XI. 大阪ガス株式会社殿訪問インタビュー調査結果
1. PEFC 関連技術・製品の位置付け,開発内容,開発状況等について
2) 家庭用PEFCコージェネレーションシステムの目標効率と達成状況
2003年頃定めたPEFCシステムの目標効率である31.5%(HHV)を2004年に達成し た。定格だけでなく,最低負荷時(30%負荷)のシステム効率も27%(HHV)と高い結 果を得ている。(表XI-1)
表 XI-1 大阪ガスPEFCコージェネレーションシステムの目標効率(HHV)
プロセス 1kW定格運転時 300W発電時
燃料改質装置 81 % 72 %
セルスタック 48.5 % 53 %
インバータ 90 % 88.5 %
補機損失 89 % 81 %
発 電 効
率 発電効率 31.5 % 27 %
排熱回収効率 41 % 24 %
総合効率 72.5 % 51 %
3) 家庭用PEFCコージェネレーションシステム普及のための技術課題
PEFC コージェネレーションシステム普及のための今後の技術課題は次のとおりであ る。
① 長期耐久性の向上(4万時間以上~9万時間)
② コストダウン(補機類の削減・消費電力の削減・高耐久化,システムの簡素化 燃料改質装置・排熱回収システムのコストダウン)
③ 小型改質装置の高効率化(熱効率,起動停止特性の向上)
④ 最適運転制御方式の開発(学習運転制御方式や排熱回収システム)
このうち,特に①耐久性の向上と②コストダウンに集中して開発を進めている。
4) 電池本体に関する取り組み状況
① セルスタックの耐久性向上のため,劣化要因の解明と,加速劣化手法の開発のため,
セルの評価を行っている。具体的には,1998年頃から5センチ平方程度の単セルを様々 な温度,加湿条件,電流密度,不純物の影響等の異なる条件のもとで運転し,耐久性 に与える影響を分析してきた。
② これまでの検討より以下の4つが主なセルの劣化要因であると考えている。(表XI-2)
・加湿量が不足することによりクロスリークに至ってしまうこと
・空気極ではフラッディングにより濡れが進行し,空気の拡散性が悪くなること
・空気極においてシンタリングが起き,触媒の有効面積が減少すること
・燃料極においては白金のシンタリングにより白金ルテニウム触媒が脱合金化し耐 CO性が低下すること
③ 上記以外にも炭素材料の腐食の問題や過酸化水素の生成による劣化の問題がある。こ れらを含めて,NEDO プロジェクトにおいて加速試験方法の確立を目指して検討を 行っている。
④ 現在,飽和加湿の条件での単セル運転においては,4万時間を超えて運転しているも のが何台かある。これにより,飽和加湿の条件下であれば膜材料が十分もつというこ とは実証できた。
⑤ システムとしては,運転時間の一番長いもので1万9千時間程度。まずは,2008年 には4万時間の耐久性確保を見通すことを目指して取り組んでいる。
⑥ 2,3 年前までは低加湿にトライしているメーカもあったが,定置用に関しては飽和 加湿が前提になってきているように感じている。1 万時間以上の運転をしようとする とかなり飽和に近い状態で運転しないと膜材料がもたない。
⑦ 加湿条件については,実システムでは正確な露点制御が困難なため,加湿不足を避け,
ガス流路等の最適化を図ることによる過加湿に耐えられるセルスタックの設計が必要 と考えている。併せて,MEAの改良によるセルの劣化率の低減も必要である。
表 XI-2 主なセルの劣化要因 電解質膜 クロスリーク 加湿不足によりガスのリーク量が増加
フ ラ ッ デ ィ ン グ
漏れの進行により空気の拡散性が低下
(起動停止により漏れが進行)
空気極 シンタリング 触媒の有効面積が減少(初期に顕著)
(起動停止・高電位運転により加速)
燃料極 脱合金 Pt のシンタリングにより Pt-Ru 電極触媒が脱合金化し,Ru が溶け出し耐CO性が低下(高CO濃度で加速)
5) 小型燃料改質装置の開発状況
① プレート形の小型燃料改質装置を開発している。これは,プレート形の反応器を複合 一体化して放熱ロスを抑制したものであり,プレス加工を用いたシンプルな構造を有 するのが特長である。500W,750W,1kW,2kW級の試作機をバリエーションとし て開発しており,海外も含めてメーカに提供している。現在,荏原バラード,三洋電 機,東芝燃料電池システムの他,海外メーカなどにも技術供与を実施している。
② 都市ガスには,付臭剤として数 ppm の硫黄分が含まれている。通常の水添脱硫剤で はppmレベルまでしか下げられないが,当社が開発した超高次脱硫剤では1ppb以下 にすることが可能。通常の常温脱硫を使用した場合には,かなり大きな脱硫ユニット をつけ,毎年それを取り替える必要があるが,当システムでは触媒交換なしで 10 年 間の運転が可能な設計となっている。さらにこの触媒により硫黄分を少なくできるた め,S/Cを2.5程度まで落としても安定して改質器を運転することが可能となる。こ れにより蒸気発生に必要な熱を低減できるため,高効率化が可能となる。
③ 超高次脱硫剤はLPGにも適用可能である。この脱硫剤を用いたLPG改質装置を搭載 したシステムの大規模実証事業が実施されている。LPG はボンベの交換直前には,
硫黄分が濃縮され,濃度が高くなるが,そういう状態であっても,超高次脱硫で濃度 を落とすことができる。そのため,LPG 改質装置は都市ガス仕様とほぼ同じ装置に できる。
④ 新たなCO選択酸化触媒の開発により,改質ガスのCO濃度を1ppm以下にすること ができた。9万時間相当の加速劣化した触媒を用いたテストにおいても,10ppm以下 であることを確認している。
⑤ 触媒に関しては9万時間運転に対する耐久性は確認できている。また,燃料改質装置 は長期耐久試験において2万7千時間を確認しており,現在も試験を継続中である。
⑥ 燃料電池で使う水素分を改質器に投入する燃料の熱量分で除した熱効率(以下の定
義)で82%(HHV)を達成しており,これは世界のトップクラスである。
定義: (【FCに投入される改質ガスのエネルギー】-【オフガスのエネルギー】)/
【投入燃料のエネルギー】
6) 家庭用PFFCシステムの最適運転制御方式の開発
① PEFCシステムの運転方法の課題としては,様々な顧客ごとの電気負荷,熱負荷の変 動,季節による負荷変動,メーカによるFC特性に対応した最適化が必要である。そ のため,省エネ性と耐久性を考慮した最適学習運転(負荷予測と最適制御運転)制御 システムを開発している。
② 排熱回収システムにユーザの熱負荷に合わせて運転する学習制御を組み込んであり,
出力指令信号を送って燃料電池を動かすというシステムである。負荷変動に合わせ て,最も省エネになる運転パターンをシミュレーションで割り出し,最適制御する。
③ 具体的に,このシステムでは,当日から2週間前まで1時間ごとの負荷パターンのデー タを全てマイコンチッブに蓄積し,当日の曜日と水温から,負荷パターン(これくら いの負荷が必要とか,こういう時間帯にピークがくるとか)を予測し,それにあわせ て運転方法を決定している。定格あるいは部分負荷も含めた形で最も適切な運転を割 り出し,最適学習運転制御している。また,ユーザが自分で運転パターンを変更でき る機能も付いている。
④ 運転パターンとしては,以下のようなイメージである。
・夏の熱あまりのときは1日1回動かすDSSまたは,2日に1回動かすSS運転。
・春や秋など中間期では,最低負荷に近いところで連続運転して,夕方上げるなど湯の 量にあわせて運転する。
・冬はできるだけ定格に近い運転をした方が,効率が高いため,負荷追従運転と強制運 転(電力負荷よりも出力を高くして熱に変換し,高い効率で運転する)を組み合わせ て最適な運転を行う。
⑤ このような学習制御をした最適運転では,単純に負荷追従運転したときと比べ,省エ ネ率が 1~3%程度向上していることを確かめている(図 XI-1)。特に負荷の大きい ユーザでの最適運転は,より省エネ効果が高い。
7) その他の開発への取り組みについて
① 排熱回収システムの商用機を開発している。200Lの給湯タンク,幅 44cm,奥行き 75cmで低温騒音型ラジエータを有する(表XI-3)。
② 補機類については,NEDO プロジェクト(後述)によって,補機点数の削減,消費 電力の削減,高耐久化,低コスト化の課題をクリアすることによって,2008年まで にコスト削減と耐久性の確保(4万時間以上)に向けて取組んでいる。
表 XI-3 大阪ガスにおける排熱回収システム(商用機)の仕様
項目 仕様
新学習制御 PEFC対応
給湯 83%以上(CH同等)
BU効率
暖房 75%以上(CH63%)
暖房排熱利用 有(一部)
設置スペース 440×750mm以下 重量 120kg 本体との通信(※) インテリジェント通信 リモコン FC対応
待機電力 10W/5W(リモコンoff)
※FCとの通信方式は,全国統一仕様に向けて検討中 8)家庭用燃料電池技術開発の目標等について
① 大規模実証が2007年度まで計画されているため,2008年度からの販売を目標にして いる。そのためには,コストダウンと耐久性の向上が大きな課題である。
② 販売時の製造原価は90万円以下で,販売するときは100万円+α程度にすることが 必要である。そうでなければ,補助金が半分あったとしてもエコウィルのような販売 状況にはならないと考えている。
③ 現在,エコウィルの販売が伸びてきているが,発電効率が 20%(LHV),総合効率
が 85%(LHV)であり,熱需要の大きいユーザが対象となる。一方,燃料電池は,
熱の負荷の小さいところに対しても省エネ効果を出せる機器として重要であると考 えている。