訪問日時 平成17年11月16日(水)13:30~
場 所 大陽日酸株式会社 本社 応対者 技術本部 水素プロジェクト部
1. 会社概要・事業概要
① 大陽日酸は,2004年10月1日に日本酸素と大陽東洋酸素が合併してできた会社であ る。日本酸素が創業明治43年(1910年)であるため,今年で創業95年になる。英名は TAIYO NIPPON SANSOである。
② 当社は,日本で最初に酸素を製造するための空気液化機を作った会社である。空気を 液化段階で酸素,窒素,アルゴン等のガスに分離するものである。
③ 水素液化装置ではリンデと技術提携し,国内に2装置建設した実績を持つ。
④ 工業用ガスについては,セパレートガス(酸素,窒素,アルゴン等空気から分離する ガス)の製造・販売が主体である。かつては酸素がメインであったが,近年では量的 にも売り上げ的にも窒素が多い。主に半導体メーカが窒素雰囲気で製品を作るのに用 いるためである。その他に副生水素や副生炭酸ガス,ヘリウム等も扱う。ヘリウムは 全量輸入である。現在,付加価値が高いのは半導体の材料ガス(モノシランガス,ホ スフィン,アルシンなど)であり,輸入品取扱量も多くなってきている。
⑤ 日本の工業ガス会社としては,大陽日酸がトップ企業であり,次がエア・ウォータ(ほ くさん,大同酸素,共同酸素が合併),ジャパン・エア・ガシズ,岩谷産業の順となる。
水素では岩谷産業,昭和電工,エア・ウォータ,大陽日酸の順となる。
⑥ ガス製造関係のプラントについては,本体の機器のみならず,ガスの供給される部分 の機器を含め,ほとんどを製造している。ただし,内製は大型の空気分離装置のみで,
その他は関係会社や子会社に外注している。
⑦ その他には,化合物半導体を作る装置(MOCVD やCVD装置など)や,プラント工 場用の LNG などの液化貯槽を製造している。これには真空断熱が用いられるため,
この極低温の技術から,ステンレス製魔法瓶を作り出した。ステンレス製魔法瓶を国 内で初めて作ったのは当社である。今はサーモスというアメリカのメーカーを買収し てサーモスブランドになっている。
⑧ 研究所はあるが燃料電池や水素についての研究開発人員はいない。将来的には参入し たいと考えている。
2. PEFC ・水素関連技術について
(1) PEFC・水素関連技術への参入の経緯
① 古くから水素の 15/20MPa の充填所を持っており,CNG のエコステーションに関し ても日本ガス協会と共に国からの補助事業に参画していた。また,CNG スタンドも 20数カ所を建設した実績がある。このような高圧ガスの充填技術を持っていたため,
FCに関連した事業に参入した経緯がある。CNGステーションを扱っていたときに,
ガスを急速に充填し,精密に測定するという技術をディスペンサーや急速充填の技術 として経験し,学んだ。その技術を水素に展開することができた。
② 高松の水素ステーションは,旧日本酸素が WE-NET プロジェクトに参画し,建設し た。4年間がWE-NETプロジェクトで,その後2年間はNEDOの水素安全プロジェ クトで運用し,2005年3月に終了した。
③ CNGステーションのシステムと,水素のシステムはまったく同様であり,圧力や材質 が異なるだけである。水素発生装置以外の圧縮機,蓄ガス機,ディスペンサーという システムはまったく同様である。CNGの充填制御技術を活かしてWE-NETの高松ス テーションで実験データを取ることができた。
④ WE-NETでの研究成果を生かし,JHFC やPEC,民間企業向けの水素ステーション 建設・運用では,最も多くの実績をもつ。
(2) 水素ステーションについて 1) ディスペンサー等
① 現状の水素ディスペンサーの設置数から考えると,大陽日酸製のものが一番多いと思 う。WE-NET や JHFC で得られた技術を全て注ぎ込んでいる。それを標準化・基準 化して普及期にはディスペンサメーカが造れば良いと考えている。大陽日酸は量産工 場を持っていないため,現状では全て手作りで内製している。その他のノズルなどは 全て仕様を定めて外注している。
② ガソリンスタンドのディスペンサメーカにはトキコテクノ,タツノ・メカトロニクス,
富永製作所などがある。水素も同様に扱うようになると予想される。大陽日酸がその 標準化に関する部分を関連する業界と一緒に協力している。CNGの時も当社がディス ペンサーを試作し,富永製作所と共同で製作していた。
③ ディスペンサーの機能として正確に流量を測ることが要求されるが,水素だけはいま のところ計量法の対象となっていない。高圧水素の流量測定法は,WE-NETで採用し たコリオリ式の質量流量計を用いている。現状ではこれに勝るものはないと思う。
2) 水素充填に関する課題
① 水素の急速充填においてはタンクを昇温させないで安全に充填するためのシステムの 確立が重要である。
② WE-NETの高松と酉島ステーションでは,25Nm3を10分以内という仕様で作った。
現状では,おそらく150 Nm3~200N m3を数分で充填していると思われる。しかし,
タンク内の温度が何度まで上昇しているかは不明である。ディスペンサーの末端まで の温度は自分たちで測っているが,タンクの温度が何度まで上がっているか知らされ ていない。
③ JHFCの安全委員会では,FCVメーカごとにどのように充填するかの指示を受けてい る。指示通りであれば,安全基準の85℃以上に上昇しないということである。流量の 設定値を変えるコントロールパネルを用いてメーカ独自に設定して充填している。
④ 供給側と車側のコミュニケーション(通信)については,コスト増につながるため,
どちらかというと日本のカーメーカは積極的ではないように思える。
⑤ コミュニケーションを用いない現在の充填方法では,逆止弁があるためタンクの残圧 がわからない。そこで,標準化として,最初に入れた瞬間,10秒ないし15 秒程度一 定の流量充填し,タンク圧が何MPaから何MPaに上昇したかを計測し,タンクの容 量を計算し,それを瞬時にフィードバックして,タンクへの安全な(85℃にならない)
充填時間・充填パターンを割り出し,充填するようなシステムを取り入れようとエン 振協に提案している。高松で急速充填の試験を繰り返して,その充填制御のソフトウ エアを製作した。これを標準にしてもらいたいと提案しているところである。
3) 高圧水素タンクについて
① 車載用の高圧複合容器を製造販売している日本メーカはない(トヨタは販売をしてい ない)。販売されているのは,JFE コンテイナーが輸入販売しているカナダのダイン テックなど輸入品が主なものだと思われる。
② 高圧複合容器についている附属品といわれるレギュレータや PRD(Pressure relief Device)については,当社でも開発可能である。プレッシャーレギュレータについて は,日酸TANAKAという系列会社が作っている。
③ レギュレータにはインタンク,アウトタンクタイプがあるが,水素はインタンクで,
CNGでは全てアウトタンクである。インタンクバルブの付加価値は高い。CNGでは レギュレータそのものに熱交換機能をつけているため,冷却水で冷やす設備がついて おりそのためアウトタンクになる。
4) 圧縮機の現状と課題
① 日本の水素圧縮機技術は遅れている。国産の圧縮機は,ステーションに設置されてい るのは,高松のWE-NETのステーション,東邦ガスの東海研究所,新日石の旭ステー ション,出光の秦野ステーションの計4箇所と思われる。他には,JARIに加地テック の110MPaの国産圧縮機が入っているが,ステーション用としては同型の40MPa圧 縮機はまだ1台も普及していない。
② 国内の水素ステーション14箇所の残りは,ドイツのホーファー,アメリカのPDCマ シーンズ社, PPI社などの海外製品が入っている。
③ 圧縮機は,インフラ側から考えると,一番重要であり,心臓部に相当する。将来の量 産化とコストダウンを考えるとこの現状を何とかしないといけないと常々発言してい る。
④ NEDO プロジェクトで,70MPa 圧縮機の開発を日立インダストリイズ&日立製作所 とIHIが行っているが,純国産製の圧縮機はまだ完成していない。開発が待たれる。
5) エネルギー効率について
① 水素供給ステーションのエネルギー効率上改善の余地があるのは,オンサイトの水素 発生装置だと思われる。発生装置本体の効率は高いが,補機などは既存品を使ってい るので,さらなる効率化が可能だと思う。
② 圧縮機については,ダイヤフラムからレシプロにすることにより改善するが,大きな 改善は期待できないだろう。
③ 水素ステーションの効率アップには,全体のシステム設計段階で工夫するなど,エン ジアリング力を発揮して行きたい。
6) 標準化について
当社は日本産業ガス協会(JIGA)の中で,水素充填ステーションや水素輸送に関する標 準化について貢献したいと考えている。安全面を重視して,これだけの設計で機器を備え ておけばいいというような標準化である。
7) その他
愛知万博で連続運転して耐久性が不足しているものが把握できた。とくにディスペン サーホースや圧縮機のトラブルである。当社の15/20MPaの工業用充填所は,愛知万博の ステーションの 5~10倍に相当する規模であるが,30~40 年間運転してきて,やっとト
40MPa