第 3 章 インフラ整備の現状、課題および優先プロジェクト
3.1 各都市別の状況
3.1.3 ジェネラルサントス
3.1.3.1 インフラの現状
ジェネラルサントスは、ソクサージェン(Soccsksargen)地域20における、外洋に面したゲ ートウェイの機能を有する都市であり、同市に存在する港湾と空港のキャッチメントエリ アは、ミンダナオ島南部における広大な範囲を担っている。また、ミンダナオ島全体の運輸 セクターの観点からは、ジェネラルサントス港は、ASEAN地域における経済統合の観点か ら立ち上げられた東アセアン成長地域 (BIMP-EAGA)の中で、インドネシアのビトゥン港と 接続する同地域のRO-RO船(貨物フェリー)ネットワークの一部として認識されている21。 なお、ジェネラルサントス空港も、同地域の唯一のゲートウェイとして機能している。
これらのゲートウェイと内陸部とを接続する都市間幹線道路は、ダバオやコタバトへと つながる国道1号線であるが、日比友好道路として日本の支援を受けて整備されてきた歴 史を持つ。ダバオ~ジェネラルサントス間の区間は自国予算にて拡幅工事が進められてき ており、また、コタバトまでの約200km区間は良好な複数車線での道路整備がされている 状況である。
ジェネラルサントス市内の道路に関しては、ミンダナオ島の他都市ほどではないものの 徐々に交通量が増えていると指摘され、今後のミンダナオ島南部地域の発展に伴い、同市の 運輸交通セクターの活動が増大することが見込まれる。
それらを見越したうえで、ジェネラルサントス市内では、環状道路(内側、外側)などの 整備を進めていることから、道路インフラ整備計画が適切に進められていると感じる。ただ し、市内の交通管理の面では、未だ交通信号の設置が少ないことから、今後の交通量の増大 への対処への課題があることや、都市間移動(人流・物流)の現況が定かでなく、面的なイ ンフラ整備を議論するのに必要な基礎情報が不足している。
20 ミンダナオ島中部の地方の名称(Region XII)。地域内の4州とその都市のうちの1つであるジェネラル サントスの頭文字で名付けられたもの。中心都市は、コロナダル(英名)コタバト市である。
21 JICA (2013), The Master Plan and Feasibility Study on the Establishment of an ASEAN RO-RO Shipping Network and Short Sea Shipping.
64
図表3-6 ジェネラルサントスの交通・インフラ施設の整備状況
GS~Koronadalの6車線幹線道路 ジェネラルサントス港拡張工事(杭打ち)の様子
(出所)調査団撮影
3.1.3.2 既存の産業
ソクサージェン地域は、パイナップル(Dole社の大プランテーションが存在)、コーヒー、
ココナッツ、バナナ、米、コーン、アスパラガス等の産地であり、国内・国外への主要な供 給拠点となっている。また、ジェネラルサントスは、漁業や水産加工関連産業が多くを占め ており、ミンダナオ島の中でも水産業・水産加工業の中でも有数の都市である。
鉱物資源については、ジェネラルサントスの北側に位置するタンパカンにて、金・銅鉱山 の採掘可能性調査が実施されており、「資金または技術支援協定(Financial or Technical
Assistance Agreement: FTAA)」を活用した開発が実施される予定ではあるが、南コタバト地
方政府の法律により「露天掘り(Open-Pit Mining)」が禁止されたこともあり、すでに環境 コンプライアンス証書(Environmental Compliance Certificate: ECC)を取得しているものの開 発許可が下りていない状況である(2017年1月現在)。
ジェネラルサントスにおいても経済特区(SEZ)は複数あるが、多くは個社による特区で あり、唯一、工業団地と呼べるSEZ は、ジェンサン(Gensan)経済特区として空港近くの エリアにて整備され、水産加工業などの需要を見込んでいる。
なお、地域の発展モデルとしては、現在の漁業・水産業のみでの都市集中を目指すのでは なく、農業・鉱物資源・観光資源なども含めた産業発展を地方部に展開し、地域全体として の開発が進められることを期待している。
3.1.3.3 プロジェクトニーズ
ソクサージェン地域開発プロジェクトオフィス(Soccsksargen Area Development Project
Office)によると、港湾・空港などの主な物流インフラ施設は、1990年代にJICAやUSAID
の支援のもと建設されたものであり、老朽化・未改修が多いことから、改修事業を中央政府 に対して要求していると示された。
以下に、運輸・交通インフラ施設に関して、ジェネラルサントス市内およびその周辺地域 で計画中または実施中の案件を示すと共に、現地で把握したインフラ整備ニーズを記す。
65
(1)今後の計画プロジェクト・プロジェクトニーズ
①港湾インフラ
・ ジェネラルサントス港(Makar Wharf)は、取扱可能量の拡大に取り組んでいる。現 在、同港の取扱量は既に取扱い可能容量に達しており遅延等が生じていることから
(インタビューでは1か月程度の沖待ちが生じているとのこと)、韓国政府によって 実施された港湾マスタープランに基づき、比政府予算によって拡張整備が進行中で ある。
・ 上のマスタープランには、ガントリークレーンの整備、バース拡張、旅客ターミナル などが含まれ、いくつかは既に完成している。
・ 計画は第三フェーズまであり、第一フェーズで東側に 200m岸壁を拡張予定であり、
2017年の12月には拡張が完了する予定である。
・ 取扱貨物の80%は輸出用であり、コンテナ貨物(Dole社のパイナップル・バナナ等)
が約80%を占める。バルク貨物は、Kenram産のパームオイルの取扱量が多い。
・ 輸入貨物としては、建設資機材や加工前原材料のバルク船が多く、セメント輸入業者 は、以前の2社から5社に増えている。
・ 今後の同地域の開発(政府が提唱するインフラ投資額である年7%)を考えると、セ メントや鋼材などの貨物が増えることから、これまで以外の貨物の発生が想定され る。
・ このような中、フィリピン港湾庁(PPA)が実施する港湾整備計画もあるが、官主導 の港湾整備は時間がかかることが課題であると捉えられており、民間による港湾整 備が期待されている。
・ 具体的には、PPAではあまり優先度を設けられていないバルク貨物(大豆、米、小麦)
は、取扱いの遅延などが生じており、民間港の整備の可能性がある。
・ 漁港は、1990年代のJICA支援による整備以降、現在も活用され、EUの支援により 順次改善してはいるものの、排水処理等に課題が残っている。
② 空港インフラ
・ ジェネラルサントス空港は、20年間前から改修されていないこともあり、今後2年 間のうちに中央政府から空港の拡張・改修が実施される予定である。具体的には、空 港ビル拡張(2階建て)と、駐機場の拡張(3機分増やして計6機分とする)が計画 されている(一部、入札手続きが開始されている)。
・ 空港周辺の用地は約600ha確保しており、「空港都市(Airport City)」として空港周辺 の産業・商業開発を行うことが期待されている。特に、同地域の玄関口として地域に 裨益するような産業として観光を捉えており、観光受入れ施設などの整備を期待し ている。
66
③ 道路インフラ
・ ジェネラルサントスとコタバトまでの海岸沿いの道路をADB支援にて拡幅整備中で ある。
・ ジェネラルサントス~ダバオ間の道路(国道1号線)は、交通量が多い(重交通が多 いと推察)ことから路面の傷みが激しく、補修後すぐに劣化が始まりそれへの対処も あり改良工事がなかなか進まない。また、交通量が多く拡幅が必要な区間がある。
・ 同地域においても、「農園から市場へ(Farm to Market)」のアクセスは重要であり、
幹線道路から産地までの道路整備ニーズは高い。
・ ジェネラルサントスでは、市の外縁部に環状道路(バイパス道路)を整備中である(空 港と漁港とをつなぐ一部区間が完了していない)。これは、a) 市内への流入を必要と しない物流を流し市内の道路混雑を緩和させる、b) 漁港と空港の連絡強化による新 たな産業誘致を目指している、c) ジェネラルサントス港アクセス道路としての迂回 路と機能することが期待されている。また、都市間バスの発着場を同道路上へ移動さ せることも計画中である。なお、街路灯が不足しており、夜間の走行安全性の確保が 課題である。
・ DPWHによると、洪水対策として、橋の強化や橋の上下流の河道固定を行っている。
④ 鉄道インフラ
・ ジェネラルサントスでは、他の運輸交通インフラと比べて、鉄道インフラ整備の優先 度が高くない。
(2)交通インフラ開発の方向性
都市内の道路整備および交通管理(交通信号など)の拡充により交通混雑を解消させる ことや、現在計画中の環状道路の完成(ミッシングリンクの空港~漁港)、海岸沿いの道 路拡幅などが、計画通り順次整備されることが求められる。また、都市間および地域のゲ ートウェイ機能の強化については、今後の地域の産業発展の後追いとならないように、戦 略的・計画的に十分な容量をもつインフラ整備(港湾・空港)を整備するとともに、比較 的整備されつつある都市間道路の安定性・安全性の確保に努めることが望ましい。公共交 通に関しては、都市内の人口増加や居住地域・通勤通学地域などを見定めた公共交通シス テム(バスを中心)の整備が求められる。