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第 2 章 ミンダナオにおけるインフラ整備状況および今後の計画

2.4 PPP 制度(含む法律、政令、組織)およびその運用状況

2.4.1 PPP制度の概要

フィリピンではベニグノ・アキノ前政権の時代より、海外からの直接投資を呼び込むため に積極的な外交を展開する一方、PPP によるインフラ整備事業を主要政策課題に掲げ、道 路(高速道路、空港アクセス道路)、空港、鉄道、学校などのプロジェクトを進めてきた。

2010 年9 月にはBOT センターをPPP センターに改組し、同センターの所管をDPWHか

らNEDAに移管させた。また、汚職撲滅を掲げるアキノ前大統領は事業の透明性を重視し、

とりわけ大型事業に関してはこの過程で見直しが何度も行われ、入札日も度々延期される など、進捗が遅いとの批判も出ていた。また、透明性の高い形で事業実施主体を選定できる よう、アンソリシティド型(民間提案型)の案件よりもソリシティド型(政府計画型)の案 件に重点を置いている。これとの関係で、2012年7 月に改正されたBOT 法(1994年制定)

ではアンソリシティド型には財政補助金(Viability Gap Funding: VGF)が与えられないこと となった。

PPP を重視する方針は、2016 年に成立したドゥテルテ政権においても変更はない。現政 権下でも、フィリピン政府は国家財政が厳しい環境下、基本的に PPP によりインフラスト ラクチャー事業を進めることとしている。だが、政府主導のインフラ整備案件の多くはルソ ン島に集中し、また、一定の事業規模が求められる。このため、ミンダナオでは中央政府主 導によるPPPは存在しない16。一方、島内の電力不足問題に対してはソリシティド型ではな く、民間主導のアンソリシティド型のエネルギー開発に頼っている。

フィリピンにおけるPPP制度の概要を次表に示す。

16 地方政府(Local Government Unit: LGU)が実施する水道事業においては民間活用(例えばバルクウ ォーターサプライ)が数件存在する。

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図表2-14 フィリピンにおけるPPP制度の概要

項目 概要

主要法制度 共和国法7718号(「改正BOT法」) BOT法施行細則および規則(「BOT-IRR」)

2010年大統領令8号(2010年9月):BOTセンターのPPPセンターへの 改組

JVガイドライン(1989年公布、2008・2012年改定)

推進機関 PPPセンター:2010年大統領令8号によって(DTIから移管され)NEDA の下に設立

PPP Governing Board:2013年大統領令136号により設立。5億ペソを超 える事業は閣議(NEDA Board、大統領が Chair、財務省・国家経済開発 庁・予算管理省を中心とする経済閣僚が構成員)にて承認される必要あ り。

VGF 等 の 予 算 措 置

資金調達:事業資金は国内外から調達することができる。また、プロジ ェクト総額の最大 50%までは、フィリピン政府の予算または外国政府

(ODA)からの資金調達が認められている。

政府支援:コスト分担、信用力強化(政府保証)、直接政府補助金、政府 出資、責任分担、法律支援、セキュリティ支援等につき、直接・間接的な 支援を受けられる。但し、この支援の対象は政府からのソリシティド型 プロジェクトであり、アンソリシティド型においては、政府保証、直接 政府補助金、政府出資は認められない。

外資規制 ネガティブリストにより、「公益事業免許を必要とする BOT プロジェ クトの提案、施設運営」については、外国資本が40%以下に制限されて いる。

(出所)新日本監査法人実施の既往METI調査およびJICA報告書等を基に整理

2.4.2 PPP適用可能セクター

フィリピンのPPP制度においては、民間参入が可能なセクターとして、BOT法および同 法実施細則によると、「運輸」「電力・通信」「社会インフラ・その他」が挙げられている。

具体的な適用分野および対象事業は、次表のとおりである。

図表2-15 民間が参入可能なインフラプロジェクトの分野

(出所)調査団作成 運輸分野

・幹線道路(高速道路等の道路事業、橋等)

・鉄道、その他の関連する商業開発施設

・鉄道以外の大量輸送設備、内陸航行水路等

・港湾(桟橋、埠頭、桟橋などの関連施設)

・空港、管制その他関連施設

電力・通信分野

・発電、送電、その他関連施設

・通信等ネットワーク施設、地上及び衛星通信関連 のサービス及び施設

・情報技術及びデータベース・インフラ

社会インフラ分野等その他

・灌漑及び関連施設

・上下水道、排水等の関連施設

・教育及び医療関係インフラ

・埋め立て、浚渫その他の関連施設

・工業団地及び観光地、並びに関連施設や公益施設

・政府庁舎建物、住宅プロジェクト

・市場、家畜処理施設及び関連施設

・倉庫、収穫後施設

・公共の漁港、養殖池、倉庫及び加工施設を含む

・環境関連施設、固形廃棄物管理施設

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ただし、前述のとおり、BOT法はもともと1994年に制定されたものである。2012年にマ イナー改正はされたものの、その内容は現行の PPP の実践と必ずしも一致していない。例 えば、電力については、EPIRA (Electric Power Industry Restructuring Act of 2001) によるセク ター改革により、PPP/BOT による新規の発電所案件は実施されていない。このため、同国 における電力PPP事業は、現在、事実上存在しない。

2.4.3 PPP事業の実施状況とパイプライン

フィリピンにおけるPPP 事業の実施状況および計画については、PPP センターが不定期 的にアップデートしてホームページに掲載している。

図表2-16 既に建設が完了して運営を開始した案件

セクター 案件名 プロジェクト金額 関係機関

道路 Daang Hari―南ルソン高速道路(SLEx)接

続道路(ルソン島モンティンルパ市-カヴ ィテ州間高速道路)プロジェクト

22.3億ペソ DPWH

教育 学校インフラストラクチャー・PPPプロジ ェクト(PSIP) フェーズ1

98.9億ペソ DepEd

鉄道 自動 運賃集金シス テム(Automatic Fare Collection System: AFCS)

17.2億ペソ DOTr

道路 NAIA高速道路(フェーズ2)プロジェク ト

179.3億ペソ DPWH

(出所)PPPセンター「PPP案件の状況(20161215日時点)

図表2-17 建設中の案件

セクター 案件名 プロジェクト金額 関係機関 教育 学校インフラストラクチャー・PPPプロジ

ェクト(PSIP) フェーズ2

38.6億ペソ DepEd

航空 セブ州マクタン島国際空港旅客ターミナ ルビル

175.2億ペソ DOTr

道路 メトロマニラ・スカイウェイ(MMS)ステ ージ3プロジェクト

374.3億ペソ フ ィ リ ピ

ン 有 料 道 路 規 制 委 員会 運輸交通 南東部の統合交通ターミナル(ITS)プロ

ジェクト

25億ペソ DOTr

鉄道 MRT-7線プロジェクト 693億ペソ DOTr

(出所)PPPセンター「PPP案件の状況(20161215日時点)

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図表2-18 これから実施されるパイプライン案件(NEDA Board承認済の案件)

セクター 案件名 プロジェクト金額 関係機関

鉄道 LRT-1線(カヴィテ州)の延伸と維持管理 649億ペソ DOTr

道路 カヴィテ―ラグナ間(CALA)高速道路 354.3億ペソ DPWH 運輸交通 南部の統合交通ターミナルプロジェクト 52億ペソ DOTr 水道 ブラカン用水供給プロジェクト 244.1億ペソ MWSS 情報通信 住民登録システム IT 化プロジェクト(フ

ェーズ2)

15.9億ペソ PSA

道路 北ルソン高速道路(NLEx)とSLExの接続 道路

232億ペソ DPWH

航空 ボホール島(パングラオ島)新空港運営、

維持管理、開発プロジェクト

45.7億ペソ DOTr &

CAAP 航空 ラギンディガン空港運営、維持管理、開発

プロジェクト

146.2億ペソ DOTr &

CAAP 航空 ダバオ空港運営、維持管理、開発プロジェ

クト

405.7億ペソ DOTr &

CAAP 航空 バコロド空港運営、維持管理、開発プロジ

ェクト

202.6億ペソ DOTr &

CAAP 航空 イロイロ空港運営、維持管理、開発プロジ

ェクト

304億ペソ DOTr &

CAAP

鉄道 LRT-2線の運営および維持管理 資本的投資なし DOTr &

LRTA 港湾 ダバオ市ササ港の近代化プロジェクト 189.9億ペソ DOTr 道路 道路交通の IT インフラプロジェクト(フ

ェーズ2)

2.98億ペソ DOTr &

LTFRB 水道 新100年水資源-カリワ・ダム・プロジェク

187.2億ペソ MWSS &

DPWH 司法 PPPを活用した、地域の刑務所施設 502億ペソ DOJ &

BuCor

鉄道 LRT-6線プロジェクト 650.9億ペソ DOTr

道路 NAIA PPPプロジェクト 745.6億ペソ DOTr &

MIAA 都市開発 新ナーヨン・ピリピノ-エンターテイメン

ト都市プロジェクト

14.7億ペソ DOT

(出所)PPPセンター「PPP案件の状況(20161215日時点)

2.4.4 フィリピンにおけるPPPの課題

これまで見たように、フィリピンでは PPP を積極的に進めており、着実にその実績を積 み重ねている。周辺他国に比べても、その実績は突出している。しかし一方で、下記のよう な課題も存在する。

第一に、現行の実態にそぐわないBOT法である。BOT法は、もともと1994年に制定さ れ、2012年に改訂がなされた。しかし、その内容は依然として1994年のままであり、適用 範囲、PPPの形態(モダリティ)、政府支援措置などの面での刷新が必要とされる。フィリ

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ピン政府は2010年頃よりBOT 法に代わる、新たなPPP法(仮称)の成立を目論んでいる が、国会での議論の進捗があまり芳しくない。

第二は、PPPを適用する地域や機関の限定性である。多くのPPP事業は、ルソン島で実施 されている。また、政府による「公式な」PPP事業17は、ほとんど中央省庁により実施され ているもので、地方政府(LGU)により実施されているものはほぼ皆無である。上記のBOT 法の不十分さもあり、PPP の適用が中央の大規模プロジェクトに集中する傾向が認められ る。なお、ミンダナオでは、まだ「公式な」PPP事業はない。

第三は、地場の大手財閥による市場の寡占化である。基本的に、フィリピンでの PPP 事 業は、100%外資のグループによる応札は認められておらず、SPCの株式の過半数は地場企 業が保有することとなっている。また、実際のPPP事業においては、アヤラ、サンミゲル、

メトロパシフィックといった大手財閥の参加が事実上必須となっており、ある意味寡占状 態に陥っている。同国の PPP 事業のプレーヤーの多様化(外資企業や、地場の中小企業の 参加)も、同国のPPP政策において重要な課題の一つとなっている。