きな特徴として、LNGタンクが方形であり、甲板下に内蔵していること
167 <https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/252509565bf67775b747ef05369355b2.pdf
>
168 <http://www.nwsssc.com/fleet/ship-technical-information/moss-rosenberg>
169 タンクの外面に防熱が施されており、断熱材としては、硬質ウレタンフォームやグラスウールなどが使 用
170 湯浅和昭(2008)「LNG輸送技術の最新動向」,JOGMEC石油・天然ガスレビュー 2008.7 Vol.42 No.4
<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/598/200503_001a.pdf>
171 豊田昌信、楠本裕己、渡辺一夫(2012)「IHI-SPB LNG運搬・貯蔵・燃料タンクの安全性」, IHI技報 Vol.52 No.3
172 Self-supporting Prismatic shape IMO type Bの略称
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が挙げられる。甲板下内蔵であるため、他の方式とは異なり出っ張っている部分が無いた め、風圧等の気象条件の影響が少ない173。
このSPB タンクは、船体構造とは独立しており、強化合板製ブロック上に自立している。
そのため船体形状に合わせた柔軟な形状が可能であり、容積効率を上げることができる。
またタンク内部に構造部材をもつため,タンク内LNG の固有周期を自由に調整できる。こ れによりスロッシング現象が発生しないように設計可能である。タンクの材料としてアル ミ合金だけでなく、ステンレス鋼や9%ニッケル鋼での製作も可能である174。
図 2-24 SPB方式の概要
(出所) 豊田、楠本、渡辺 (2012)
SPB方式は、ジャパンマリンユナイテッド(株)(以下、JMU)がライセンスを保有しており、
当該設計技術を国内外に幅広くライセンス供与している175,176。
2) メンブレン方式
メンブレン方式は、船体内部に防熱材を取り付けて、その内面をメンブレン(金属の薄膜) で覆った構造となっている。メンブレン方式の狙いは、超低温用特殊金属材料の削減であ
173 この特徴もあり、アラスカという条件の厳しいサイトで導入された。また中間液位での航行も可能であ り、衝突にも強い。
174 永田良典、田ノ上聖、木田隆之、川合崇(2012)「LNG燃料船用IHI-SPAタンク」, IHI技報 Vol.52 No.3
175 Samsung社やHundai社に対しライセンス供与を実施している。ただこの場合、材質はアルミではなく、
ステンレス鋼や9%ニッケル合金などとなっている。
<https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2003/press/2004-3-17/index.html>
<https://www.jmuc.co.jp/company/business/engineering.html>
<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3510/1002_out_br_lngfpso.pdf>
176 SPB方式タンク単体のビジネスも実施しており、中東の海運会社United Arab Shipping Company(UASC)
が韓国の造船会社である現代重工業に建造発注したコンテナ船について、LNGを推進用燃料とするLNG 燃料供給システムの共同開発実施について合意している。当該ビジネスでは、LNGタンクとしてSPB方式 が採用されている。
<https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2013/press/2013-12-13/index.html>
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る。貨物液の荷重は防熱材から船体に直接作用するので、防熱構造は断熱性能のみならず、
強度面での配慮が必要となる。また、タンク内は補強材のない構造であるので、液の自由 運動による圧力変動に対するタンク保護の観点で、一般的に積み付け制限が必要となる177。
メンブレン方式は、Gaz Transport社の開発したメンブレンを使用する方式(Gaz Transport (NO.96))178と Technigaz 社 が 開 発 し た 厚 さ 1.5mm の ス テ ン レ ス 鋼 を 使 用 す る 方 式 (Technigaz)179の2つに大別できる。
・ Gaz Transport 方式(NO.96)…線膨張係数が極めて小さい特殊材料のインバー(36%ニッ
ケル鋼)をメンブレン材として使用しているので、熱伸縮対策が実質的に不要である。
また防熱構造は、パーライトを充填した防熱箱を煉瓦状に積み重ねた構造となってい る。
・ Technigaz 方式(マークⅢ)…波形のしわ付きのステンレス鋼(SUS304)をメンブレン材と
して使用している。縦横の波形のしわで熱伸縮を吸収する構造となっている。
なおGaz Transport社とTechnigaz社は1994 年に合併しており、GTT 社(Gaz Tranport &
Techinigaz)となっている180。現在は、このGTT 社が、両方式の長所を結合した方式が開発・
実用化されている181。
177 湯浅 (2008)
178 厚さ 0.7mm 、36 %のニッケルを含有するニッケル鋼を使用
<http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?target=KEYEQ&freeword=LNG+%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%8 2%AB%E3%83%BC>
179 後者のステンレス鋼タイプでは、本船の貨物タンクのメンブレンを 2 層とし(それぞれ液と接触する 内側から一次メンブレン、二次メンブレン)、2 層のメンブレンの間に断熱材を挟み、さらに外側に断熱材 を設けている。断熱材の材質は木板、およびパーライトが使用されている。
<http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?target=KEYEQ&freeword=LNG+%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%8 2%AB%E3%83%BC>
180 < http://www.gtt.fr/>
181 基本的な考方として、メンブレンにはガストランスポート方式のインバー、防熱と2 次防壁にはテク ガス方式の強化プラスチックフォームとトリプレックスを採用した方式で、CS-1(コンバインド・システム) と呼ばれている。(出所: 湯浅 (2008))