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4.2 米国政府による政策的支援とその効果

4.2.4 米国以外のシェール賦存国の動向

1) 技術的に開発可能な資源量  (EIA による評価) 

2013年6月、米DOEのEIAは「世界のシェールガス・シェールオイル資源量に関する評 価310」(以下、EIA報告書)を発表した。中国の技術的に回収可能なシェールガス資源量は

1,116Tcfとなっており311、米国を上回る世界1位のシェールガス資源国と評価されている。

図 4-12  中国における堆積盆地/地域(EIA評価対象)  

(出所)EIA報告書より

同報告書によると、シェールガス開発の最も有望な地域は、ドライガスエリアである四 川堆積盆地であり、技術的に回収可能なシェールガス資源量の半分以上を占める。同堆積 盆地の中でも、南西部に広がるシルル系龍馬渓(Longmaxi)シェール層の資源量は 287Tcf と なっており、最も有望と評価されている312。またタリム堆積盆地の資源量は215Tcfと評価

310 EIA(2013)「Technically Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resources: An Assessment of 137 Shale Formations in 41 Countries Outside the United States」

< https://www.eia.gov/analysis/studies/worldshalegas/ >

311 EIAによる前回報告書(20114月)では1,275Tcfとなっており、159Tcfほど下方修正されている。その

要因として、前回評価対象の四川のQiongzhusiシェール層とタリムの下部カンブリア系シェール層につい て地質条件が劣ること(断層が多いなどの複雑な地質状況、埋蔵深度が深いこと、有機物含有率(TOC)が低 いことなど)を理由に下方修正したためである。

(出所: 竹原美佳 (2013)「シェール特集〜注目される地域の開発動向〜[中国]」,JOGMEC石油・天然ガス資

源資料)

<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4962/1308_out_m_cn_shale.pdf>

312 平均層厚1,000ft(300m)の有機物が豊富なシェール層が広がっており、断層が比較的少なくH2Sが含ま

れる部分が少ない。有機物の含有率(TOC)平均は3.2%、有機物の熱的熟成度(Ro)は2.9%、ドライガスエリ

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されており、四川堆積盆地に次ぐ有望な地域となっている。

表 4-4  EIA評価対象地域・技術的に開発可能な資源量の対比(2011年4月・2013年6月)

(出所)竹原(2013)

一方、シェールオイルに関してみると、技術的に開発可能な資源量は、ロシア、米国に 次ぐ世界第3位の320億bblと評価されている。特に西部の新疆ジュンガル・タリム堆積盆 地と北東部の松遼堆積盆地が有望とされる313

(中国政府による評価314

2012年3月に中国国土資源部が発表した「全国のシェールガス資源の潜在力ならびに有 アである。PetroChinaは主にこの龍馬渓(Longmaxi)シェール層を対象に探鉱を行っている。(出所: 竹原 (2013))

313 タリムの中・上部オルドビス系シェール層を除き湖沼性でClay分が多く水圧破砕に適していない模様 である。(出所: 竹原(2013))

314 出所: 竹原美佳 (2015)「中国:“新常態”下のエネルギー・環境政策とシェールガスの開発」,JOGMEC 石油・天然ガス資源資料

< https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/6/6478/1507_out_m_cn_gas.pdf>

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望鉱区の評価結果」では、シェールガスの開発可能な資源量について25.08 兆m3(885Tcf)、

と評価されている。2012年3月に国家発展改革委員会が発表した「中国のシェールガス発 展12次五か年計画」でもこの数値を念頭に置いた上で、シェールガスの生産目標として2015 年65億m3 (0.6Bcfd)、2020年600〜1,000 億m3 (5.8〜9.7Bcfd)が示されている。

また2015 年6月、国土資源部が公表した「中国のシェールガス資源調査報告(2014)」で は、中国におけるシェールガス資源の評価、探鉱開発の状況等について報告がされている。

同報告によると54の探鉱権315が賦与されているが、最も有望とされる四川堆積盆地ならび にその周辺に集中している。

2) 開発動向及び見通し 

  竹原(2015)によると、2014年末時点において、国有石油企業3社を含め計16社がシェール ガスの探鉱開発を行っており、2009年以来35億ドルが投じられ、669坑(調査井が90坑、垂直 井が234坑、水平井が345坑)が掘削された。2014年の生産量は13億m3 (0.13Bcfd)となってお り、PetroChina社とSinopec社の2社が大きな割合を占めている316

なおIOC は、2009 年から2013 年にかけて南部を中心に国有石油企業(特にPetroChina 社・Sinopec社)とシェールガスの共同スタディを実施したが、2014 年に相次いでスタディ を終結しており、PS 契約には移行しなかった317

表 4-5  中国企業によるシェールガス探鉱開発の実績(2009〜2014年)

(出所)竹原(2015)

竹原(2015)によると、中国シェールガス開発の課題として、地域性や技術・知見の集積、

幹線パイプラインやインフラ・ロジティクス、またガス統制価格等の政策、水資源などが 指摘されるが、その中でも地質条件は主要な課題となっている。中国のシェール層の多く

315 内訳は既存鉱区のシェールガス探鉱権への転換が33 鉱区(14.6 km2)、1 次入札落札2 鉱区(0.4 km2)2 次入札落札19 鉱区(2 km2)である。

316 Sinopecが重慶涪陵(Fuling)で、11.4m3を生産。PetroChinaは長寧-威遠(Changning-Weiyuan)で1.6 m3を生産(出所: 竹原(2015))

317竹原(2015)

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は米国より地質条件が複雑で、深いところにある。例えば四川Qiongzhusi 構造とタリムBasin の下部カンブリアシェールは地質条件が複雑でシェール層の埋蔵深度が5,000m以深にある ことが指摘されており、また北東部は硫黄の含有が高いなどの課題がある。

先述の国土資源部報告でもシェールガス開発の課題として中国の地質に適した技術の把 握が不十分であると指摘しており、マイクロサイスミック、生産挙動予測、ナノスケール の3D地質モデルなど最適な水圧破砕を施し生産性を向上させる技術の知見に努めるとして いる。

(2) ロシア 

EIA報告書によると、ロシアの技術的に回収可能なシェールガス資源量は285Tcfとなっ ている。一方、シェールオイル資源量は世界第1位の746億bblと評価されている。シェー ルオイル開発の最も有望な地域は、西シベリアにあるジュラ系最上部のBazhenov 層である。

ロシア連邦地下資源利用庁(Rosnedra)の試算によると、西シベリアBazhenv 層の埋蔵量は、

250 億t(1,820億bbl)〜500 億t(3,640億bbl)と推定される。生産量は2020 年までに80万〜

200 万bbl/d を見込んでいる318

図 4-13  ロシアにおける堆積盆地/地域(EIA評価対象)  

(出所)EIA報告書より

318 出所: 本村眞澄(2012)「ロシア:超重質油とシェールオイル開発に向かうロシア」,JOGMEC石油・天然 ガス資源資料

<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4744/1209_out_j_Russia-Unconventional-Oil.pdf>

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ロシアは2010年以降、シェールオイル開発に関して欧米メジャーとの協力を積極化して おり、技術導入が進んでいる。ロシアにおける水平掘削は、シェールオイルやガスの生産 が高まっている米国よりも速いスピードで急増しており、2015 年には 2009 年比で約 3 倍 増になる見込みである319

図 4-14  ロシアにおける掘削リグ数の推移  

(出所)James Henderson(2013)「Tight Oil Developments in Russia」, Oxford Institute for Energy Studies WPM 52320

以下、欧米メジャーとの協力事例について示す。

・  ExxonMobil 社とRosneft社による西シベリアBazhenov層開発

・  Shell社によるSalym 油田におけるBazhenov 層開発

・  Statoil社による北コーカサスでのタイトオイル開発

  なおロシアのシェールガスへの取り組みは、資源形成の実態を反映して、現在のところ ほとんどない。

319 本村 (2012)

320 <https://www.oxfordenergy.org/publications/tight-oil-developments-in-russia/>

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5 まとめ