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2.6 LNG チェーン

2.6.3 今後の技術開発トレンド

1) 主な特徴 

フローティングLNG (FLNG: Floating Liquefied Natural Gas)とは、LNG版FPSOの通称であり、

洋上で天然ガスを精製・液化・貯蔵・積出を行う浮体式の生産設備である。陸上に液化プ ラントを建設する場合と比較して、海洋ガス田から陸上までの海底パイプライン敷設を削 減できることや、沿岸部の開発を伴わないため環境負荷を低減できること、ガス田開発と は異なる国や地域でLNG-FPSOを建造して現地へ曳航できるため労働者確保が比較的容易 であること等の利点を有する。また、液化プラントの移動が可能なため、従来は開発対象 とならなかった中小規模の海洋ガス田の開発手段としても注目される182

2) 設備概要と技術開発動向 

FLNGは、上載設備(トップサイドプラント)、船体、係留システムなどから構成される183

・  上載設備…ガス処理/液化プラントを搭載し、不活性ガス生産、圧縮ガス前処理、LPG 回収、液化、LNG/LPG積出しのための様々なコンポーネントとシステムを完備する。

・  船体…デッキは大重量の上載設備を支持できるように設計される。またタレット係留 装置が使用され、洋上でLNGを積み出すための様々なシステム(格納システム、極低温 サブマージドポンプ、極低温トランスファーシステム等)が搭載される。

・  係留システム…FPSOで使用されているものと同様であるが、FLNGの船体はかなり大 型であり、より強靭なタレット係留システムが必要とされる。

3) FLNG の最新動向184 

エンジニアリング会社としてはTechnip社が海洋関係会社の買収を通じてこの分野を先行 しており、我が国でも日揮(株)がPetronas社によるFLNGプロジェクトに参加している。

現在、以下に示す4 件のFLNGの建造が現在進んでいる。

(Prelude(LNG 年産 360 万 t)  185

Prelude LNGは、豪州Browse Basin 沖合のPrelude フィールドとConcertoフィールドのガ

ス開発プロジェクトであり、Shell社が100%権益を取得している。2011年5月にFID(最終 投資決定)が行われた後、Shell社はTechnip社 とSamsung Heavy Industry社(以下、SHI社) のコンソーシアムとの間で、FLNG の設計・建設などに関する連携協定を2009年に結んで

182出所: JOGMEC Webサイト石油・天然ガス用語辞典“フローティングLNG”

<http://oilgas-info.jogmec.go.jp/dicsearch.pl?freeword=FLNG&target=KEYEQ>

183 日本船舶輸出組合、ジャパン・シップ・センター、(財)日本船舶技術研究協会(2012.3)「海洋資源開発プ ロジェクト調査-2011年度JSC特別調査事業-02

<http:// fields.canpan.info/report/download?id=4253 >

184 北村龍太、レイニ・ケリー(2015)「Floating LNG(FLNG)の最新動向について」,JOGMEC石油・天然ガス 資源資料

<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/6/6520/1509_out_c_n_flng.pdf>

185  <http://www.shell.com/about-us/major-projects/prelude-flng.html>

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おり、その協定に基づきFEED(詳細設計)及びその後の建造を発注した。

船体の建造は、SHI 社が実施している。上載設備について、LNG 液化プロセスについて は先述した Shell DMR 方式が採用される見込みである。また主熱交換器については AirProducts社のCryogenic Coil Wound LNG Heat Exchanger(超低温コイル巻き式LNG熱交換 器)、LNGタンクについてはGTT社のメンブレン方式(typeⅢ)が採用された。係留システム については、SBM Offshore社が、Technip社との間で、主要なTurnet Mooring Systemに関す るEPCIを締結した。この他にも海底生産システムについては、FMC Technologies社が供給 することになっている186

(Petronas FLNG-1(LNG 年産 120 万 t)187

Petronas FLNG-1は、マレーシア・サラワク州沖にある複数の小規模フィールドの開発プロ

ジェクトである。2012年の6月にFIDが行われ、Petronas社は、Technip社及びDSME (Daewoo Shipbuilding &Marine Engineering) 社188に建造を発注した。液化プロセスについては APCI 社が開発しライセンスを保有する窒素エキスパンダー(AP-N)方式が採用される見込みであ る。

(Exmar FLNG(LNG 年産 50 万 t)189

Exmar FLNGは、コロンビアにおける陸上パイプラインガスを原料としたLNG プロジェ

クトである。事業主体であるPacific Rubiales Energy社(以下、PRE社)は、Exmar社との間で、

バージタイプ190のFLNG 施設の建造から操業までを依頼する契約を2012年3月に締結した。

同年6月にExmar社が中国のWison Offshore & Marine社(以下、Wilson社)に発注し、建造 が開始された。

本プロジェクトは、Wison 社がEPCコントラクターとして受注し、サブコントラクター として小型LNG プラントにおける液化プロセス提供において豊富な実績を有するBlack &

Veatch社191が参画している。液化プロセスとして、同社がライセンスを保有する 1段階圧

力式混合冷媒方式 (PRICOプロセス)が採用されている。

(Petronas FLNG-2(LNG 年産 150 万 t)) 

Petronas FLNG-2は、マレーシア・サバ州沖のRotan ガスフィールドの開発プロジェクト

である。FEEDの結果、Petronas社は、日揮(株)とSHI社連合に建造を発注している。

186  大貫憲二 (2013)「世界初のFLNGプロジェクト: Prelude FLNGにおける技術的展望」,JOGMEC石油・

天然ガス資源資料

<https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4635/1203_out_c_au_prelude_flng_present_condition.pdf>

187  <https://www.petronasofficial.com/floating-lng/>

188  <https://www.dsme.co.kr/epub/main/index.do>

189  <https://www.petronasofficial.com/floating-lng/>

190 本プロジェクトでは上述の通り陸上パイプラインガスを原料とする

191  <https://www.bv.com/>

57 (2) スモールスケール LNG 

中国は政策的に LNG 価格が低く抑えられていることもあり、中長距離バスにおいても LNG車が利用されるなど、中小規模LNG設備の普及が進んでいる。いわゆるスモールスケ ール LNG として、様々な液化技術が採用されている。具体的には先述した Black&Veatch

社によるPRICOプロセスは、ひとつの混合冷媒のみを使用するものであり、小規模液化設

備において導入が進んでいる。他にも Linde 社は、Single MR プロセスに加え,Dual N2

Expanderプロセス192などを保有している。またAPCI社もC3-MCRに加え、Dual MRなど

を開発している。

192  冷媒系に窒素を利用し、エクスパンダーの断熱膨張を利用して冷却

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3 石油・ガス産業に係る分野横断的技術の最新動向