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第 5 章 フィリピンおよびミンダナオのインフラの課題に関する本邦技術の活用

5.1 運輸・交通

5.1.1 現地ニーズに適合しうる本邦技術およびその適合性検証

ミンダナオ内の多くの地域は地形が急峻で、それゆえに規格の高い道路の建設が遅れて いるのが現状である。このような急峻な地形での道路工事にはトンネルや長大橋などの構 造物や斜面防護工を必要とする区間が多く、日本の技術支援が期待される。

これまで、本邦技術活用のプロジェクトとして「本邦技術活用条件(Special Terms for Economic Partnership: STEP)」が活用されてきたが、今後は「技術移転」を全面に出した日本 タイドの借款の枠組みを整備していく必要があると考えられる。

フィリピン国内でのインフラ整備にはフィリピン国の建設会社だけでなく、近年では、中 国や韓国、スペインの企業が応札し、熾烈な価格競争がなされている。高い品質管理や工期 管理を得意とする本邦企業は、価格競争のみの一般国際入札では、勝ち上がるのは極めて困 難な状況である。

他方で、使用材料の 30%を日本製とする STEP での案件形成の方法にも限界が見えてき ている。例えば、トンネル建設技術は本邦企業が有する差別化できる技術だが、「特殊な材 料や資材を使う」ことが本質的に重要なのではなく、掘削して初めて分かる本当の地山の地 質・土質条件や地下水の状況を見極めながら状況を判断し工事を進めていく「ノウハウ」が 建設の肝となる。

このため、工事をしながらノウハウを地元建設業者に指導し、「地元を育てる」という視 点での案件形成ができると、本邦技術活用の幅が広がると考えられる。

図表5-1 運輸交通分野の現地ニーズに適合しうる本邦技術 分野 技術

道路 ・ トンネル、トンネル掘削技術

・ 長大橋梁建設(対候性鋼材)

・ 法面保護、安定性等のモニタリング

物流 ・ トラッキングデータ等も駆使した物流・人流の実態調査

・ 災害時の物流路確保・輸送計画の立案(防災拠点の整備等)

(出所)調査団作成

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5.1.2 ミンダナオにおける有望案件リスト(ショートリスト)

以上のような点を総合的に考え、ミンダナオにおける有望案件として下記の9案件を提 案する。

(1)日比友好道路の交通機能強化

日本政府はこれまで、ミンダナオ島東部を南北にスリガオ~ブトゥアン~ツグム~ダ バオと通る道路を日比友好道路として、1960年代後半に整備計画を策定して以来、整 備・補修を支援してきた。対象区間はアジアハイウェイ路線AH26の一部区間を構成し ている。一貫した4車線数整備や登坂車線整備による走行利便性向上、交通事故対策に よる安全性確保等、より強靭で質の高い交通ネットワークの基礎インフラとしての機能 を整備・強化することで、都市間の往来を活性化させ、ミンダナオ島の経済活動全体の 底上げを図ることが望まれる。

また、同路線の山間部では、特定の区間内において同じような災害が繰り返されるこ とが多く、頻繁に多額の補修費がかかる。したがって、日本が誇る災害対応技術を移転 し、災害に強くより安定した交通機能を発揮する道路としての規格を満たした整備が望 まれる。

(2)カガヤンデオロ~ダバオ間高規格道路

上述のとおり、カガヤンデオロ~ダバオ区間の走行性向上も、優先度の高いプロジェ クトの一つと考えられる。丘陵地や山間部を通過する区間が多く橋梁やトンネルなどの 構造物区間の比率が高いことから、長大橋、山岳トンネル、斜面防護などにおいて高い 水準を誇る多くの本邦技術を活用することが可能である。

(3)カガヤンデオロ港の機能強化・容量拡大とアクセス道路の整備

ミンダナオ・コンテナ・ターミナル(MCT)の拡張とアクセス道路の整備により、島 内のゲートウェイ機能を強化させることが期待される。MCTについては拡張計画が現在 進行中であるとともに、アクセス道路も整備中である。一方、国道9号線と港湾アクセ ス道路が交差する部分の立体化の検討が事業主管や予算面で滞り、平面処理での整備と なっていることから、立体化によるゲートウェイ機能の確保が必要である。

(4)ブトゥアン市内ロジスティック・インフラ(道路・港湾)整備

親日家の新市長であるロニー・ラグナダ(Ronnie Vicente C. Lagnada)同市長を中心 に、日本の製品や技術・マネジメント・資金を使いつつ、地元の産品を活用した産業育 成が進められている。DPWHの協力の下、海運物流拠点となるマサオ港・ナシピット港 の拡張事業、および当該2港と産業開発エリアを連絡する物流道路整備計画が進められ

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ている。港拡張事業とアグサン川渡河道路では日本国政府からの支援を必要としてお り、2015年度に海外建設協会が工業団地開発と物流インフラを対象に基礎調査を実施し た。

(5)ミンダナオ島北部回廊整備(ブトゥアン~カガヤンデオロ~ミサミス~ディプログ)

本路線は、ミンダナオ島北部のゲートウェイとなる各都市の連絡を強化する路線であ る。同区間内の東西ミサミス地域は元来一つの地域(Region)であったため、道州制へ の移行構想があるなか、地域の一体感を再度強化させるためにも非常に重要な路線であ る。当該区間は現状として国道(National Highway)には位置付けられておらず、線形条 件が悪く、主としてコンクリート舗装である等、走行利便性も悪い。一方で、荷痛みを 防ぐ必要のある産品が輸送されており、規格の高い道路としての整備が望まれる。

(6)ダバオ~サマール間連絡道路

METI調査報告書によると、将来の交通需要は1日当たり約1万台とそれほど多くは ないが24、サマール島は観光資源を有することから、アクセス性が向上することで同地 域の発展やダバオへの旅客需要も増えることが見込まれる。橋梁建設の場合、大型船舶 の航行上のクリアランスと、ダバオ空港へ離発着する航空機の航路上のクリアランスに より、上下空間の厳しい制約の中で構造物を建設する必要がある。トンネル建設の場 合、これらクリアランスは考慮する必要がなくなるが、建設コストは高めになる。橋 梁・トンネルともに日本企業が有する質の高い技術を活用することができる案件であ る。

(7)道路資産管理技術支援/パイロット路線運営支援

都市間道路では、過積載に起因する道路舗装の悪化や、災害などにより同地点で継続 的に道路倒壊が起こる等の状況が散見される。過積載に対する規制や取締り強化、LCC 低減に資する運営管理の技術移転を目的に、一部区間をパイロット事業として資産管理 を導入、適正な維持管理体制を構築する技術支援プログラムの実施が有効であると考え られる。

(8)ブトゥアン市内都市交通マスタープラン策定

人口約35万人をかかえるミンダナオ島北東部カラガ地域の拠点都市であるブトゥア ン市内では、人口増加や自動車交通量増加、都市開発により交通の円滑性が損なわれつ つある。一方で、ブトゥアン市は日本が誇る低炭素型都市である富山市との都市間連携

24 経済産業省「平成27年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業(円借款・民活イ ンフラ案件形成等調査)フィリピン国:ダバオ―サマール間橋梁建設計画調査報告書」

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を構築しており、富山市の知見を活かしながら、利便性の高いマストラ交通インフラを コアにした都市整備を進めている。

このような背景の下、将来的な更なる交通需要増加を見据えた都市交通マスタープラ ン策定に早い段階から支援を行い、質の高いインフラ整備につなげ、よりいっそうの日 本の技術や製品、管理運営、資金の導入につなげて行くことが、日本国の戦略的なODA 支援として有効であると考えられる。

(9)ミンダナオ島内の物流実態調査(人流実態調査も含む)

2004年以降の状況の変化を把握するための貨物輸送物流実態調査(OD調査)を実施 し、今後の運輸交通インフラの必要性検討に用いる基礎情報を収集する案件である。

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