第 3 章 インフラ整備の現状、課題および優先プロジェクト
3.1 各都市別の状況
3.1.4 ブトゥアン・スリガオ(カラガ地域)
3.1.4.1 インフラの現状
(1) 運輸交通
北ミンダナオ地域(主要都市:カガヤンデオロ市等)、ダバオ地域(主要都市:ダバオ 市)およびソクサージェン地域(主要都市:ゼネラル・サントス市等)は、一人当たりの GRDPがミンダナオ平均と同等以上である。これらの地域には、ミンダナオ島内に立地す る13の農工業経済特区のうち、11の特区が立地している。また、各地域ともに年間16万
TEU~21万TEUのコンテナ取扱量のある港湾を有しており、工業団地から港湾間の国道
のほとんどが4車線で整備されている。
これに対し、カラガ地域には農工業経済特区は存在しない。また、中心的な港湾であ るナシピット港の年間コンテナ取扱量は 3万TEU程度であり、港湾周辺の国道の4車 線整備も行われていないのが現状である。
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図表3-8 ミンダナオ島における物流インフラの整備状況
(出所)フィリピン公共事業道路省(DPWH)GIS WEB APPS 、同港湾庁(PPA)、同経済区庁 (PEZA)に基づき調査団作成。
ミンダナオ・コンテナ・ターミナルのコンテナ取扱量はPort Call Asiaによる。
(2)日本政府系機関によるカラガ地域のインフラ整備支援(有償資金協力)
カラガ地域では、これまでに以下の有償資金協力によるインフラ整備支援が行われて いる。
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図表3-9 有償資金協力によるカラガ地域のインフラ整備支援(1995年~2007年)
事業名 事業期間 事業規模
第二マグサイサイ橋・バイパス道路建設事 業
2000年8月~
2007年5月
事業費5,722百万円
(うち円借款3,506百万円)
日比友好道路修復
(ミンダナオ島区 間)事業
フェーズⅠ 1997年3月~
2006年9月
事業費8,303 百万円
(うち円借款6,744 百万円)
フェーズⅡ 1999年12月~
2008年2月
事業費9,639 百万円
(うち円借款7,842 百万円)
アグサン川下流域開 発事業、アグサン川 下流域灌漑事業
洪水制御事業ーズⅠ 1988年1月~
2000年2月
事業費3,696 百万円
(うち円借款2,798百万円)
洪水制御事業ーズⅡ 1997年3月~
2007年4月
事業費10,828 百万円
(うち円借款7,317百万円)
灌漑事業 1995年8月~
2006年8月
事業費5,765 百万円
(うち円借款3,899百万円)
(出所)JICAホームページ
3.1.4.2 既存の産業
(1)人口
カラガ地域の 2015年人口は 2,469,557 人で、2010 年の 2,302,412 人から約 7%、約 147,000人の増加している。
(2)一人あたりGRDP
一人あたりGRDPは59,941ペソである(2014年)。これは、ミンダナオ島内で、紛争 により地域開発が著しく遅れているムスリム・ミンダナオ自治区に次いで低い値であり、
この地域はフィリピンの最貧困地域の一つといえる。
図表3-10 ミンダナオ島の地域別の域内総生産(2014年)
地域 人口
(千人)
GRDP
(100万ペソ)
一人あたりGRDP
(ペソ)
フィリピン全体 99880.3 12,642,736 126,579 ミンダナオ全体 23,748 1,874,849 78,948
Region IX サンボアンガ半島地域 3,668 257,060 70,074
Region X 北部ミンダナオ地域 4,659 485,705 104,242
Region XIダバオ地域 4,830 519,069 107,479
Region XIIソクサージェン地域 4,524 351,357 77,662
Region XIIIカラガ地域 2,591 155,296 59,941
ムスリム・ミンダナオ自治区 3,476 106,362 30,602
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
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図表3-11 ミンダナオ島の地域別の一人あたりGRDP(2014年)
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
(3)産業構成
カラガ地域のGRDPの内訳では、農業および林業が20.6%と最も多く、漁業を加えた一 次産業(農業、狩猟、林業および漁業部門)の割合は23.7%である。フィリピンのGDPに 占める一次産業の割合は11.3%であり、カラガ地域の一次産業の割合はフィリピン平均の 2倍以上である。
図表3-12 カラガ地域の域内総生産(GRDP)の内訳(2014年)
分類 項目 生産額(千ペソ) 割合
一次産業(農業、狩猟、
林業および漁業部門)
農業および林業 31,931,859 20.6%
漁業 4,875,675 3.1%
二次産業(工業部門) 鉱業および採石 21,958,338 14.1%
製造業 4,013,888 2.6%
建設 16,239,692 10.5%
電気、ガスおよび水道 2,282,444 1.5%
三次産業(サービス部 門)
輸送、倉庫および通信 25,511,652 16.4%
自動車、二輪車等販売および修
理 6,940,380 4.5%
金融仲介 7,749,738 5.0%
不動産、賃貸 10,419,511 6.7%
公務および防衛、必須社会保障 8,486,361 5.5%
その他サービス 14,886,470 9.6%
合計 155,296,007 100.0%
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
126,579
78,948
70,074
104,242 107,479
77,662
59,941
30,602
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000
フィリピン ミンダナオ サンボアンガ半島地域 北部ミンダナオ地域 ダバオ地域 ソクサージェン地域 カラガ地域 ムスリム・
ミンダナオ自治区
一人あたりの生産額
(ペソ)
ミンダナオ平均78,948ペソ/人
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(4)主要産業
① 林業
カラガ地域はフィリピン国内で最大の木材生産地である。フィリピンの 2014 年の丸 太の生産量1,102,365トンに対して、カラガ地域は765,725トン(69%)を生産している。
また、ミンダナオ島全体では、967,670トン(88%)を生産している。
図表3-13 フィリピンの地域別丸太生産量(2014年)
(出所)森林管理局(FMB)に基づき調査団作成
カラガ地域は1950年代に原木の輸出で栄えたが、1986年に原木の輸出が禁止され た。現在は、原木の切り出しに対して厳しい制限が課せられており、二次林での植林 事業による木材の生産が主となっている。
現在、カラガ地域の面積1,913,842haのうち、1,331,491ha(70%)が森林エリアに分 類されている。さらに、森林エリアのうち939,685ha(71%)は、TLA(Timber License Agreement)、IFMA(Integrated Forest Management Agreement)、SFMA(Socialized Forest Management Agreement)、また、CBFMA(Community Based Forest Management Agreement)
等の契約に基づく営林事業や森林管理が行われている。
コルディリェラ行政地域 0%
イロコス地域 0%
カガヤンバレー地域 0%
中部ルソン地域 0%
カラバルソン地域 1%
ミマロパ地域 0%
ビコール地域
0% 西部ビサヤ地域 3%
中部ビサヤ地域 1%
東部ビ サヤ地 域 7%
サンボアンガ半島地域 5%
北部ミンダナオ地域 7%
ダバオ地域 4%
ソクサージェン地域 2%
カラガ地域 69%
ムスリム・ミンダ ナオ自治区
0%
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② 農業
カラガ地域では2014年に年間2,027,066トンの農産物が生産されており、主な農産物 は、ココナッツ、米、バナナ、アブラヤシおよびトウモロコシである。生産量が最も多 いココナッツは、南スリガオ州での生産が最も多く、次いで、北スリガオ州と北アグサ ン州が多い。一方で、米は南アグサン州での生産量が最多い。
図表3-14 カラガ地域の種類別農産物生産量と生産地(2014年)
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
図表3-15 カラガ地域の州別農産物生産量(2014年)
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 800,000 900,000 ココナッツ
米 バナナ アブラヤシ とうもろこし さつまいも キャベツ マンゴ ガビ ゴム(カップランプ) アバカ カラマンシー その他
北アグサン州 南アグサン州 北スリガオ州 南スリガオ州 ディナガット・アイランズ州
農産物の生産量 (ton)
北アグサン州 18%
南アグサン州 34%
ディナガット・
アイランド州 1%
北スリガオ州 14%
南スリガオ州 33%
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③ 養殖業
2014年のカラガ地域の養殖業の生産額は719,867,000ペソであり、ミルクフィッシュ、
ブラックタイガー、海藻類の順で多い。北アグサン州は1990年代にブラックタイガーの 集約型養殖が行われ一大養殖地として栄えたが、病気の発生により低迷し、現在はミル クフィッシュやティラピアなどへの転換が進んでいる。南スリガオ州および北アグサン 州で生産額が多く、それぞれカラガ地域全体のそれぞれ48%と40%を占めている。
図表3-16 カラガ地域の種類別養殖生産額(2014年)
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000
ミルクフィッシュ ブラックタイガー 海藻類 マッドクラブ イセエビ ティラピア ホワイトシュリンプ その他
生産額 (千ペソ)
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図表3-17 カラガ地域の州別養殖生産額(2014年)
(出所)フィリピン統計庁(PSA)に基づき調査団作成
④ 鉱業
カラガ地域は金、銅、鉄、ニッケル等の鉱山資源に恵まれており、2013年のカラガ地 域の鉱業による生産額は298億ペソに上る。2013年の鉱山使用料および物品税は18億 ペソ、また、直接雇用者数は約2万人である。なお、北スリガオ州では、Sumitomo Metal Mining Philippine Holdings CorporationがTaganito HPAL Nickel Corporationを運営してい る。
図表3-18 カラガ地域の鉱業(2012年~2013年)
2012年 2013年 変化率%
出荷数 608 618 1.64
価格(百万ペソ) 33,150 29,840 -9.98 鉱山使用料(百万ペソ) 1,350 1,200 -11.11 物品税(百万ペソ) 663.04 596.88 -9.98 直接雇用数 18,828 20,363 8.15
(出所)貿易産業省(DTI)に基づき調査団作成
⑤ 木材加工業
カラガ地域は、丸太の生産ではフィリピン全体の69%を占めるが、木材加工品の生産 ではフィリピン全体の28%に留まる。一方で、カラガ地域に隣接する北部ミンダナオ地 域とダバオ地域では、丸太のシェアはそれぞれ7%と4%と低いものの、木材加工品のシ ェアはそれぞれ30%と27%であり、カラガ地域と同等のシェアを有している。
北アグサン州 40%
南アグサン州 1%
北スリガオ州 11%
南スリガオ州 48%
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図表3-19 フィリピンの地域別木材加工品生産量(2014年)
(出所)森林管理局(FMB)に基づき調査団作成 ※製材、合板、化粧版の合計
3.1.4.3 プロジェクトニーズ
(1)地域開発を支える物流インフラ整備計画
① 臨海道路
公共事業道路省(DPWH)は、ブトゥアン市で日系企業が関与して開発が進むタギボ工 業団地近傍から、物流拠点であるマサオ港・ナシピット港を結ぶ臨海道路を計画している。
この内、工業団地からマサオ港間(区間1-1:延長 14.15km)の整備を優先する考えで、
マグサイサイ橋から5kmほど下流側に新たな橋梁((仮称)第3マグサイサイ橋)の建設
(川幅 200m強)を計画している。現道拡幅区間は既に一部施工が始まっている一方で、
公共事業道路省(DPWH)は、橋梁整備については今後も日本のODA資金および技術協 力が必要との意向であり、円借款による整備が期待される。
この道路が整備されることで、工業団地からマサオ港へのアクセス性が大幅に改善し、
市街地を通過する場合に対して、所要時間の短縮、市街地の混雑軽減や事故削減等の効果 のほか、現在は主に農耕地として利用されている臨海エリアの開発効果が期待される。
コルディリェラ行政地域 0%
カガヤンバレー地域
0% マニラ首都圏
3%
カラバルソン地域 2% ビコール地域
2%
西部ビサヤ地域 3%
中部ビサヤ地域 2%
サンボアンガ半島地域 2%
北部ミンダナオ地域 30%
ダバオ地域 27%
ソクサージェン地域 1%
カラガ地域 28%