XXI. ジャパンゴアテックス株式会社殿訪問インタビュー調査報告
2. PEFC 関連技術・製品の開発内容,開発状況等について
(1) FC関連技術・製品の位置づけ
① PEFCのバックグランドとしては,20年以上前からPAFC用のPt触媒シート電極や SiC(炭化ケイ素)のマトリックスシートの製造・販売をしていた経緯がある。PAFC の商品化が遅々として進まない中,1992年頃から,もともと扱っていた電解隔膜のイ オン交換膜の技術も組み合わせ,軸足をPEFCへ移行させた。
② W.L.ゴア社とも協力し,PEFC 用固体高分子膜,MEA の開発・生産・販売を行って いる。前述のとおり,今年度よりエレクトロケミカル分野は格上げされ,その中でも,
また,会社全体,グループ全体において,燃料電池製品は最重要プロダクトとして位 置づけられている。
③ 関連技術としては,COセンサー,水電解用固体高分子電解質膜が挙げられる。
④ ガスセパレータの開発・製造は行っていない。
(2) 固体高分子膜
① 固体高分子電解質膜GORE-SELECTⓇは,ゴアテックスを補強材としたイオン交換膜 である。補強されていることによって高強度,高寸法安定性を有するため,耐久性が
図XXI-1 GORE-SELECTⓇ
(3) MEA
① 薄い GORE-SELECTⓇ膜を痛めずにその特長を十分に引き出せる MEA として,
GORE-SELECTⓇ膜両面に触媒層を形成した膜/電極接合体PRIMEAⓇ(3層品)を開 発し,提供してきた。PRIMEAⓇはハンドリング性が非常に優れ,接合界面がイオン コンタクト的にも良好であることが特長である。また,改質ガス対応品も製品ライン ナップしている。
② 従来は,PRIMEAⓇ(3層品)とガス拡散層 CARBELⓇを別体で納めていたが,現在 は,ガス拡散層CARBELⓇを一体化させたPRIMEAⓇ(5層品)としても展開してい る(図XXI-2)。これは,顧客におけるスタックアップ時の利便性の向上を図った製品 となる。CARBELⓇにはカーボンペーパーを基材としたCARBEL-CFPⓇ,カーボンク ロ ス を 基 材 と し た CARBEL-CLⓇ, 改 良 型 の カ ー ボ ン ペ ー パ ー を 使 っ た CARBEL-CNWⓇがある。CNWはガス拡散層表面の凹凸が膜に与える影響を吸収出来 るようなマイクロレイヤーを有する(図XXI-3)。これによって,高い締め付け圧に対 してもMEAを傷めることなく,性能,信頼性を向上できるようになった。
③ PRIMEAⓇは,当初,全用途を対象として,標準的なMEAとして55シリーズを市場 展開してきた。現在アメリカでは用途にあわせて展開している(定置用には56シリー ズ,自動車用には57シリーズ,ポータブル用に58シリーズ)。
④ 日本では自動車用と定置用でとくに用途を分けず,55シリーズの中で,耐久性,ハン ドリング性の向上を進めた展開品として現在557を扱っている(図XXI-4)。さらに改
図XXI-2 PRIMEAⓇ(5層品)
Uniformized Pressure GDL
GDL
Pressure
Pressure
-Diagram-GDL / MEA interface
MEA
Improved micro layer
Spiky Pressure
Conventional micro layer
←GDL
← Micro layer
← PEM
← Electrode
←GDL
← Micro layer
← PEM
← Electrode
図XXI-3 ガス拡散層CARBELⓇイメージ図
Series 55
All Purpose 自動車、定置、携帯 問わず、標準MEAとし て展開
Series 56
Series 57
Series 58
Stationary 高耐久MEA
Transportation 高温低加湿対応MEA
Portable
常温作動、低加湿対 応MEA
Series 557 Series 557
Series 5580 Series 5580
高耐久MEA 膜、電極改良 ハンドリング性向上
Transportation
広運転領域、高耐久MEA 膜、電極、拡散層改良
Series 5582 Series 5582
Stationary
高電位・高耐久MEA 膜、電極、拡散層改良
開発中
(サンプル提供開始)
図 XXI-4 PRIMEAⓇのグレードの紹介
(4) 自動車用途の開発ロードマップについて(図XXI-5)
① 自動車用途製品の開発について,高温対応については当面 100℃を目指しており,将 来的には120℃までを目標に開発したいと考えている。
② その他の重要開発項目としては,高耐久電解質膜,高活性・高耐久電極,広いオペレー ションウィンドウを有する低抵抗拡散層の開発である。広いオペレーションウィンド ウを有することで,用途別に製品を分ける必要が無くなるメリットがある。
③ 2006年までに,第一段階を完成させたいと考えている。ただし,それでは市場のニー ズを十分に満足できないということで,第二段階として 2008 年までの開発を考えて いる。
2008 2008 2007
2007 2006
2006 2005
2005
PRIMEA ~高活性、高耐久電極~ PRIMEA ~高温対応、低加湿電極~
Gore Select ~高耐久電解質膜~
最適MEA構成
Gore Select ~高温対応膜:ver1~
100℃対応
Carbel ~広いオペレーションウィンドウ、
低抵抗拡散層~
Gore Select ~高温低加湿対応膜:ver2~
120℃
Carbel ~広いオペレーションウィンドウ、
作動範囲、高耐久拡散層~
図XXI-5 自動車用途の製品開発ロードマップ
(5) 重点開発項目 1) GORE-SELECTⓇ
① GORE-SELECTⓇについては,自動車用,定置用,携帯用ともに,高耐久化,高温低 加湿運転対応,低コスト化に対して力を入れている。
② GORE-SELECTⓇは高強度な機械的補強を有しているために膨潤収縮が抑えられ,耐 久性が良いという特長を有する。最近では,過酸化水素あるいはヒドロキシラジカル 耐性を上げたイオン交換樹脂の開発と補強層の更なる改良により,より信頼性・耐久 性の高い膜の開発を目指している。
③ 高温運転に対しては,現行のものでは劣化が加速されてしまうが,樹脂改良(化学的 高耐久な樹脂の開発)や,補強層の強化によって達成していく。樹脂改良は,ゴアグ ループ全体でも開発を進めており,耐熱性とイオン伝導性向上がポイントとなる。
④ 新たな補強層の開発によって,更なる薄膜化を狙っている。薄膜化することにより,
高出力化,及び高温低加湿対応,さらには低コスト化にもつながると考えている。
⑤ 大量生産時には,薄膜化により国の目標価格である$30~50/m2に到達できると考え ている。
⑥ 耐久性については,膜単体よりもMEAやGDLを含めて検証する必要があるが,フッ 素系膜であれば,いずれ耐久性は自動車用,定置用とも目標値を十分満たせると考え
2) PRIMEAⓇ電極
① 長期運転において電極構造を維持した高性能な電極開発を目指す。現在では,白金の シンタリングや溶出,触媒担体の腐食が注目されている。そのため,シンタリングを 抑制し,腐食に対して耐性の高い担体を目指した開発を行っている。そのためのアプ ローチは,以下のとおりである。
・ 高活性,高耐久電極の開発を目指し,新規触媒の探査や触媒活性,耐久性の向上 を目指した電極の改良に取組んでいる。
・ 高温耐久性については,単に耐久性だけに観点を置くと高温に対してシビアに なってくるため,これに対しては,電極構造の改良,高温耐久性を有する新規樹 脂の開発というアプローチから検討を進めている。膜の方でいい樹脂が開発でき れば,電極にも展開していく。
・ 低コスト化のためには,触媒量の低減が必要であり,触媒担持量の最適化や新規 高活性触媒の研究開発を進めている。
② 現状では,高温化や信頼性あるいは耐久性をあげることが優先課題であり,白金の担 持量を減らすのは次の項目と認識している。
③ 自動車用と定置用の耐久性の確保については,車の場合は運転モード(負荷変動やス タート&ストップのサイクル),定置用の場合は要求耐久時間があまりにも長いこと で,どちらもそれぞれ難しいところがある。
3) CARBELⓇ
① ガス拡散層については,運転領域を拡大した,高性能で,長時間に渡ってフラッディ ング並びにドライアウトを抑制する高耐久な製品の開発を目指す。そうすることが,
MEA を自動車用とか定置用とか用途で分ける必要が無くするためのポイントになる と考えている。
② そのため,基材の最適化や構成材料の最適化,例えば撥水処理の程度やその方法の最 適化等の検討を行っている。
4) MEAのコストと生産性
① 本格的な導入時期を想定し,市場の要求コストに見合った材料の選定,ファブリケー ション,生産方法の開発が必要である。そのため,以下のような取り組みを実施して いる。
② 平成17年度よりNEDOの「固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の高生産性量産技 術開発」に参画(単独)し,低コストで高生産性,スタッキングもしやすい,ハンド
5) その他
① ハイドロカーボン膜については,以前開発検討を進めていたが,耐久性の点では厳し いと考えており,今後は,リサーチだけは続けていきたいと考えている。
② ダイレクトメタノール用の固体高分子膜については,メタノールクロスオーバーの低 減が最大の課題であるが,現在は,MEA トータルとして,DMFC に耐えうるものの 開発に注力している。
(6) 製造方法の特長,性能について
① 現在の当社の製造能力は,国内(定置用,自動車用)カスタマーの現在の要求量の約 3倍量を確保できている。
② 当社はフレキシブル生産体制を完備しているという特長がある。ユーザの様々な形状 や数量の変更要求に対応して,MEAを設計,生産することが可能である。最近では,
既製品の販売から,顧客の使い方に合わせた MEA の生産という形の方が主流になり つつある。そのために,7層品を手がける必要性が増してきている。
③ 現在,量産初期に入っていると認識しており,ISO9000の取得(済み)をはじめとし て,カスタマーの品質監査も問題なく受け入れられるような品質保証体制を構築して きている。
(7) 市場導入へ向けた取り組み
① 最大の競合製品は,顧客の内製MEA品となる。
② 市場導入に向けた戦略としては,顧客のFCVとしての評価も進んでおり,課題が明確 になりつつある。これらの課題を一つ一つ解決していくことが肝要と考えている。そ して,市場の立ち上がりに先立ち十分な品質,コスト,生産性を確保しておく必要が あると考えている。
③ 市場導入に向けた課題としては,特にコスト面において,市場に受け入れられる価格 と導入初期の数量に基づく材料コストでは,かなりのギャップがあり,国からの補助 金拠出によってスムースな市場立ち上げを希望したい。
④ 製品としては,基本的にMEAで販売をしている。3層品(MEA)から開発を始め,
3層の性能を生かすために拡散層を含めた5層品にて展開してきているが,スタック 時のハンドリング性等を考えて,現状では7層品の開発も進めている。顧客へは5層 あるいは7層で提供している。基本的に材料の提供は行わない。
⑤ 開発費は別にして,今まではある程度ビジネスとして成立していたが,普及期の価格 に適合させていくために,非常に厳しい状況に置かれてきている。顧客からの要求価 格は,年毎に半減していかなければいけないイメージである。
(8) リサイクルについて
MEA 90数%台である。そのため,100%に近づけるべく,検